AIとは何か?大規模言語モデルから生成AIまで改めて解説
昨今のChatGPTのブームもあって、巷はAIをめぐる話題であふれていますが、そもそもAIとは何なのか、実はよく分からないという方もいると思います。
AIは近年登場したテクノロジーと思われがちですが、実はその歴史は古く、コンピューターの発達と歩調を合わせて進化、いくつもの技術的なブレイクスルーを経て、現在の隆盛へと至っています。
今回の記事ではAIとは何なのか、その歴史や既存の技術との違い、社会的な用途などを解説しましょう。
AIとは何か、AIの定義とは?
AIとは一言で言うと、人間が備えている知能をコンピュターで再現しようとする技術のことです。
人間の知能といっても言語理解、発話、推論、問題解決、学習など様々な領域にまたがるため、厳密な定義は困難ですが、後述するアラン・チューリングの基準に従えば、「人間と区別できないほど高度な対話が可能なコンピューターを目指す研究」と言えるでしょう。
AIの歴史は?
AIの歴史は、第二次世界大戦後のコンピューターの発展と歩調を合わせて進んできました。
1956年、初期のAI研究者がダートマス大学に集まり(「ダートマス会議」)、ここで歴史上初めて「人工知能」という言葉が登場します。
同時期にアラン・チューリングは「チューリングテスト」を考案した。人間が目隠しをした状態で会話をしたときに、相手がAIなのか人間なのかを判別できないことが、AIが知性を持ったことの証明となるという基準を提示しました。
しかし、1960年代以降はAI研究は停滞期を迎えます。
この時期にはエキスパート処理や自然言語処理などの手法が開発されましたが、ハードウェアやソフトウェアが目覚ましい進歩を遂げる一方で、AIによる人間の知性の再現は予想以上に困難であることが明らかになり、「コンピューターは人間を超えられない」という通念が一般化しました。
転機が訪れたのは90年代、IBMのAI「Deep Blue」がチェスの世界チャンピオン、ガリー・カスパロフに勝利し、ここで初めてAIが人間の知性を超越する可能性が現実的に示されます。
また、この時期からインターネットの普及によりコンピューターの扱うデータ量が爆発的に増え、それを処理するためにディープラーニングなどのAIのアルゴリズムが注目されるようになります。
2010年代に入るとGoogleのAlphaGoが囲碁の世界チャンピオン、イ・セドルに勝利したことで、人間に対するAIの知性の優位は決定的となり、また同時期には自動運転、医療診断、音声認識など多くの産業でAIの応用が進展しました。
そして2020年代現在、生成AI「ChatGPT」などの登場により、身の回りの業務や表現の分野においてもAIが人間を凌駕する時代が訪れようとしています。
生成AIは既存のAIと何が違う?
現在ブームとなっているChatGPTは「生成AI」と呼ばれる種類のAIですが、生成AIと既存のAIとの主な違いは、新しいコンテンツを生成する能力に特化している点にあります。
伝統的なAIシステムの多くは分類、推薦、予測といったタスクを得意としていましたが、生成AIでは文章、画像、音楽などの新しいコンテンツやデータの生成、補完や拡張、シミュレーションなどに活用されます。
特筆すべきは大規模言語モデルの発展により、高度な言語表現が可能になった点です。
過去のAIは言語表現を苦手としており、チューリングテストも高レベルな言語による応答を知性の証明としていましたが、ChatGPTは人間とほとんど見分けが付かない文章の生成を実現し、その登場は衝撃をもって受け止められました。
AIの代表的な5つの活用例
AIは既にさまざまなビジネスで業務の中核に組み込まれ、省力化や効率化などの効果を発揮しています。
ここではAIの登場によって状況が変わりつつある5つの業界の事例を紹介しましょう。
活用事例1:製造業で不具合や不良品の検知を自動化
製造業では、製品の不良品や不具合の検知にAIの技術が活かされています。
例えば、画像認識と機械学習を組み合わせることで、人間の目を介在させずに、わずかな違和や欠損を見つけ出すことが可能になったため、問題のある製品の検知の自動化と高精度化が実現しています。
活用事例2:コールセンターで顧客との通話のサポート
コールセンターでの顧客とのコミュニケーションにもAIは活用されています。
ユーザーからの電話の内容をリアルタイムでテキスト化し、発言の聴取や意図の理解を助けるほか、音声データ分析することで反応の変化や感情のゆらぎを測定し、最適な対応を見つけ出す手助けをします。
活用事例3:医療で機械学習を利用した病巣の発見
医療の現場でも、AIによる技術の発展は大いに力を発揮しています。
これまでガンなどの難易度の高い病巣の診断は、熟練の医師の経験に基づいた判断に基づいていましたが、機械学習が導入されることで検査結果から微細な兆候を自動的に読み取ることができるようになりつつあります。
活用事例4:物流での最適な配送ルートの発見
物流業界においてもAI技術は目覚ましい貢献をしています。
配送のトラックのルートをAIで分析することによって移動経路の効率化を実現。最短・最速のルートを算出するだけでなく、移動車両が得た情報をネットワーク化することで、事故や工事、渋滞などを回避する最適な行程をリアルタイムでドライバーに伝達する技術が開発されています。
