VPSの特徴とメリット・デメリット、AWSとの違いについても解説
サーバーを選ぶ際の有力な選択肢のひとつがVPS(バーチャルプライベートサーバー)です。
しかし、VPSの特徴をよく分かっていなかったり、自分には難しいと感じたりして、敬遠している人もいるのではないでしょうか。
確かにVPSは難易度が高めのサーバーですが、それ相応のメリットを多数備えており、利点を理解した上で使いこなせば、他のサーバーでは実現不可能な環境を構築できます。
今回は、VPSの特徴とメリットとデメリット、さらにVPSの中でも重要なAWS(アマゾンウェブサービス)について解説します。
VPSとは?他のサーバーとの違いは?
VPSについて興味はあるものの、どんなサーバーなのか実はよく分かっていないという人もいると思います。
そもそもサーバーとは、ネットワーク上でさまざまな機能を提供するコンピューターのことで、専用サーバー、レンタルサーバー、共用サーバー、クラウドサーバーといった種類がありますが、今回紹介するVPS(バーチャルプライベートサーバー)もその中のひとつです。
サーバーは本体を購入して手元に所有することもできますが、1台あたり数十万円から数百万円と高額で、電源や回線の確保、熱対策などの管理に手間がかかることから、遠隔地のデータセンターにあるサーバーを月額料金でレンタルするのが一般的です。
もっとも、サーバーを丸ごと1台レンタルするとなると、月額料金は数万円単位になるため、小規模な運用では1台のサーバーを複数のユーザーで分割して利用する方式が人気を集めています。
この共有型のサーバーは、共用サーバーとVPSの2種類に分かれます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
共用サーバー
月額1500円前後で利用できるレンタルサーバーで、利用の難易度が低く、コントロールパネルから簡単に設定が行えるのが特徴です。
WordPressでのブログ構築に用いられることが多く、PHPの動作環境やWordPressの自動インストール機能もセットで提供されていることがほとんどです。
サーバーの管理者権限は付与されず、コントロールパネルにある項目以上の高度な設定は行なえません。
VPS
月額2500円前後で利用できるレンタルサーバーで、コンソールから接続しコマンドラインで操作を行います。
ファイルの閲覧や移動といった基本操作もすべてコマンド入力で行なうため、難易度はかなり高めで、UNIX系OSの素養が求められます。
サーバーの管理者権限が付与されるため、サーバーで動作するミドルウェアを自由にインストールできるほか、サーバーOS自体もカスタマイズできます。
VPSは、「バーチャルプライベートサーバー」の名前の通り、共用のサーバーの内部に仮想的に用意された個人サーバーで、サーバーを丸ごと1台保有するのと同等の管理者権限が与えられ、サーバーで行えることは全て実現できるところに特徴があります。
もちろん、複数のユーザーで1台のサーバーを分割して利用している以上、ハードウェアの性能面では専用サーバーに及びませんが、ファイアウォールの設定、ポートの開放、ミドルウェアの導入、SSHでの接続、さらにはサーバーOSの入れ替えまで、全て無制限に行える制約のない環境が手に入ります。
VPSのメリットとデメリット
VPSを理解する上で知っておきたいのが、他のサーバーと比較したときのメリットとデメリットです。
まず、VPSのメリットとしては、次の2点が挙げられるでしょう。
サーバーを管理者権限で利用できる
VPSでは、ユーザーに擬似的なサーバーの管理者権限が付与されます。
ユーザーはルート権限でサーバーOSを利用できるため、サーバーの機能の全てを利用可能で、サーバーOSの全ての設定を変更できるほか、ウェブサーバーソフトやメールサーバーソフトといったミドルウェアの導入も自由です。
また多くの場合、サーバーOS自体を入れ替えることも可能ですが、サーバーにインストール可能なOSの種類はVPSによって異なります。
運用コストを安く抑えられる
VPSの月額料金は専用サーバーをレンタルする場合よりも安く、サービスにもよりますがおおむね月額2000円前後から利用可能です。
もちろん、サーバーの性能によって費用は異なり、ハイスペックなサーバーを選択するほど高額な料金プランとなります。
それでも、月額数万円〜数十万円が必要な専用サーバーに比べると、1万円以下で利用可能なVPSは、かなりリーズナブルであると言えるでしょう。
