SaaSの会計処理は費用が原則|初期費用の資産計上と収益認識の考え方

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  • SaaSの利用料は利用期間の費用が原則
  • 初期費用は費用が出発点で資産性を検討
  • 提供側は収益獲得が確実なら資産計上

SaaSの会計処理は、SaaSを使う側(ユーザー)と、SaaSを提供する側(ベンダー)で考え方が違います。使う側は、月額・年額の利用料をサービスの対価として、利用した期間の費用にするのが基本で、購入したソフトウェアのように資産計上はしません。提供する側は、サービスに使う自社開発のソフトウェアを資産計上できるか、売上をいつ計上するかが中心の論点です。この記事では、日本公認会計士協会の研究資料第7号、企業会計基準委員会(ASBJ)の実務指針と収益認識基準、国税庁の通達を確認し、利用料・初期設定費用・カスタマイズ費用の扱い、年額一括払いの仕訳例、提供側の資産計上と収益認識、税務との違いを、2026年10月23日時点の情報で整理します。

SaaSの経理でつまずく場面を、2問で診断

Q1. SaaSまわりの経理で、いま一番手間がかかっているのは?

目次

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  1. SaaSの会計処理は費用が原則|利用側と提供側で論点が違う
  2. 利用する側の会計処理|月額・年額の利用料は費用で、導入費用は中身で分ける
  3. 初期設定・カスタマイズ費用は資産にできるか|判断の順番
  4. 年額一括払いの仕訳例|前払費用で按分する場合と、支払時に費用にする場合
  5. 税務上の扱い|前払費用・ソフトウェアの取得価額・繰延資産との関係
  6. 提供する側(SaaS事業者)の会計処理|自社利用ソフトウェアの資産計上と収益認識
  7. SaaSの請求書と支払を、会計処理につなげる流れ|受領から仕訳・支払まで
  8. SaaSの会計処理で見直したいこと|確認の順番とセルフチェック
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|SaaSの会計処理で押さえたい6つのこと
  11. 参考文献

SaaSの会計処理は費用が原則|利用側と提供側で論点が違う

SaaSの会計処理とは、SaaSの利用料や開発したソフトウェア、売上を、会計基準に沿って記録することです。利用する側は費用が原則で、提供する側は資産計上と収益認識が主な論点です。

SaaS(Software as a Service)は、アプリケーションプログラムが持つ機能をネットワーク経由で提供するサービスです(総務省 平成30年版 情報通信白書)。使う側から見ると、ソフトウェアを買うのではなく、機能を使う権利に対して払うため、購入したソフトウェアとは会計処理が分かれます。日本公認会計士協会の会計制度委員会研究資料第7号(2022年6月30日公表)は、クラウドサービスのベンダー側とユーザー側の会計処理を整理していますが、規範性のある基準ではなく、現時点での一つの考え方とされています(EY Japan 情報センサー2023年新年号)。

論点利用する側(ユーザー)提供する側(ベンダー)
月額・年額の料金サービスの対価として、利用した期間の費用にするサービスを提供する期間にわたって売上にする(企業会計基準第29号)
導入時の初期設定・開発の費用支払時の費用が出発点。資産性が認められる場合に長期前払費用などを検討するサービスに使う自社開発のソフトウェアは、収益獲得が確実と認められた時点から無形固定資産に計上する
資産計上した後の費用化原則として契約期間で費用にする定額法が一般的で、5年以内が原則(実務指針21項)
主な根拠研究資料第7号(参考)、実務指針14項・16項、法人税基本通達実務指針11項・21項、企業会計基準第29号、法人税の取扱い

SaaSの数が増えるほど、利用料や初期費用の仕訳、年額の按分、請求書の確認と支払の作業が増えます。仕訳と決算、請求書の受領、承認と振込の3つに分けて考えると、手間のかかる作業を支えるサービスの役割が整理しやすくなります。優劣ではなく、どの作業に手間がかかっているかで選び方が変わります。

