DXとは?経産省の定義とデジタル化との違い、業種別・規模別の始め方

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  • 経産省のDXの定義と4つの要素がわかる
  • デジタル化との違いと身近な例がわかる
  • 自社の段階と業種別の始め方がわかる

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データとデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスモデルだけでなく、業務、組織、企業文化まで変革し、競争上の優位性を確立する取り組みのことです。経済産業省が示した定義であり、ITツールを導入してデジタル化するだけではDXとはいえません。本記事では、この定義の読み方から、デジタル化・IT化との違いと身近な例、自社の段階がわかるセルフチェックと公的な自己診断、「2025年の崖」、使える国の制度と補助金、業種別・規模別の始め方、中小企業がつまずきやすい失敗までを順に解説します。読み終えるころには、自社がいまどの段階にいて、次に何をすればよいかを説明できる状態を目指します。

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Q1. DXについて、いま一番知りたいことは?

目次

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  1. DXとは|経済産業省の定義と、最初に整えたい情報の土台
  2. デジタル化・IT化との違い|レンタルビデオ店の例で理解する
  3. 自社はどの段階?DXの3段階セルフチェック
  4. 「2025年の崖」とは|DXが急がれる理由
  5. 業種別・規模別のDXの始め方
  6. DXに使える国の制度と補助金|出典つきで整理
  7. 中小企業がDXを進める際の課題とよくある失敗パターン
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ|DXを正しく理解して始めるための5つのこと
  10. 参考文献

DXとは|経済産業省の定義と、最初に整えたい情報の土台

経済産業省が示すDXの定義は、データとデジタル技術を使って、製品・サービスや業務、組織、企業文化まで変え、競争上の優位性を確立することです。目的は「ツールの導入」ではなく、「顧客に選ばれる理由をつくること」に置かれています。

経済産業省は2018年12月に公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」で、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX SQUARE」の解説)。同省は現在、「デジタルガバナンス・コード」に沿って、DX認定制度などの施策を展開しています(経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」)。

定義を4つの要素に分けて読む

一文が長いため、要素に分けると理解しやすくなります。

要素 定義の該当部分 実務での読み替え
1. きっかけビジネス環境の激しい変化に対応し顧客の買い方、人手不足、競合の動きなどの変化に対応するため
2. 手段データとデジタル技術を活用してツール導入だけでなく、集めたデータを判断に使う
3. 変える対象製品・サービス、ビジネスモデル、業務、組織、プロセス、企業文化・風土売り物と売り方、社内の仕事の進め方、人の意識まで
4. ゴール競争上の優位性を確立すること他社より選ばれる理由をつくり、持続させる

ポイントは、ゴールが「効率化」ではなく「競争上の優位性」に置かれていることです。業務を速くしたり、コストを下げたりすることは大切ですが、それ自体は手段の一部です。最終的に顧客に選ばれる理由が生まれているかどうかが、DXかどうかを見分ける物差しになります。

定義を自社の仕事に置き換えると、最初の一歩は情報共有になる

定義にある手段は「データとデジタル技術」です。データを経営判断や新しいサービスづくりに使うには、その前に、情報がデジタルの形で1か所に集まっている必要があります。紙の回覧、口頭の連絡、個人のメールや手元のExcelに情報が散らばったままでは、集計も分析も始められません。後の章で紹介する3段階セルフチェックの第0段階や第1段階にあたる企業は、まず社内の連絡と情報の置き場所をそろえることが、DXの最初の一歩になります。

社内の連絡と情報の置き場所をそろえる場合の一例が、株式会社kubellが提供するビジネスチャット「Chatwork」です。商品ページによると、チャットに加えてビデオ通話と音声通話を標準で使えます。タスク管理ではタスクが完了すると自動でチャットに通知され、ファイルはアップロードして、チャット参加メンバーだけで共有できます。一方で、フリープランは閲覧できるのが過去40日分、5,000件までという上限があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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導入事例として、建設・不動産の福岡トーヨー株式会社(従業員51-100名)は、導入前の社内連絡の課題を次のように公開しています。

