SaaSダッシュボードとは?3つの種類と見るべき指標・作り方

Check!

  • 3つの意味と、見る人ごとの違い
  • MRR・解約率・NRRと、未使用IDの見方
  • 作り方5ステップと、画面設計の型

SaaSダッシュボードとは、SaaSに関わる数字(売上・解約・利用状況・コスト・進捗など)を1つの画面に集め、いまの状況をひと目で確認できるようにした管理画面のことです。この言葉は、SaaSを提供する事業者が経営指標を見る画面、SaaSを使う会社が利用状況や支出を見る画面、業務用SaaSで案件の進捗や工数を見る画面、という3つの意味で使われます。本記事では、3つの違いと、それぞれで見るべき指標(MRR・解約率・NRR・未使用ライセンスなど)、作り方の5ステップ、見やすい画面の組み立て方、運用でつまずく点を、公開されている解説や公式ドキュメントで確認した内容にもとづいて整理します。内容は2026年10月23日時点です。

ダッシュボードを作る前に、いまの状況に合う進め方を診断

Q1. いま一番、ダッシュボードで見える化したいものは何ですか?

目次

開く

閉じる

  1. SaaSダッシュボードとは|3つの意味と、見る人ごとの違い
  2. SaaS事業者が見るダッシュボード|MRR・NRR・解約率の基本指標
  3. SaaSを使う会社が見るダッシュボード|利用状況・支出・未使用ライセンス
  4. SaaSダッシュボードの作り方|目的から指標・データ・ツールまでの5ステップ
  5. 見やすいダッシュボードの画面設計|上段・中段・下段で組み立てる
  6. ダッシュボード運用でつまずきやすい点と対処
  7. 進捗と工数のダッシュボードを、業務SaaSで持つ|3つのサービスの役割の違い
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|SaaSダッシュボードで押さえたい6つのこと
  10. 参考文献

SaaSダッシュボードとは|3つの意味と、見る人ごとの違い

SaaSダッシュボードとは、SaaSに関する複数の指標を1つの画面にまとめ、状況をひと目で確認できるようにした画面のことで、誰が何のために見るかで3種類に分かれます。

ダッシュボードとは、データを表やグラフでまとめて表示し、状況の把握や判断を助ける画面のことです。個々の数字を別々のファイルや画面から探さなくても、重要な指標を1か所で見られるのが特徴です。SaaS事業者向けの分析ツールを提供するBaremetricsは、SaaSダッシュボードを、事業の健康状態を確認するカルテのようなものと説明しています(SaaS Dashboards: Track KPIs & Analytics (With Examples))。

「SaaS ダッシュボード」と検索すると、SaaS事業者のKPI(重要業績評価指標)を扱う解説、SaaSの画面デザインの例、SaaSを使う会社の管理画面の説明が混ざって出てきます。同じ言葉でも、見る人と見る数字が違うためです。次の表で、3つの意味を整理します。

種類主に見る人見る数字の例目的元になるデータ
1. SaaS事業者の事業指標経営者・営業・カスタマーサクセス・財務MRR、解約率、NRR、顧客数の増減事業が健全に伸びているかの確認と、異変の早期発見契約・請求のデータ
2. SaaSを使う会社の管理情報システム・総務・経営管理契約中SaaSの支出、利用状況、未使用のライセンスムダな契約の見直しと、更新前の判断各SaaSの管理画面、契約台帳、利用ログ
3. 業務SaaSの進捗・工数現場リーダー・プロジェクトマネージャ・経営案件ごとの進捗、作業時間、予算と実績の差、稼働率遅れや赤字案件の早期発見現場が入力する作業時間・進捗

どの意味で探しているかによって、読む章が変わります。自社のSaaS事業の数字を見たいなら「SaaS事業者が見るダッシュボード」、使っているSaaSの支出や利用状況を見たいなら「SaaSを使う会社が見るダッシュボード」、案件やチームの進み具合・作業時間を見たいなら「進捗と工数のダッシュボードを、業務SaaSで持つ」の章が中心です。作り方と画面設計は、3つに共通する考え方として、「作り方」と「画面設計」の章にまとめています。SaaSそのものの意味や種類は、SaaSって何?身近な例でわかる意味と料金の仕組み、選び方で解説しています。