活用事例5:小売で従業員のシフト配置の自動化
小売などでの従業員のシフトの作成にもAIによる自動化が導入されつつあります。
働く時間が一定でないパートやアルバイトの従業員を多数抱える職場では、それぞれの都合に合わせたシフト表の作成は難易度の高い作業ですが、AIを利用すれば複雑に入り組んだ個人のスケジュールの最適な組み合わせを、短時間で作成できるようになっています。
AIのメリットとデメリット
AIの普及は一見、いいことづくめのようにも思えますが、人間社会にネガティブな影響を与えると警鐘を鳴らず声も少なくありません。
ここではAIの普及が社会に及ぼすメリットとデメリットについて考えてみましょう。
メリット①:労働の省力化・効率化
AIの普及でもっとも期待されているのは、人間の労働の代替でしょう。
これまで人間が行ってきた仕事をAIが担うことで、業務の省力化や効率化が進み、人間は単純作業から開放され、より高度で創造的な仕事に専念できるようになると言われています。
メリット②:人間を超えた分析と予測
人間の脳では処理しきれない量の情報を扱えるのも、AIの大きな強みのひとつです。
AIは膨大なデータを取り込んで解析することにより、人知の及ばないレベルの高度な判断や予測が可能で、ビックデータに基づいた未来予測は、AIのもっとも得意とするところです。
メリット③:危険な業務の補助や代替
AI技術の発展は、ロボットやドローンの自律的な動作を可能にし、人間には負担が大きい作業や、危険すぎて立ち入れない領域での活動を代替できるようになるでしょう。
既に一部の工場や倉庫では、負担の大きな業務をロボットが代行するようになっており、この流れはAIの進歩によりさらに加速するはずです。
デメリット❶:人間の雇用が失われる
メリット①で触れた通り、AIには人間の労働を代替するポテンシャルがありますが、それは同時に現在の人々の生活を支えている雇用をAIが奪うことを意味します。
実際に、イラストの作成やテキストの執筆、キャッチコピーの発案といった仕事には生成AIが進出しており、それにともない仕事を失った例やトラブルなどはいくつも報告されています。
今後、AIに代替される仕事の領域がさらに拡大されると、長年かけて習得した技術の無価値化、仕事の低賃金化や雇用の不安定化が進み、社会全体が安定性を失う可能性があります。
デメリット❷:責任の所在が明らかでない
近年のAIは人間に代わって高度な判断が行えるようになりつつありますが、一方でAIに対してはその判断の責任を問えないという問題があります。
よく例に挙げられるのは自動運転技術で、完全に自律して走行する乗用車が事故を起こした際に、その責任は誰が取るのかという議論があります。
AIの判断によって被害や損害が発生した場合、その事実をどのように受容するかの社会的合意が成立するまでには、まだ時間が必要でしょう。
デメリット❸:プロセスの不透明化
AIによる生成や分析では、そのアウトプットに至るまでの過程を見ることはできません。
例えばChatGPTでは人間と見紛うような高度な文章表現が可能ですが、その過程には膨大なパラメーターに基づいた極めて複雑な操作が介在し、その情報量は人間が全体像を理解できる規模ではないため、プロセスは実質的なブラックボックスとなります。
なぜAIがそのような出力をしたのか、その論理的な帰結を理解できない以上人間は思考停止に陥らざるを得ず、そのような状態を前提として運営される社会では、AIに頼りすぎたために問題解決が難しくなる事象が現れるかもしれません。
AI関連で覚えておきたい専門用語10選
日進月歩のAI業界では、新技術の登場とともに新しい用語も次々と生まれています。ふと気が付いたら分からない言葉だらけだったという方もいるかもしれません。
ここでは、AIの普及に伴って知られるようになった、ぜひとも知っておきたい10の専門用語を紹介しましょう。
①生成AI
生成AI(Generative Artificial Intelligence)は、データから新しい情報やコンテンツを生成するAI技術で、ChatGPTやGoogle Bardなどが該当します。
生成AIは、大量のデータに基づき新しい情報を生成するためのアルゴリズムやモデルで、文章作成のほか、画像や動画、音楽といった多彩なメディアの生成が可能です。
従来、人間が行ってきた表現活動を代替する可能性があることから近年注目を集めていますが、人間の雇用の減少や学習に利用したデータの権利の問題など、課題も多く生まれています。
②機械学習
AIの学習方法のひとつで、AIに既存のデータを学習させることによって、未知の事象に対しての分類や予測を可能にします。
機械学習には、ラベル付きの訓練データにより入出力の関係を学習する「教師あり学習」、ラベルのないデータを用いてデータ内部の構造やパターンを見つける「教師なし学習」、ある環境の中でAIに行動を選択させ、そこから得られる報酬によって学習を進める「強化学習」といったアプローチがあります。
これらの機械学習の技術は音声認識、画像認識、レコメンド(推薦)システム、自動運転といった分野での、飛躍的な性能の向上を後押ししています。
③ディープラーニング
ディープラーニングは、機械学習の手法のひとつで、人間の脳の構造を模したニューラルネットワークを多層化することで、高度な表現の学習を可能にする技術です。