「電話は1対1のやりとりになるので、連絡したのに全体に共有できていなかったり、伝言ゲームになってしまって誤った情報が伝わったりといった欠点があります。」

Chatwork導入事例(取材2022年10月、https://go.chatwork.com/ja/case/fukuokatoyo.html)。個別の事例であり、同様の結果を保証するものではありません。

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デジタル化・IT化との違い|レンタルビデオ店の例で理解する

デジタル化・IT化は「いまの業務のやり方を電子化して効率を上げること」、DXは「デジタル技術によって事業の仕組みそのものを変えること」です。両者は対立するものではなく、デジタル化はDXに向かうための手段の1つです。

中小企業庁の情報サイト「ミラサポplus」では、レンタルビデオ店を例に違いを説明しています。店が会員データを管理するために顧客管理システムを導入するのはデジタル化です。一方、同じ店がインターネットで動画配信サービスを始めれば、ビデオを貸し出すというビジネスモデル自体が変わるため、DXにあたります(中小企業庁 ミラサポplus担当者に聞く「DXとは」)。

観点 デジタル化・IT化 DX
目的既存業務の効率化・コスト削減事業の仕組みを変え、競争上の優位性をつくる
変化の性質同じ仕事を速く・正確にする(量的な変化)仕事や価値の届け方が変わる(質的な変化)
主な対象個別の業務・書類・手続きビジネスモデル・組織・企業文化まで
推進する人現場や情報システム担当が中心でも進められる経営層の関与が欠かせない
例紙の申請書を電子申請に置き換える蓄積したデータを使って新しいサービスを始める

近年はDXに加えて「AX」という言葉も使われます。DXとの違いや段階的な関係は、DXとAXとは?違いとIT化からの段階的な関係、アナログ業務からの始め方を解説で整理しています。

「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」との関係

DXに至る過程は、一般に3段階で説明されます。紙の書類をスキャンしてPDFにするような「個別の作業のデジタル化」がデジタイゼーション、電子化されたデータを使って業務の流れ全体をつなぎ直すのがデジタライゼーション、その先で製品やサービス、ビジネスモデルを変えるのがDXです。日常的な言葉に置き換えると、デジタイゼーションとデジタライゼーションがおおむね「デジタル化・IT化」に相当し、DXはその積み重ねの上に成り立つと考えると整理しやすくなります。各段階の具体例と関連用語は、DXの意味とは|経産省定義と3段階モデルでデジタル化との違いを整理でさらに詳しく解説しています。

DXの身近な例

DXの例として、IPAの解説では次のような取り組みが紹介されています(IPA「DX SQUARE」)。どれも、デジタル化で終わらず、データや技術を使って売り方やサービスの形そのものを変えている点が共通しています。

  • 音楽や映像の配信サービス:CDやDVDを店舗で購入・レンタルするビジネスモデルから、ネットで音楽が聴けるストリーミングサービスが主流になりました。スマートフォンやタブレット端末の普及が背景にあるとされています。
  • JR東日本の「モバイルSuica」:切符をICカードにしたことで券売機での対応時間が減りました。さらに、乗り降りの履歴データから移動時間や移動距離を分析し、鉄道以外の交通手段も含めた新しいサービスを生み出しているとされています。
  • バーチャルライブハウス:映像事業を手がける企業が技術力を生かして、インターネット上で楽しめるライブ空間を立ち上げ、コロナ禍で苦戦する業界にノウハウを提供した事例です。

いずれも大企業の例ですが、「デジタル化で効率を上げる」から「データを使って提供の仕方を変える」へ進むという構造は、中小企業でも同じです。自社に置き換えた場合の出発点は、後の「業種別・規模別のDXの始め方」の章で整理しています。

自社はどの段階?DXの3段階セルフチェック

DXの段階は、個別作業のデジタル化、業務の流れ全体のデジタル化、DXの順に進みます。自社の現在地は、次の表で当てはまる項目がどの段階に多いかを見ると確認できます。

