【厚労省告示準拠】BPOとは|定義・派遣との違い・5ステップ
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- BPOは業務プロセスのまとまりを外部に継続的に任せる経営手法
- 派遣との違いは指揮命令権の所在で、実態により判断される
- 手順が決まり専門知識が要る人事労務は最初の委託に向いている
「BPOという言葉は聞くが、アウトソーシングや派遣と何が違うのか分からない」「うちのような中小企業でも使えるのか」「何から任せればよいのか」と迷っていませんか。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、業務の一部の作業ではなく、業務プロセスのまとまりを企画・運用・改善まで含めて外部の専門事業者に継続的に委託する経営手法です。人手不足や担当者の退職による引き継ぎの苦労、法改正への対応負荷といった課題を背景に、規模を問わず活用が広がっています。この記事では、BPOの定義と似た用語との違い、厚生労働省の告示に基づく派遣との見分け方、委託できる業務、導入の5ステップ、企業規模別の活用パターン、よくある失敗までを、公的資料を出典に実務担当者の目線で整理します。
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BPOの第一歩、人事労務代行サービスを比較する
BPOを初めて検討する企業にとって、最も始めやすい領域の1つが人事労務です。給与計算、社会保険や労働保険の手続き、入退社の手続き、年末調整といった業務は、毎月・毎年の手順がほぼ決まっている一方で、社会保険料率や税制の改正に合わせて担当者が知識を更新し続けなければなりません。担当者が1人しかいない企業では、その人が休職や退職をした瞬間に業務が止まるリスクも抱えています。「手順が決まっている」「専門知識が必要」「属人化しやすい」という3つの条件がそろう業務は、BPOの効果が出やすい典型です。
人事労務の外部委託には、給与計算だけを任せる形から、勤怠管理や入退社手続きまで労務全般をまとめて任せる形まで幅があります。人事労務代行サービスとして紹介されている代表的なサービスの特徴を、委託の範囲と進め方の違いに注目して並べると次のとおりです。
| サービス名(提供会社) | 強み | 留意点 |
|---|---|---|
| Remoba労務(株式会社Enigol) | 人事労務・給与計算から勤怠までまとめて任せられる。勤怠アラートや資料の回収・連絡も行うため社労士との連携がスムーズ | ストレスチェックやハラスメント外部相談窓口、各システム導入はオプション |
| StepBase(パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社) | 月10時間から利用でき、繁忙期や人手不足時に柔軟に対応。総務・経理・採用など周辺業務もまとめて依頼可能 | 情報漏洩リスクやセキュリティ対応の事前確認が不可欠 |
| freee人事労務アウトソース(フリー株式会社) | 勤怠管理・給与計算・社会保険手続きなどをクラウド上でまとめて管理。社会保険労務士などの専門家と連携 | 料金を確認するには問い合わせが必要 |
同じ人事労務代行でも、少ない時間から試せるサービス、労務をまるごと任せられるサービス、クラウドの仕組みと専門家の支援を組み合わせたサービスでは、向いている企業が異なります。どれが優れているかではなく、自社が切り出したい業務の範囲と、社内に残したい判断業務との線引きに合うかで選ぶことが大切です。料金体系や対応範囲は変わることがあるため、最新の情報は各サービスの資料で確認してください。
人事労務代行サービスの選び方(対応業務・サポートの品質・セキュリティ)と、ほかのサービスも含めた比較は、次の記事で詳しく紹介しています。
BPOとは|業務プロセスのまとまりを外部に任せる経営手法
BPOとは「Business Process Outsourcing」の略で、業務プロセスのまとまりを、設計から運用・改善まで含めて外部の専門事業者に継続的に委託する経営手法です。日本語では「業務プロセスの外部委託」と訳されます。特定の作業を単発で外注する形とは異なり、業務の流れそのものを任せ、委託先が手順の標準化や品質管理、改善の提案まで担う点に特徴があります。