逆に、デメリットとして挙げられるのは、次の2点です。
サーバー運用の難易度が高い
VPSの利用の最大のデメリットは、サーバーの運用の難しさです。
サーバーを丸ごと1台管理するためには、サーバーOSに関する本格的な知識が必要になります。
VPSではCentOSなどのUNIX系のOSが主流で、基本的にターミナルからコマンド入力で操作することになるため、コマンドに習熟していないと基本的なファイルの扱いすらままなりません。
常設のサーバーとして運用するためのセキュリティの設定も全て自力で行わなければならず、またそれらの設定ファイルを編集するためにはVimやEmacsといった独特の操作体系を持つエディタを使いこなせなければなりません。
サーバーOSの世界では、WindowsやMacといったコンシューマー向けのパソコンの知識がほとんど通用しないため、新しく覚えることが非常に多くなります。
ハードウェアの拡張性に欠ける
VPSでは、サーバーのスペックに応じて複数のプランが用意されていますが、プランを選ぶことはできても、サーバーの性能を個別に変更することはできません。
例えば、月額2000円のサーバーに追加料金を払ってストレージだけを増強する、といったカスタマイズには対応しておらず、ストレージを増やしたい場合には、より上位のスペックのプランに乗り換えるしかありません。
サーバーの性能面における柔軟なカスタマイズは、後述するクラウドサーバーが対応しており、それに比べるとVPSは、ハードウェアの拡張性に欠ける面があると言えます。
AWSの特徴とVPSとの違い
ここまでレンタルサーバーの一種であるVPSを紹介してきましたが、もうひとつVPSと並ぶ人気なのがクラウドサーバーです。
クラウドサーバーも月額料金制でサーバーを借りて運用する方式に変わりはありませんが、VPSとの大きな違いがサーバーの性能や構成を柔軟に拡張できる点です。
VPSや共有サーバーでは、あらかじめ用意されたプランから選択しますが、クラウドサーバーではサーバーを運用しながら状況に応じて性能を強化したり、新しい機能を追加したりすることができます。
そのクラウドサーバーの中でも最も有名なのが、Amazonが提供するAWS(アマゾンウェブサービス)です。
Amazonといえば世界最大のオンラインショッピングサービスが有名ですが、Amazon社の営業利益ではEC事業よりもAWSの方が大きく、実はクラウドサーバー事業が会社全体の稼ぎ頭となっています。
ここからはクラウドサーバーの中でもトップシェアを誇るAWSについて解説していきます。
AWSのメリットとデメリット
AWSにも他のレンタルサーバーと同様にメリットとデメリットがあり、AWSを上手く活用するには、両者を正確に理解しておく必要があります。
AWSのメリットとして挙げられるのは、次の3点でしょう。
サーバーの費用を抑制できる
AWSの大きな特徴が、従量制の料金システムを採用している点です。
VPSをはじめとするレンタルサーバーは基本的に月額料金制で、サーバーをどれだけ使っても、毎月決まった額の料金を支払う決まりになっていますが、AWSではサーバーの使用量に応じて月に支払う料金が決まります。
AWSでサーバーを構築しても、ユーザーがほとんど訪れなかった場合は料金はわずかで済みますし、逆にサーバーに大量のアクセスが発生してフル稼働の状態が続いた場合は、その月の請求は高額になります。
機能の拡張が容易
AWSでは他のレンタルサーバーのようにサーバーの構成が固定されておらず、100種類を超える機能(サービス)を必要に応じて組み合わせて構築する仕組みとなっています。
例えばウェブサーバーを構築する場合は、仮想サーバーの「EC2」とストレージの「EBS」を組み合わせるのが基本となります。
さらにデータベースが必要になった場合は「RDS」、ロードバランサーが必要な場合は「NLB」といったように、必要に応じてサービスを追加することで、サーバーの性能を拡張することができます。
反対に、AWSのデメリットは以下の通りです。
将来のコストの予測が難しい
サーバーの使用量に応じて料金が決まる従量課金制のAWSは、無駄なコストを抑えられる利点がある一方で、将来的にかかる費用の予測が難しいというデメリットもあります。
サーバーへのアクセスが予想外に多かったり、想定よりも大きな負荷がかかったりした場合、サーバー費用の請求額が当初の予想を大幅に超える可能性があります。