「DXに取り組みたい」と考えても、実際には第1段階のデジタイゼーションが終わっていないケースは珍しくありません。現在地を確かめずにいきなり第3段階を目指すと、土台となるデータや業務の流れが整っていないため、施策が形だけで終わりやすくなります。

段階 よくある状態 次にやること
第0段階(アナログ中心)申請・回覧が紙、連絡は電話や口頭、情報は担当者の手元にある頻度の高い書類と連絡手段から電子化する
第1段階(デジタイゼーション)ExcelやPDFは使っているが、部署ごと・個人ごとにファイルが散らばっている情報の置き場所と共有のルールを1つにそろえる
第2段階(デジタライゼーション)申請から承認、記録までがシステム上でつながり、データが自動でたまるたまったデータを経営判断や顧客対応に使う
第3段階(DX)データをもとに商品・サービスや売り方を変え、成果を測っている成果を検証し、変革を継続する体制を整える

このセルフチェックで第0段階や第1段階に当てはまる項目が多い場合、最初に取り組むべきなのは高度なデータ分析ではなく、社内の情報を1か所に集めて共有できる状態をつくることです。逆に第2段階まで進んでいる企業は、システムの追加導入よりも「たまったデータを誰がどう使うか」を決めることに時間を割くほうが成果につながりやすくなります。

公的な自己診断「DX推進指標」で現在地を確かめる

DX推進指標とは、経済産業省が2019年7月にまとめた、経営者や社内の関係者がDX推進に向けた現状や課題の認識を共有し、アクションにつなげるための自己診断指標です(経済産業省「「DX推進指標」を改訂しました」)。

経済産業省とIPAは2026年2月13日に、デジタルガバナンス・コード3.0に基づいて設問と成熟度レベルを見直した改訂版を公表しました。IPAの案内ページによると、回答はDX推進ポータルにGビズIDでログインして行い、自社の診断結果を他社と比較した資料(ベンチマーク)を無料で受け取れます。担当者が1人で記入しても、関係者で話し合いながら記入してもよく、毎年診断することで進捗も確認できるとされています(IPA「DX推進指標」)。設問数や回答方法は改訂される場合があるため、最新の内容は公式ページで確認してください。

本記事のセルフチェックは身近な業務のデジタル化の進み具合を見るもので、DX推進指標は経営ビジョンや戦略まで含めてDXの取り組みを見るものです。まず上の表で大まかな段階を確かめ、社内で議論する段階になったらDX推進指標で整理する、という使い分けがしやすくなります。

現在地を確かめたあとに最初に着手する連絡と情報の置き場所について、自社の状況を次のチェックで確認してみましょう。当てはまる数によって、次にやることが変わります。

社内の連絡と情報共有、今のやり方で足りている?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

「2025年の崖」とは|DXが急がれる理由

「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化した既存システム(レガシーシステム)を放置した場合に、大きな経済損失が生じるおそれがあると指摘された問題です。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」で示され、DXの必要性が広く知られるきっかけになりました。

DXレポートでは、部門ごとに個別に作られたシステムが全社でデータを活用する妨げになっていること、システムの中身を理解している人材が退職などでいなくなり保守が難しくなること、維持管理費がIT予算の多くを占めて新しい投資に回せないことなどが課題として挙げられました。これらを解消できない場合、2025年以降に最大で年間12兆円規模の経済損失が生じる可能性があると試算されています。DXレポートとその後の続編(DXレポート2、2.1、2.2)は、経済産業省のDX関連施策のページから確認できます。

2025年を過ぎた今、どう受け止めるべきか

2025年という年が過ぎたことで「崖の話は終わった」と受け止めるのは早計です。この問題の本質は特定の年ではなく、古い仕組みを使い続けることで、変化に対応するための余力(人・予算・データ)が失われていく点にあります。大規模な基幹システムを持たない中小企業でも、「特定の担当者しか中身がわからないExcelマクロ」や「更新が止まった業務ソフト」は同じ構造の問題を抱えています。自社にそうした仕組みがないかを棚卸しすることが、2025年の崖を自社の課題として捉え直す第一歩になります。