進捗と工数のダッシュボードは、現場の記録が元になる

3つのうち、3番目の「進捗・工数・損益」のダッシュボードは、ほかの2つと違い、現場の人が作業時間や進み具合を記録しないと、数字そのものが存在しません。SaaS事業者のMRRは契約や請求のデータから計算できますが、受託開発・制作・コンサルティングのような案件型の仕事では、誰がどの案件に何時間使ったかの記録が、ダッシュボードの元になります。この記録が表計算ソフトや別々のファイルに散らばっていると、ダッシュボードを作る前に、集計の手作業が発生します。

案件ごとの工数と原価を一つの仕組みで見たい場合の一例が、株式会社オロが提供するクラウドERPのZACです。商品ページでは、プロジェクト・案件・売上明細の3階層で売上を管理でき、個別原価計算を自動化できると紹介されています。工数管理の機能では、勤怠管理と工数管理を一元化し、プロジェクトや作業工程別に作業時間を集計できます。また、各プロジェクトの予定売上や見込み原価を登録しておくと、工数オーバーで利益率が悪化している案件や工程を可視化でき、月中も損益の着地見込みを確認できる、とされています。注意したい点は、導入完了まで最短で3か月、平均で半年ほどかかることです(商品ページ)。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社オロ

ZAC

ZAC

株式会社オロ

ZAC

プロジェクト業務を効率化!タイムリーに管理したい企業におすすめ

全体評価
4 (1件)
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
出典:ZAC
GOOD

おすすめ!

  • 個別原価計算の自動化で業務を効率化できる
  • 独自設計で柔軟性を保ちつつ、安価での導入が可能
  • タイムリーなプロジェクト管理で利益の着地が可視化できる
MORE

気になる…

  • 詳しい料金やプランを確認するには問い合わせが必要
評価・口コミ(一部抜粋)
4
  • 見積発行の際、承認を電子化できる。また、低粗利で提案する際、ユーザーが各上長に直接フェイストゥフェイスでお伺いを立てなくとも、電子的に承認に入れるため、履歴も残り、管理の観点で負担軽減になる。

先々の業務状況を『見える化』できたことで、リソース管理の精度も経営予測の精度も高まったと思います。

株式会社カヤックのZAC導入事例(代表取締役CEOの発言。掲載時点の内容で、効果や状況は各社の条件によって異なります) 出典:ZAC導入事例 株式会社カヤック(株式会社オロ)

同じ事例では、導入前はプロジェクトごとにExcelで管理しており、労務時間のデータと、金額に換算するための会計データがバラバラだったため、集計作業が大変だったと語られています。社員数が約100人までは何とか管理できたものの、約160人規模になると難しくなったとのことです。ダッシュボードの前提になる記録と集計の仕組みは、人数や案件が増えるほど、手作業では保ちにくくなる点は意識しておきたいところです。

ZAC

案件ごとの工数・原価・損益の見込みを、一つの仕組みで見たい会社に

ZACの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

SaaS事業者が見るダッシュボード|MRR・NRR・解約率の基本指標

SaaS事業者のダッシュボードは、月次経常収益のMRR、既存顧客の収益の継続を見るNRR、解約の状況を表すChurn(解約)の3つを軸に、事業が健全に伸びているかを確認します。

SaaS事業者は、月額や年額で継続課金を受け取る形が多いため、売上の合計だけでなく、「継続している収益がどれだけあるか」「どれだけ解約されたか」を見る必要があります。この章では、Salesforce・Snowflake・Tableauを使ったKPIダッシュボードの構成を公開している株式会社Praztoの解説と、Baremetricsの解説で挙げられている指標を整理します。

ダッシュボードに載せる基本の指標

指標意味見方・計算の考え方注意したい点
MRR(Monthly Recurring Revenue・月次経常収益)サブスクリプションによる、月額の継続的な売上初期コンサルティングなど一時的な売上を除き、継続契約の売上だけを集計する(Prazto)年額契約を月額に換算して載せるかどうかを、自社で決めておく
解約(Churn)解約した顧客の数や、解約で失った売上顧客数で見る(解約顧客数・解約率)系統と、売上で見る(解約による売上減少額・売上解約率)系統の2つがある(Prazto)顧客数ベースと売上ベースは別の数字。小さな顧客の解約が多いと、顧客数の解約率だけが高く見える
NRR(Net Revenue Retention)既存顧客からのMRRが、1年前と比べてどれだけ伸びたかを示す指標1年前に契約していた顧客だけを対象に、現在のMRRを1年前の同月のMRRで割り、100をかける(Prazto)1年前より後に獲得した新規顧客のMRRは含めない
ARPU(1ユーザー当たりの平均売上)顧客1件あたりの平均の収益BaremetricsがMRR・解約と並ぶ追跡指標の例として挙げている平均だけでは顧客層の差が見えないので、プラン別・規模別に分けて見る