例えば経理の場合、「請求書のデータ入力だけを外注する」のは作業単位の委託です。これに対して「請求書の受け取りから仕訳、支払いの準備、月次の締めまでの流れをまとめて任せ、処理件数や締めの日数といった指標で成果を管理する」のがBPOの考え方です。委託先は業務を引き受けるだけでなく、どうすればミスを減らせるか、どこを自動化できるかといった改善にも関わります。
BPOが注目される背景
BPOの活用が広がっている背景には、大きく3つの事情があります。1つ目は人手不足です。バックオフィスの担当者を採用・育成するには時間と費用がかかり、採用しても定着しないことがあります。2つ目は法令対応の負荷です。社会保険、税、電子帳簿の保存など、バックオフィスに関わる制度は頻繁に見直され、担当者が継続的に知識を更新する必要があります。3つ目はデジタル化の流れです。クラウドのシステムが普及したことで、社外の事業者と業務データを安全に共有しやすくなり、委託のハードルが下がりました。
市場の規模も拡大しています。矢野経済研究所の調査では、国内のBPO市場は2024年度に事業者売上高ベースで5兆786億5,000万円(前年度比4.0%増)と推計されています(民間調査による参考値)。中小企業庁の2022年版小規模企業白書でも、事業の見直しの手段としてアウトソーシングが取り上げられており、規模の小さな事業者にとっても身近な選択肢になっています。
BPO・アウトソーシング・BPRなど似た用語との違い
BPOはアウトソーシングの一形態です。周辺には似た略語が多く、混同されやすいため、対象範囲と主体で整理しておきます。
| 用語 | 正式名称 | 対象範囲 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| アウトソーシング | Outsourcing | 外部委託全般(作業単位から業務単位まで) | データ入力の代行 |
| BPO | Business Process Outsourcing | 業務プロセスのまとまり | 経理や労務の一括委託 |
| ITO | Information Technology Outsourcing | システムの運用・保守・開発 | 社内システムの運用保守 |
| RPO | Recruitment Process Outsourcing | 採用プロセス | 母集団形成から面接調整まで |
| KPO | Knowledge Process Outsourcing | 分析・調査などの知的業務 | 市場調査、データ分析 |
| BPR | Business Process Re-engineering | 業務プロセスの抜本的な再設計(自社が主体) | 受発注フローの全社見直し |
特に混同されやすいのがBPOとBPRです。BPRは自社の業務プロセスを見直す取り組みで、外部委託を前提としません。ただしBPOを導入する過程では、委託する業務の手順を整理・文書化するため、結果としてBPRに近い効果が得られることがあります。「外に任せるか」と「やり方を作り直すか」は別の問いとして考えると整理しやすくなります。
BPOと派遣の違い|指揮命令権と契約形態で見分ける
BPOと人材派遣の最大の違いは、働く人に業務の指示を出すのが誰か(指揮命令権の所在)です。BPOは業務委託(請負や準委任)の契約で、委託先の事業者が自社の従業員に指示を出して業務を進めます。人材派遣では、派遣先の企業が派遣された労働者に直接指示を出します。この区分は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、いわゆる37号告示)で示されています。
| 比較項目 | BPO(業務委託) | 人材派遣 |
|---|---|---|
| 契約の目的 | 業務の遂行や成果 | 労働力の提供 |
| 業務の指示を出す人 | 委託先(受託者) | 派遣先(自社) |
| 根拠となる法律 | 民法(請負・準委任) | 労働者派遣法 |
| 業務の進め方 | 委託先が手順を設計し、成果で管理する | 自社が手順を決め、日々指示する |
| 業務の完成・品質の責任 | 委託先が負う(契約内容による) | 自社が負う |
| 向いている場面 | 手順を任せて成果で管理したい業務 | 自社のやり方で進めたいが人手が足りない業務 |
契約書の名称ではなく実態で判断される
