SaaSサービスとは?代表例・分野別カテゴリマップと選び方の5つの基準
Check!
- SaaSは完成品のアプリをネット経由で使う形態
- 分野別の代表例に自社の困りごとを当てはめよう
- 5つの基準で比べ導入後は利用率で効果を確認
SaaSサービスとは、ソフトウェアを自社のサーバーにインストールせず、インターネット経由で必要な分だけ使える提供形態のサービスの総称です。メール、グループウェア、ビジネスチャット、会計、顧客管理など、業務のほとんどの分野にあり、総務省の令和6年通信利用動向調査では、クラウドサービスを利用している企業は8割を超えています。導入が手軽な反面、選び方の軸を持たないまま契約すると、使われないアカウントの費用が積み上がる、似たサービスが部署ごとに乱立するといった問題が起きやすくなります。この記事では、SaaSサービスの定義とIaaS・PaaSとの違い、分野別の代表的なサービス例、メリット・デメリット、選び方の5つの基準、検討対象の絞り込み方、導入後の効果測定までを順に整理します。
あなたの会社のSaaS選び、どこから見直す?2問で診断
Q1. いま、社内でいちばん整えたいのはどの分野ですか?
おすすめ記事
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
SaaSサービスとは|IaaS・PaaSとの違いと、最初に入れやすい分野
SaaSサービスとは、メールや会計、顧客管理などのソフトウェアの機能を、インターネット経由で利用する形で提供するクラウドサービスのことです。利用者は専用のサーバーを用意せず、Webブラウザやアプリからアカウントでログインして使います。
クラウドサービスは、提供される範囲によってSaaS、PaaS、IaaSの3つに分けられます。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」では、PaaSを「アプリケーション実行用のプラットフォーム機能を提供するサービス」、IaaSを「ハードウェアやインフラの機能を提供するサービス」と説明しています。SaaSは、これらの基盤の上でできあがった完成品のアプリケーションを、そのまま使う形態にあたります。AWSとの違いを詳しく知りたい場合は、SaaSとAWSの違いを解説した記事もあわせてご覧ください。SaaSとクラウドサービスという言葉の使い分けは、SaaSとクラウドサービスの違いを整理した記事で解説しています。
| 分類 | 提供されるもの | 利用者が主に担うこと | 身近な例 |
|---|---|---|---|
| SaaS | 完成したアプリケーション | アカウント・権限・業務データの管理と、使い方のルールづくり | メール、ビジネスチャット、会計、顧客管理 |
| PaaS | アプリケーションを動かすための実行環境(アプリケーションサーバ、データベースなど) | 自社のアプリケーションの開発と運用 | 自社の業務システムの開発 |
| IaaS | 仮想化されたサーバー、ストレージなどのインフラ | OSやミドルウェアを含むソフトウェアの管理 | 自社サーバーのクラウドへの移行 |
最初のSaaSに、社内の連絡・情報共有が選ばれやすい理由
業種や規模を問わず、すべての社員が使う業務が、社内の連絡と情報共有です。総務省の令和6年通信利用動向調査でも、クラウドサービスの用途として「給与、財務会計、人事」や「スケジュール共有」が5割を超えています。全社員が毎日触れる分野から始めると、アカウントの発行や権限設定、利用ルールの作り方といったSaaS運用の基本を、全社で学べる利点があります。最初の1つで定めた運用が、2つ目以降のSaaSの通知や承認の受け皿にもなるためです。
社内の連絡手段をそろえるビジネスチャットの一例が、株式会社kubellが提供するChatworkです。チャットのほかにビデオ通話・音声通話が標準で使え、タスクを管理して、タスクが完了すると自動でチャットに通知されます。ファイルをアップロードして、チャット参加メンバーのみで共有することもできます。一方、フリープランでは閲覧できるのが過去40日分、5,000件までとされているため、履歴を残して使い続けたい場合は、プランごとの閲覧範囲を確認しておくと安心です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
ここがおすすめ!
