クラウドPBXとは?機能やメリット・デメリットなどを解説

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  • クラウドPBXは、従来までのビジネスフォンのPBXをクラウド上に設置して利用するもの
  • クラウドPBXでは、従業員同士の通話は内線扱いになるため通話料の削減につながる
  • クラウドPBXの音声品質は、インターネット回線に左右されるため注意が必要である

クラウドPBXとは、インターネットに接続して利用できるオフィス向け電話システムです。クラウドPBXの導入で、社外からでも会社宛の電話に出られたり、通話料の削減ができたりします。本記事では、クラウドPBXを導入するメリットや選び方などをわかりやすく解説します。

目次

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  1. クラウドPBXとは
  2. クラウドPBXの主な機能
  3. クラウドPBXを導入するメリット
  4. クラウドPBXを導入するデメリット
  5. クラウドPBXを選ぶ際のポイント
  6. まとめ

クラウドPBXとは

クラウドPBXとは、インターネットに接続して利用できるオフィス向け電話システムです。従来まで企業に設置されていたPBX(電話交換機)をクラウド上に設置することから、クラウドPBXと呼ばれています。

ユーザーは、インターネットを介してクラウド上のPBXを利用することができます。クラウドPBXが企業に広まったのは2010年以降であり、PBXの中では最も新しいタイプです。

受信した電話を内線電話に切り替えるという基本の電話機能は従来のPBXと変わりませんが、近代のビジネスシーンに適合した新たな機能とメリットを備えています

そのため、現在では導入する企業の多くがクラウドPBXを選択し、さまざまな機能を搭載したクラウドPBXが多くのベンダーから提供されています。その中から、導入を考えている企業は自社に最も合ったクラウドPBXを選ぶ必要があります

PBXとは

PBX(Private Branch Exchange)は企業内の電話交換機のことで、オフィス内の電話機による発着信はすべて同じ代表番号で扱えたり、内線番号を設定して該当する電話機のみに接続できたりする機能を搭載しています。

現在使われているPBXには、今回紹介するクラウド型PBXをはじめとし、従来からあるタイプの専用PBXを企業内に設置するレガシーPBX、外線をIP電話へ振り分けて、インターネット回線を利用して内線通話システムが構築できるIP-PBXがあります。

クラウドPBXと従来のビジネスフォンの違い

複数の電話をつなぐ際に、クラウドPBXはインターネットを利用し、従来のビジネスフォンは電話回線を利用することが2つの大きな違いです。クラウドPBXはインターネット環境があればどこでもつながるため、本店・支店・出張所・外出先でも利用可能です。

また、ビジネスフォンの場合は企業内にPBX(電話交換機)の設置が必要ですが、クラウドPBXではサービスを提供するベンダーにPBXを設置・管理されているため、各企業にPBXを設置する必要はありません。

自社にPBXを置くと保守・管理が必要ですが、クラウドPBXではベンダーが行うことにより手間がかかりません。さらに、ビジネスフォンと比べて導入コストを低く抑えられます。したがって、クラウドPBXは中小企業でも導入しやすいシステムだといえます。

クラウドPBXの主な機能

クラウドPBXには他のPBXにはない、現代に即した便利な機能が備わっています。ここでは、主な機能として下記の3つについて解説します。

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異なる場所の電話機を接続する

クラウドPBXを利用する際には、インターネットを通してベンダーのPBXを利用します。したがって、ベンダーのPBXにアクセスを許可された従業員であれば、どこにいても利用することができます

例えば、多くの支社や営業所を持つ企業なら、1つのPBXでオフィスをすべて統合したような感覚で、電話機を接続することができるようになります。つまり、東京本社にかかってきた電話を九州支社へ取り次ぎしたり、本社・支社・事業所間の内線通話も行えたりします。

スマートフォンなどをつなげられる

インターネットを通して利用するクラウドPBXは、インターネットに接続できるスマートフォンやPC・タブレットでも利用できます。ただし、ベンダーのPBXにアクセスするためには専用アプリをインストールする必要があります。

個人が所有するスマートフォンでも利用可能で、クラウドPBXを通せば相手方に通知される電話番号は会社の電話番号となるため、個人の電話番号は通知されません。よって、顧客からの電話を、外出している担当者に対して直接取り次げるようになります。

また、パソコンやタブレットに専用アプリをインストールすれば、USBフォンやヘッドセットを利用して内線通話・会社の代表番号での発信・取り次ぎなどが電話機のように利用できます。

顧客対応を効率化する機能

クラウドPBXには、顧客対応を効率化するさまざまな機能が備わっており、より丁寧な顧客対応ができます。ビジネスはIT技術の進化やインターネットの普及により、バブル崩壊前のような売り手が主体のビジネスでなく、買い手主体のビジネスに変容しました。

その結果、買い手となる顧客のニーズに合わせたものを作り、顧客を大切にしたビジネス展開が重要になっています。クラウドPBXの顧客対応を効率化する機能は、まさに現代のビジネスに合致した機能といえ、顧客からの電話対応を効率的に行うことができます。

