経理のクラウド化とは|注目される理由・メリットデメリットを解説

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  • 経理業務のクラウド化とは、クラウド型の会計ソフトを使用することである
  • クラウド型の会計ソフトを利用すると、法改正時にもスムーズに対応できる
  • クラウド型会計ソフトを導入する際は、セキュリティ対策をしっかり行う必要がある

IT化が進み、クラウド型会計ソフトを利用した、経理業務のクラウド化が注目されています。本記事では、経理業務のクラウド化が注目される理由やおすすめの企業、クラウド型会計ソフトを導入するメリット・デメリットの他、クラウド型会計ソフトの選び方も解説します。

目次

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  1. 経理業務のクラウド化とは
  2. 経理業務のクラウド化が注目される背景
  3. 経理業務のクラウド化がおすすめな企業
  4. クラウド型会計ソフトのメリット
  5. クラウド型会計ソフトのデメリット
  6. クラウド型会計ソフトの選び方
  7. まとめ

経理業務のクラウド化とは

会計ソフトには、インストール型とクラウド型の2種類があります。インストール型は、自社のサーバーにソフトをインストールして利用するのに対し、クラウド型は、サービス提供会社のサーバーにある会計ソフトをインターネット経由で利用します。

つまり、インターネット環境があれば、場所や時間に左右されないことがクラウド型のメリットです。例えば、クラウド化の導入で、在宅勤務・モバイルワーク・サードプレイスオフィス勤務などの柔軟な働き方ができるようになります。

そのため、既にインストール型を導入している企業でも、クラウド型に移行しているところも多くなってきています。

クラウド会計とは?導入のメリット・デメリット、選び方を解説

クラウド会計とは、インターネット上でデータを保存・管理する会計ソフトです。いつでもどこでも操作でき、自動仕訳によって経理業務を大幅に効率化できます。この記事では、クラウド会計のメリット・デメリットや選び方、導入時の注意点などを解説します。

経理業務のクラウド化が注目される背景

経理業務のクラウド化が進む要因は、ビジネス環境の急速な変化だけでなく、政府の方針があります。2018年に政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を示しました。

内容は、コスト削減・迅速な整備・災害対策・テレワーク環境などの実現が明記され、民間企業にも当てはまる部分も多いです。そして、2019年施行の「働き方改革関連法」では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得が義務化されました。

それに対応するため、各企業はITを活用した業務効率化を図るようになり、経理業務のクラウド化もそのひとつです。従来の経理業務では、精算書や請求書・領収書・預金通帳などのデータを手作業でソフトに入力していました。

しかし、このようなアナログな方法は、ミスや不正のリスクが高く、作業時間や多くの人的コストがかかるなどの課題もありました。そこで注目されたのが、インターネット通信を始めとするIT技術の進化を生かした、経理業務のクラウド化です。

経理業務のクラウド化でデータが可視化され、経理業務の効率化が図られるばかりでなく、作業ミスや不正行為の防止、内部統制の強化にもつながります。また、リモートワークの増加や働き方改革なども、普及の要因といえます。

参考:政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針

参考:働き方改革特設サイト|厚生労働省

経理業務のクラウド化がおすすめな企業

経理業務をクラウド化することで、自動連携が行えるため、入力作業の時間削減や、ミスの防止につながります。特に、経理業務のクラウド化は、以下のような企業におすすめです。

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インターネットバンキングやクレジットカードを利用している企業

多くのクラウド型の会計ソフトは、ネットバンキングやクレジットカードの入出金データを自動的に取り込んで仕訳する機能を搭載しています。従来の方法のように、PCと書類を見比べる必要もなく、クラウド化で入出金履歴が自動で取り込めます。

このように自動連携を行うことで、仕訳による入力業務が大幅に削減し、人的ミスの防止にもつながります。学習機能を搭載しているものも多く、勘定項目や仕訳の指定・登録が行えます。

その結果、締め日に慌てる必要がなくなり、社員のプレッシャー軽減にもなります。また、クラウド化により空いた時間では、その他の業務も行えるので、人員が少ない場合にもおすすめです。