SaaSの会計処理を支える3サービスの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

自社の状況:

この状況に合う一例:マネーフォワード クラウド会計は、SaaSの利用料や導入費用の仕訳を、取引明細の自動取得から決算書づくりまで進めたい場合の一例です。

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この状況に合う一例:Bill One請求書受領は、SaaSのベンダーから届く請求書をオンラインで受け取り、一元管理したい場合の一例です。

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サービス マネーフォワード クラウド会計 Bill One請求書受領 マネーフォワード クラウド債務支払
向いている会社 SaaSの利用料や導入費用の仕訳から決算書づくりまでを、一つのソフトで進めたい会社 SaaSのベンダーなど取引先の請求書を、受領の入口でそろえて保管したい会社 請求書の取込から承認、銀行振込までを、記録を残して進めたい会社
特徴 2,400社以上の金融機関と連携して取引明細を取り込み、AIが勘定科目の候補を提案。仕訳データから決算書や各種の帳票を自動で作成できる 請求書をオンラインで受け取り、クラウド上で一元管理。申請や承認などの請求書業務をデジタル上で進められ、インボイス制度や電子帳簿保存法などの改正に対応するとされている 請求書のAI-OCR取込で適格請求書の判定業務を効率化し、承認ワークフローと銀行振込APIによる振込に対応
注意したい点 ある程度の簿記知識が必要な場合もある。初期費用を資産にするかの判断は自社で行い、前払の按分に対応する機能は資料で確認する 価格を確認するには問い合わせが必要。仕訳や会計ソフトとの連携の範囲は、資料で確認する 開封や受領・保管の代行はオプション。年額の前払の按分などの会計処理は、会計ソフト側の機能を確認する
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SaaSの利用料や初期費用の仕訳を、取引明細の取り込みから決算書づくりまで日々の作業として進める場合の一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関と連携して取引明細を取得でき、AIが一度登録した仕訳を学習して勘定科目を提案します。仕訳データから決算書やキャッシュフローレポートなどの帳票が自動で生成されると紹介されています。注意点として、ある程度の簿記知識が必要な場合もあります。年額の前払を月ごとに按分する機能は商品ページに記載がないため、資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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4.2
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実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】

数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。

導入事例として、株式会社HITOMIOテクノロジーズは、導入前は月に6000件ほど発生する仕訳を月初に通帳や紙の明細を見ながら入力していたと紹介されています。導入したのはマネーフォワード クラウド会計を含む複数のサービスで、SaaSの会計処理に限った事例ではなく、効果は会計だけによるものとは限りません。

「月次決算が6営業日で対応できるようになった」

株式会社HITOMIOテクノロジーズ導入事例の結果の項目(マネーフォワード公式サイト、2021年8月31日公開。公開当時の情報)。出典:マネーフォワード「株式会社HITOMIOテクノロジーズ」導入事例、2026年10月23日確認

利用する側の会計処理|月額・年額の利用料は費用で、導入費用は中身で分ける

SaaSを利用する側の会計処理は、月額・年額の利用料を、サービスの対価として利用した期間の費用にするのが原則です。ソフトウェアの購入代金のような資産計上は、通常しません。

理由は、SaaSの支出が「ソフトウェアの購入」ではなく「サービスの利用料」だからです。TKCの解説は、SaaSを「利用権の購入」にあたるもので、会計上は「サービスの利用料」になると説明しています(TKC 第4回 ソフトウェアの導入費用の取扱い)。研究資料第7号を解説した有限責任監査法人トーマツの会計情報2022年11月号も、サービス利用料はユーザーがソフトウェアを購入するための支出ではないため、発生に応じて費用処理することになると考えられると整理しています。

購入したソフトウェアなら、導入に必要な設定作業や、自社の仕様に合わせるための付随的な修正作業の費用は、取得価額に含めます(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針14項)。SaaSはソフトウェアを自社が持たないため、この規定に従って資産計上することは難しいとされています(EY Japanの解説)。支払の内容ごとの扱いは、次のとおりです。