注意したいのは、契約書のタイトルが「業務委託契約」であっても、実態として発注者が委託先の従業員に直接指示を出していれば、偽装請負と判断されるおそれがある点です。偽装請負と判断されると、労働者派遣法違反として発注者側も責任を問われる可能性があります。厚生労働省は37号告示の疑義応答集を公開し、判断の考え方を具体的に示しています。
37号告示で請負と認められるための主なポイントは、次のように整理できます。
- 業務の進め方や順序、時間配分の指示を、受託者が自ら行っていること
- 労働時間や休憩、服務規律などの労務管理を、受託者が自ら行っていること
- 業務に必要な資金や機材を受託者が用意し、事業主として責任を負っていること
- 単に肉体的な労働力を提供するのではなく、受託者の専門的な技術や経験で業務を処理していること
実務でつまずきやすいのは、委託後に「この書類を先に処理してほしい」「今日は残業して対応してほしい」と、自社の担当者が委託先のスタッフに直接頼んでしまう場面です。要望は委託先の責任者を通じて伝える、定例の打ち合わせで優先順位を決めるなど、指示の出し方を契約の段階で決めておくことが大切です。
本章の法令に関する記述は、公的資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案についての法的助言ではありません。契約書の作成や偽装請負に当たるかの判断は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
BPOで委託できる業務と向き不向き
BPOで委託できる業務は、経理・人事労務・総務といったバックオフィスから、問い合わせ窓口などのフロントオフィス、ITの運用まで幅広くあります。代表的な領域は次のとおりです。
| 領域 | 代表的な業務 |
|---|---|
| 経理・会計 | 仕訳入力、請求書の発行、支払いの準備、月次の締め |
| 人事・労務 | 給与計算、社会保険の手続き、勤怠管理、入退社の手続き、年末調整 |
| 総務 | 受付、郵便物の管理、備品の調達、社内の問い合わせ対応 |
| フロントオフィス | コールセンター、カスタマーサポート、営業事務 |
| IT | 社内ヘルプデスク、システムの監視・運用、データ入力 |
| 採用 | 求人の出稿、応募者対応、面接の日程調整 |
どの業務でも委託できるわけではなく、向き不向きがあります。業務を委託してよいかを判断する際は、次の4つの観点で見ると整理しやすくなります。
| 判断の観点 | BPOに向いている | 社内に残した方がよい |
|---|---|---|
| 手順の決まり具合 | 手順が決まっていて文書化できる | 毎回の判断が必要で手順にしにくい |
| 競争力との関係 | どの会社でもやり方が大きく変わらない | 自社の強みや独自性を生む |
| 専門知識 | 法改正への追随など専門知識が要る | 自社の事業固有の知識が要る |
| 業務量の変動 | 繁忙期と閑散期の差が大きい | 量が少なく、切り出すと調整の手間が上回る |
この4つの観点に最も多く当てはまりやすいのが、冒頭で紹介した人事労務の領域です。給与計算の手順は企業ごとに大きくは変わらず、社会保険料率や税制の改正に追随する専門知識が要り、年末調整の時期に業務量が大きく増えます。一方、商品開発や重要な顧客との関係づくりのように、自社の強みに直結する業務は社内に残すのが一般的です。
人事労務の中でも、給与計算だけを任せる「給与計算代行」と、労務全般を任せる「人事労務代行」では範囲が異なります。給与計算代行で任せられる内容の詳細は、給与計算代行(アウトソーシング)とはの記事で解説しています。
BPO導入の5ステップ
BPOの導入は、業務の棚卸し、委託範囲と指標の定義、委託先の選定、契約形態の選択、移行と運用の5ステップで進めるのが基本です。いきなり委託先選びから始めると、自社で何を任せたいのかが曖昧なまま契約が進み、運用が始まってから「思っていた範囲と違う」という行き違いが起こりやすくなります。
| ステップ | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1. 業務の棚卸し | 業務を一覧にし、社内に残す業務と任せる業務に分ける | 業務一覧、委託候補リスト |
| 2. 委託範囲と指標の定義 | どこからどこまで任せるか、成果を何で測るかを決める | 業務範囲の定義書、サービス水準(SLA) |
| 3. 委託先の選定 | 複数社から提案を受け、対応範囲・実績・情報管理体制を比べる | 比較表、選定理由 |