データ確認を簡素化したい企業

経理業務のクラウド化により、散らばっていた情報が一元管理しやすくなるのも特徴です。クラウドサーバー上にデータを管理しているため、経理業務システムに蓄積されたデータは簡単に集計できます。

したがって、経理担当者が複数いる場合や管理者が不在な時でも、迅速に確認が行えます。また、データはリアルタイムで集計されるので、正しい情報をいつでも好きな時に確認できます。

さらに、経理担当者だけでなく、「利益・売上・経費・資産データ」などをリアルタイム確認したい経営者にも役立ちます。経営戦略を練りたい企業には大きな導入効果が期待できます。

専門知識を持つ社員がいない企業

経理業務のクラウドは、専門知識を持たない社員にも役立ちます。これは、多くのクラウド経理システムで、誰でも操作しやすいように設計されているためです。そのため、IT初心者が多い企業にも向いています。

また、複雑な操作が不要なので、簿記や会計の知識がない方や、馴染みのない方にも適しています。あらかじめ、勘定項目や定期的な仕訳を登録しておくことで、人的なミスを減らしつつ生産性を上げられます。

加えて、サポート体制が整っているサービスが多いのも安心できるポイントです。動画での操作方法説明や、会計用語の説明をしているサービスもあるため、社員の知識レベルによりサポート体制を確認するのもおすすめです。

クラウド型会計ソフトのメリット

クラウド型会計ソフトの導入には、企業側にも従業員側にもさまざまなメリットがあります。ここでは、下記の7つの大きなメリットについて解説します。

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場所を選ばす操作できる

1つ目のメリットは、場所を選ばずに経理データを共有し、操作できることです。クラウド型会計ソフトは、インターネットを通して利用できるため、インターネット環境があればいつでもどこでも操作できます

そのため、タブレットやスマートフォンなどでも操作が行え、データの確認や入力のためだけに会社に戻る必要がなくなります。このように、クラウド型会計ソフトの導入は、テレワーク・在宅勤務などの柔軟な働き方を可能にし、働き方改革の推進にも役立ちます

タブレット向けおすすめ会計ソフト5選|導入のメリットを解説

クラウド型の会計ソフトならタブレットで使用することができ、作業内容によってはパソコン作業よりも効率的なケースがあります。本記事では、会計ソフトをタブレットで使用するメリットを解説し、タブレット向けのおすすめ会計ソフトを紹介します。

法改正に対応できる

今回のインボイス制度のように法改正があると、会計ソフトを対応させる必要があります。インストール型では自社でのアップデートや再購入が必要となりますが、クラウド型ではサービス提供会社が対応するため、手間や経済的な負担を省けます。

また、クラウド型会計ソフトなら、最新OSやセキュリティ対策などの細かなアップデートも提供会社が行うため、常に最新版のソフトを利用できます。一方でインストール型は、このような場合でも自社でコスト負担が発生します。

バックアップの手間が省ける

電子データは常に破損する危険があり、データのバックアップは必ず取っておかなければなりません。インストール型では自社でバックアップを取りますが、クラウド型では、サービス提供会社が随時バックアップを取っているため、作業の手間が省けます。

自社のデータが保管されているクラウドサーバーは、災害時にもデータが失われないように、バックアップ体制がしっかり整えられています。万が一自社が災害に遭った場合でも、システムとデータはサービス提供会社に残っているため、早期の業務再開が可能です。

他のシステムと連携できる

クラウド会計ソフトの中には、さまざまなサービスと連携できる製品もあります。たとえば、クラウド型のPOSレジと連携することで、POSレジに蓄積される売上データを会計ソフトに反映できます。

また、POSレジとの連携を行うことにより、リアルタイムで在庫情報の把握が行えます。その結果、売上の計上もしやすくなり、売上管理を大幅に削減できます。

POSレジ連携におすすめの会計ソフト5選|メリットや機能を解説

POSレジは販売情報を集積するシステムを搭載したレジで、金額の入力ミスが発生せず、正確な処理を行えます。本記事では、POSレジと会計ソフトの連携によってできること、メリット・デメリットの他、会計ソフトの選び方について解説します。

情報の反映や仕訳が簡単に行える

会計ソフトの中には、金融機関やクレジットカード会社の取引明細を取り込むと同時に、自動的に仕訳を行いソフトに反映してくれるものがあります。入力作業の手間が大幅に省け、ミスのない入力ができます。