費用の種類会計上の扱い根拠と注意
月額・年額の利用料利用した期間の費用研究資料第7号は、サービス利用料を発生に応じた費用処理と整理しています。勘定科目は法令で決まっておらず、TKCは支払手数料や通信費を例に挙げています
初期設定費用(ライセンス料・ユーザーアカウントの設定など)支払時の費用が出発点日本基準に明示の定めはありません。資産性が認められる場合に限り、資産計上を検討します(次の章)
カスタマイズ費用支払時の費用が出発点自社のソフトウェアとして計上するのは難しいとされています。ただし、自社システムと連携するプログラムを自社で開発して使い続けるときは、ソフトウェアとして資産計上することもあります(TKC)
初期データ移行・導入コンサル・操作トレーニング支出時の費用TKCは初期費用に分類し、支出時の費用処理が原則としています。購入ソフトウェアでも、データ変換と研修の費用は発生した年度の費用です(実務指針16項)
リース取引への該当通常は該当しないと考えられるベンダーが不特定多数のユーザーに提供するため、ユーザーにとっての「特定の物件」にならないケースが多いと考えられています(研究資料第7号)

利用料の内訳や、更新・解約の条件は、契約書で確認します。確認の観点は、SaaS契約とは?利用規約・SLA・解約条項の確認ポイントと契約前チェックリストにまとめています。

初期設定・カスタマイズ費用は資産にできるか|判断の順番

SaaSの初期設定やカスタマイズの費用は、日本基準に明示の定めがなく、支払時の費用が出発点です。資産性が認められる場合に限り、長期前払費用などでの計上を検討します。

EY Japanの解説によると、研究資料第7号は、初期設定費用等が月次の支払に含まれて支払われるケースでは、適切に区分したうえで各々の会計処理を検討するとしています。そのうえで、現行の会計基準の明示的な定めによれば、ソフトウェアとして取得価額に含めて資産計上することは難しく、支払時に費用処理することになるのではないかとしています。一方で、ASBJの討議資料「財務会計の概念フレームワーク」は、資産を「過去の取引又は事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源」としており、この定義に当てはめると、初期設定費用等が資産性の要件を満たすケースがあるのではないかと分析しています。

実務で迷わないために、次の順番で確認します。

  1. 契約書と請求書で、利用料と、初期設定・カスタマイズ・データ移行・研修の支払を区分する(月額に含まれているときも、区分したうえで検討する)
  2. 何に対する支出かを分ける(SaaSの標準機能の設定、自社向けの設定変更、自社で作るプログラム、データ移行や研修)
  3. データ移行・導入コンサル・研修は、支出時に費用にする(TKCの整理。購入ソフトウェアでも発生した年度の費用)
  4. 自社で作って使い続けるプログラムは、自社利用ソフトウェアの要件で判断する(実務指針11項。将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められれば無形固定資産、確実と認められない場合や不明な場合は費用)
  5. SaaS側の設定やカスタマイズは、資産性(経済的資源を支配しているか)を検討する。満たすときは長期前払費用などで計上し、満たさないときは費用にする
  6. 資産にしたときは、原則として契約期間で費用にする。契約の更新が見込まれるときに、更新も見越して期間を決めるかは、実態を見て検討する(トーマツの解説)

トーマツの解説は、実務上は長期前払費用として計上しているケースがあると考えられる一方で、企業間で処理が異なることがないよう資産性の要件を明確にする必要があるとしています。研究資料は実務を拘束するものではないため、費用にするか資産にするかは、監査法人や顧問税理士と方針を決めて、継続して適用してください。

参考として、国際会計基準(IFRS)では、IFRS解釈指針委員会が2019年3月にアプリケーションの利用料を、リースや無形資産の範囲に含まれないサービス契約と結論づけました。初期設定費用等(コンフィギュレーションとカスタマイゼーションのコスト)は、2020年12月と2021年3月に検討され、会計基準の改正は行われず、サービス提供に先立って支払う場合は前払額を資産として認識する考え方が示されています(EY Japanの解説)。日本基準とは別の基準です。