主にIVRやACDといった機能が挙げられますが、着信時に即座に顧客情報を表示するCTIや、本社・支社・出張所を含めた会社全体で共有できるWeb電話帳、全通話録音機能などもあります。ここでは、IVRとACDについて詳しく解説します。

IVR

IVRは「Interactive Voice Response」の略で、日本語では自動音声応答システムと呼ばれています。受信した電話にコンピューターが自動で応対するため、営業時間外であっても顧客への一定の応対品質を保てます。

また、営業時間内であれば、自動音声案内で要件別の番号を顧客にプッシュさせることで、必要に応じて担当部署に電話を取り次ぐことができます。そして、営業時間外の簡単な要件であれば、要件番号をプッシュさせることであらかじめ設定しておいた案内を流せます。

また、IVRの機能と顧客情報を連携させれば、電話の着信を新規顧客・既存顧客・取引先に分けて、それぞれの担当部署に取り次ぐことも可能です。IVRがあれば、コールセンターなどの部署がなくても担当部署に取り次げるため、中小企業での利用もおすすめです。

ACD

ACDは「Automatic Call Distribution」の略で、日本語では着信呼自動分配装置と呼ばれています。コールセンターなどに着信した電話を、問い合わせ内容に合わせてオペレーターに割り振る機能で、コールセンターなどを持つ企業には必須の機能です。

例えば、購入前の相談・トラブルの相談・その他の問い合わせなどを発信者の要件別にACDがオペレーターを選び、振り分けてくれます。つまり、オペレーターはすべての問い合わせ内容に精通していなくても、特定の部門に詳しければ対応できるようになります。

最初から知識を多く持ったオペレーターにつながることにより、顧客とオペレーター双方にとってストレスが軽減され、顧客満足度の高いサポートが可能になります。

クラウドPBXを導入するメリット

さまざまな機能を持ったクラウドPBXは、導入することでいくつかのメリットを得られます。ここでは、以下の5つのメリットについて解説します。

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社外でも会社宛の電話に対応できる

クラウドPBXはインターネットを通して利用するシステムであり、インターネット環境があれば社外でも会社宛ての電話に対応できます。そして、個人のスマートフォンでも対応できるため、会社用と自分用の2台のスマホを持つ必要はありません。

また、出社しなくても自宅やコワーキングスペースなど、離れた場所で業務を行うリモートワークでも、会社にいるのと同じように会社発着信の通話ができます。よって、政府が推奨する働き方改革を担う幅広い勤務形態にも対応しやすくなります

従業員同士の通話は内線扱いになる

クラウドPBXを利用した社員同士の通話は内線扱いになり、通話料金はかかりません。それは、本店と支社との通話・従業員のスマートフォンを利用した通話も同様です。したがって、個人のスマホで会社に電話しても、通話料の個人負担はありません。

これにより、本店や支店、営業所や社員同士が電話通話で連絡を取り合うことの多い企業では、大幅な通信費の削減が図れます

導入費用・メンテナンス費用の削減

ビジネスフォンでは、導入時にPBXの設置や電話機の購入を含めて数十万円の費用がかかります。しかし、クラウドPBXでは自社にPBXを設置する必要がなく、導入コストが抑えられます。また、PBXのメンテナンスはベンダーが行うためコストも削減できます。

クラウドPBXの導入費用はサーバーの初期設定費用のみで、導入製品によって異なりますが1万〜5万円程度です。中には初期費用無料の製品もあり、回線数を選んで契約することによりコストの削減も行えます。

ただし、電話回線の電話機は使えないため、従来の電話機と同じタイプの電話機が必要な場合は、LANケーブルを接続して使用するSIPフォン(IPネットワーク上で利用する電話システム)が必要になります。

電話の取り次ぎ業務がなくなる

クラウドPBXでは、IVR(音声自動応答システム)が自動音声で電話の取り次ぎを行うため、電話の取り次ぎ業務を削減することができます。

例えば、電話の取り次ぎを行う専門部署がない企業では、通常業務を担う従業員が取り次ぎ業務を行うことにより、生産性の低下につながっています。そこで、クラウドPBXを導入すれば、電話を取り次ぐ専門の部署がなくても丁寧な顧客対応ができます。

さらに、他の業務を担っている職員の取り次ぎ業務を減らすことで、生産性の向上にも期待できるでしょう。

環境の変化・拡張にも対応しやすい

従来のPBXでは、一度環境を整備してしまうと移動がしにくいというデメリットがあります。しかし、クラウドPBXは事務所の移転や部署の移動にも対応しやすく、環境の変化・拡張を自社内で完結することができます。

そのため、新たな工事などを必要せず、導入後の設定変更や業務内容の変更にも対応しやすいのは大きなメリットです。

クラウドPBXを導入するデメリット

クラウドPBXの導入には多くのメリットがある一方、デメリットもあります。クラウドPBXの導入前にはデメリットも理解し、カバーできるような体制づくりを行いましょう。ここでは、以下の3点のデメリットについて解説します。

