AI動画生成の業務活用ガイド|著作権・ディープフェイク対策とSNS運用
Check!
- AI動画生成で効率化できる工程と、人が判断すべき工程がわかる
- 著作権の類似性チェックとディープフェイクの企業リスクへの対策がわかる
- 研修・商品説明・SNS動画の使い分けと、自社運用か外部委託かの判断方法がわかる
AI動画生成は、テキストや静止画から短い動画を作れる技術として、SNS投稿用の縦型動画、社内研修の説明動画、商品紹介の動画など、業務のさまざまな場面で使われ始めています。一方で、業務で使おうとすると「作った動画をどう運用し続けるか」「著作権的に問題はないか」「ディープフェイクと疑われないか」という疑問が必ず出てきます。本記事では、AI動画生成を業務に取り入れたい担当者向けに、動画を作ってから公開・運用するまでの業務フロー、著作権とディープフェイクのリスク、用途別の使い方、失敗パターン、社内ルール、効果の測り方までを、文化庁や経済産業省の公開資料をもとに整理します。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な利用可否の判断が必要な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
あなたのAI動画生成の使い方を診断
Q1. AI動画生成を使いたい場面は?
おすすめ記事
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
AI動画生成、次の一歩はSNS運用の体制づくり
AI動画生成を業務で成果につなげるには、動画を1本作れるかどうかよりも、「台本、ナレーション、映像、確認、投稿、分析」という一連の流れを誰が担い続けるかを先に決めることが重要です。
AI動画生成と特に相性が良いのが、TikTokやInstagramのリール、YouTubeのショートといった15秒から60秒程度の縦型の短尺動画です。短尺動画は1本あたりの尺が短いため、AIが苦手とする長い時間の一貫性(同じ人物や背景が途中で変わらないこと)の問題が表に出にくく、企画の数を増やしてテストするというAIの強みを活かしやすい形式です。一方で、SNSでは継続的な投稿が前提になるため、1本作って終わりではなく、毎週複数本の動画を企画し、生成し、確認し、投稿し、数字を見て次の企画に反映する作業が発生し続けます。AI動画生成で実際に置き換えられるのは、この流れの一部にすぎません。
下の表は、AIを使ってSNS向けの短尺動画を1本作る場合の代表的な業務フローです。AIで効率化しやすい工程と、人の判断が残る工程を分けて整理しています。
| 工程 | AIで効率化できること | 人が判断すること |
|---|---|---|
| 1. 企画 | テーマ案やフックとなる冒頭の言い回しを複数出す | 自社の目的・ターゲットに合うテーマを選ぶ |
| 2. 台本作成 | 文章生成AIで秒数に合わせた台本のたたき台を作る | 事実関係や表現の誇張がないかを確認する |
| 3. ナレーション生成 | 音声合成で台本を読み上げる音声を作る | 実在の人物の声に似せていないかを確認する |
| 4. 映像生成 | テキストや静止画から映像を生成し、縦型に書き出す | 不自然な動き、ロゴの写り込み、類似性を確認する |
| 5. 投稿 | キャプションやハッシュタグの候補を出す | 投稿時間や、AI生成である旨の表示の要否を判断する |
| 6. 分析と改善 | 視聴データの傾向をまとめる | 次の企画の方向性を決める |
表を見ると、AIが担えるのは主に「たたき台を速く作る」部分で、テーマの選定、権利とリスクの確認、数字を見た改善といった判断は、どこまでいっても人に残ることが分かります。担当者が1人しかいない組織では、この判断の部分が週に数本分積み重なり、動画を作る時間が減っても、全体の負担はあまり減らないということが起こりがちです。
そのため、AI動画生成の導入を検討する段階で、自社で内製し続けるのか、TikTokなどの短尺動画の運用を代行会社に任せるのかを比べておくと、後から体制を組み直す手間を減らせます。お名前.comビジネスコンシェルジュの比較記事では、TikTok運用代行会社を選ぶ際のポイントとして、サービスの対応範囲、料金体系、実績の3点を挙げています。自社でAI動画生成を運用する場合と比べると、次のような違いがあります。
