年末調整を電子化するメリットとは?申請手順や注意点も解説

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  • 年末調整を電子化することで、申告書作成や申請業務を効率化できる
  • ペーパーレス化できる書類には、扶養控除等申告書や保険料控除申告書などがある
  • 年末調整ソフトにより、従業員・人事担当ともに年末調整業務の負担を軽減できる

現在、年末調整は電子化が進められています。オンラインで申請すれば、紙ベースでの申請よりも効率化でき、従業員への負担も少なくなります。この記事では、年末調整を電子化するメリットやペーパーレス化できる書類、申請の手順、注意点などを解説します。

目次

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  1. 年末調整を電子化しよう
  2. 年末調整を電子化するメリット
  3. 年末調整でペーパーレス化できる書類
  4. 国税庁の年調ソフトを使った年末調整のやり方
  5. 年末調整の電子化に関する注意点
  6. 年末調整ソフトでネット申請業務を効率化
  7. まとめ

年末調整を電子化しよう

従来の紙ベースの年末調整には、多くの課題があります。例えば、紙の申請書類の保管や管理は煩雑になりやすく、従業員と担当者双方に大きな負担が生じていました。また、書類の紛失や記入ミスが発生しやすく、訂正作業が必要になるケースも少なくありません。

こうした背景から、近年は年末調整の電子化が進められています。オンライン上で申請できることで、書類の保管や管理が容易になり、作業負担の軽減につながります。さらに、入力ミスが自動で検出され、訂正も簡単なため、全体の正確性が向上します。

本記事では、年末調整を電子化するメリットや注意点などを交えて、電子化の進め方について解説します。

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そもそも年末調整とは

年末調整とは、1年間の所得税の精算を行う手続きのことです。従業員が年間を通じて支払った所得税が、実際の所得に対して適切であったかを確認し、調整するために行われます。

具体的には、年間の所得や控除額、既に源泉徴収された税額などを基に計算します。その結果、税金を多く納めていた場合は還付され、不足があれば追加で納税する必要があります。通常この手続きは、雇用主が従業員に代わって行います。

年末調整とは?受けられる控除や必要書類などをわかりやすく解説

年末調整とは、所得税の過不足を調整する手続きのことを指します。年末調整を行うことで、各種控除を受けることができますが、適切に行えていないと企業が罰則を受ける可能性もあります。本記事では、年末調整に必要な書類や年末調整を行わないとどうなるかなどを解説しています。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は、どちらも所得税に関わる手続きですが、担当者や対象者が異なります。年末調整は、会社が従業員の所得税を代行して申告や納税を行う手続きです。

一方、確定申告は個人が行うもので、自分の所得や支出を税務署に申告して、最終的な所得税額を計算し納税する手続きです。個人事業主や特定の条件に該当する人、会社員であっても補填の必要がある場合には、確定申告を行います。

年末調整を電子化するメリット

年末調整の電子化は、従来の紙ベースの手続きに代わるもので、効率化・時間の節約・エラーの減少が期待できます。企業側にとっては、記入ミスが減ることで業務をスムーズに行え、従業員側にとっては書類紛失のリスクが減るなど、それぞれにメリットがあります。

ここでは、年末調整の電子化における従業員側・企業側それぞれのメリットを解説します。

参考:年末調整手続の電子化の概要・メリット|国税庁

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年末調整を電子化するメリット

  1. 従業員側のメリット
  2. 企業側のメリット

従業員側のメリット

従業員側のメリットとして、Web上で手続きが完結できることが挙げられます。インターネット環境があれば、自宅や職場、移動中など場所問わず申請が可能です。従来の紙の書類を受け取って記入する必要がなくなるため、時間的な負担が軽減されるでしょう。

さらに、紙の書類では紛失や破損のリスクが伴う課題がありました。しかし、デジタル化された書類はクラウドやサーバーに保存されるため、そのような心配が不要になります。提出された情報の追跡と管理もしやすく、自身の申請状況をリアルタイムで確認できます。