DXに取り組むことで得られる主なメリット

DXは「崖」を避けるための守りの取り組みであると同時に、企業にとって具体的なメリットをもたらす攻めの取り組みでもあります。

  • 生産性の向上:手作業や紙の処理をデジタル化し業務の流れを見直すことで、同じ人数でもこなせる仕事が増えます。
  • 働き方の選択肢の拡大:情報がクラウド上で共有されていれば、テレワークや時差出勤など場所と時間にとらわれない働き方を選びやすくなり、人材の確保や定着にもつながります。
  • 事業継続(BCP)の備え:災害や感染症などで出社が難しくなった場合でも、業務を続けやすくなります。
  • 新しい商品・サービスのヒント:日々の業務で蓄積されたデータを分析すれば、顧客のニーズや自社の強みが見えやすくなります。

これらのメリットは、どれも「情報がデジタルで集まり、共有されている」ことが前提になる点を押さえておくと、次に何から手を付けるべきかが見えてきます。

業種別・規模別のDXの始め方

中小企業のDXは、毎日手間がかかっている業務を1つ選んで小さくデジタル化し、効果を確かめながら広げるのが基本です。業種と組織の規模によって、最初に手を付ける場所は変わります。他社の事例をそのまま真似るのではなく、自社の業務のどこに一番ムダや属人化があるかを起点に考えることが大切です。

業種別の出発点の例

業種 よくある課題 始めやすい取り組み その先のDXの方向性
製造業設備の稼働状況や不良の記録が紙や口頭に頼っている生産日報・点検記録のデータ化、稼働状況の見える化データを使った予防保全や、顧客ごとの受注生産の効率化
小売業・卸売業売上や在庫の情報が店舗・担当者ごとに分かれている販売・在庫データの一元管理購買データをもとにした品ぞろえや販路の見直し
建設業現場と事務所の連絡や書類のやり取りに時間がかかる現場写真・日報・工程表の共有をオンライン化蓄積した施工データを見積や工程計画に活用
サービス業予約・問い合わせ・顧客情報の管理が担当者任せになっている予約受付と顧客情報のデジタル管理顧客の利用履歴にあわせた提案や、新しい提供方法の開発
士業・専門サービス書類の受け渡しや進捗確認をメールと電話で行っている案件ごとの書類・進捗の共有場所をつくる定型業務の自動化で生まれた時間を相談業務に回す

規模別の進め方の違い

小規模企業(数名から数十名)は、経営者と現場の距離が近く、決めたことをすぐに試せるのが強みです。一方で専任の担当者を置く余裕がないため、いきなり全社的な計画を作るより、「毎日発生して手間がかかっている業務」を1つ選んでデジタル化し、効果を確かめながら範囲を広げるほうが現実的です。

中堅企業(数十名から数百名)になると、部署ごとに異なるツールやファイル形式が使われ、部署間でデータがつながっていないことが大きな課題になります。個別の業務改善に加えて、情報の置き場所や共有ルールを全社でそろえることが、次の段階に進むための条件になります。

大企業では、既存システムの刷新と並行して、事業部門をまたいだデータ活用や新規事業の創出まで視野に入れた計画が求められます。デジタルガバナンス・コードに沿って経営ビジョンと推進体制を明文化し、成果を測る指標を定めることが重要になります。

DXを進める基本の5ステップ

業種や規模によって出発点は異なりますが、進める順番には共通の型があります。一般的には、次の5つのステップで整理されます。順番を入れ替えてツールの選定から始めると、目的があいまいなまま導入だけが進みやすいため、1と2を省かないことが大切です。

  1. 目的を決める:「何のためにDXに取り組むのか」を経営層が言葉にします。売上を伸ばしたいのか、人手不足に対応したいのかで、選ぶ手段は変わります。
  2. 現状を把握する:業務の流れ、使っているシステム、情報の置き場所を棚卸しします。先に紹介した3段階セルフチェックは、この段階で使えます。
  3. 体制を整える:推進の責任者と、現場側の担当者を決めます。専任者を置けない場合は、兼任でも役割と権限をはっきりさせておきます。
  4. 優先順位をつけて小さく実行する:効果が見えやすく、関係者が少ない業務からデジタル化します。1つの業務で成果を確認してから、対象を広げます。
  5. 効果を検証して見直す:処理時間や手戻り件数など、事前に決めた指標で成果を確かめ、次の取り組みに反映します。DXは一度で終わる計画ではなく、この見直しを繰り返して進めるものです。