また、 入力された情報は連携しているシステムにリアルタイムで反映されます。さらに、データは可視化されているため誰でも利用でき、経理以外の分野においても有効なデータ活用が可能です。

リアルタイムで状況把握できる

会計ソフトで入力された情報はすぐにシステムに反映され、会計帳票などの確認ができます。そのため、手作業で会計処理を行う際によくある税理士の帳票作成待ちがなくなり、リアルタイムで自社の経営状況を把握できます。

また、タイムリーな財務分析をレポートにまとめられるため、時を逃さない適切な経営判断が可能です。

疑問点がすぐに解消できる

多くのクラウド型会計ソフトでは、サービス提供会社からのサポートが受けられます。サポート体制の充実度はそれぞれですが、メール・チャット・電話などでのサポートが一般的です。中には、サポート担当者と画面を共有したサポートがあるサービスもあります。

専門のサポートスタッフが対応するため、複雑な問題でも適切に解決できます。また、問題が起きた際にすぐにサポートが受けられるため、業務が中断される時間を最小限に抑えられます

クラウド型会計ソフトのデメリット

クラウド型会計ソフトには多くのメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、下記の4つの主なデメリットについて解説します。

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インターネットにトラブルがあると作業が停滞する

クラウド型会計ソフトは、インストール型とは違いインターネットを通して利用するため、インターネットにトラブルがあると使えなくなってしまいます。同じように、社内で停電が発生すると、自社のPCや社内ネットワークもダウンして使えません。

また、回線速度の遅延や電波障害でも、作業の停滞が起こる場合があります。社内でのトラブルを防ぐためには、導入前に社内のどのパソコンにインターネットを接続するかを明確にし、インターネット環境の整備とオフライン時のバックアップ計画を立てましょう。

セキュリティ対策の徹底を要する

情報漏えいが起こると、自社の社会的信用を失いかねないため、電子データを扱うときには細心の注意が必要です。しかし、クラウド型ではサーバーのセキュリティはサービス提供会社に依存していることから、セキュリティ面での不安もあります。

したがって、導入前にサービス提供会社のセキュリティ対策を確認することが大変重要です。例えば、災害対策やハードウェア機器の障害対策、不正アクセス防止、通信の暗号化、アクセスログの管理などを確認しましょう。

また、アクセス時に必要なIDとパスワードが悪意ある第三者に知られてしまうと、情報漏えいにつながり、企業に大きな損失を与えます。そのため、パスワード管理システムや管理者による保管などで、IDとパスワードを厳重に管理することが大切です。

会計ソフトのセキュリティ対策について|脆弱なソフトのリスクも解説

会計ソフトのセキュリティ対策を怠ってしまうと、データ消失や情報漏洩に繋がってしまう危険性があります。本記事では、会計ソフトのセキュリティ対策について、クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの安全性の違いや脆弱なソフトのリスクも交えて解説します。

継続的にコストがかかる

インストール型は導入時やバージョンアップの際にコストがかかりますが、クラウド型は月額使用料や年額使用料などの一定のコストがかかり、長期的に見ればインストール型よりもコストが必要な場合があります。

例えば、基本機能の他に高度な機能や追加サービスを利用するためには、追加料金が発生します。また、クラウド型会計ソフトはインターネット接続が必須なので、安定したインターネット環境も整備しなければなりません。

インターネット接続のコストも含めると、総コストが増加する可能性があります。そのため、データ移行を事前に計画し、自社に最適なプランや信頼性の高いインターネットプロバイダーを選ぶことをおすすめします。

操作になれるまで時間を要する場合がある

インストール型とクラウド型の会計ソフトは、インターフェースや機能が異なるケースが多く、新しい画面レイアウトや操作方法に慣れるまでには時間を要します。また、カスタマイズ性の高さがメリットである反面、設定には時間がかかります。

そのため、段階的にシステムを導入して徐々に慣れていく方法をとったり、導入前後に従業員向けのトレーニングプログラムを実施したりすることが大切です。さらに、ユーザーマニュアルやFAQを提供し、従業員が自主的に学習できる環境を整えることもおすすめです。