MRRは内訳で見る|新規・拡大・縮小・解約の4つに分ける

Praztoの解説によると、MRRの総額だけを管理すると、内訳が不明確になります。たとえば、解約が多発していても、新規契約のMRRに打ち消されて、問題が見えなくなるためです。そこで、MRRの増減を次の4つに分け、合計をNet New MRR(純増のMRR)として見る方法が紹介されています。

  • New MRR:新規顧客の獲得による増加
  • Expansion MRR:既存顧客のユーザー数や利用の増加による増加
  • Contraction MRR:既存顧客のユーザー数や利用の減少による減少
  • Churn MRR:解約による減少

次の表は、この考え方を数字で確かめるための説明用のサンプルです(単位は万円。実際の企業の数字ではありません)。

項目サンプルの値意味
前月のMRR100先月末時点の継続的な売上
New MRR+10新規顧客からの増加
Expansion MRR+5既存顧客のユーザー追加など
Contraction MRR-2既存顧客のユーザー削減など
Churn MRR-3解約による減少
Net New MRR+1010+5-2-3 で求めた、純粋な増加分
当月のMRR110100に Net New MRR を足した値

総額だけを見ると、100から110へ10%増えていて好調に見えます。しかし内訳を見ると、解約で3、縮小で2が減っており、売上解約率(解約による減少額を前月のMRRで割ったもの)は3%です。この状態が続くと、新規の獲得で穴埋めし続ける形になります。ダッシュボードの中段に、内訳を同じ時系列のグラフへ重ねて表示すると、悪化の兆しに早く気づけます(画面構成は「見やすいダッシュボードの画面設計」の章で説明します)。

「解約」の判定ルールを先に決める

指標の数字が会議ごとに食い違う原因の多くは、定義が決まっていないことです。Praztoの構成例では、前月のMRRがあり、当月のMRRが0の契約を解約と自動で判定し、前月比で売上が増えていればアップセル、減っていればダウンセルと判定しています。営業担当者が手で「新規」「更新」「アップセル」を記録する方式だと、契約更新のタイミングと重なった増加が「リニューアル」と記録され、アップセルが見えなくなることが頻発した、と説明されています。自社で決めておくとよい点は、次の3つです。

  • 判定の基準日:契約の終了日か、最後に請求した月か
  • 一時停止・無料期間の扱い:解約に数えるか、数えないか
  • 解約率の分母:月初の顧客数にするか、期間中の平均にするか

SaaS企業の評価で使われる「40%ルール」とは

SaaSの40%ルール(Rule of 40)は、「売上高の成長率」と「営業利益率」を足した値が40%を超えるかどうかで、赤字のSaaS企業を評価する考え方です。BOXILの解説(2025年11月20日更新)では、アメリカのベンチャーキャピタルなどが投資を検討する際の基準の一つと紹介されています。たとえば、成長率が25%、営業利益率が15%であれば、合計は40%で、基準を満たします。成長率が高ければ、営業利益率がマイナスでも許容される、という見方です。

ただし、同じ解説は、日本ではこのルールを適用するにはサンプル数が少なく、有効性を示すのは難しいとして、ほかの指標も合わせて判断する必要があると述べています(40%ルールとは?赤字SaaS企業の投資基準・陥りやすい理由(BOXIL))。ダッシュボードに載せる場合は、経営層向けの画面に、MRRの伸び率と営業利益率から計算した参考値として置く使い方が考えられます。

見る人ごとに、載せる指標を変える

Baremetricsは、同じ事業のデータでも、見る人ごとに別のダッシュボードを作る例を紹介しています。マーケティング担当者はトライアルの転換率・解約・新規顧客、創業者や経営者は主要な目標の進み具合と推移、財務担当者は収益のデータに絞る、という例です。全員に同じ画面を見せるより、その人の判断に使う数字だけを置いたほうが、見てもらえる画面になります。

SaaSを使う会社が見るダッシュボード|利用状況・支出・未使用ライセンス

SaaSを使う会社のダッシュボードは、契約中のSaaSの支出、利用状況、使われていないライセンスを1画面で確認し、契約の見直しや更新の判断に使うためのものです。

部署ごとにSaaSを契約する会社では、「どのSaaSに、いくら払い、何人が実際に使っているか」を、情報システム部門も把握しきれない状態になりがちです。ServiceNowの公式ドキュメント(SaaS 概要ダッシュボード、2025年1月30日更新)には、SaaSとSSOのライセンスの使用状況・コスト・コンプライアンスを分析する画面が、どのようなレポートで構成されているかが説明されています。製品固有の画面ですが、利用側のダッシュボードに何を載せるかの参考になります。