4つ目と5つ目の具体的な進め方は、DXの活用・導入|小さく始めて定着させる中小企業の実務手順で詳しく解説しています。

DXで使われる主なデジタル技術

DXの文脈でよく登場する技術も、あわせて整理しておきます。どれも「導入すればDXになる」ものではなく、目的と現状に合わせて選ぶ手段です。自社の段階によって、役に立つ技術は変わります。

技術 概要 業務での使われ方の例
クラウドインターネット経由でソフトウェアやデータの保管場所を利用する仕組み社内の情報共有、場所を問わない業務、システムの保守負担の軽減
AI(人工知能)データから傾向を学習し、予測や分類、文章などの生成を行う技術需要の予測、問い合わせ対応の補助、文書の下書きや要約
IoT機器や設備をインターネットにつなぎ、状態をデータとして集める技術設備の稼働状況の見える化、遠隔からの監視
RPAパソコン上の定型的な操作をソフトウェアが自動で行う技術データの転記、定型の帳票作成、定期的な集計
データ分析(ビッグデータ)蓄積した大量のデータを集計・分析し、判断の材料にする取り組み売れ筋の把握、顧客の傾向の分析、経営指標の確認

第0段階や第1段階の企業が最初に使いやすいのはクラウドです。情報がクラウド上に集まってはじめて、AIやデータ分析にかけられるデータがたまっていきます。AIやIoTは、分析や自動化の対象になるデータと業務の流れが整ってから検討すると、投資が成果に結びつきやすくなります。ツールの分類と選び方は、DXツールとは|6分類と選び方を公的データで解説で解説しています。

どの業種・規模でも共通するのは、「散らばった情報を集めて、同じものを見ながら仕事を進められる状態」が、その後のあらゆる取り組みの前提になるという点です。製造業の生産日報の共有、建設業の現場と事務所の連絡、士業の案件ごとの進捗管理など、業種を問わず「連絡と情報の置き場所をそろえる」ことから始められる場面は多くあります。

DXに使える国の制度と補助金|出典つきで整理

DXを進める企業は、経済産業省のDX認定制度やDX推進指標、中小企業庁のデジタル化・AI導入補助金など、国の制度を活用できます。公募時期や要件は変わるため、申請の前に公式情報で確認してください。

DXの定義と制度ができた流れ

DXの定義や関連する制度は、次の順で整えられてきました。定義がどの文書で示され、いつ見直されたかを知っておくと、各制度の位置づけがわかりやすくなります。

時期 文書・制度 内容
2018年9月DXレポートITシステム「2025年の崖」を指摘(経済産業省)
2018年12月DX推進ガイドラインDXの定義を示した(IPAの解説による)
2019年7月DX推進指標経営者や社内の関係者が現状や課題の認識を共有するための自己診断指標としてまとめられた
2020年11月デジタルガバナンス・コード経営ビジョンの策定・公表など、経営者に求められる対応を取りまとめた
2022年9月デジタルガバナンス・コード2.0デジタル人材の育成・確保をはじめとした時勢の変化に対応して改訂
2024年9月デジタルガバナンス・コード3.0経営者への伝わりやすさを重視して、構成や内容を大幅に見直した
2026年2月DX推進指標の改訂デジタルガバナンス・コード3.0に基づき、設問と成熟度レベルを見直した

出典は、経済産業省「デジタルガバナンス・コード」、「DXセレクション」、「「DX推進指標」を改訂しました」と、IPAの「DX SQUARE」です。

DX認定制度とその支援措置

DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。IPAが事務局として認定審査などの事務を行っています。経済産業省のページによると、直近1年間(2026年9月時点)の認定事業者数は約1.4倍に増え、特に中小企業等では約1.6倍と全体の増加を牽引しています。DXは大企業だけのテーマではなく、中小企業にも広がっている取り組みだといえます(経済産業省「DX認定制度」)。

