経理業務アウトソーシングの運用|KPI・SLA・月次の受け渡し・内部統制

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  • 経理は任せても責任は会社に残る
  • KPIとSLAで遅れや差戻しを防ぐ
  • 月次の受け渡しと内部統制を固定する

経理業務のアウトソーシングとは、記帳・請求書の処理・支払・月次決算の補助といった経理の作業を、外部の専門会社に任せることです。ただし、適時に正確な会計帳簿を作り、決算書類を作る義務は、任せた後も会社に残ります(会社法432条・435条)。そのため、任せたあとに「何を、どの水準で、いつまでに、誰が確認するか」を決めておかないと、月次の数字が遅れたり、差戻しが積み上がったりします。この記事は、委託先の選び方や費用ではなく、委託したあとの運用に絞って、役割分担・KPI・SLA・月次の受け渡し・内部統制を整理します。

経理を任せたあとの運用で、つまずきやすい場面を2問で診断

Q1. 委託したあとの運用で、いま一番気になっているのは?

目次

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  1. 経理業務のアウトソーシングとは|任せても会社に残る責任と、運用で決める4つのこと
  2. 委託後の役割分担|作業は受託側、確認と承認は自社と分けて書き出す
  3. KPIの決め方|委託後に毎月自社で見る6つの指標
  4. SLAの決め方|受託側と合意しておく7項目と、KPIとの違い
  5. 月次の受け渡しの流れ|証憑を渡す・確認する・締める・報告を受ける
  6. 委託後の内部統制|責任は会社に残るため、受託側の作業を確かめる
  7. 証憑と請求書の受け渡しと保存|渡し方を1つにして、保存の義務を確認する
  8. 支払の承認と振込|受託側は支払データを作り、承認と実行は自社に残す
  9. 委託後に起きやすい失敗の原因と運用での防ぎ方|「やめとけ」と言われる理由
  10. 委託の運用の見直し方|半年ごとの振り返りと、ツール併用の判断
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|経理業務のアウトソーシング後の運用で押さえたい6つのこと
  13. 参考文献

経理業務のアウトソーシングとは|任せても会社に残る責任と、運用で決める4つのこと

経理業務のアウトソーシングとは、記帳や請求書処理などの経理作業を外部へ任せることです。作業は任せられても、帳簿を正確に作る責任は会社に残ります。

会社は、法務省令で定めるところにより、適時に正確な会計帳簿を作らなければならず(会社法432条1項)、各事業年度の計算書類も作成しなければなりません(同435条2項、e-Gov法令検索「会社法」、2026年10月22日確認)。金融庁の内部統制の実施基準も、委託した業務の責任は委託者にあると整理しています(後述)。つまり、経理を任せるときは「作業」を渡すだけで、「責任」と「確認」は手元に残ります。

委託できる業務の範囲と導入手順は経理BPOとは|経理代行との違い・委託できる範囲・選び方・導入手順を解説、任せる業務と残す業務の切り分けと依頼先の選び方は経理の外注|任せる業務・残す業務の切り分けと依頼先の選び方、サービスの比較は経理代行サービスおすすめ15選を徹底比較で整理しています。この記事は、それらで委託先を決めたあとの運用を扱います。運用で決めることは、次の4つです。

  1. 役割分担:受託側が行う作業と、自社が行う確認・承認を書き出す
  2. KPI:自社が毎月見る、遅れとやり直しの数字を決める
  3. SLA:受託側と、期限・品質・問い合わせ対応の水準を合意する
  4. 月次の受け渡しと内部統制:証憑・資料・支払の流れを固定し、受託側の作業を確かめる

この4つを毎月回すとき、帳簿の確認、証憑や請求書の受け渡し、支払の承認は、サービスを使うと見える化しやすくなります。次の表は、役割の違いで並べたものです。優劣ではなく、どの作業に手間がかかっているかで選び方が変わります。