レポート(ドキュメントの表記)何がわかるか
現在のサブスクリプション支出有効なサブスクリプション契約の総コスト
未使用のサブスクリプションの割合再利用ルールで決めた使用の条件を満たしていない契約の割合。一定期間アクティビティがない契約の数を、割り当て済みの契約の総数で割って計算する
SaaS 節減見込み未使用の契約を再利用(回収)した場合に節約できる見込みのコスト
コストセンター別のサブスクリプション支出部門(コストセンター)ごとの、有効な契約の総コスト
最後の有意義なアクティビティのスナップショット利用の動きに基づくユーザーの分布。過去30日、30-60日、60-90日、90-120日の区分で表示し、再利用ルールのしきい値を決める材料にする
インスタンス別の古いサブスクリプションサブスクリプションのプロファイルごとの、古い(使われていない)契約の数

自社で作るときの項目|表計算でも作れる

専用のツールがなくても、SaaSの契約台帳を1つの表にまとめれば、利用側のダッシュボードの土台を作れます。次の表は、ServiceNowのレポートの考え方を、自社の台帳に置き換えた項目の例です。

項目ダッシュボードで見ること元になる情報
SaaSごとの支出月額・年額の合計と、前年との差請求書、経費精算、契約台帳
部署別の支出どの部署が、どのSaaSに払っているか契約者の所属、請求の宛先
契約数と利用中のID数契約している数に対し、実際に使っているIDの割合各SaaSの管理画面、SSOの利用ログ
最終ログインからの経過日数30日・60日・90日で区切った、使われていないIDの数各SaaSの管理画面のログイン履歴
契約の更新日更新の何か月前に見直すかの通知契約書、契約台帳
担当者契約と更新の窓口になる人契約台帳

未使用IDは、状況ごとに次の一手を決める

使われていないIDが見つかったとき、すぐ契約数を減らせばよいわけではありません。状況によって、確認することが異なります。次の表は、判断の順番の例です。ここでの区分は、ServiceNowのドキュメントにある「アクティビティのない期間で未使用を判定する」考え方を、運用に置き換えたものです。

状況まず確認すること次の一手
退職・異動の後も、IDが残っている在籍の状況と、IDの持ち主IDの削除や回収を、人事の手続きと連動させる
繁忙期や、年に数回しか使わない人のID利用の周期(月次・四半期・年次)見る期間を90日や120日に延ばして、再判定する
期間を延ばしても、使われていない本人と部署への利用の確認更新日の前に、契約数の削減を検討する
部署ごとに同じ用途のSaaSがある機能と費用の重なりSaaSの統合や、契約の集約を検討する

更新日の前にダッシュボードを見て、契約数や契約そのものを見直す運用は、導入後の定着の一部です。導入から定着までの流れは、SaaS導入の進め方|選び方5つのポイントと定着までの5フェーズで整理しています。

SaaSダッシュボードの作り方|目的から指標・データ・ツールまでの5ステップ

SaaSダッシュボードは、見る人と判断を決める、指標を絞って定義する、データの出どころをつなぐ、ツールを選ぶ、見る頻度と動き方を決める、の5ステップで作ります。

画面を作る前に決めておくことが多いほど、作り直しが減ります。3つの種類のどれでも、考え方は共通です。

ステップ1:見る人と、その人が下す判断を決める

最初に決めるのは、画面の見た目ではなく、「誰が、どの判断のために見るか」です。経営者は事業が伸びているか、財務担当者は収益の見通し、現場リーダーは案件の遅れ、情報システムは更新前の契約の見直し、というように、判断が違えば、見る数字が変わります。Baremetricsは、チームごとに別のダッシュボードを作れること、共有するかどうかを切り替えられることを、機能の特徴として挙げています。一つの画面に全員分を詰め込まず、見る人ごとに分ける考え方です。

ステップ2:指標を絞り、定義を文章で決める

指標は多いほど詳しく見えますが、見る人の判断につながらない数字は、画面を読みにくくします。判断に使う数字を5-8個程度に絞り、それぞれの意味・計算の方法・更新の頻度・担当者を、文章で決めておきます。次の表は、定義をまとめたシートの例です。