サーバーにかかる費用をあらかじめ予算として計上しておきたい場合、コストが変動するAWSは見積もりを出しにくいという難点が出てくるでしょう。
AWSならではの知識が求められる
AWSでは、サーバーOSの操作だけでなく、サービス(機能)の構成もユーザーが行うため、VPS以上に高度な知識が必要になります。
AWSのサービスに関するノウハウは、あくまでAWSでのみ通用する技術で、そこに詳しくなっても他のサーバーにはそのまま応用しにくい面があります。
どのサーバーでも共通のサーバーOSの知識と違って、AWSでしか使えない知識を習得しなければならないのは、AWSの利用のハードルを高くしています。
AWSの導入事例
AWSは独自のシステムを備えているとはいえ、基本的にはサーバーであるため、運用や導入事例に関しては従来のサーバーとそれほど大きな違いはありません。
柔軟性に優れたAWSは、特に次に挙げるような用途で力を発揮するでしょう。
企業の社内システムを構築
AWSは企業の社内の基幹システムや業務システムに多く使われており、その守備範囲は中小企業から大企業までさまざまです。
組織の規模の拡大に応じてスペックやサービスを変更できるAWSは、特に成長途上の組織には最適な環境です。
ウェブサイトやウェブサービスを運用
AWSはウェブサイトやウェブサービスを運用するためのウェブサーバーとしても利用できます。
サイトやサービスに急激にアクセスが集中した際にも、AWSならすぐにスペックを増強できるため、サーバーが重くなってユーザーに迷惑をかける心配もないでしょう。
オンラインストレージとして活用
AWSはオンラインストレージとして重要なデータの保存に利用することもできます。
特に、大容量のデータを遠隔地で安全に保存しておきたい場合には、AWSのストレージサービス「S3」が利用されます。
AWSの場合、データの転送が発生するとその都度、サーバーの使用料金がかかるので、上書きや削除が発生しない、静的なバックアップデータの管理に向いているでしょう。
AWS以外のクラウドサーバー
AWSは、クラウドサーバーの中ではもっとも大きなシェアを占めているサービスですが、それに負けじと追随している事業者も存在しています。
ここでは、世界的な大企業が運営する3つのクラウドサーバーを紹介しましょう。
Microsoft Azure
Windowsの開発元であるマイクロソフト社が提供しているクラウドサービスです。
WindowsOSとの相性が抜群で、Windows Serverからの移行がスムーズに行なえるのがポイントです。
また、マイクロソフト社のOneDriveやMicrosoft 365といったサービスと親和性が高く、連携を取りやすいという特徴があります。
Google Cloud Platform(GCP)
ウェブ検索やAndroidOSでお馴染みのGoogle(Alphabet社)が提供しているクラウドサービスです。
Googleが提供しているウェブサービス群との相性が良いのはもちろんですが、クラウドサーバーの中でも特にデータ分析やAIの分野に適性があるサービスです。
Alibaba Cloud
中国の巨大IT企業・アリババが提供しているクラウドサービスです。
中国国内では5割に届こうかという圧倒的なシェアを誇るサービスで、性能的にもAWSと比肩するレベルにあります。
また、中国国内では海外のITサービスの利用に制約がありますが、Alibaba Cloudではそうした事情に縛られずにクラウドサーバーを構築できる点がメリットです。
まとめ
今回は、VPSとAWSについて解説しました。
レンタルサーバーの中でもVPSは技術面の敷居が高く、いくら費用が安いといっても、非エンジニアの個人ユーザーはなかなか手を出しにくいサーバーでしょう。
それはAWSも同様で、クラウドサーバーに興味はあっても、多くの専門知識が求められるために、尻込みしているという人は少なくないはずです。
しかし、これらのサーバーの技術について、さわりだけでも習得しておくと、サーバーやネットワークへの理解が進んで、より深く使いこなせるようになります。
初心者向けのブログサービスや共用サーバーに物足りなさを感じるようになったら、より高度なVPSやAWSの運用にも挑戦してみてください。
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