| 進め方 | 向いているケース | 強み | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 自社でAI動画生成を運用 | 投稿本数が少ない、社内動画が中心 | 費用を抑えやすく、修正もすぐにできる | 権利確認や分析の仕組みを自社で整える必要がある |
| TikTok運用代行(企画から分析まで一括タイプ) | 短尺動画で集客や売上につなげたい | 戦略立案、動画の企画・制作、投稿、効果測定をまとめて任せられる | 自社に運用ノウハウが蓄積されにくい |
| TikTok運用代行(制作・投稿中心タイプ) | 方針は自社で決め、作業だけを任せたい | 必要な範囲だけを依頼できる | 動画の修正や追加に別料金がかかる場合がある |
| 自走支援型の運用代行 | いずれは自社で運用できるようにしたい | 運用ノウハウを共有してもらいながら進められる | 完全に任せたい場合は向かない可能性がある |
比較記事では、料金体系について、定額の「月額契約型」と、フォロワーの増加数や再生回数などに応じて費用が発生する「成果報酬型」の2種類があると整理されています。紹介されているサービスの中には、縦型動画のノウハウをもとに企画から制作まで担うものや、データ分析とAIの活用を強みとするものもあります。AI動画生成を自社で使いこなせるか不安がある場合や、動画の数を増やしても分析と改善まで手が回らない場合は、短尺動画の運用ごと外部に任せる選択肢も比べてみてください。
短尺動画の運用を丸ごと任せるなら
TikTok運用代行を比較する →AI動画生成とは|テキストから映像を作る技術
AI動画生成とは、文章による指示(プロンプト)や静止画をもとに、大量の映像データから学習したAIモデルが、動きのある新しい動画を作り出す技術です。
現在主流の動画生成AIの多くは、ノイズから少しずつ映像を組み立てていく「拡散モデル」と呼ばれる仕組みを、時間方向にも広げたものです。静止画の生成では1枚の画像を整えれば済みますが、動画では前後のフレームで人物の顔や背景、物の形が破綻せずにつながっている必要があります。そのため、動画生成は画像生成よりも計算量が大きく、長い尺になるほど「途中で人物の服装が変わる」「手の指の数がおかしくなる」「背景の文字が崩れる」といった不自然さが出やすくなります。業務で使う際に、数十秒程度の短い尺から始めるのが現実的とされるのはこのためです。
生成方式は、大きく次の3つに分けられます。目的に応じて使い分けることで、意図に近い結果を得やすくなります。
| 生成方式 | 仕組み | 向いている用途 |
|---|---|---|
| テキストから動画 | 文章の指示だけで映像を生成する | イメージ映像、SNS投稿の背景映像など、ゼロから世界観を作りたい場合 |
| 画像から動画 | 既存の静止画を動かす | 自社の商品写真やイラストを活かしたい場合 |
| アバター・スライド型 | 原稿を入力すると、架空の話者やスライドに合わせたナレーション動画を作る | 研修動画やマニュアル動画など、説明が中心の場合 |
AI動画生成のもう一つの特徴は、同じ指示でも毎回違う映像が出ることです。これは短時間で多くのバリエーションを作れる利点であると同時に、「前回と同じ映像を再現する」「どの指示から生まれた動画かを後から説明する」ことが難しいという弱点にもなります。業務で使う場合は、生成に使ったツール名、日付、プロンプト、入力した素材を記録しておくと、後から問い合わせを受けたときの説明材料になります。
また、生成AIツールには、動画生成に特化したもの、対話型AIに動画生成機能が組み込まれたもの、動画編集ソフトやデザインツールの一機能として提供されるものなど、いくつかの形態があります。普段使っている業務ツールに組み込まれている機能から試すと、アカウント管理や社内の利用ルールを新たに作る負担を抑えられます。
ツールを選ぶときの確認ポイント
動画生成AIは、同じ「無料プランあり」と書かれていても、使える範囲がサービスごとに大きく異なります。業務で使うツールを選ぶ際は、画質の印象だけで決めず、次の項目を利用規約や料金ページで確認してから試用すると、導入後の手戻りを減らせます。