指標名定義(文章で書く)計算の方法更新の頻度担当見る人
MRR継続課金の月額売上。初期費用などの一時的な売上は含めない有効な継続契約の月額の合計月次(月初に前月分を確定)経理経営者・財務
売上解約率前月のMRRのうち、解約で失った割合解約によるMRRの減少額を、前月のMRRで割る月次経理経営者・カスタマーサクセス
未使用ID率(自社の定義)契約しているIDのうち、90日以上ログインがないIDの割合90日以上ログインがないID数を、契約ID数で割る月次情報システム情報システム・総務
予算と実績の差プロジェクトの予定工数と、実際の工数の差実績工数から予定工数を引く週次プロジェクトマネージャ現場リーダー・経営

ステップ3:データの出どころを決め、つなぐ

ダッシュボードの数字は、どこかのデータから取り出されます。手で入力するデータが多いと、更新が止まりやすくなります。Praztoは、膨大な契約データのすべての詳細を手作業でSalesforceに入力するのは、運用面で現実的でないとして、システム連携による自動化が必要だと述べています。Baremetricsの分析ツールは、StripeやRecurlyなどの課金データから、指標を自動で取り込む形です。自社で何のデータを、どこから、どの頻度で取り出せるかを、先に確認します。

ステップ4:ツールを選ぶ

ダッシュボードを作る方法は、大きく4つに分けられます。次の表は、それぞれの向く場面と注意点です。優劣を示すものではなく、自社の指標の数・データの出どころ・運用の担当者に合わせて選びます。

方法向く場面特徴注意したい点
表計算ソフト(Excel・スプレッドシート)指標が少なく、見る人が数人の段階追加のツールなしで、すぐ始められる更新と集計が人手になる。Baremetricsは、作った本人にしかわからない複雑な表計算になりやすい点に触れている
BIツール(Tableauなど)複数のデータをつなぎ、全体から詳細へ掘り下げたい場合Praztoの例では、企業規模や製品カテゴリで絞り込み、全体から詳細へ段階的に分析できる構成設計と運用を担当する人が要る。データを集める基盤も必要になる
事業指標の分析SaaS(Baremetricsなど)課金データから、MRRや解約を自動で出したい場合Baremetricsの例では、課金データを接続すると指標が自動で集まり、Metric・Goal・Tableの3種類のウィジェットで画面を組める対応する課金システムや、データの出どころを確認する
業務SaaSに組み込まれたダッシュボード工数・進捗・利用状況など、そのSaaSが記録するデータを見たい場合日々の入力から、自動で集計されるそのSaaSが持つ指標しか出せない場合がある。他のシステムとの連携は、事前に確認する

ステップ5:見る頻度と、異変があったときの動き方を決める

ダッシュボードは、作っただけでは役に立ちません。Baremetricsは、大きな変化は1日で起きるのではなく、数か月かけて少しずつ起きることが多いと述べ、異変が見えたらすぐ掘り下げて、手を打つことを勧めています。自社でも、見る頻度(日次・週次・月次)と、数字が動いたときに誰が原因を調べるかを、先に決めておきます。

セグメントで切り分けられるようにする

全体の平均だけでは、問題の場所がわかりません。Baremetricsは、国・プラン・UTMタグなどの属性で切り分けて見る方法を、Praztoは、企業規模(Enterprise・Mid Market・SMB)と製品カテゴリで絞り込む構成を紹介しています。Praztoの例では、「Enterpriseセグメントの売上規模が大きい」という気づきから、そのセグメントに絞った詳細分析へ移れる導線にしています。元のデータに、切り分けに使う属性を持たせておくことが前提です。

見やすいダッシュボードの画面設計|上段・中段・下段で組み立てる

見やすいダッシュボードは、画面の上段に重要指標、中段に推移、下段に内訳や詳細を置き、全体から詳細へ段階的に見られるように組み立てます。

Praztoが紹介するSaaS KPIダッシュボードの例は、画面上部に重要なKPIを大きく表示し、中段にMRRの時系列の推移、下段に解約の詳細を置く構成です。意思決定者が必要な情報へ素早く届く設計としています。この構成を一般化すると、次の表のようになります。

位置置くもの目的例
上段最重要の指標を、大きな数字でいまの状況を、数秒で把握するMRR、解約率、当月の純増。未使用ID率、今月の支出
中段推移を、時系列のグラフで良くなっているか、悪くなっているかを見るMRRの内訳(New・Expansion・Contraction・Churn)を重ねたグラフ
下段内訳と詳細を、表や絞り込みで原因を掘り下げる顧客セグメント別・プラン別・部署別・案件別の表