- チャットだけでなく「ビデオ通話」「音声通話」も標準装備
- タスク管理が行えて、タスクが完了すると自動でチャットへ通知
- ファイルがアップロードでき、チャット参加メンバーのみで共有
ここが少し気になる…
- フリープランは過去40日分、5,000件までしか閲覧できない
以前は社内から社長への電話連絡だけで1日60件もあり、業務効率が落ちる課題を抱えていたといいます。Chatworkにコミュニケーションを集約した結果、電話件数は激減。
出典:Chatwork導入事例 有限会社並木商店(取材:2024年11月)。取材時点の内容で、現在の機能やプランとは異なる場合があります。
タスク管理も一緒に行いたい中小企業の連絡手段づくりに
Chatworkの資料を無料でダウンロードできます
SaaSサービスの代表例|分野別カテゴリマップとホリゾンタル型・バーティカル型
SaaSサービスは、業種を問わず使える「ホリゾンタル型(横断型)」と、特定の業界向けに作られた「バーティカル型(業種特化型)」に大きく分けられ、代表例は情報共有・営業・会計・人事などの分野ごとに整理できます。比較サイトによっては数百の分野に細分化されていますが、最初はこの2分類と、業務領域ごとの大まかなカテゴリを押さえておけば十分です。身近なサービスの具体例を知りたい場合は、メール・チャット・会計など身近なSaaSの具体例を解説した記事も参考になります。
ホリゾンタル型の主な分野と、代表的なサービス名
| 業務領域 | 代表的な分野 | サービス名の例 | 主な利用部門 |
|---|---|---|---|
| 情報共有・コミュニケーション | グループウェア、ビジネスチャット、Web会議 | Microsoft 365、Google Workspace、Chatwork、Slack、Zoom | 全社 |
| 営業・顧客管理 | CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)、名刺管理 | Salesforce | 営業、カスタマーサポート |
| マーケティング | MA(マーケティングオートメーション)、メール配信、アクセス解析 | 分野ごとに複数の事業者が提供 | マーケティング、広報 |
| 会計・経理 | 会計ソフト、請求書発行、経費精算 | freee会計、マネーフォワード クラウド会計 | 経理、財務 |
| 人事・労務 | 勤怠管理、労務管理、給与計算、採用管理 | SmartHR | 人事、総務 |
| 文書・契約 | 電子契約、文書管理、オンラインストレージ | クラウドサイン | 総務、法務、全社 |
| 業務プロセス | ワークフロー、プロジェクト管理、ノーコードの業務アプリ作成 | kintone | 情報システム、各部門 |
上の表のサービス名は、各社の公式サイトで確認した名称を、分野ごとの代表例として紹介したものです(2026年10月15日時点)。掲載順や掲載の有無は、サービスの優劣や順位を示すものではありません。「日本の三大SaaS企業」「5大SaaS企業」といった言い方もありますが、決まった定義はなく、売上や導入社数などの基準によって顔ぶれが変わります。特定の企業名から選ぶよりも、自社の業務領域ごとに、5つの判断基準で比べるほうが失敗を避けやすくなります。
バーティカル型の主な分野
バーティカル型は、業界特有の業務や商習慣に合わせて設計されたSaaSです。たとえば、医療機関向けの電子カルテや予約管理、建設業向けの施工管理や図面共有、不動産業向けの物件管理や賃貸管理、飲食・小売業向けのPOSレジやモバイルオーダー、製造業向けの生産管理や品質管理などが挙げられます。ホリゾンタル型では業界特有の書式や手順に対応しきれない場合に、選択肢に入ってきます。
契約管理など特定の業務から探すときの比べ方
「全社で契約管理を導入したい」「グループ会社の契約を一元管理したい」「金融機関向けの契約システムを探している」のように、特定の業務から探す場合も、サービス名や順位ではなく、業務に合う観点で比べると判断がぶれにくくなります。契約管理や電子契約の分野で確認したい観点は次のとおりです。
| 確認したい観点 | 確認すること |
|---|---|
| 契約書の検索機能 | 契約の種類・相手先・期限などの項目で検索できるか。契約書の本文まで検索できるか |
| 契約プロセスの標準化 | 申請・承認・締結の流れをワークフローで統一できるか。契約書のひな形を共通化できるか |
| グループ会社・拠点の管理 | 会社や拠点ごとに閲覧・編集の権限を分けられるか。海外拠点で使う場合の言語対応はどうか |
| 業種特有のルールへの対応 | 金融など監督官庁のルールがある業種で、操作ログや保存場所、監査対応の要件を満たせるか |
| 全社展開のしやすさ | 既存の文書管理やワークフローとの連携、既存契約書の取り込み方法、利用ルールの定めやすさ |
どちらから検討すべきか
一般的には、全社に共通する業務を担うホリゾンタル型から検討し、業界特有の業務で不足が出た部分をバーティカル型で補う順番が進めやすいとされています。ホリゾンタル型は利用者が多く情報も集めやすいため比較がしやすく、バーティカル型は業務への適合度が高い一方で、提供事業者の数が限られ、他のSaaSとの連携範囲も製品ごとの差が大きくなりがちです。ただし、業務の中心が業界特有のもの(医療機関の診療業務など)である場合は、バーティカル型を先に決め、それと連携しやすいホリゾンタル型を後から選ぶほうが自然です。
SaaSのメリット・デメリット|選定時の確認項目に置き換える