クラウド型会計ソフトへの移行は、初期段階での学習と適応が必要ですが、これらの対策を講じることでスムーズな移行と効率的な利用が可能です。

クラウド型会計ソフトの選び方

ここでは、クラウド型会計ソフトの選び方を解説します。高機能なものは利用料も高くなりますので、予算に合わせて最も自社に合ったものを選ぶのが重要です。

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自社に必要な機能が備わっているか

会計ソフトを選ぶ前に自社の経理に潜在している課題を明確にすることにより、自社に必要な機能がわかります。一般的に、機能が多いほど利用料が高くなる傾向にあるため、不必要な機能を除外することで予算内に抑えられます。

また、サービスや契約内容によっては機能の追加が可能です。例えば、見積書・納品書・請求書・決算書作成機能などは、別途料金を支払うことで追加できます。ただし、現在使っている既存のシステムで対応できるのであれば、これらの機能は必要ありません。

サポート体制は充実しているか

サポート体制は、サービス提供会社によって大きく異なるため、確認が必要なポイントです。例えば、サポート対応が有料の場合があれば、無料でチャットや電話サポートを受けられる会社もあります。

また、メールサポートのみのところや、専門担当者による訪問サービスなど、サポート体制はさまざまです。そのため、無料でどこまででき有料でどのようなサポートがあるかはもちろん、土日の対応・対応時間・対応方法などを確認しましょう。

使いやすい操作性か

クラウド型会計ソフトは、基本簿記の知識のあまりない初心者の方にも使いやすい仕様に設計されています。しかし、今まで使っていた会計ソフトと画面デザインが異なるため、当初は使いづらいと感じるケースがあります

そのため、できるだけ違和感なく利用できるものを選び、当初の操作ミスによる業務の停滞を最小限に抑えるために必要です。多くのサービス提供会社は、無料トライアル期間を設定しているため、積極的に活用して操作感の確認を行いましょう。

使いやすい会計ソフトおすすめ10選|初心者でも簡単に扱える

経理初心者や経験が浅い従業員が居る企業には、操作が簡単で使いやすい会計ソフトの導入がおすすめです。本記事では、初心者にも使いやすい会計ソフトを選ぶポイントや使いやすいソフトを導入するメリットを交えて、初心者にも使いやすくおすすめの会計ソフトを紹介します。

利用中の銀行口座やクレジットカードに対応しているか

銀行口座やクレジットカードに自動同期し、取り込みと仕訳をしてくれる会計ソフトは、入力と仕訳の手間が省け、大幅な効率化が図れます。

しかし、すべてのソフトがすべての銀行口座やクレジットカードと同期できるわけではないため、会計ソフトが現在利用している銀行口座やクレジットカードに対応しているかの確認は重要なチェックポイントといえます。

会計ソフトとクレジットカードを連携|メリットや注意点も解説

会計ソフトはクレジットカードと連携できるものが増えてきています。連携することで入力の手間が省けミスが防げるため、会計業務を大幅に効率化することが可能です。この記事では、会計ソフトとクレジットカードを連携するメリットや仕訳の方法、注意点などについて解説します。

会計ソフトと銀行・ネットバンキングを連携するメリットや注意点

会計ソフトは、銀行やネットバンキングと連携することで、取引データの自動取得などができ、業務負担を軽減させることができます。本記事では、会計ソフトと銀行・ネットバンキングを連携させるメリットや、ネットバンキングを利用する際の注意点について解説しています。

まとめ

クラウド型の会計ソフトを使用する経理業務のクラウド化は、最近注目の導入方法で、数多くの企業が採用しています。また、クラウド型は、サービス提供会社のサーバーにあるソフトをインターネットを介して利用する方法で、手軽に導入できるのがメリットです。

さらに、経理業務をクラウド化することで、場所を問わず利用でき、会計情報の一元管理も可能です。インターネットバンキングやクレジットカードと連携すれば、大幅に業務効率が改善し、人的ミスも防げます

しかし、継続的なコストの発生や、セキュリティ対策への不安といったデメリットもあるため、導入前には確認が必要です。そのため、本記事の内容を参考に、自社にあったクラウド型会計ソフトを導入し、経理業務の効率化を図りましょう。

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