画面を読みやすくする5つの工夫

  • 指標を絞る:見る人の判断に使う数字だけを置く。足りない分は、別の画面に分ける
  • 悪化の兆しも同じグラフに重ねる:Praztoの例では、縮小や解約の指標を、新規などと同じ時系列のグラフに重ねて表示し、課題を早期に発見できるようにしている
  • 目標との差を見せる:Baremetricsには、設定した目標に対する進み具合を示すGoalのウィジェットがある。現状の数字だけでなく、目標に対するペースを置く
  • 同じ意味の指標は、同じ場所・同じ色にそろえる:色や位置が画面ごとに変わると、読むたびに迷う
  • 更新日時と、数字の定義を画面に書く:いつの数字か、どう計算したかがわからないと、数字を信用してもらえない

「必要なものだけ見せる」ことを運用で守る

ビーブレイクシステムズのMA-EYESを導入した株式会社ドワンゴの事例では、プロジェクトマネージャが確認できる分析レポートを2種類に絞った、と紹介されています。

必要なものだけ見せるという考えのもと、工数管理レポートと実際労務費一覧だけ見えるようにしています。その他の分析レポートが必要な際は、担当部署に出力を依頼するようなフローにしています。

株式会社ドワンゴのMA-EYES導入事例(運用上のこだわりとして掲載。インタビュー時点の内容で、運用は各社の条件によって異なります) 出典:ERP導入事例 ドワンゴ様(株式会社ビーブレイクシステムズ)

画面の数を増やすのは簡単ですが、見てもらえる画面を保つには、「何を見せないか」を決める運用が欠かせません。SaaSの画面そのもの(UI)の使いやすさの基準は、SaaS UIとは|使いやすさの基準と選定時の5つの確認ポイント・トライアル活用法で解説しています。

ダッシュボード運用でつまずきやすい点と対処

ダッシュボードの運用でつまずきやすいのは、数字の定義のずれ、更新の停止、見る人の不在、指標の増えすぎ、元データの記録漏れの5つで、多くは作る前の取り決めで防げます。

つまずき起きていること対処
部署によって数字が違う解約や未使用の定義が決まっておらず、集計の方法がそれぞれ違うステップ2の定義シートを作り、画面にも定義を書く
更新が止まる手で入力するデータが多く、忙しい時期に後回しになるデータの取り込みを自動化する。手入力は、入力のタイミングを業務の流れに組み込む
誰も見ていない見る人と判断が決まっておらず、「とりあえず作った」画面になっている見る人と、見る頻度を決める。定例会議の最初に画面を見る習慣にする
指標が増えすぎる要望のたびに追加し、重要な数字が埋もれる半年に1回、使われていない指標を外す棚卸しの日を決める
元データの記録が偏る工数や進捗の入力が人によってまちまちで、集計の前に確認と催促が要る入力を簡単にし、入力のルール(いつ、どの単位で)を決める。仕組みで記録できる道具を検討する

閲覧できる範囲を決める

顧客別のデータや、人件費のような取り扱いに注意が必要な数字をダッシュボードに載せる場合は、誰がどの画面を見られるかを先に決めます。Baremetricsにも、作った画面をチームに共有するかどうかを切り替える機能があるように、多くのツールには共有範囲の設定があります。人件費や個人別の稼働の数字は、見る人を限る、見せるのは部署単位の集計にとどめる、などの取り決めを、社内の規程に合わせて決めてください。

導入後の定着につなげる

ダッシュボードは、一度作って終わりではなく、使われ続けて価値が出る仕組みです。導入後に使われなくなる原因と、定着させるための進め方は、SaaS導入の進め方|選び方5つのポイントと定着までの5フェーズが参考になります。タスクの管理そのものの考え方は、タスク管理とは?やり方・ToDo管理との違いとツールのタイプ別選び方を解説で整理しています。

進捗と工数のダッシュボードを、業務SaaSで持つ|3つのサービスの役割の違い

進捗・工数・損益のダッシュボードは、現場が作業時間を記録し、その記録から案件別の集計が自動で出る仕組みを先に作ると、手作業の集計なしで保ちやすくなります。

運用でつまずきやすい点の章で触れたとおり、進捗や工数のダッシュボードは、元データの記録が偏ると、画面を作っても数字が信用されません。この章では、記録と集計の仕組みを業務SaaSで持つ場合の選択肢として、商品ページで確認した3つのサービスを、役割の違いで紹介します(確認日は2026年10月23日です)。