経理を任せたあとの運用を支える3サービスの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

自社の状況:

この状況に合う一例:マネーフォワード クラウド会計は、取引明細の自動取得と権限管理で、帳簿の数字を自社でも確認したい場合の一例です。

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この状況に合う一例:Bill One請求書受領は、さまざまな形式の請求書をオンラインで受け取り、処理ステータスまで見たい場合の一例です。

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この状況に合う一例:マネーフォワード クラウド債務支払は、承認経路とステータスを残しながら、銀行振込まで進めたい場合の一例です。

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サービス マネーフォワード クラウド会計 Bill One請求書受領 マネーフォワード クラウド債務支払
向いている会社 委託先の月次資料を、自社でも帳簿のデータで確かめたい会社 証憑や請求書の受け渡しを、受け取り口を1つにそろえて固定したい会社 支払データは委託先が作り、承認と振込の記録は自社に残したい会社
特徴 2,400社以上の金融機関と連携して入出金データを取得し、AIが勘定科目の候補を提案。クラウド上で権限を細かく管理でき、経理担当者と税理士が同じデータを共有しやすい 請求書をオンラインで受け取り、クラウド上で一元管理。処理ステータスをリアルタイムで確認でき、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も紹介されている 承認経路を自社に合わせて設定でき、申請のステータスを確認可能。請求書のAI-OCR取込、適格請求書の判定、銀行振込APIによる振込に対応
注意したい点 ある程度の簿記知識が必要な場合もある。委託先が別のソフトで作業する契約では、同じ画面で確認できるとは限らない 価格を確認するには問い合わせが必要。委託先が請求書を受け取る契約との役割分担は、資料で確認する 開封や受領・保管の代行はオプション。委託先が支払データを作る運用に合うかは、資料で確認する
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表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

委託先から届く月次資料を、自社でも帳簿のデータで確かめる場合の一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関と連携して入出金データを自動で取得し、リアルタイムで数字を共有できるとされています。クラウド上で権限を細かく管理でき、経理担当者と公認会計士・税理士が同じ画面やデータを共有しやすいとも紹介されています。注意点として、ある程度の簿記知識が必要な場合もあります。また、委託先が別のソフトで作業する契約の場合は、自社の会計ソフトと同じ画面で確認できるとは限らないため、契約前に確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

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  • 金融機関の入出金データを自動取得してリアルタイムで数字を共有
  • 他サービスとの連携で勤怠管理やマイナンバー管理が可能
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  • ある程度の簿記知識が必要な場合も
評価・口コミ(一部抜粋)
4.2
  • 年度繰り越しもあっという間にできるし、確定申告も決められた所に数字を入れれば簡単にできるので助かっています。 また分からないことがあっても、AIにはなりますが24時間いつでも聞けるのが魅力的です。だいたい聞いたら解決できます。

  • 日々の仕訳入力が大幅に削減され、手作業で行っていた会計処理が8割ほど減りました。特に銀行連携による自動仕訳、確定申告、年末調整、社会保険や給与計算までの連携が非常に強力で、人的ミスや作業時間の大幅な削減につながっています。

  • 銀行のインターネットバンキングやカード会社と連携できるため、1件ずつ仕分けを登録する必要がなくなった。 仕訳帳や現金出納帳などをインポートできるため、1件ずつ仕分けを登録する必要がなくなった。また、エクスポートする事で、データの照合もしやすい。

実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】

数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。

導入事例として、株式会社HITOMIOテクノロジーズは、導入前は月に6000件ほど発生する仕訳を月初に通帳や紙の明細を見ながら入力していたと紹介されています。導入したのはマネーフォワード クラウド会計を含む複数のサービスで、経理を外部へ委託した事例ではなく、自社で会計ソフトを使った事例です。効果は会計ソフトだけによるものとは限りません。