年額一括払いの仕訳例|前払費用で按分する場合と、支払時に費用にする場合

年額一括払いのSaaS利用料は、会計上は、まだ提供を受けていない期間に対応する分を前払費用にして、月ごとに費用へ振り替えるのが原則です。税務では、一定の条件で支払時の損金にできる取扱いもあります。

前払費用とは、一定の契約に基づいて継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、決算日までにまだ提供を受けていない役務に対応するものです(法人税法施行令14条2項)。次の例は、3月決算の会社が、10月1日に1年分(10月から翌年9月まで)の利用料120,000円を普通預金から払った場合です。説明のための例で、消費税は考えず、実際の科目や処理は会社の方針に従います。

場面借方貸方ひとこと
10月1日に年額を支払う(前払費用で処理)前払費用 120,000円普通預金 120,000円まだ提供を受けていない12か月分を、いったん資産に置く
10月から3月の月末ごと(6回)支払手数料 10,000円前払費用 10,000円毎月、1か月分を費用へ振り替える。科目は会社の方針で決める
3月31日の決算(仕訳なし)(仕訳なし)当期の費用は60,000円(6か月分)で、貸借対照表の前払費用の残高は60,000円(翌期の4月から9月の6か月分)

税務では、前払費用の額は、原則として当期の損金になりません。ただし、法人税基本通達2-2-14は、支払った日から1年以内に提供を受ける役務の分を、継続して支払った日の属する事業年度の損金にしているときは、これを認めるとしています。借入金の利息を預金や有価証券に運用する場合のように、収益の計上と対応させる必要があるものは、この取扱いの対象外です(法人税基本通達2-2-14とその注)。

場面借方貸方ひとこと
10月1日に年額を支払い、支払時に費用にする支払手数料 120,000円普通預金 120,000円通達2-2-14の要件(1年以内・継続適用)を満たすとき。会計上の処理との関係は、顧問税理士や監査法人に確認する

初期設定費用に資産性が認められ、長期前払費用として計上する場合の例も示します。初期設定費用360,000円を払い、契約期間が3年(36か月)なら、次のようになります。説明のための例で、実際の償却期間は契約内容を見て決めます。

場面借方貸方ひとこと
支払時長期前払費用 360,000円普通預金 360,000円資産性が認められる場合に限る
契約期間の毎月末(36回)支払手数料 10,000円長期前払費用 10,000円契約期間で均等に費用にする例。更新が見込まれるときの期間は、実態を見て検討する

税務上の扱い|前払費用・ソフトウェアの取得価額・繰延資産との関係

SaaSの利用料は、税務でも、提供を受けた役務に対応する期間の費用になるのが基本です。ソフトウェアの取得価額や繰延資産のルールは、契約の中身で適用を判断します。

国税庁のタックスアンサーNo.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数は、購入または自社で製作したソフトウエアの取得価額と耐用年数を定めています。購入の場合は、導入に必要な設定作業や自社の仕様に合わせる付随的な修正作業の費用を、取得価額に算入します。耐用年数は、複写して販売するための原本や研究開発用のものが3年、その他のものが5年です。同ページには、SaaSの利用料そのものを対象にした記載はありません。購入したインストール型ソフトウェアの償却や少額の特例は、ソフトウェアは固定資産として減価償却できる?計上基準や方法を解説で解説しています。

繰延資産については、法人税法施行令14条1項6号が、支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶもののうち、「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」や「自己が便益を受けるために支出する費用」などを挙げています(e-Gov法令検索)。前払費用は繰延資産から除かれます。SaaSの初期費用がこれらに当たるかは、契約の内容で判断するため、顧問税理士に確認してください。