| 確認項目 | 確認する内容 | 業務で問題になりやすい点 |
|---|---|---|
| 商用利用の可否 | プランごとに商用利用が認められているか、生成物の権利の扱い | 無料プランで作った動画を広告やSNSの公式アカウントで使えない場合がある |
| 透かし(ウォーターマーク) | 書き出した動画にサービスのロゴが入るか | 外部公開用には使いにくく、有料プランへの切り替えが前提になる |
| 尺・解像度・生成回数 | 1回で生成できる秒数、出力解像度、月あたりの生成回数やクレジット | やり直しが多いと、想定より早く上限に達する |
| 日本語対応 | 画面表示、日本語プロンプトの理解度、字幕や音声の日本語品質 | 担当者以外が使えず、特定の人に作業が集中する |
| 入力データの扱い | アップロードした素材が学習に使われるか、データの保管場所 | 社内資料や未公開の商品画像を入力できるかの判断材料になる |
意図に近い映像を得るプロンプトの書き方
動画生成では、「おしゃれなカフェの動画」のような抽象的な指示よりも、映像を構成する要素を分けて具体的に書く方が、意図に近い結果を得やすくなります。基本は、被写体(誰が、何が)、動作(どう動くか)、背景と場所、カメラワーク(寄り・引き、固定か移動か)、雰囲気(光、色味、時間帯)の5つを順に書くことです。たとえば「木製のカウンターに置かれたコーヒーカップから湯気が立ちのぼる。朝の柔らかい自然光。カメラはゆっくり近づく。縦型、5秒」のように書くと、生成のやり直しを減らせます。避けたい要素(文字の写り込み、人物の手元など)を指定できるツールでは、その機能もあわせて使います。
また、動画生成AIは「素材となる映像をゼロから作る」役割、動画編集AIは「字幕、尺の調整、BGM、ナレーションの合成などで仕上げる」役割と分けて考えると、作業が整理しやすくなります。1本の動画をすべて生成AIで完結させようとするより、数秒の映像素材を複数生成し、編集ツールでつなぎ合わせて字幕を入れる方が、業務で使える品質に届きやすいのが実情です。前述の業務フローの「映像生成」と「確認」の間に、この編集工程を入れておくと、担当者ごとの品質のばらつきも抑えられます。
著作権リスク|既存作品との類似性チェック
AI動画生成の著作権リスクは、生成した映像が既存の作品と似ていないか(類似性と依拠性)、入力した素材の権利、生成物のサービス規約上の扱いという3点を確認することで、大部分を管理できます。
類似性と依拠性の考え方
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」では、AIを使って生成した場合も、AIを使わずに作った場合と同様に、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」が認められれば著作権侵害に該当し得るという考え方が示されています。類似性とは、生成物が既存の著作物の創作的な表現と似ていること、依拠性とは、既存の著作物をもとにして作られたと評価できることを指します。同資料では、既存の著作物の題名などをプロンプトに入力して生成した場合は、依拠性が推認されやすいという考え方も示されています(文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」2024年3月15日、https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf)。
動画の場合、確認すべき要素は画像よりも多くなります。映像そのものに加えて、キャラクターのデザイン、カメラワークや場面構成、BGM、ナレーションの声質など、1本の動画の中に複数の表現が含まれるためです。特に、有名な映画やアニメのワンシーンを思わせる構図を指示したり、特定の作品名や監督名を入れて「〇〇風の映像」と指定したりすると、類似性と依拠性の両方が問題になりやすくなります。
| 避けたい指示 | 安全な言い換え例 |
|---|---|
| 特定の映画・アニメの作品名や監督名を入れて「〇〇風」と指定する | 「柔らかい自然光」「手持ちカメラ風」など一般的な撮影表現で指定する |