「月次決算が6営業日で対応できるようになった」

株式会社HITOMIOテクノロジーズ導入事例の結果の項目(マネーフォワード公式サイト、2021年8月31日公開。公開当時の情報)。出典:マネーフォワード「株式会社HITOMIOテクノロジーズ」導入事例、2026年10月22日確認

委託後の役割分担|作業は受託側、確認と承認は自社と分けて書き出す

委託後の役割分担とは、業務ごとに、受託側が行う作業と自社が行う確認・承認を分けて書き出すことです。作業と承認を同じ側に置かないのが基本です。

経理を任せたあとにトラブルが起きるときは、「誰が何を確認するか」が決まっていないことが多くあります。次の表は、業務ごとに受託側と自社の担当を分ける一例です。実際の分け方は契約の内容で変わるため、自社の契約書や業務範囲の資料に合わせて書き換えてください。

業務受託側が担当する例自社に残す確認・承認の例
証憑の収集と受け渡し受け取った請求書・領収書の整理、入力の準備証憑を期限までに渡すこと、渡し漏れがないかの確認
記帳・仕訳証憑にもとづく入力と仕訳勘定科目や処理ルールの合意、差戻しの内容の確認
請求書の発行と入金消込請求書の作成準備、入金の消込請求内容の承認、未入金の判断
支払処理支払データの作成支払の承認と実行(銀行振込の承認権限は自社に置く)
月次の締めと報告試算表や月次資料の作成、報告数字の内容確認、経営への報告
決算・税務決算の補助、資料の整理決算の承認。税務代理や税務書類の作成は、税理士または税理士法人に依頼する

最後の行にあるとおり、税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士または税理士法人でない者が行うことは、税理士法52条で制限されています(e-Gov法令検索「税理士法」、2026年10月22日確認)。経理の委託先がこれらを行う契約になっていないかも、役割分担を書き出すときに確認してください。税理士と経理代行会社の違いは経理の外注|任せる業務・残す業務の切り分けと依頼先の選び方で、記帳だけを任せる場合は記帳代行とは?依頼できる範囲・料金の決まり方・選び方を解説で説明しています。

また、一般に、入力する人・承認する人・振込む人が同じだと、誤りや不正に気づきにくくなります。支払の承認と実行は自社に残し、受託側には支払データの作成までを任せる形が、確認しやすい分け方の一つです。

KPIの決め方|委託後に毎月自社で見る6つの指標

KPIとは、委託後の運用が計画どおりかを毎月確かめる数字のことです。受託側の作業量ではなく、自社が困る遅れとやり直しを数えます。

KPIは、増やしすぎると見る時間が増えて続きません。次の6つから、自社の困りごとに近い3から4つを選ぶと運用しやすくなります。目標値は、他社の数字ではなく、自社の月次スケジュール(経営会議の日、納税や支払の期日)から逆算して決めてください。

指標数え方見る理由
月次資料の提出日月末の締めから、月次資料が届くまでの営業日数経営会議や金融機関への報告に間に合うかを確かめる
証憑の渡し遅れ件数期限を過ぎてから自社が渡した証憑の件数(自社側の指標)月次の遅れの原因が、自社側にないかを切り分ける
差戻し・修正件数月次報告のあとに、自社が修正を求めた件数と理由仕訳ルールの食い違いを早く見つける
未処理・保留の件数月末時点で、受託側が保留にしている証憑や質問の数来月に持ち越す作業を見える化する
問い合わせの回答時間質問してから回答が届くまでの営業日数質問の停滞による作業の停止に気づく
支払の期限遅れ・誤り件数支払期日に間に合わなかった件数、金額や宛先が違った件数取引先との関係に直結する誤りを防ぐ

数字は、1か月だけで判断せず、3か月ほど並べて傾向を見ます。差戻しが毎月同じ理由で出るなら、受託側の作業ではなく、仕訳ルールの共有が足りない可能性があります。KPIは、受託側を責める材料ではなく、運用の穴を見つけるための道具として使います。