項目会計(日本基準)税務(法人税)
年額の前払未提供の期間に対応する分を前払費用にして、月ごとに費用へ前払費用は原則として当期の損金にならない。1年以内に提供を受ける分を継続して支払時に損金にしているときは認められる(通達2-2-14)
初期設定・カスタマイズ費用費用が出発点。資産性が認められれば長期前払費用などを検討前払費用か、繰延資産(令14条1項6号)か、その他かを、契約の内容で個別に判断する
自社で作ったソフトウェア将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められれば資産計上取得価額に算入し、耐用年数は原則5年。研究開発費のうち、自社利用ソフトウェアの利用による収益獲得や費用削減にならないことが明らかなものは算入しないことができる(No.5461)

会計と税務で取扱いが異なる部分は、税務調整の対象になることがあります(史彩監査法人のSaaSのソフトウェア資産計上とは?会計処理の要件と留意点)。本記事は一般的な情報の整理であり、会計・税務上の助言ではありません。

提供する側(SaaS事業者)の会計処理|自社利用ソフトウェアの資産計上と収益認識

SaaSを提供する側は、サービスに使う自社開発のソフトウェアを、収益獲得が確実になった時点から資産計上できます。売上は、サービスを提供する期間にわたって計上します。

自社開発のソフトウェアは、自社利用ソフトウェアとして資産計上を検討する

SaaSのソフトウェアは、現行の実務では自社利用目的として処理されるのが一般的です。製品マスター(複写可能な完成品)を作って複写して販売する市場販売目的とは異なり、契約に基づいて情報処理サービスを提供して対価を得る、自社利用ソフトウェアの例に近いためです(史彩監査法人の解説)。

  • 研究開発費は、すべて発生時に費用にします(実務指針3項)。
  • 自社利用ソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められれば無形固定資産に計上し、確実と認められない場合や不明な場合は費用にします。通信ソフトウェアや第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェアを使って、契約に基づいて情報等の提供を行い、対価を得る場合が、資産計上される一般的な例の1つです(実務指針11項)。
  • 償却は、利用の実態に応じて最も合理的な方法を選びますが、一般的には定額法です。耐用年数は利用可能期間によるべきで、原則として5年以内とし、5年を超えるときは合理的な根拠が必要です(実務指針21項)。
  • 資産計上の後は、減損の検討も必要です。機能の改良・強化の費用は資産計上し、著しい改良は研究開発に準じて費用に、バグ取りなどの軽微な支出は発生時の費用にします(史彩監査法人の解説)。

「収益獲得が確実」を示すのは簡単ではありません。史彩監査法人の解説は、研究資料に、新規サービスでは将来の収益獲得が確実であることの立証が難しく、開発単位の収支管理もされていないため、そもそもソフトウェアとして資産計上されていない事例も多いと報告されていると紹介しています。資産計上するなら、いつから確実と判断したかを、証拠とともに残す必要があります。ARRやチャーン率などの指標は、SaaS会社とは?領域別の主な会社と、ARR・チャーン率・NRRの読み方で解説しています。

売上は、サービスを提供する期間にわたって計上する

売上は、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の5つのステップで考えます。顧客との契約を識別し、契約における履行義務を識別し、取引価格を算定し、履行義務に取引価格を配分し、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識します(第17項)。企業が契約における義務を履行するにつれて顧客が便益を享受する場合は、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識します(第38項(1))。月額や年額で、継続してSaaSを使える契約は、この考え方で、提供期間にわたって売上にします(企業会計基準第29号)。

例として、3月決算のSaaS事業者が、10月1日に顧客から1年分の年額120,000円を前受けした場合です(説明のための例。消費税は考えません)。

場面借方貸方ひとこと
10月1日に年額を受け取る普通預金 120,000円前受収益(契約負債) 120,000円まだ提供していない12か月分は、売上にせず負債に置く
10月から3月の月末ごと(6回)前受収益(契約負債) 10,000円売上 10,000円提供した1か月分を売上へ振り替える
3月31日の決算(仕訳なし)(仕訳なし)当期の売上は60,000円(6か月分)で、前受収益(契約負債)の残高は60,000円