| 有名なキャラクターを登場させる | 年齢層、服装、雰囲気などの属性だけを指定し、独自の人物にする |
| 他社のCM動画をアップロードして「同じ構成で」と指示する | 場面の順番や伝えたい内容を言葉で説明する |
| 有名なナレーターや声優の声に似せるよう指示する | 「落ち着いた低めの声」など声の特徴だけを指定する |
入力素材とBGMの権利
画像から動画を作る方式では、入力する静止画そのものの権利も確認が必要です。自社で撮影した商品写真であれば問題になりにくい一方、Web上で見つけた画像や、素材サイトからダウンロードした画像は、利用規約でAIへの入力や加工を制限している場合があります。BGMについても、フリー音源であっても商用利用や動画での使用条件が決まっていることが多いため、動画に組み込む前に規約の範囲を確認してください。SNSアプリ内で提供される楽曲は、そのアプリ内での利用に限って許諾されている場合もあり、同じ動画を別のSNSや広告に転用するときは改めて確認が必要です。
生成した動画に自社の著作権は生じるか
見落とされやすいのが、自社がAIで作った動画に著作権が発生するかという逆方向の論点です。文化庁の資料では、AIが自律的に生成したものは著作物に該当しないと考えられる一方、人が創作的な寄与をしてAIを道具として使った場合は著作物に該当し得るとされています。簡単な指示だけで生成した動画は、他社に似たような映像を使われても権利を主張しにくい場合があります。ブランドの顔となるキャラクターや、繰り返し使うオープニング映像などは、AIの生成物をたたき台にとどめ、人が構成・編集を加えて仕上げる運用にしておくと安心です。
文化庁は、AIの利用者が確認すべき事項を整理した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表しています。社内ルールを作る際は、この資料の利用者向けの項目を下敷きにすると、確認漏れを防ぎやすくなります。
ディープフェイクとの関係と企業リスク
ディープフェイクとは、AIを使って実在の人物の顔や声を模倣し、本人が実際には言っていないことを話しているように見せる動画や音声のことで、企業にとっては「自社が作ってしまうリスク」と「自社が被害を受けるリスク」の両面があります。
動画生成の技術とディープフェイクの技術は、根本的には同じ仕組みの上に成り立っています。そのため、業務でAI動画を作る場合も、実在の人物名を指示に入れる、社外の人物の写真を入力して動かす、といった使い方をすると、意図せずディープフェイクに近いものを作ってしまうおそれがあります。実在の人物の容姿や声を無断で使うと、肖像権やパブリシティ権の侵害を問われる可能性があるうえ、公開後に「本物の発言だ」と誤解されて拡散されれば、企業の信用問題にも発展します。
もう一方の「被害を受けるリスク」も見逃せません。経営者や社員の顔と声を模倣した偽の動画で、取引先や社員に送金や情報提供を指示するといった詐欺の手口も報じられています。自社の公式アカウントで経営者や社員の顔出し動画を多く公開している企業ほど、模倣に使える素材が多いことになるため、社内の送金・承認手続きで「動画や音声だけで判断しない」というルールを設けておくことも、ディープフェイク対策の一部です。
| リスクの種類 | 起こりやすいケース | 対策 |
|---|---|---|
| 肖像権・パブリシティ権 | 有名人や実在の人物に似た人物が生成される | 架空の人物像として生成し、特定人物を連想させる動画は使わない |
| 信用・ブランドへの影響 | AI生成の動画を実写と誤解され、後から批判を受ける | 必要に応じてAI生成であることを表示する |
| 誤情報の拡散 | 実在の出来事や発言と誤認される動画が広まる | 公開前に誤認のおそれがないかを複数人で確認する |
| なりすまし被害 | 経営者の偽動画で送金や情報提供を指示される | 動画や音声だけで判断せず、別経路で本人に確認する |