同ページでは、DX認定を受けた事業者が活用できる支援措置として、次のものが挙げられています。内容や利率などの条件は変わるため、詳細は各機関の公式ページで確認してください。

  • 日本政策金融公庫による低利融資(DX認定を受けた中小企業者が行う設備投資等に必要な資金が対象)
  • 信用保証協会の保証枠の特例(別枠での追加保証や保証枠の拡大)
  • 人材開発支援助成金(人への投資促進コース)での高度デジタル人材訓練の対象事業主としての要件の充足
  • 中堅・中小企業等向けの優良事例選定「DXセレクション」への自薦での応募
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金を申請する際の加点

DXセレクションは、デジタルガバナンス・コードに沿った取り組みでDXの成果を出している中堅・中小企業等のモデルケースとなる優良事例を選ぶもので、2022年から実施されています。2026年は5月20日の最終選考・表彰式でグランプリ1者、準グランプリ2者、優良事例8者の計11者が選ばれました(経済産業省「DXセレクション」)。同業他社の取り組みを知る材料として、選定企業のレポートも公開されています。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的に、デジタル化やDX等に向けたAIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する中小企業庁の補助金です。令和7年度補正予算事業から、名称が「IT導入補助金」から変更されました。2026年度は公募要領が2026年3月10日に公開され、申請受付は3月30日からと案内されています。交付申請にはGビズIDの取得が必要です(中小企業庁 ミラサポplus「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開」)。

補助の対象となるツールや要件、申請できる時期は、枠や公募回によって異なります。最新の公募状況は、補助金の事務局サイトで確認してください。ミラサポplusでは、このほかの補助金にもDX・デジタル化のための特別枠が設けられていたり、DX・デジタル化が審査の加点項目になっていたりすることがあるとされています(担当者に聞く「DXとは」)。

同じ記事では、社内にデジタル技術に詳しい人材がいない場合に、デジタル化支援サイト「みらデジ」やよろず支援拠点などの専門家派遣制度で第三者のIT専門家に相談する方法も紹介されています。専門家との相談で自社の課題を明確にし、導入するITツールを決め、そのうえで補助金の活用を検討する順番が示されています。

なお、この章は制度の紹介であり、補助金の採択や融資の可否、税務上の取り扱いを保証するものではありません。申請の要件や手続きは、公募要領と各窓口でご確認ください。

中小企業がDXを進める際の課題とよくある失敗パターン

中小企業のDXがつまずく主な原因は、ツールを入れて満足する、最初から全社改革を狙う、現場を巻き込まない、の3点です。人材・予算・時間の不足に加えて進め方そのものでつまずくケースが多く、代表的な失敗と防ぎ方を整理します。

失敗パターン 起きること 防ぎ方
ツールを入れたことで満足する導入後も紙やExcelが並行して使われ、二重管理になる導入前に「やめる業務・やめる書類」を決めておく
最初から全社の大改革を狙う現場の負担が大きく、途中で止まる1部署・1業務から始め、効果を見せてから広げる
情報システム担当に丸投げする現場の業務に合わず使われない経営層が目的を示し、現場の担当者を計画段階から巻き込む
他社の事例をそのまま真似る自社の業種・規模に合わず成果が出ない自社で一番手間がかかっている業務を起点に選ぶ
成果を測る指標を決めていない「何が変わったのか」を説明できず、継続の判断ができない処理時間や手戻り件数など、測れる指標を事前に決める

人材が足りない場合の考え方

社内にDXを専任で進められる人材がいないことは、多くの中小企業に共通する課題です。この場合、外部のITベンダーやコンサルタント、地域の支援機関の力を借りるのは現実的な選択肢です。ただし、何から着手するかという優先順位づけまで外部に任せてしまうと、自社にノウハウが残らず、現場の実態に合わない仕組みができあがるおそれがあります。業務の棚卸しと優先順位は自社の担当者が主導し、外部には技術的な実現方法の支援を頼む、という役割分担を意識すると、取り組みが社内に根付きやすくなります。