作業時間の記録を、日々の習慣にしたいとき|Kiroku

勤務時間とプロジェクトの工数を、シンプルな画面で記録したい場合の一例が、株式会社かなめが提供する工数管理システムのKirokuです。商品ページでは、勤務管理とプロジェクト管理を1つのシステムで行えるツールとして紹介されています。作業時間の記録では、タスクに予定の時間を登録し、「記録」ボタンで開始、「停止」ボタンで終了すると、実績の時間が加算される仕組みです。ダッシュボードでは、各種サマリー情報を確認しながらプロジェクトごとの傾向を分析でき、ユーザー別の稼働率は、日別・週別で標準の稼働時間との差が表示されるため、超過の傾向を把握しやすいとされています。レポート機能では、プロジェクト別・タスク別・ユーザー別にデータを抽出でき、CSVで出力もできます。

注意したい点として、商品ページには、サービス連携やAPIの利用の詳細は問い合わせで確認する、との記載があります。また、すべての機能が使えるトライアル期間は申込日の翌月末日までで、本契約をしない場合は、終了後に一部の機能が制限されます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社かなめ

Kiroku

Kiroku

株式会社かなめ

Kiroku

手軽に導入!使いやすさ重視の方や記録データを活用したい方にもおすすめ

30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
GOOD

おすすめ!

  • 社員の勤務や工数の管理が1つで行え、コストダウンに貢献
  • どれだけ作業しているのか明確にでき、自分の作業量や作業時間の確認にも最適
  • レポートや分析機能を活用することで、分担や作業の偏りを防止
MORE

気になる…

  • サービス連携やAPI利用についての詳細は問い合わせで確認

商品ページに掲載されている利用者の声では、「正確な費用の算出と作業者の偏りなどを視覚的に確認できる」という評価が紹介されています。Kirokuには、導入事例のページが公式には見当たらなかったため、ここでは商品ページの口コミの紹介にとどめます。

標準の画面に収まらない指標を、自社に合わせたいとき|MA-EYES

ダッシュボードで見たい指標が、標準の画面に収まらない場合に、選択肢になるのが、株式会社ビーブレイクシステムズが提供するERPのMA-EYESです。商品ページでは、予算や企業規模、運用のニーズに合わせて導入できるオールラウンドなERPで、導入前から導入後までのフルサポート体制があると紹介されています。クラウドでありながら標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析の設定にも独自の項目を追加できる、とされています。注意したい点として、商品ページには、工数管理に特化しているため、工程管理には対応していない可能性がある、という記載があります。工程の進捗まで一つの仕組みで見たい場合は、資料で対応範囲を確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社ビーブレイクシステムズ

MA-EYES

MA-EYES

株式会社ビーブレイクシステムズ

MA-EYES

自社に合った柔軟なプロジェクト管理を実現したい方におすすめ

30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
出典:MA-EYES
GOOD

おすすめ!

  • 予算や企業規模、運用ニーズに合わせて導入できるオールラウンドなERPシステム
  • 導入前から導入後まで充実したフルサポート体制を完備
  • クラウドでありながら標準機能へのカスタマイズも柔軟で、分析設定にも独自の項目追加が可能
MORE

気になる…

  • 工数管理に特化しているため、工程管理には対応していなそう

プロジェクト単位での人件費、労務費が見えるようになったため、残業時間の調整や個人の品質、生産性の向上に関する分析データを抽出することができるようになりました。

株式会社ドワンゴのMA-EYES導入事例(導入効果として掲載。インタビュー時点の内容で、効果は各社の導入条件によって異なります) 出典:ERP導入事例 ドワンゴ様(株式会社ビーブレイクシステムズ)

自社の指標に合わせて、プロジェクトの原価と工数を見たい会社に

MA-EYESの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

3つのサービスの役割の違い(商品ページで確認した内容)

ここまでに紹介した3つのサービスは、同じ「進捗と工数の見える化」を扱っていても、役割が異なります。次の表は、商品ページ(2026年10月23日時点)で確認した内容を、横に並べたものです。優劣や順位をつけるものではありません。料金やプランの違いは、各社の資料で確認してください。