競合記事ではあまり触れられていない実務上のポイントが、公開先のプラットフォームのルールです。主要な動画・SNSプラットフォームでは、実写と見分けがつきにくいAI生成コンテンツについて、投稿時にAI生成であることの表示を求めたり、実在の人物のなりすましを禁止したりするポリシーを設けている場合があります。ルールは各プラットフォームで異なり、改定されることもあるため、投稿先ごとに最新のコミュニティガイドラインを確認してください。あわせて、生成物に電子透かしや来歴情報を付与する仕組みを持つサービスを選ぶと、自社が作った動画であることを後から説明しやすくなります。
業務での使い方|研修動画・商品説明・SNS動画
AI動画生成の業務での使い方は、研修動画、商品説明動画、SNS動画の3つが代表的で、公開範囲が広くなるほど確認の厳しさと運用の負担が大きくなります。
| 用途 | 具体例 | 公開範囲 | 確認の厳しさ | 運用の負担 |
|---|---|---|---|---|
| 研修・社内動画 | 業務マニュアル、情報セキュリティ研修、新人向け説明 | 社内のみ | 基本的な確認でよいが、社外に見せる場合は再確認 | 低い(内容改定時に作り直し) |
| 商品説明動画 | 使い方の説明、サービス紹介、Webサイト掲載用 | 不特定多数 | 著作権に加え、景品表示法の観点でも確認 | 中程度(商品改定時に更新) |
| SNS動画 | TikTokやリールの縦型動画、キャンペーン告知 | 不特定多数(拡散しやすい) | 類似性、プラットフォームのルールまで確認 | 高い(毎週の企画・投稿・分析) |
研修・社内動画は、AI動画生成を最初に試す用途として向いています。原稿を用意すれば、アバター型やスライド型の動画を短時間で作れるため、これまで撮影の手間を理由に文書だけで済ませていたマニュアルを動画化できます。ただし、社内向けに作った研修動画を、取引先への説明や採用説明会で流す場面は意外に多いため、社外に出す時点で改めて確認する運用にしておくと安全です。
商品説明動画では、AIで生成した「理想的な使用シーン」や「実際より美しい仕上がり」を、実際の商品の映像であるかのように見せないことが重要です。実際より著しく優良であると誤認させる表示は、景品表示法上の問題になる可能性があります。イメージ映像として使う場合はその旨を明記し、実際の商品やサービスと異なる印象を与えないよう注意してください(消費者庁「景品表示法」https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/)。
SNS動画は、AI動画生成の強みが最も活きる一方で、運用の負担が最も大きい用途です。SNSでは視聴維持率や冒頭数秒での離脱が評価に大きく影響するため、企画の良し悪しが成果を左右します。AIで動画の本数を増やせても、どの企画が伸びたのかを分析して次に活かす工程まで回らなければ、投稿を続けても成果につながりにくくなります。動画の制作はAIで効率化しつつ、企画と分析は専門家に任せる、あるいは運用全体を任せるという分担も、選択肢として検討する価値があります。
SNS動画の運用を専門家に任せる
TikTok運用代行を比較する →導入でよくある失敗パターン4つ
AI動画生成の導入でつまずく原因の多くは技術ではなく運用にあり、実在人物への寄せ、確認の省略、個人アカウントでの利用、作って終わりの4つが典型的な失敗です。
| 失敗パターン | Before(よくある状態) | After(改善後) |
|---|---|---|
| 1. 実在人物に寄せて生成する | 話題性を狙って有名人に似た人物や声を使う | 架空の人物像と声の特徴だけを指定する |
| 2. 生成後の確認を省略する | 出てきた動画をそのまま投稿する | 通しで再生し、ロゴ・文字・人物・音声を別の担当者が確認する |
| 3. 個人アカウントで商用利用する | 担当者が個人で登録した無料プランの動画を公式アカウントに投稿する | 会社で契約したプランに統一し、規約の確認日を記録する |
| 4. 作って終わりになる | 本数は増えたが、どの動画が成果につながったか分からない | 投稿ごとに企画の狙いと数値を記録し、月1回振り返る |
2つ目の「確認の省略」は、動画ならではの落とし穴があります。静止画と違い、動画は数秒だけ映った背景の看板や、途中で一瞬崩れる人物の手などを見落としやすいためです。確認する際は、少なくとも1回は通しで再生し、もう1回は再生速度を落としたり、要所で一時停止したりして細部を見ると、見落としを減らせます。