SLAの決め方|受託側と合意しておく7項目と、KPIとの違い

SLAとは、受託側が守るサービスの水準を、契約や別紙で合意したものです。KPIは自社が見る数字、SLAは両者で約束する水準と考えると整理できます。

SLAは、Service Level Agreementの略で、期限や品質、問い合わせ対応などの水準を文書にして合意するものです。KPIで見た数字が水準を下回ったときに、何をするかまで決めておくと、運用が機能します。合意しておく項目は、次の7つです。数値の水準は、自社の月次スケジュールと受託側の体制を見て決めます。

項目合意しておく内容
対象業務と範囲どの作業を、どの単位(件数・口座数など)で受けるか。範囲外の依頼の扱い
期限月次資料の提出日。自社が証憑を渡す期限も、双方の約束として書く
品質の測り方誤りや差戻しの数え方、是正までの期間
問い合わせ対応窓口、受付時間、回答までの目安
報告月次報告の様式と、報告会の頻度
是正と見直し水準を満たさなかったときの連絡と改善の手順、水準を見直す時期
データと書類の扱い証憑・帳簿の保管場所、委託終了時の返却と移行の方法

SLAに違約金や補償を設ける場合は、法務の確認が必要です。本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。契約書の条項は、顧問弁護士や専門家に確認してください。SLAを決めるときは、自社側の約束(証憑を渡す期限、質問への回答期限)も一緒に書くと、遅れの責任の所在をめぐる食い違いを防げます。

月次の受け渡しの流れ|証憑を渡す・確認する・締める・報告を受ける

月次の受け渡しとは、証憑を渡してから月次資料の報告を受けるまでの1か月の流れを、担当と期限で固定することです。流れが固定されると、遅れた箇所が分かります。

月次の受け渡しは、次の6つのステップで考えると固定しやすくなります。営業日の置き方は、経営会議や納税・支払の期日から逆算してください。

ステップ担当固定しておくこと
1. 証憑を渡す自社から受託側へ渡し方を1つに決める(メール、共有フォルダ、サービスの受け取り口など)。渡す期限を決める
2. 入力・処理受託側月末の締めまでに処理する範囲と、保留にするものの扱い
3. 質問と回答双方質問の窓口を1つにし、回答の期限を決める
4. 月次資料の提出受託側から自社へ提出日と、資料の様式(試算表・仕訳の一覧など)
5. 確認と差戻し自社見る項目(件数の突き合わせ、増減の大きい科目)と、差戻しの理由の記録
6. 確定と報告自社数字の確定、経営や税理士への報告

質問のやりとりがメールやチャットに散らばると、未回答の質問が見えなくなり、作業が止まります。質問の窓口と記録の場所を1つにするだけでも、問い合わせの回答時間(KPI)を数えやすくなります。差戻しの理由は、毎回同じ書式で残すと、次の月の仕訳ルールの見直しに使えます。

委託後の月次の運用、今のやり方で大丈夫?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

証憑の受け渡し、帳簿の確認、支払の承認を毎月手作業で行っているなら、サービスで流れを固定する方法があります。どれが合うかは、手間がかかっている作業で決まります。次の節から、内部統制の考え方と、作業ごとの一例を紹介します。

委託後の内部統制|責任は会社に残るため、受託側の作業を確かめる

委託後の内部統制とは、受託側が行った経理作業を、自社が確かめる仕組みのことです。上場会社などは、委託した業務の内部統制も評価の範囲に入ります。

会社法は、大会社に、取締役(取締役会設置会社では取締役会)が、業務の適正を確保するための体制の整備を決定することを求めています(会社法348条4項・362条5項、2026年10月22日確認)。経理を外部へ任せても、この体制の整備がなくなるわけではありません。