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緊急通報ができない

通常、クラウドPBXでは、110番(警察)・119番(消防・救急)・118番(海上事故・事件)などの緊急通報ができません。よって、クラウドPBXを導入する際には、従業員に緊急通報が使えないことに加え、緊急時の対処法を周知しておく必要があります。

対処法としては、最寄りの警察署や消防署の電話番号を短縮番号に登録しておく、スマホの個人番号で通報する、スマホに緊急通報ナビを入れておくなどがあります。

音声品質が環境に影響される

クラウドPBXはインターネットを通じて利用しているため、音声品質がインターネット環境に影響される場合があります。また、Wi-Fiなどの無線環境で通信が不安定な場合は、音声が途切れて聞き取りにくくなる場合もあります。

なお、サービスを提供するベンダーによって音質が異なる場合があるため、導入前にさまざまな環境で通話しながら音質を確認するのも、失敗しないベンダー選びにおける1つの方法です。

ランニングコストが負担になる

クラウドPBXは、ベンダーのPBXを利用することで導入コストが抑えられますが、月々の利用料が発生します。月々の支払いは少額でも積み重なると大きな金額となり、負担が増加します。よって、導入の際には初期費用だけでなく、ランニングコストの比較も必要です。

クラウドPBXの月額費用の内訳は、主に月額利用料・オプション費用・通話料金の3種類です。月額利用料は基本料にアカウント数で決まり、オプション費用はIVRや通話録音などのオプションを追加すると発生します。

通話料金は、社員間の内線や拠点間の通話は無料ですが、外線通話では全国一律の料金が発生します。アカウント数やオプション費用で毎月の利用料の調整が可能であるため、自社に合ったプランを選ぶことがランニングコストを抑えるコツです。

クラウドPBXを選ぶ際のポイント

ここでは、クラウドPBXを選ぶ際のポイントを4つ解説します。数あるクラウドPBXを比較検討する際のポイントとして、導入を検討している方にとって重要な内容です。

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自社の規模とシステムが合っているか

自社の規模に合ったクラウドPBXを選択することで、費用対効果を向上させられます。クラウドPBXでは、アカウント数の上限を定めている製品が多く、数が多いほど月額利用料が高額になるのが一般的です。よって、まずは自社に必要なアカウント数を把握しましょう。

ただし、従業員が増えた場合にも対応できるように、多少余裕を持ったアカウント数のサービスを利用するか、プラン変更で最大アカウント数が変えられるサービスを選択するのがおすすめです。

また、どのような目的でクラウドPBXを導入するのかを明確化することも重要です。具体的には、本社・支社・営業所との内線として利用したい、コールセンター業務で利用したいなど、目的を定めることで自社に適したサービスが見えてきます

使用中の電話番号を引き継げるか

クラウドPBXで既存の代表番号を引き継げるかどうかは、現在の電話番号やクラウドPBXを導入するベンダーによって異なるため、必ず確認しましょう。クラウドPBXの中には、050から始まるIP電話番号しか利用できないタイプもあります。

電話番号の中で引継ぎ可能な電話番号としては、市外局番を持つ電話番号・0120や0800で始まるフリーダイヤル・050から始まるIP電話番号などが挙げられます。

しかし、電話番号の引継ぎにはさまざまな条件があり、ベンダーごとに対応が異なるため、引き継げない可能性があることも留意しなければなりません

環境によって変わる音質を確認する

クラウドPBXの音質は、インターネット回線やベンダーによって異なります。特に、コールセンター業務やクレーム処理業務で利用する場合は、音質不良によって顧客満足度の低下にもつながるため、会社の信用問題にも発展する恐れがあります。

したがって、無料トライアルなどがある場合には、実際の動作環境で試してみるなど、どのように相手に聞こえているかの確認が必要です。

現在のインターネット回線が利用可能か

クラウドPBXを提供するサービスの中には、インターネット回線を指定しているものがあります。その回線が現状で利用している回線と異なる場合は、指定された回線の引込み工事が必要となります。

そのため、導入前に現在利用しているインターネット回線が利用できるかの確認が必要です。

セキュリティ対策を確認・周知する

クラウドPBXは、従業員個人のスマートフォンで使用できるのがメリットであるものの、その分セキュリティ対策が個人に委ねられる部分もあります。

したがって、第三者に使用されて情報漏洩につながるようなことがないように、セキュリティ対策を徹底しなければなりません

そして、ベンダー側がどのようなセキュリティ対策を行っているのかも確認し、従業員には利用規約を周知するなど、取り扱いには厳重な注意をする必要があります。

まとめ

クラウドPBXとは、インターネットに接続して利用するオフィス向け電話システムです。従来の電話回線を利用したビジネスフォンにない便利な機能が多く、通話料の削減も可能です。また、導入初期費用も抑えられるため、中小企業でも導入しやすいオフィス電話です。

クラウドPBXはスマホでも利用でき、離れた場所の事業所同士や従業員同士の通話は内線扱いで通話料がかりません。しかし、毎月の利用料がかかったり、音声品質がインターネット回線に左右されたりするデメリットもあるため、導入前には十分な確認が重要です。

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