初期設定費用を別に受け取るときは、初期設定がSaaSの利用とは別個のサービスかを、第34項の2つの要件(単独で顧客が便益を享受できること、他の約束と区分して識別できること)で判断します。科目名は会社の方針で決めます。個別の取引は、監査法人や顧問税理士に確認してください。

SaaSの請求書と支払を、会計処理につなげる流れ|受領から仕訳・支払まで

SaaSの会計処理は、ベンダーの請求書で利用期間と金額を確認し、仕訳や按分、支払につなげる流れです。請求書がばらばらに届くと、前払の按分や費用の漏れが起こりやすくなります。

利用する側が、請求書の受領時に確認しておくと、決算が楽になる項目は次のとおりです。

  • 利用期間の開始日と終了日(前払の按分に使います)
  • 請求の内訳(月額・年額の利用料と、初期設定・カスタマイズ・データ移行・研修の区分)
  • 更新日と自動更新の有無(長期前払費用の期間や、費用の見通しに関わります)
  • 消費税額と登録番号(仕入税額控除の確認に使います)
  • 支払期日と支払方法

どのSaaSをいくら使っているかを支払の記録から洗い出す方法は、SaaS値上げへの対応は?契約更新前に確認すべき条項と費用項目で解説しています。会計ソフトそのものをSaaSにする場合の考え方は、経理SaaSとは?従来型ソフトとの違いと選び方|連結会計・経理BPOとの使い分けも解説も参考になります。

SaaSのベンダーから、メールやPDFなどさまざまな形式で担当者ごとに請求書が届く場合の一例が、Sansan株式会社が提供するBill One請求書受領です。商品ページによると、あらゆる請求書をオンラインで受け取り、クラウド上で一元管理でき、申請や承認などの請求書業務をデジタル上で完結できます。インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正に都度対応し、請求書業務の負担を軽減できると紹介されています。注意点として、価格を確認するには問い合わせが必要です。SaaS利用料の按分や前払の仕訳にどこまで対応するかは商品ページに記載がないため、資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

Sansan株式会社

Bill One請求書受領

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月次決算が加速!社内全体の請求書業務を加速させたい企業におすすめ

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評判・口コミを紹介

Bill Oneであれば紙の請求書でもオンラインで受領・データ化することが可能なため、それらの作業を行うことなく、請求書をオンラインで簡単に確認できるようになり、業務時間を3000時間程度削減できました。また、テレワークの前に請求書をスキャンするための残業がなくなり、経理担当者1人あたりのテレワーク実施時間が月44時間から月84時間へと増加しました。

ニュース(株式会社ボディワークホールディングス)|Sansan株式会社
GOOD

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  • あらゆる請求書をオンラインで受け取れて、クラウド上で一元管理できる
  • 申請や承認などのさまざまな請求書業務をデジタル上で完結でき、生産性が向上する
  • インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正に都度対応し、請求書業務の負担を軽減できる
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  • 価格を確認するには問い合わせが必要
評価・口コミ(一部抜粋)
5
  • 支払請求書の管理漏れを防げるようになりました。紙で届いた請求書もスキャンして取り込めるうえ、電子帳簿保存法に対応しているため、紙の保管・管理の手間が大幅に削減。業務効率が格段に向上しました。さらに、300件/月まではずっと無料で利用できる点もコストめんで大変ありがたく、導入しやすかったです。

導入事例として、株式会社コメリは、月次決算の早期化と月約600時間の業務削減を実現したと、Bill One請求書受領の公式サイトの導入事例一覧に見出しが掲載されています。SaaSの請求書に限った事例ではなく、取引先の請求書全般の受領の事例です。