上場会社などが対象となる内部統制報告制度では、金融庁の実施基準(令和5年4月7日の改訂)が、委託した業務の扱いを定めています。委託業務の責任は委託者(委託した会社)にあり、委託業務の内部統制も評価の範囲に含まれます。委託業務が企業の重要な業務プロセスの一部を構成している場合、経営者は、受託会社の内部統制の有効性を評価しなければなりません。評価の方法として、次の2つが例に挙げられています(金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」令和5年4月7日、2026年10月22日確認)。

  • サンプリングによる検証:委託業務の結果の報告書と基礎資料が合っているかを確かめ、結果の一部を企業の中でも実施して検証する。例として、給与計算で、委託した対象人数と受託会社から受け取った計算データの件数を比べ、無作為に選んだ一部を企業側で検算することが挙げられています
  • 受託会社の評価結果の利用:委託業務の内部統制の整備・運用状況を記載した報告書等を受託会社から入手し、十分な証拠になるかを検討したうえで、評価の代わりに使う

この制度の対象でない会社でも、考え方は使えます。経理を任せた場合の確認の一例を、次の表にまとめました。頻度と方法は、自社の規模に合わせて調整してください。

確認項目頻度の目安方法の一例
渡した証憑と処理した件数の突き合わせ毎月自社が渡した証憑の件数と、受託側の処理件数・保留件数を比べる
預金残高と帳簿残高の突き合わせ毎月通帳やネットバンキングの残高と、月次資料の預金の残高を比べる
増減が大きい科目の確認毎月前月・前年同月と比べて大きく動いた科目の理由を、受託側に尋ねる
一部の仕訳の抜き取り確認四半期ごと無作為に選んだ仕訳を、元の証憑と照らして確認する
支払の承認と実行の分離常時受託側が作った支払データを、自社の承認者が確認してから振込む
システムの権限の見直し半年ごと受託側の担当者の閲覧・編集権限が、業務に合っているかを見直す

従業員の給与情報など個人データを受託側に渡す場合は、個人情報保護法25条が、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています(e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」、2026年10月22日確認)。契約書で、取扱いの範囲、再委託の可否、事故時の連絡を決めておきます。

本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。会社の規模や上場の有無で求められる水準は変わるため、個別の判断は、顧問の税理士・公認会計士・弁護士に相談してください。

証憑と請求書の受け渡しと保存|渡し方を1つにして、保存の義務を確認する

証憑の受け渡しとは、請求書や領収書を委託先へ渡す方法と、保存する場所を1つに決めることです。保存の義務は、委託しても会社に残ります。

帳簿や取引の書類は、法令で保存が決まっています。青色申告法人は、帳簿と、取引に関して受け取った請求書・領収書などの書類を、起算日から7年間保存します(法人税法施行規則59条、e-Gov法令検索「法人税法施行規則」、2026年10月22日確認)。会社法も、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を、会計帳簿の閉鎖の時から10年間保存するよう定めています(会社法432条2項)。電子メールなどで受け取った請求書のような電子取引は、電子データのまま保存する義務があります(電子帳簿保存法7条、e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」、2026年10月22日確認)。

委託先に証憑を渡すときは、保管先が受託側だけにならないよう、次の3点をSLAや契約で決めておきます。

  1. 原本の所在:紙の証憑は返却するのか、受託側が保管するのか。電子データはどこに保存するのか
  2. 検索できる状態:税務調査などで求められたときに、自社が取り出せる形で保存されているか
  3. 委託終了時の扱い:契約が終わったときの返却と、データの移行の方法

請求書の受け取り口をそろえる場合の一例が、Sansan株式会社が提供するBill One請求書受領です。商品ページによると、さまざまな方法・形式で届いていた請求書をオンラインで受け取り、クラウド上で一元管理できるとされています。取引先は請求書の送付先を変えるだけで従来どおり送ればよく、請求書の処理ステータスをリアルタイムで確認できると紹介されています。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が紹介され、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子帳簿ソフト法的要件認証を受けているとされています。注意点として、価格を確認するには問い合わせが必要です。委託先が請求書を受け取る契約になっている場合の役割分担は、資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