企業側のメリット

企業側にとってのメリットは、控除額の検算作業が不要になる点です。従来の紙ベースの手続きでは、従業員が提出した書類の計算ミスを見つけ出し、修正する必要がありました。しかし、電子化されたシステムでは計算が自動化されるため、エラーの可能性が減少します。

また、電子化されたシステムでは、入力時のガイダンスやエラーチェック機能によって、従業員が誤った情報を入力するリスクの低減を図れます。そのため、企業側での確認作業がスムーズになり、年末調整に関連する業務の効率化が期待できます。

年末調整でペーパーレス化できる書類

年末調整を電子化することは、多くの書類をペーパーレス化することを意味します。電子化によって、ペーパーレス化できる主な書類には、以下のようなものがあります。

年末調整申告書関係・扶養控除等申告書
・配偶者控除等申告書
・特定親族特別控除申告書
・所得金額調整控除申告書
・保険料控除申告書
・住宅ローン控除申告書
・基礎控除申告書
控除証明書等関係・保険料控除証明書
(生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料及び
地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金が
対象)
・住宅借入金等を有する場合の所得税額の
特別控除証明書
・年末残高等証明書

年末調整で電子化できない書類

年末調整の電子化が進められていますが、以下の書類については電子化によるデータ提供ができません。

  1. 国外居住親族に係る親族関係書類 
  2. 国外居住親族に係る送金関係書類 
  3. 勤労学生に該当する旨の証明書 
  4. 平成30年以前の居住に関する住宅ローン控除証明書 
  5. 平成30年以前の居住に関する年末残高等証明書

国外居住親族関係の書類(親族関係書類・送金関係書類)や勤労学生証明書については、法令上データでの提供ができず、従来通り書面での提出が必要です。

また、住宅ローン控除申告書自体は電子データでの提出ができます。添付書類である住宅ローン控除証明書と年末残高等証明書についても、金融機関等が電子交付に対応している場合は、データ取得が可能です。

ただし、すべての住宅ローンや居住年が自動的に電子対応となるわけではありません。電子データで取得できるかどうかは、事前に確認が必要です。電子化できない書類については、年末調整ソフトに手入力し、書面で提出または提示する必要があるため注意しましょう。

参考:年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和7年10月改訂版)|国税庁

国税庁の年調ソフトを使った年末調整のやり方

国税庁は、年末調整の手続きを簡略化し、効率化するために「年調ソフト」という無償のソフトウェアを提供しています。年調ソフトでは、従業員が自分のパソコンで簡単に年末調整の申告書を作成でき、企業はこれらのデータを効率的に処理することが可能です。

  1. 国税庁のウェブサイトから年調ソフトをダウンロードし、インストール
  2. 控除に関する情報を入力
  3. 申告書を生成し印刷、または電子ファイルとして保存
  4. 申告書を企業の担当部署に提出

企業側は、受け取った申告書をシステムに入力、またはアップロードすることで年末調整が完了します。

参考:年末調整控除申告書作成用ソフトウェア|国税庁

参考:年末調整手続の電子化概要図|国税庁

年末調整の電子化に関する注意点

年末調整を電子化することには多くのメリットがありますが、気を付けなくてはいけないポイントもあります。ここでは、年末調整の電子化に関する注意点について紹介します。

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電子化が義務化されている企業もある

年末調整の電子化は、すべての企業に義務付けられているわけではありません。しかし、一定の条件を満たす企業については、法定調書を電子化して提出することが義務化されています。

この義務化は、令和3年1月の申告分から適用され、前々年度に発行した法定調書が種類ごとに100枚以上の企業が対象です。なお、令和9年1月1日以降に提出する法定調書からは、100枚以上から「30枚以上あった場合」に変更されるため留意しておきましょう。

また、法定調書の種類ごとに適用されるため、年末調整に関連する法定調書を100枚以上発行していない場合は、義務化の対象外です。そのため、自社が発行している法定調書の種類と枚数を把握し、電子化での提出が必要かどうかを確認しておくことが重要です。