「Bill One導入で実現した月次決算の早期化と月約600時間の業務削減」

株式会社コメリ導入事例の見出し。出典:Bill One請求書受領「導入事例」、2026年10月23日確認
Bill One請求書受領

SaaSの請求書が担当者ごとにばらばらに届き、利用期間の確認や仕訳への回付に手間がかかる会社に

Bill One請求書受領の資料を無料でダウンロードできます

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導入時の初期費用のように金額が大きい支払や、毎月の利用料の支払を、請求書の取込から承認、振込まで記録を残して進める場合の一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド債務支払です。商品ページによると、銀行振込APIと連携してワンクリックで振込ができ、AI-OCRにより適格請求書の判定業務を効率化できます。ワークフローは、自社に合わせて申請経路を柔軟に設定できます。注意点として、開封や受領・保管の代行はオプションです。年額の前払の按分などの会計処理は、会計ソフト側の機能を確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社マネーフォワード

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振込み対応!請求業務をオンラインで完結したい方におすすめ

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AI OCR機能や承認フローの効率化により、請求書の電子保存や自動入力で請求書管理を効率化するなら、マネーフォワード クラウド債務支払の導入がおすすめです。

評判・口コミを紹介

導入後の最大のメリットは、やはりペーパーレス化により紙にまつわる作業や手間がすべてなくなったことです。経費や支払の問い合わせの際に毎回紙を探す手間、ファイリングする手間、会計監査や税務調査の際に紙の資料を収集する手間がなくなりました。

経費の導入事例(マックス株式会社)|株式会社マネーフォワード
GOOD

おすすめ!

  • 銀行振込APIと連携しているため、ワンクリックで振込みができる
  • AI-OCRにより、適格請求書の判定業務を効率化
  • ワークフローは自社にあわせて柔軟に申請経路の設定が可能
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気になる…

  • 開封や受領・保管の代行はオプションとなる

導入事例として、宇都宮ヤクルト販売株式会社は、導入前に毎月100件以上届く紙の請求書の処理に多くの時間を費やしていたと、マネーフォワードの導入事例に紹介されています。SaaSの請求書に限った事例ではありません。

「同社は以前まで、毎月100件以上届く紙の請求書処理に、多くの時間を費やしていました。」

宇都宮ヤクルト販売株式会社「マネーフォワード クラウド債務支払」導入事例。出典:マネーフォワード「宇都宮ヤクルト販売株式会社」導入事例、2026年10月23日確認

マネーフォワード クラウド債務支払

導入時の初期費用や毎月の利用料の請求書を、確認、承認、振込の記録を残さず別々に処理していませんか?

こんな会社に向いています

まとまった支払の承認と振込を、記録を残したまま進めたい

請求書の取込から適格請求書の判定、承認、銀行振込までを、一つの流れで管理したい

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SaaSの会計処理で見直したいこと|確認の順番とセルフチェック

SaaSの会計処理は、次の順番で確認すると、費用の漏れや処理のばらつきを防ぎやすくなります。

  1. 自社はSaaSを使う側か、提供する側か(両方の場合は、取引ごとに分ける)
  2. 契約書と請求書で、利用料と、初期設定・カスタマイズ・データ移行・研修の支払を区分できているか
  3. 年額や複数年の前払を、前払費用として按分しているか。または、通達2-2-14の要件を確認して、継続して支払時の費用にしているか
  4. 初期設定・カスタマイズの費用を、費用にするか資産にするかの方針を、監査法人や顧問税理士と決めて、継続しているか
  5. (提供側)自社開発のソフトウェアを資産計上し始めた時点と、収益獲得が確実と判断した根拠を、記録しているか
  6. (提供側)年額の前受けを、前受収益(契約負債)から月ごとに売上へ振り替えているか

SaaSの会計処理、どれが当てはまる?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

SaaSの数が増え、前払の按分、初期費用の判断、請求書の確認を毎回手でやっているなら、仕訳と決算書づくりを会計ソフトで、請求書の受領を請求書受領サービスで、承認から振込を債務支払のサービスで分けて見直す方法があります。どれが合うかは、手間がかかっている作業で決まります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. SaaS会計とは何ですか?