Sansan株式会社

Bill One請求書受領

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月次決算が加速!社内全体の請求書業務を加速させたい企業におすすめ

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評判・口コミを紹介

Bill Oneであれば紙の請求書でもオンラインで受領・データ化することが可能なため、それらの作業を行うことなく、請求書をオンラインで簡単に確認できるようになり、業務時間を3000時間程度削減できました。また、テレワークの前に請求書をスキャンするための残業がなくなり、経理担当者1人あたりのテレワーク実施時間が月44時間から月84時間へと増加しました。

ニュース(株式会社ボディワークホールディングス)|Sansan株式会社
GOOD

おすすめ!

  • あらゆる請求書をオンラインで受け取れて、クラウド上で一元管理できる
  • 申請や承認などのさまざまな請求書業務をデジタル上で完結でき、生産性が向上する
  • インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正に都度対応し、請求書業務の負担を軽減できる
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気になる…

  • 価格を確認するには問い合わせが必要
評価・口コミ(一部抜粋)
5
  • 支払請求書の管理漏れを防げるようになりました。紙で届いた請求書もスキャンして取り込めるうえ、電子帳簿保存法に対応しているため、紙の保管・管理の手間が大幅に削減。業務効率が格段に向上しました。さらに、300件/月まではずっと無料で利用できる点もコストめんで大変ありがたく、導入しやすかったです。

導入事例として、株式会社コメリは、月次決算の早期化と月約600時間の業務削減を実現したと、Bill One請求書受領の公式サイトの導入事例一覧で紹介されています。経理を外部へ委託した事例ではなく、請求書の受領と処理の事例です。

「Bill One導入で実現した月次決算の早期化と月約600時間の業務削減」

株式会社コメリ導入事例の見出し。出典:Bill One請求書受領「導入事例」、2026年10月22日確認
Bill One請求書受領

請求書や証憑の受け渡しが担当者ごとにばらばらで、保管先もそろっていない会社に

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支払の承認と振込|受託側は支払データを作り、承認と実行は自社に残す

支払の運用とは、受託側が支払データを作り、自社が承認して振込む流れを分けることです。承認と振込の記録が残る形にします。

支払は、遅れても誤っても取引先に影響が出る作業です。受託側に支払データの作成までを任せる場合も、承認と実行は自社に残すと、確認の流れが明確になります。KPIの「支払の期限遅れ・誤り件数」は、この流れのどこで止まったかを後から追えると、原因を特定しやすくなります。次の3点を決めておきます。

  1. 承認者と代行者:誰が承認し、不在のときは誰が代わるか
  2. 承認の期限:支払期日の何営業日前までに承認するか
  3. 差戻しの記録:差戻しの理由と、再申請の履歴を残す場所

承認の記録を残しながら支払を進める場合の一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド債務支払です。商品ページによると、承認経路を自社に合わせて細かく設定でき、申請一覧でステータス(下書き・取消し・差戻しなど)を確認できます。AI-OCRで請求書の内容を読み取り、適格請求書の判定もでき、銀行振込APIと連携してワンクリックで振込めると紹介されています。注意点として、開封や受領・保管の代行はオプションです。委託先が支払データを作る運用に合うかは、資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド債務支払

マネーフォワード クラウド債務支払

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振込み対応!請求業務をオンラインで完結したい方におすすめ

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AI OCR機能や承認フローの効率化により、請求書の電子保存や自動入力で請求書管理を効率化するなら、マネーフォワード クラウド債務支払の導入がおすすめです。

評判・口コミを紹介

導入後の最大のメリットは、やはりペーパーレス化により紙にまつわる作業や手間がすべてなくなったことです。経費や支払の問い合わせの際に毎回紙を探す手間、ファイリングする手間、会計監査や税務調査の際に紙の資料を収集する手間がなくなりました。

経費の導入事例(マックス株式会社)|株式会社マネーフォワード
GOOD

おすすめ!