参考:No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務

参考:e-Tax等による法定調書の提出が義務化されています!|国税庁

税務署に承認申請書を提出する

年末調整の電子化を進めるにあたって、まずは所轄の税務署に承認申請書を提出し、承認を受ける必要があります。これは、従業員から提出される申告書類を電子データで受領する場合、一定の要件を満たすことが求められているためです。

申請では、従業員から電子データを受け取る方法や、受領したデータの信頼性・安全性を確保するための具体的な措置を示しましょう。セキュリティ対策が不十分な場合、申請が非承認となる可能性があるため注意が必要です。

申請後は、翌月末までに承認可否の結果が届くのが一般的です。そのため、スケジュールにゆとりを持って、年末調整の電子化を進めましょう。

参考:年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ) (令和7年10月改訂版)|国税庁

社内への周知・従業員へのサポートが必要

電子化への移行は、従業員にとって新しい手順やシステムの理解を必要とするため、適切な情報提供とサポート体制が欠かせません。特に、デジタルツールに不慣れな従業員に対しては、丁寧な説明が必要です。

具体的には、新しいシステムの使い方を示す研修の実施やFAQシートの配布、ヘルプデスクの設置などを行いましょう。また、その際は使い方だけでなく、電子化の目的やメリットも伝えておくと、従業員からより理解を得られます。

人の手によるチェックが必要

年末調整を電子化することにより書類の保管や管理が楽になり、作業負担は軽減されます。しかし、最終的には人による目視での最終チェックが必要です。

システムには入力内容の自動チェック機能がありますが、申告内容や提出された証明書と入力内容が合っているかどうかは、最終的に担当者が確認します。特に扶養状況の変更や住宅ローン控除の適用有無などは、誤りがあると税額に大きな影響を与えるでしょう。

そのため、担当者は最終チェックにおけるスケジュールを組んでおかければなりません。年調ソフトを使用していても、すべてが自動化できるわけではなく、人の手による作業も必ず発生することを考慮しましょう。

さらなる効率化を目指すならマイナポータルの登録が必要

年末調整の電子化は、マイナンバーカードがなくても進めることが可能です。保険会社や金融機関のWebサイトから控除証明書データを個別にダウンロードし、申告書データ作成に利用することで、カードを保有していない場合でも対応できます。

しかし、さらなる効率化を目指すのであれば、マイナポータルの登録が必要です。マイナポータル連携を利用すれば、複数の控除証明書の一括取得し、各種申告書に自動入力できるため、入力作業や確認作業の負担軽減を図れます。

一方でマイナポータルの登録には、従業員による連携設定が必要です。そのため、電子化を円滑に進める際は従業員に必要性を周知し、必要に応じてマニュアルや説明の機会を設けるなど、社内全体での取り組みとして進めることが重要です。

参考:マイナポータルと連携した年末調整手続|国税庁

年末調整ソフトでネット申請業務を効率化

年末調整ソフトは、従業員の年末調整手続きをデジタル化し、効率化するためのツールです。国税庁が提供する「年調ソフト」の他にも、市場には多様な年末調整ソフトが存在します。

年末調整ソフトなら、従業員はスマホやタブレットを使って、自宅や外出先から申告書の作成や提出ができます。また、デジタル化されたデータはクラウド上で安全に管理されるため、紙の書類を保管するためのスペースやコストが削減されるなどのメリットがあります。

年末調整ソフト とは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説

年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と、導入するメリット・デメリットの他、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。

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「年調ソフト」と民間の年末調整ソフトの違い

年末調整業務では、従業員の給与データと控除申告内容を紐づけて源泉徴収票を作成し、さらに法定調書を提出する必要があります。そのため、給与システムとの連携は業務効率化の重要なポイントとなります。

国税庁の「年調ソフト」は、無料で利用できる基本的な機能に特化したソフトで、給与システムとの直接的な連携機能は備わっていません。そのため、年調ソフトから出力されたデータが利用できるかどうかは、各給与システムの開発元へ確認する必要があります。