| 4. 契約形態の選択 | 請負か準委任かを選び、指示の出し方や情報の扱いを契約に書く | 業務委託契約書 |
| 5. 移行と運用 | 並行運用期間を設けて引き継ぎ、定例会で改善を続ける | 業務マニュアル、定例報告 |
ステップ1 業務の棚卸し
まず、担当者ごとに日次・週次・月次・年次で発生する業務を書き出します。それぞれにかかっている時間と、担当できる人が何人いるかも記録しておくと、属人化している業務が見えてきます。そのうえで前章の4つの観点を当てはめ、委託の候補を選びます。最初から多くを任せようとせず、1つの領域に絞るのが失敗を避けるコツです。
ステップ2 委託範囲と指標の定義
「給与計算をお願いします」だけでは、勤怠データの確認は誰がするのか、従業員からの問い合わせには誰が答えるのかが曖昧になります。業務の入り口(何を受け取るか)と出口(何を納めるか)、締め切り、例外が起きたときの連絡の流れを文書にしておきます。あわせて、処理の期限を守れた割合やミスの件数など、成果を測る指標をサービス水準(SLA)として決めておくと、運用後の評価がしやすくなります。
ステップ3 委託先の選定
委託先は、費用だけでなく、自社が任せたい範囲に対応できるか、同じ業種や規模の企業での実績があるか、情報の管理体制はどうかを比べて選びます。個人情報を扱う業務では、プライバシーマークやISMSといった第三者認証の有無も判断材料になります。人事労務のように専門資格が関わる領域では、社会保険労務士と連携しているかも確認しておきたい点です。
BPO事業者を比べる際によく挙げられる観点を整理すると、次のようになります。見積金額だけで比べず、各観点を同じ質問で確認すると差が見えやすくなります。
| 選定の観点 | 確認すること | 確認しないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 対応範囲と実績 | 任せたい業務の範囲に対応できるか、同じ業種・規模での受託実績があるか | 業務の一部しか対応できず、残りが社内に戻ってくる |
| 料金体系の透明性 | 基本料金に含まれる業務と、件数超過・例外対応などの追加費用の条件が明示されているか | 運用開始後に想定外の追加費用が積み上がる |
| 情報管理の体制 | プライバシーマークやISMSなどの認証、アクセス権限の管理、事故時の報告体制 | 個人情報や機密情報の漏えい時に対応が遅れる |
| 改善提案の姿勢 | 定例報告や指標の共有があり、手順の見直しを提案してもらえるか | 処理は回るが業務が改善されず、委託前と変わらない |
| 業務量の変動への対応 | 繁忙期の増量や委託範囲の拡大・縮小に柔軟に応じられるか | 繁忙期に処理が滞る、範囲を広げるたびに契約をやり直す |
ステップ4 契約形態の選択
BPOの契約は、民法上の請負(成果物の完成に責任を負う)か準委任(業務の遂行そのものに責任を負う)のいずれかで結ばれることが一般的です。データ入力のように成果物がはっきりしている業務は請負、問い合わせ窓口のように継続的な対応が中心の業務は準委任が選ばれやすい傾向があります。どちらの場合も、37号告示に沿って指示の出し方を契約書に明記し、個人情報の安全管理や再委託の条件、契約終了時のデータ返却についても定めておきます。
ステップ5 移行と運用
移行の際は、いきなり切り替えずに社内と委託先で同じ処理を並行して行う期間を設けると、手順の抜け漏れを発見しやすくなります。運用が始まったら、ステップ2で決めた指標を定例の打ち合わせで確認し、改善点を話し合います。BPOは契約して終わりではなく、委託先と一緒に業務をよくしていく継続的な関係です。
人事労務を最初の委託領域に選ぶ場合、ステップ3の比較では「労務全般を任せるか、給与計算など一部から始めるか」「社労士との連携体制はあるか」「業務の進捗を共有してもらえるか」が主な比較の軸になります。これらの観点で各サービスを見比べたい場合は、次の比較記事が参考になります。
中小企業でのBPO活用パターン
BPOは大企業だけのものではなく、規模に応じた使い方があります。BPOというと大企業が大規模な業務を一括で委託するイメージを持たれがちですが、少ない業務量から依頼できるサービスも増えており、中小企業や個人事業主でも活用できます。規模ごとの典型的な活用パターンを整理すると次のとおりです。
| 規模 | よくある課題 | 活用パターン |
|---|---|---|