  • 銀行振込APIと連携しているため、ワンクリックで振込みができる
  • AI-OCRにより、適格請求書の判定業務を効率化
  • ワークフローは自社にあわせて柔軟に申請経路の設定が可能
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気になる…

  • 開封や受領・保管の代行はオプションとなる

導入事例として、宇都宮ヤクルト販売株式会社は、マネーフォワード クラウド債務支払の導入で、書類回覧の廃止と明細入力作業の短縮に成功したと、マネーフォワードの導入事例で紹介されています。経理を外部へ委託した事例ではなく、自社で支払業務を見直した事例です。

「書類回覧の廃止と明細入力作業の43%短縮に成功」

宇都宮ヤクルト販売株式会社「マネーフォワード クラウド債務支払」導入事例の見出しの一部。出典:マネーフォワード「宇都宮ヤクルト販売株式会社」導入事例、2026年10月22日確認

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支払の承認が、紙の回覧やメールで止まっていませんか?

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委託後に起きやすい失敗の原因と運用での防ぎ方|「やめとけ」と言われる理由

経理アウトソーシングが「やめとけ」と言われるのは、任せたあとの確認が決まっていないと、遅れや差戻しが見えないまま積み上がるためです。運用の決め方で、多くは防げます。

任せたあとの運用で起きやすいことと、防ぎ方を、これまでの4つの決め事に対応させて整理します。

起きること原因になりやすいこと運用での防ぎ方
月次の数字が遅れ、経営判断が遅れる証憑の渡しが遅れる、提出日が口頭の約束になっている提出日と渡す期限をSLAに書き、KPIで提出日と渡し遅れを数える
質問が滞り、作業が止まる窓口が複数ある、回答の期限がない窓口を1つにし、回答までの目安を決める
業務の流れが自社に合わない勘定科目や処理のルールが共有されていないルールを文書で渡し、差戻しの理由を記録して見直す
費用に見合う効果が分からない委託前後の自社の作業時間を測っていない委託前の自社の作業時間を測り、委託後と比べる(数字は自社で測る)
自社に経理の知識が残らない受託側に任せきりで、処理の理由を聞いていない月次報告で処理の理由を説明してもらい、ルールを文書で持つ
書類やデータの所在が分からない保管先が受託側だけで、返却の定めがない保管先と委託終了時の返却を、契約で決める

デメリットとして挙げられやすいのは、自社に経理の知識が残りにくいこと、委託先とのやりとりに手間がかかること、社外に情報を渡すことの管理が必要になることです。一方で、決まった作業を安定して回せること、担当者の欠員や異動の影響を受けにくいことは、メリットとして挙げられます。どちらが大きいかは、自社の経理の件数と、確認に割ける人員で変わります。向いているかを判断するときは、費用だけでなく、運用の確認に割く手間を含めて考えてください。

費用の見方は経理代行サービスおすすめ15選を徹底比較の選び方の節、依頼先の違いは経理の外注|任せる業務・残す業務の切り分けと依頼先の選び方、業務全体の外部委託の種類は業務アウトソーシングとは?主な形態やメリット・デメリットを解説も参考にしてください。

委託の運用の見直し方|半年ごとの振り返りと、ツール併用の判断

運用の見直しとは、KPIの推移とSLAの達成状況を、決まった時期に受託側と振り返ることです。半年から1年に1回の棚卸しが目安です。

見直しでは、次の3つを確認します。

  1. KPIの推移:差戻しや提出日の数字が、3か月以上の単位で改善しているか
  2. 自社の確認作業:委託前と比べて、自社の確認や質問対応の時間が増えていないか
  3. 範囲の見直し:任せる範囲を広げるか、狭めるか。一部を自社のツールで行う方が合う作業はないか

受け渡しや確認に手間がかかる作業は、受託側に任せる作業を増やすよりも、ツールで見える化したほうが合う場合があります。帳簿の確認はマネーフォワード クラウド会計、証憑や請求書の受け取りはBill One請求書受領、支払の承認と振込はマネーフォワード クラウド債務支払と、役割が違う選択肢があります。委託する範囲と、自社に残してツールで支える範囲を分けて考えると、運用の見通しが立てやすくなります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 経理アウトソーシングはやめとけと言われるのはなぜですか?