対して民間の年末調整ソフトの多くは、給与システムとの連携に対応しており、従業員データの一括登録や過去データの引継ぎなどの業務を効率化する機能が充実しています。専用のサポート体制もあり、税制改正に応じた更新も自動で行われるケースが多いです。

費用はかかりますが、時間と労力の削減、法令遵守といったメリットを考慮すると、導入する価値は十分にあるでしょう。

年末調整ソフトの導入がおすすめな企業

年末調整ソフトは、従業員数が多い企業や、複数の事業所を持つ企業への導入がおすすめです。手作業による年末調整は、従業員数に比例して作業量が増大し、ミス発生のリスクも高まります。

ソフトを使えば、計算の自動化やデータの一括管理により、効率化と正確性の向上が期待できます。また、年末調整業務の効率化を重視する企業や、人事部門の業務負担軽減を課題としている企業、従業員のペーパーレス化を推進したい企業にも適しています。

年末調整ソフトの選び方

年末調整ソフト導入には前述のような様々なメリットがありますが、使い勝手は製品によって異なるため、導入する際は以下の項目に注意して選ぶのがおすすめです。

自社に合ったタイプを選ぶ

年末調整ができるソフトには、大きく分けて以下3つのタイプがあります。カバーしたい業務範囲や既存システムの導入状況も考慮して選ぶことが重要です。

  1. 年末調整に特化しているタイプ
  2. 給与計算ソフトに年末調整の機能があるタイプ
  3. 労務管理システムに年末調整の機能があるタイプ

年末調整に特化しているタイプは、既存の人事・労務関連システムと連携して使いたい企業や、コストを重視する企業におすすめです。

また、給与計算ソフトや労務管理システムに年末調整の機能が備わっている場合もあります。1つのシステムでさまざまな業務の効率化を図りたい企業には、このような複合的な機能を持つシステムが適しているでしょう。

申請者・管理者ともに使いやすいか

年末調整ソフトは、申請する従業員も管理する人事担当者も使いやすいものであることが重要です。従業員が簡単に入力できるものでなければ、問い合わせや差し戻しが発生しやすくなり、管理者側の負担が増えてしまいます。

特に、専門用語が多くないか、入力ガイドが充実しているかは重要な選定ポイントです。また管理者にとっては、管理画面が見やすいか、従業員の申請状況がわかりやすいかをチェックしておきましょう。

既存システムとの連携性を確認

年末調整ソフトは、他システムとの連携して利用することで、より業務を効率化できます。ソフトによって連携できるシステムは異なるため、自社で使っている給与計算システム・勤怠管理システム・人事労務システムなどと連携可能かどうかを確認しましょう。

また、連携の方法にはAPI連携やCSVファイルで出力するデータ連携があります。連携の可否だけでなく、手間をかけずスムーズに連携できるかどうかも導入前に確認しておくのがおすすめです。

セキュリティ対策を確認

年末調整ソフトを選ぶ際は、セキュリティ対策機能もチェックしておきましょう。年末調整業務では従業員の個人情報を扱うことになるため、強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。

具体的には、データ暗号化やアクセス制限、ログ管理などの機能があるものを選びましょう。また、ベンダーがプライバシーマークやISMS(ISO27001)などの認証を取得しているかどうかも確認しておくのがおすすめです。

まとめ

従来の紙ベースの年末調整手続きは時間がかかり、エラーが発生しやすいものでした。そこで、年末調整を電子化することで、従業員はオンラインで簡単に申請ができ、関連する紙の書類の紛失や、記入ミスのリスクが減少します。

また、企業側では控除額の検算が不要になり、従業員の記入ミスの減少によって業務がスムーズになります。さらに、電子化が義務化されている企業にとっては、法的要件を満たすためにも重要です。

年末調整ソフトを導入することで、従業員はどこからでもアクセスができ、スマホを使用して申告書の作成や提出ができます。企業は書類保管のコストを削減でき、データ管理の効率化につながるでしょう。

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