4つ目の「作って終わり」は、AI動画生成を導入した組織で特に起こりやすい失敗です。AIで制作の時間が短くなると、投稿本数を増やすこと自体が目的になり、振り返りが後回しになりがちです。本数を増やすより、企画の狙いを記録し、数値と照らし合わせて改善するサイクルを先に作る方が、結果的に成果につながりやすくなります。
安全に活用するための社内ルール
AI動画生成を安全に使うには、使ってよいツールとプラン、指示に入れてはいけない情報、公開前の確認者、記録の残し方の4点を、社内ルールとして文書にしておくことが有効です。
経済産業省と総務省が取りまとめた「AI事業者ガイドライン」では、AIを業務に使う「AI利用者」にも、提供者が示した適正な利用範囲を守ることや、入力する情報の取り扱いに注意することなどが求められています。下の表は、こうした考え方を動画生成の業務に当てはめたルールの例です(経済産業省「AI事業者ガイドライン」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html)。
| ルールの項目 | 決めておく内容の例 |
|---|---|
| 使ってよいツールとプラン | 商用利用の可否、生成物の扱い、入力データの学習利用の有無を確認したうえで、会社として契約したものに限る |
| 指示に入れてはいけない情報 | 作品名・監督名・実在人物名、顧客から預かった素材、発売前の商品情報 |
| 公開前の確認 | 生成した人とは別の担当者が、類似性、人物、ロゴ、音声、表示の適切さを確認して承認する |
| AI生成の表示 | 実写と誤認されるおそれがある動画や、プラットフォームが求める場合は、AI生成である旨を表示する |
| 記録と見直し | ツール名、生成日、プロンプト、入力素材、公開先を記録し、規約を半年に1回など定期的に再確認する |
入力データの扱いは、特に注意したいポイントです。顧客から預かった写真、社員が写った動画、発売前の商品画像などをツールにアップロードすると、規約によってはAIの学習に使われる可能性があります。機密性の高い素材はアップロードしない、または学習に使われない設定やプランで扱う、という基準を決めておくと、現場で迷わずに済みます。社員の顔や声を使って動画を作る場合は、本人の同意を得たうえで、利用範囲と公開期間を伝えておくことが望ましいです。
運用代行会社や制作会社に動画制作を依頼する場合も、同じルールを共有しておきましょう。外部の担当者がAIを使って動画を作ること自体は珍しくなくなっていますが、どのツールを使い、どこまで確認したかが分からないまま公開すると、問題が起きたときに自社で説明できません。依頼時のヒアリングで、AIの利用有無と確認体制をあらかじめ確認しておくと安心です。
効果をどう確認するか
AI動画生成の効果は、動画1本あたりの制作時間だけでなく、確認や修正、投稿後の分析まで含めた総工数と、視聴や問い合わせといった成果指標の両方で確認すると、実態に近い判断ができます。
| 測る項目 | 記録の方法 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1本あたりの制作時間 | 企画から動画完成までの時間 | 生成のやり直し回数も一緒に記録する |
| 確認・承認の時間 | 類似性の確認から承認までの時間 | 導入後にかえって増えていないか |
| 外部費用 | 撮影・編集の外注や素材購入にかけていた費用 | ツールの利用料と比べてどれだけ差があるか |
| 視聴の質 | 視聴完了率、平均視聴時間 | AI生成の動画で視聴が途中で離脱されていないか |
| ビジネス成果 | フォロワー数、サイトへの遷移数、問い合わせ数 | 本数の増加が成果の増加につながっているか |
制作面の効果は、「導入前の1本あたりの総工数から導入後の総工数を引き、月の制作本数を掛ける」ことで月あたりの削減時間を出し、担当者の時間単価を掛けてツールの利用料を差し引くと、おおよその削減効果が分かります。数値の前提は自社の実績に置き換えて計算してください。研修動画のように社内で使う用途では、この制作面の効果が主な判断材料になります。