A. 任せたあとの確認が決まっていないと、月次の遅れ、質問の停滞、自社に知識が残らないといったことが起きやすいためです。役割分担、KPI、SLA、月次の受け渡しを決めておけば、多くは防げます。経理の件数が少なく自社で足りる場合や、業務の流れが頻繁に変わる場合は、委託以外の選択肢も比べてください。

Q2. 経理業務のアウトソーシングの相場はいくらですか?

A. 相場は、業務の範囲、月の証憑や仕訳の件数、対応の水準(SLA)で変わり、1つの数字では決まりません。見積りを比べるときは、含まれる業務と、別料金になる項目をそろえてください。運用の水準を先に決めて見積りを依頼すると、比較しやすくなります。選び方の節は経理代行サービスおすすめ15選を徹底比較で説明しています。

Q3. 経理業務のアウトソーシングのデメリットは何ですか?

A. 自社に経理の知識が残りにくいこと、委託先とのやりとりに手間がかかること、社外へ情報を渡す管理が必要になることが挙げられます。これらは、処理の理由を月次報告で説明してもらうこと、質問の窓口を1つにすること、個人データの取扱いを契約で決めることで、抑えられます。

Q4. 経理アウトソーシングの大手に任せれば安心ですか?

A. 会社の規模だけでは、運用の安心は決まりません。担当者と窓口、自社の業務量に合った対応水準、データの保管と返却の定めを確認してください。内部統制報告制度の対象の会社は、受託会社の内部統制の報告書を入手できるかも、確認の対象です。

Q5. KPIとSLAの違いは何ですか?

A. KPIは、自社が毎月見る数字で、遅れや差戻しを数えて運用の状態を確かめるものです。SLAは、受託側と合意する水準で、期限・品質・問い合わせ対応などを契約や別紙に書いたものです。KPIで水準を下回ったときの対応まで、SLAに決めておきます。

Q6. 経理を委託したあとも、自社に残る仕事は何ですか?

A. 証憑を期限までに渡すこと、月次資料の数字の確認、支払の承認、帳簿や書類の保存、決算の承認が残ります。任せる業務と残す業務の切り分けは、経理の外注|任せる業務・残す業務の切り分けと依頼先の選び方で説明しています。

まとめ|経理業務のアウトソーシング後の運用で押さえたい6つのこと

任せたあとの運用は、次の6点で整理できます。自社の状況に合わせて、1つずつ確認してください。

  1. 責任は会社に残る:帳簿や計算書類を作る義務は、委託しても変わりません。
  2. 役割分担を書き出す:作業は受託側、確認と承認は自社と分けます。
  3. KPIは3から4つに絞る:提出日、渡し遅れ、差戻し、支払の誤りなどを毎月数えます。
  4. SLAに自社側の約束も書く:期限、品質、問い合わせ、是正の手順を合意します。
  5. 内部統制は件数と残高の突き合わせから:金融庁の実施基準の考え方を、自社の規模に合わせて使います。
  6. 帳簿の確認・証憑の受け渡し・支払の承認を見直す資料を取り寄せる:帳簿の確認ならマネーフォワード クラウド会計、請求書の受け取りならBill One請求書受領、承認と振込ならマネーフォワード クラウド債務支払と、役割が違う選択肢があります。

本記事は一般的な情報の整理であり、会計・税務・法律上の助言ではありません。個別の判断は、顧問税理士・公認会計士・弁護士などの専門家に相談してください。法令・金融庁の資料と各社の商品ページは、2026年10月22日確認の内容に基づきます。

参考文献

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