A. 「SaaS会計」は、一般にSaaSを提供する事業者の会計を指して使われます。財務データの記録と分析、サブスクリプションの収益認識、継続収益の指標管理などが中心です(Stripeの解説)。一方で、SaaSを使う会社の利用料の処理を指す場合や、会計ソフトをSaaSで使うことを指す場合もあります。この記事では、利用する側と提供する側の両方の会計処理を扱いました。

Q2. SaaSはソフトウェアですか?

A. SaaSは、アプリケーションプログラムが持つ機能をネットワーク経由で提供するサービスです(総務省 平成30年版 情報通信白書)。提供側のベンダーはサービスに使うソフトウェアを持ちますが、利用側が払う利用料はソフトウェアの購入代金ではなくサービスの対価です。そのため利用側は、通常、ソフトウェアとして資産計上しません(研究資料第7号の整理)。

Q3. サブスクの会計処理はどうすればいいですか?

A. 利用する側は、利用した期間の費用にします。年額や半年分をまとめて払った場合は、未提供の期間に対応する分を前払費用にして、月ごとに費用へ振り替えるのが原則です。提供する側は、サービスを提供する期間にわたって売上を計上し、先に受け取った分は前受収益(契約負債)として、月ごとに売上へ振り替えます。

Q4. SaaSの初期費用は資産計上できますか?

A. 日本基準に明示の定めがなく、支払時の費用が出発点です。研究資料第7号は、初期設定費用やカスタマイズ費用に資産性が認められる場合があるとの考え方を示しており、その場合は長期前払費用などで計上し、原則として契約期間で費用にします。ただし規範性のある基準ではないため、監査法人や顧問税理士と方針を決め、継続して適用してください。

Q5. SaaSの利用料の勘定科目は何を使いますか?

A. 法令で決まった科目はなく、会社の方針で決めて継続して使います。TKCの解説は、初期設定費用や導入支援料の例として、支払手数料や通信費などの科目を挙げています。同じ種類のSaaSで科目がばらつくと、決算時に費用を集計しにくくなります。科目の一覧を決めて、請求書の受領時から同じ科目で処理できるようにしておくと、確認が楽になります。

Q6. SaaSの利用料は税務上も費用にできますか?

A. 役務の提供を受けた期間に対応する分が、当期の費用になるのが基本です。法人税基本通達2-2-14は、前払費用は当期の損金にならないとしたうえで、支払日から1年以内に提供を受ける役務の分を、継続して支払時の損金にしているときは認めるとしています。収益と対応させる必要があるものは対象外です。繰延資産に当たるかなどの個別の判断は、税理士に確認してください。

まとめ|SaaSの会計処理で押さえたい6つのこと

SaaSの会計処理は、使う側か提供する側かで、論点が分かれます。次の6点を、自社の立場に合わせて確認してください。

  1. 使う側と提供する側で論点が違う:使う側は費用が原則、提供する側は資産計上と収益認識が中心です。
  2. 利用料は利用した期間の費用:SaaSはソフトウェアの購入ではなく、サービスの利用料です。
  3. 初期設定・カスタマイズ費用は費用が出発点:資産性が認められる場合に限り、長期前払費用などで計上し、契約期間で費用にします。
  4. 年額一括払いは、前払費用で按分する:税務では、通達2-2-14の要件を満たせば支払時の損金にできる場合があります。
  5. 提供側は、収益獲得が確実になった時点から資産計上し、売上は期間にわたって計上する:自社利用ソフトウェアは5年以内の定額法が原則です。
  6. 請求書と契約書の区分、仕訳、支払を見直す資料を取り寄せる:仕訳と決算書づくりならマネーフォワード クラウド会計、請求書の受領ならBill One請求書受領、承認から振込ならマネーフォワード クラウド債務支払と、役割が違う選択肢があります。

本記事は一般的な情報の整理であり、会計・税務・法律上の助言ではありません。研究資料第7号は実務を拘束するものではなく、個別の判断は、監査法人、顧問税理士、所轄の税務署などの専門家に相談してください。基準・通達・各社の商品ページと解説記事は、2026年10月23日確認の内容に基づきます。

参考文献

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