一方、SNS動画では、制作時間が減っても視聴完了率や問い合わせ数が伸びなければ、投資に見合った効果とはいえません。1か月から3か月ほど記録を続け、「制作は速くなったが、成果は横ばい」という結果が出た場合は、ツールを変えるより、企画と分析の体制を見直す方が効果的なことが多くあります。TikTok運用代行の比較記事でも、運用代行会社を選ぶ際に、コンテンツごとの視聴回数やエンゲージメント率、フォロワーの増減などを詳細にレポートしてもらえるかを確認するよう勧めています。社内で分析まで手が回らない場合は、成果の報告と改善提案まで含めて外部に任せ、自社は方針決めと承認に集中するという分担も検討してみてください。
動画運用の成果を最大化する
TikTok運用代行を比較する →よくある質問(FAQ)
Q. AI動画生成で作った動画は商用利用できますか?
A. 利用するサービスとプランの規約によって異なります。無料プランでは商用利用が制限されている場合もあるため、利用前に最新の利用規約を確認し、会社として管理できるアカウントで生成してください。
Q. 生成した動画が既存作品に似ていないかはどう確認すればよいですか?
A. 通しで再生したうえで、要所で一時停止して人物、ロゴ、文字、構図を確認します。特定の作品名や監督名をプロンプトに入れないことも重要です。判断に迷う場合は使用を見送るか、明確に異なる内容に作り直してください。
Q. ディープフェイクと疑われないためにはどうすればよいですか?
A. 実在の人物名や写真を使わず、架空の人物像として生成することが基本です。実写と誤認されるおそれがある動画は、必要に応じてAI生成である旨を表示し、投稿先のプラットフォームのルールも確認してください。
Q. AI動画生成はどの業務から試すのがおすすめですか?
A. 社内限定で使う研修動画やマニュアル動画から始めると、リスクを抑えながら使い方を学べます。社外に公開するSNS動画や商品説明動画は、社内ルールと確認体制を整えてから広げるのが安全です。
Q. 社員の顔や声を使ってAI動画を作ってもよいですか?
A. 本人の同意を得たうえで、利用範囲と公開期間を伝えておくことが望ましいです。退職後の扱いも含めて事前に取り決めておき、同意の記録を残しておくと後のトラブルを避けやすくなります。
Q. SNS動画の企画や運用まで外部に任せることはできますか?
A. TikTokなどの短尺動画であれば、戦略立案から動画の企画・制作、投稿、効果測定までを任せられるTikTok運用代行という選択肢があります。対応範囲や料金体系はサービスによって異なるため、AIの利用方針や確認体制も含めて事前に相談するとよいでしょう。
まとめ
AI動画生成は動画制作の時間を大きく減らせる一方で、著作権やディープフェイクへの配慮と、公開後の運用まで含めた体制づくりが、業務で成果を出し続けるための前提になります。今日から取り組めることを4つにまとめます。
- 作品名・監督名・実在人物名をプロンプトに入れないルールを決める
- 会社として使うツールとプランを決め、生成した人とは別の人が公開前に確認する
- 研修動画など社内向けの用途から試し、SNS動画は確認体制を整えてから広げる
- 制作時間と成果指標を記録し、自社で運用を続けるか、TikTok運用代行などに任せるかを比べる
参考文献
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」2024年3月15日 https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
- 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」2024年7月31日 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf
- 文化庁「AIと著作権について」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html
- 消費者庁「景品表示法」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/