部署間の壁をどう越えるか

DXが止まる原因として見落とされやすいのが、部署ごとに異なるツールやファイル形式で情報を管理していることによる「部署間の壁」です。営業が案件をExcelで、経理が請求を会計ソフトで管理していると、両者を突き合わせるだけで毎月手間がかかり、経営判断のスピードも落ちます。まずは各部署がどんな情報をどの形式で持っているかを一覧にし、部署をまたいで共有すべき情報を決めることが出発点です。

このとき、全社の連絡・予定・依頼が1つの場所に集まっていると、部署をまたいだ情報のやり取りそのものが楽になります。専任の推進チームを置く余裕がない企業では、既存の会議の議題にDXの進み具合を加え、共有の場で課題を記録していくところから始める方法もあります。部署をまたぐ連絡を1つの場所に集める手段として、ビジネスチャットを検討する会社もあります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. DXとは簡単にいうと何ですか?

A. データとデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスモデル、業務、組織、企業文化までを変革し、競争上の優位性を確立する取り組みです。経済産業省が2018年12月のDX推進ガイドラインで、この趣旨で定義しています。

Q2. DXとIT化・デジタル化の違いは何ですか?

A. IT化・デジタル化は今の業務のやり方を電子化して効率を上げることで、DXはデジタル技術によって事業の仕組み自体を変えることです。デジタル化はDXに向かうための手段の1つです。ミラサポplusでは、レンタルビデオ店が顧客管理システムを導入するのはデジタル化、動画配信サービスを始めるのはDXと説明されています。

Q3. DXはなぜ「DT」ではなく「DX」と略すのですか?

A. 英語圏では「Trans」を「X」と表記する慣習があるためです。Digital Transformationの「Trans」の部分をXに置き換えて、DXと略されています。

Q4. DXの身近な例にはどんなものがありますか?

A. CDやDVDの販売・レンタルからネットで聴けるストリーミングサービスへの移行や、JR東日本の「モバイルSuica」が代表例として紹介されています。モバイルSuicaは、ICカードの乗り降りの履歴データを分析して、鉄道以外の交通手段も含めた新しいサービスを生み出しているとされています(IPAの解説による)。

Q5. 中小企業はDXを何から始めればよいですか?

A. 自社がどの段階にいるかを確認したうえで、毎日発生して手間がかかっている業務を1つ選び、デジタル化するところから始めるのが現実的です。社内の連絡と情報を1か所に集めて共有できる状態をつくることが、その後の取り組みの土台になります。ビジネスチャットなどのツールを検討するときは、機能やプランを資料で確認します。

Q6. 自社のDXの現在地を、公的な方法で確認できますか?

A. 経済産業省とIPAが提供する「DX推進指標」で自己診断できます。DX推進ポータルにGビズIDでログインして回答すると、自社の診断結果を他社と比較した資料を無料で受け取れます。2026年2月に改訂されているため、最新の設問は公式ページで確認してください。

まとめ|DXを正しく理解して始めるための5つのこと

  1. 定義を押さえる:DXはツールの導入ではなく、データとデジタル技術で事業・業務・組織を変え、競争上の優位性をつくる取り組みです。
  2. 自社の段階を確かめる:3段階セルフチェックと、公的な自己診断のDX推進指標で現在地を確認し、段階を飛ばさずに進めます。
  3. 業種・規模に合う出発点を選ぶ:他社の真似ではなく、自社で一番手間がかかっている業務から着手します。
  4. 国の制度と補助金を確認する:DX認定制度やデジタル化・AI導入補助金は、要件や公募時期が変わるため、公式情報で最新の内容を確かめます。
  5. 情報共有の土台づくりを検討する:散らばった連絡と情報を1か所に集めるために、ビジネスチャットなどの資料を取り寄せて、機能とプランを比べて確認します。

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