サービス(提供会社)向いている状況商品ページで確認した特徴注意したい点詳細
ZAC(株式会社オロ)案件ごとの工数・原価・損益の見込みを見たい、プロジェクト型の事業プロジェクト・案件・売上明細の3階層で売上を管理。個別原価計算の自動化。工数管理と、ガントチャートによる工程管理導入完了まで最短3か月、平均で半年ほど。パラメータの範囲で対応しきれない場合は、上位版のZAC Enterpriseでの対応ZACの紹介へ
Kiroku(株式会社かなめ)勤務時間とプロジェクトの工数を、シンプルな画面で記録したいタイムカード、タイマーによる作業時間の記録、ダッシュボードでのプロジェクト別の傾向と稼働率、レポートのCSV出力サービス連携やAPIの詳細は問い合わせ。トライアル終了後、本契約をしないと一部の機能が制限されるKirokuの紹介へ
MA-EYES(株式会社ビーブレイクシステムズ)予算や規模、運用に合わせて、自社に合ったプロジェクト管理を実現したいオールラウンドなERP。導入前から導入後までのフルサポート体制。標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析の設定に独自の項目を追加できる工数管理に特化しているため、工程管理には対応していない可能性があると、商品ページに記載MA-EYESの紹介へ

いまの集計の仕方で足りているかを確認する

専用の仕組みへ移るかどうかは、人数や案件の数ではなく、いまの運用で何が手作業になっているかで決まります。次のチェックで、当てはまる数を確かめてください。

進捗と工数の集計、今のやり方で足りていますか?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaSダッシュボードとは何ですか?

A. SaaSダッシュボードとは、SaaSに関する複数の指標を1つの画面にまとめ、状況をひと目で確認できるようにした画面のことです。SaaS事業者が売上や解約などの事業指標を見る画面、SaaSを使う会社が利用状況や支出を見る画面、業務SaaSで案件の進捗や工数を見る画面の3つの意味で使われます。

Q2. ダッシュボードとは、どういうシステムですか?

A. ダッシュボードとは、データを表やグラフでまとめて表示し、状況の把握や判断を助ける画面のことです。複数の数字を別々のファイルや画面から探さなくても、重要な指標を1か所で見られます。何を載せるかは、見る人と、その人が下す判断によって決まります。

Q3. SaaSの40%ルールとは何ですか?

A. 売上高の成長率と営業利益率を足した値が40%を超えるかどうかで、赤字のSaaS企業を評価する考え方です。たとえば、成長率が25%、営業利益率が15%なら、合計は40%です。BOXILの解説では、日本では適用するサンプル数が少なく、ほかの指標も合わせて判断する必要があるとされています。

Q4. SaaSダッシュボードには、どんな指標を載せればよいですか?

A. 見る人によって異なります。SaaS事業者はMRR・解約率・NRR、SaaSを使う会社は契約中SaaSの支出・利用状況・未使用のライセンス、案件型の仕事では進捗・作業時間・予算と実績の差が中心です。判断に使う数字を5-8個程度に絞り、意味と計算の方法を文章で決めておきます。

Q5. SaaSダッシュボードは、どうやって作りますか?

A. 見る人と判断を決める、指標を絞って定義する、データの出どころをつなぐ、ツールを選ぶ、見る頻度と異変時の動き方を決める、の5ステップで作ります。ツールは、表計算ソフト、BIツール、事業指標の分析SaaS、業務SaaSに組み込まれたダッシュボードから、指標の数とデータの出どころに合わせて選びます。

Q6. SaaSとは何ですか?

A. SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをインターネット経由で利用する提供形態のことです。パソコンにインストールせず、ブラウザなどから使い、月額や年額で契約する形が多くあります。身近な例や料金の仕組みは、当サイトの「SaaSって何?」の記事で解説しています。

まとめ|SaaSダッシュボードで押さえたい6つのこと

SaaSダッシュボードは、数字を1つの画面に集め、判断を早くするための道具です。同じ言葉でも、見る人と数字によって3つの意味があるため、最初に「誰が、何の判断のために見るか」を決めることが、作り方の出発点になります。

  1. SaaSダッシュボードには、SaaS事業者の事業指標、SaaSを使う会社の管理、業務SaaSの進捗・工数の3つの意味がある
  2. SaaS事業者は、MRRを新規・拡大・縮小・解約の内訳で見て、NRRと解約率の定義を先に決める
  3. SaaSを使う会社は、支出・利用状況・未使用IDを、契約の更新日の前に見て、見直しの判断につなげる
  4. 作り方は、見る人と判断を決める、指標を絞って定義する、データをつなぐ、ツールを選ぶ、見る頻度を決める、の5ステップ
  5. 画面は、上段に重要指標、中段に推移、下段に詳細を置き、必要なものだけを見せる。更新の担当と棚卸しの日を決める
  6. 進捗や工数をダッシュボードで見たいなら、記録と集計を仕組みにする選択肢として、ZAC・Kiroku・MA-EYESの資料を請求し、対応範囲を比べる

まずは、いま見たい数字を3つ書き出し、誰がどの判断に使うのかを決めるところから始めてみてください。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top