従来の機械学習では、学習データの特徴量の選択や設計が必要でしたが、ディープラーニングは生データの状態から自動的に有効な特徴を学習します。
また、多数の隠れ層を持つネットワークを使用することで、初期層から深層に至るまで、段階的かつ多面的に構造や物体を捉えることが可能となります。
④敵対的生成ネットワーク
敵対的生成ネットワークは、GAN(Generative Adversarial Network)と呼ばれる生成AIの一種で、2種類の属性の異なるネットワークを敵対的に競わせることによって、精度の高い画像などを生成する技術です。
GANでは、「生成器」(Generator)と「識別器」(Discriminator)というニューラルネットワークを利用します。
生成機は新しいデータを作成し、識別機はその本物か偽物かを判断するという役割分担があり、両者が互いに競合しながら発展的に学習を続けることで、高品質なデータの生成を可能にします。
⑤ハルシネーション
ハルシネーション(幻覚)とは、生成AIが現実に存在しない情報に基づいた成果物を生成する現象です。
ハルシネーションの発生のパターンは様々で、全くの嘘を何の留保もなく延々と説明することもあれば、正しい情報の中に突然不正確な記述が現れることもあります。
原因としては、訓練データの偏りや複雑なモデルが微細なノイズを拡大する現象などが考えられ、事前の予測や察知が難しいことから、生成AIの弱点のひとつとされています。
最近ではデータ前処理、モデルの正規化などの手法の研究が進んだことから、ハルシネーションが出現する割合は小さくなりつつあります。
⑥AIのトキシティ
AIによる有毒・有害な表現全般を「AIのトキシティ」と呼びます。
AIの表現の中には、偏見、ステレオタイプ、差別的、攻撃的、不適切な内容が含まれることがあり、生成AIの研究において早い段階から問題視されていました。
原因としては、学習過程における不適切な情報の採取、訓練データからのネガティブな一般化、悪意のあるユーザーによる意図的な惹起などが考えられます。
現在の生成AIではトキシティに対して、訓練データの精査やAIのアウトプットの監視、応答の規制や制約などにより、最小限に抑制する努力が行われています。
⑦大規模言語モデル
大規模言語モデルとは、膨大なテキストデータを教師としてトレーニングされた人工知能のことで、ChatGPTやGoogle Bardが該当します。
膨大な量のテキストデータを使用した機械学習によりテキストの生成、文章の補完、質問応答、文章の理解などを高度に行えるのが特徴です。
多彩な質問や課題に対して柔軟な回答や解決策を生成できる汎用性の高さが長所で、人間と判別できないレベルの応答が行えることから、長年のAIの技術的な制約を打ち破った、近年最大のイノベーションとされています。
⑧データセット
AIのデータセットとは、機械学習やディープラーニングのモデルを訓練、評価、テストするためのデータのことを指します。
これらのデータセットは、モデルが学習するための情報を提供し、未知のデータに対するモデルの性能を評価するための基準として使用されます。
生成AIの性能向上において、データセットの果たす役割は非常に大きいため、データの収集や前処理、ラベル付けには、非常に多くのリソースが投資されるようになっています。
⑨自然言語処理
自然言語処理(Natural Language Processing、NLP)とは、発話や文章といった人間の言語表現を、AIが認識し解釈するための技術で、ディープラーニングなどのAI技術の発展により、近年飛躍的な伸びを見せています。
異なる言語を翻訳する機械翻訳、テキストの内容からポジティブさやネガティブさなどの感情を判定する感情分析、音声をテキストに変換する音声認識などの技術があり、チャットボット、スマートスピーカー、自動翻訳サービスなどに用いられています。
⑩プロンプトエンジニアリング
プロンプトエンジニアリングとは、ChatGPTなどの生成AIにおいて、特定の応答や結果を引き出すために、入力する指示や問い(プロンプト)を最適化する技術を指します。
対話型の生成AIは問い合わせ内容によって成果物の品質が大きく変わることから、目的に対して適切な結果を得るには、プロンプトの形式や内容を工夫する必要があります。
プロンプトエンジニアリングでは、定型化された質問の表現が多数開発され、用途に応じて組み合わせたり改変したりすることで、生成AIの出力の方向性を調整し、効率良く目的の成果を得ることができます。
まとめ
今回は、昨今巷を騒がせているAIについて、その成り立ちから社会的な活用事例、専門用語まで幅広く解説しました。
ChatGPTの登場以来AIは身近なものになりましたが、動作原理が複雑な上、生成過程がブラックボックスの中ということもあって、よく理解できない、あるいは何に使えばいいか未だに模索中という方も多いでしょう。
登場したばかりということもあって、過大な期待や警戒に晒されがちなAI技術ですが、非常に大きなポテンシャルを秘めているのは確かなので、本記事を参考に正しい理解を進め、新しい活用の可能性を考えてみましょう。
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