| 個人事業主・1人法人 | 本業以外の事務作業に時間を取られる | 記帳や請求書の発行など、手順の決まった事務を切り出す |
| 従業員数十名規模 | 経理と労務を1人の担当者が兼務し、退職時の引き継ぎが不安 | 給与計算や社会保険の手続きを委託し、担当者は判断業務に集中 |
| 従業員百名以上の規模 | 拠点ごとにやり方が異なり、業務が標準化されていない | 委託を機に手順を統一し、複数の領域をまとめて任せる |
中小企業で特に多いのが、経理と労務を1人の担当者が兼務しているケースです。この場合、担当者が休むと給与の支払いや社会保険の手続きが遅れるリスクがあり、BPOは業務の継続性を確保する手段としても意味を持ちます。委託によって担当者の手が空けば、資金繰りの管理や社内制度の見直しといった、社内でしかできない判断業務に時間を振り向けられます。
一方で、業務量が極端に少ない場合は、委託先の最低契約単位を下回り、費用に見合わないこともあります。そのような場合は、クラウドの会計ソフトや給与計算ソフトで作業そのものを減らす方法と比べて判断するのが現実的です。「人に任せる」か「仕組みで減らす」かは二者択一ではなく、クラウドで業務を整えたうえで一部を委託するといった組み合わせも有効です。
BPOのメリットと注意点
規模を問わず期待できる主なメリットと、あわせて押さえておきたい注意点は次のとおりです。
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 自社の強みにつながる業務に人と時間を集中できる | 業務の中身が見えにくくなり、社内にノウハウが残りにくい |
| 採用・教育の手間を減らし、人件費の一部を変動費にできる | 委託先の選定や調整、成果の確認に社内の工数がかかる |
| 専門事業者の知識で法改正に対応しやすくなる | 個人情報を委託先に渡すため、安全管理の確認が必要 |
| 手順が文書化され、属人化が解消される | 特定の委託先への依存が強まり、切り替えが難しくなる |
個人情報を含む業務を委託する場合、個人情報保護法のガイドライン(通則編)では、委託元に対して適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における取扱状況の把握を求めています。給与計算のように従業員の氏名や住所、給与額、扶養家族の情報を扱う業務では特に重要な論点です。また、資本金の規模などによっては、取適法(旧下請法)の対象となり、発注内容を書面で示すことや代金の支払期日を守ることなどが求められる場合があります。
BPOでよくある失敗パターン
BPOの失敗の多くは、委託先の能力ではなく、委託する側の準備不足から起こります。よくある失敗と、その防ぎ方を整理しました。
| 失敗パターン | 起こること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 業務を整理しないまま丸投げする | 例外処理の担当が曖昧になり、ミスや抜け漏れが起こる | 業務の入り口と出口、例外時の連絡の流れを文書化する |
| 費用の安さだけで委託先を選ぶ | 必要な業務が対象外で、追加費用や社内の手作業が残る | 料金に含まれる業務範囲と追加費用の条件を比べる |
| 委託先のスタッフに直接指示を出す | 偽装請負と判断されるおそれがある | 要望は委託先の責任者を通し、定例会で優先順位を決める |
| 任せきりで成果を確認しない | 品質が下がっても気づけず、改善も進まない | サービス水準の指標を決め、定期的に報告を受ける |
| 契約終了時の取り決めがない | 委託先を変えたいときにデータや手順が戻らない | マニュアルとデータの返却、引き継ぎ期間を契約に書く |
このうち「任せきり」と「契約終了時の取り決めがない」は、長く委託するほど影響が大きくなる失敗です。委託する場合でも、成果を評価し改善を求める「管理の役割」は社内に残しておく必要があります。人事労務代行を選ぶときに、作業内容や進捗を共有してくれるか、業務マニュアルを作成してくれるかを確認しておくと、ノウハウが社内から失われるリスクを抑えられます。
進捗の共有やマニュアル作成への対応を含め、人事労務代行サービスごとのサポート内容を比べたい場合は、次の記事を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. BPOは何の略ですか?
A. BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、日本語では「業務プロセスの外部委託」と訳されます。特定の作業だけでなく、業務の流れのまとまりを、運用や改善まで含めて外部の専門事業者に継続的に任せる経営手法を指します。
Q. BPOとアウトソーシングは同じ意味ですか?
A. 厳密には異なります。アウトソーシングは外部委託全般を指す広い言葉で、作業単位の単発の委託も含みます。BPOはアウトソーシングの一形態で、業務プロセスのまとまりを継続的に任せ、委託先が改善まで担う点に特徴があります。
Q. BPOと人材派遣はどう違いますか?
A. 最大の違いは業務の指示を出すのが誰かです。BPOでは委託先が自社の従業員に指示を出し、人材派遣では派遣先の企業が派遣労働者に直接指示を出します。厚生労働省の37号告示に基づき、契約書の名称ではなく実態で判断されるため、委託先のスタッフに直接指示を出さないよう注意が必要です。
Q. 中小企業や個人事業主でもBPOは使えますか?
A. 使えます。少ない時間や業務量から依頼できるサービスも増えています。経理と労務を1人で兼務している企業では、給与計算や社会保険の手続きを委託することで、担当者の負担軽減と業務の継続性の確保につながります。業務量が極端に少ない場合は、クラウドのソフトで作業を減らす方法とも比べて判断しましょう。
Q. BPOで最初に委託する業務はどう選べばよいですか?
A. 手順が決まっている、自社の強みに直結しない、専門知識が要る、業務量の変動が大きいという条件に多く当てはまる業務から選ぶのが基本です。給与計算や社会保険の手続きといった人事労務は、これらの条件がそろいやすく、最初の委託領域として選ばれることが多い分野です。
Q. BPOで個人情報を委託するときは何に注意すればよいですか?
A. 個人情報保護法のガイドライン(通則編)では、委託元に対して適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握を求めています。プライバシーマークやISMSなどの認証の有無を確認し、契約書には安全管理の内容、再委託の条件、事故が起きたときの報告の流れを明記しておきましょう。
まとめ
BPOは、業務プロセスのまとまりを外部の専門事業者に継続的に任せ、自社の人と時間を強みにつながる業務へ集中させる経営手法です。派遣との違いは指揮命令権の所在にあり、契約書の名称ではなく実態で判断されます。導入を成功させるために、まず次の3つから始めましょう。
- 業務を棚卸しし、手順が決まっていて専門知識が要る業務を委託の候補として選ぶ
- 委託範囲、成果の指標、指示の出し方、個人情報の扱い、契約終了時の取り決めを文書にする
- 始めやすい人事労務などの領域で委託を試し、成果を確認しながら範囲を広げる
本記事の法令に関する記述は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の契約や判断については専門家に確認してください。
参考文献
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 中小企業庁「2022年版 小規模企業白書 第2節 持続的な成長を見据えた中長期的な事業見直し」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/shokibo/b2_1_2.html
- 公正取引委員会「取適法」https://www.jftc.go.jp/toriteki/index.html
- 矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年)」(民間調査・参考値)https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3973