SaaSの主なメリットは、初期費用を抑えてすぐに使い始められることと、保守やアップデートを事業者に任せられることで、主なデメリットは、自社専用のカスタマイズに限界があることです。総務省も、クラウドサービスは機材の購入やシステム構築・管理の手間と時間を減らせると説明しています。メリットは次の3点にまとめられます。
- 導入が早い:サーバーの用意やソフトウェアのインストールが不要で、アカウントを発行すれば使い始められます。
- 運用の負担が軽い:サーバーの保守や機能の更新は事業者が行うため、社内の担当者の手間が減ります。
- 場所や端末を選ばない:インターネットに接続できれば、パソコンやスマートフォンなどどの端末からでも利用できます。
一方で、デメリットはそのまま放置すると導入後の想定外につながります。次の表のように、選定時の確認項目に置き換えておくと、比較の軸にできます。
| 主なデメリット | 選定時に確認すること | 対応する判断基準 |
|---|---|---|
| カスタマイズの自由度が低い | 標準機能と設定変更の範囲で業務が回るか。業務側を合わせられる部分はどこか | 機能適合 |
| 障害・メンテナンス中は使えない | 稼働率の目標値、障害時の告知方法、業務を止めないための代替手段 | 運用体制・サポート |
| データ移行・乗り換えに手間がかかる | CSVなど汎用形式でデータを取り出せるか、解約時の返却・削除条件 | 拡張性・連携 |
| インターネット経由で情報を預ける | 認証方式、アクセス権限、データの保存場所、第三者認証の取得状況 | セキュリティ |
SaaSサービスの選び方|5つの判断基準
SaaSサービスは、機能適合、セキュリティ、コスト構造、拡張性・連携、運用体制・サポートの5つの基準で比較すると判断がぶれにくくなります。知名度やランキングの順位は参考情報にはなりますが、自社の業務に合うかどうかは別の問題です。5つの基準を一覧にすると次のとおりです。
| 判断基準 | 確認すること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 機能適合 | 自社の業務フローに必要な機能が標準で揃っているか | 機能数の多さと使いやすさは別。使わない機能の分まで費用を払うことになる |
| セキュリティ | 認証方式、権限設定、データの保存場所、第三者認証の取得状況 | 無料プランでは管理者機能やログ保存が制限される場合がある |
| コスト構造 | 初期費用、ユーザー単価、最低契約人数、オプション費用 | 全社展開したときの総額と、年払い・月払いの違い |
| 拡張性・連携 | 既存システムやほかのSaaSとのデータ連携、API、CSV出力の可否 | 連携の保守をどちらの事業者が担うか |
| 運用体制・サポート | 問い合わせ窓口、対応時間、導入支援、障害時の告知方法 | 仕様変更の事前告知があるか、解約時のデータ返却方法 |
機能適合は「業務フローに当てはめて」確認する
機能一覧を見比べるだけでは、実際に使えるかどうかは分かりません。現在の業務を「誰が、何を入力し、誰が確認して、どこに保存するか」という流れで書き出し、その各段階をSaaSのどの画面で行うのかを当てはめてみると、足りない機能や過剰な機能がはっきりします。無料トライアルがある場合は、架空のデータではなく実際の業務に近いデータで試し、現場の担当者に操作してもらうことが大切です。
セキュリティは「事業者任せ」にしない
SaaSではサーバーやソフトウェアの管理は提供事業者が行いますが、誰にどの権限を与えるか、退職者のアカウントをいつ止めるか、パスワードや多要素認証をどう設定するかは利用者側の責任です。総務省も、クラウドサービスではデータが事業者のサーバーに保管されてインターネットを介してやりとりされるため、十分なサイバーセキュリティ対策が施されたサービスを選ぶことが重要だと説明しています。選定時は、第三者認証の取得状況やデータの保存地域、ログの取得範囲を確認しておくと安心です。
コスト構造は「1年後の人数」で試算する
SaaSの多くはユーザー数に応じた月額課金です。試験導入の5人で見積もると安く見えても、全社展開した段階で総額が想定を大きく超えることがあります。最低契約人数、ストレージの追加料金、上位プランでしか使えない機能の有無を確認し、半年後・1年後の利用人数を仮定して試算しておくと、後から予算が足りなくなる事態を避けやすくなります。具体的な料金は改定されることがあるため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
拡張性・連携と運用体制は「導入後」を想像して確認する
SaaSを1つ入れると、次は別のSaaSとデータをつなぎたくなるのが一般的です。顧客情報を営業支援ツールと会計ソフトで二重入力している、といった状態は、連携を考えずに選んだ結果として起こります。また、SaaSは事業者の判断で画面や機能が更新されるため、仕様変更の告知方法や問い合わせ窓口の対応時間も、選定時に確認しておきたい項目です。連携の面では、SaaSが増えるほど通知の届き先も増えるため、確認や依頼の連絡をどこで受けるかを先に決めておくと、見落としを減らせます。
Chatwork
SaaSが増えて、連絡や通知の届き先がばらばらになっていませんか?
こんな会社に向いています
タスク管理も一緒に行いたい中小企業
連絡手段を一つにまとめ、通話やファイル共有まで同じ場所で行いたい会社
業務カテゴリ別の整理方法|検討対象を3つ以内に絞る
SaaSの検討は、一度に扱う分野を3つ以内に絞ると、比較の精度と社内の合意形成が保ちやすくなります。分野を広げすぎると、それぞれの比較が浅くなり、導入後の定着支援にも手が回らなくなります。絞り込みは次の3段階で進めると整理しやすくなります。
段階1. 困りごとを業務単位で書き出す
まず「SaaSで何をしたいか」ではなく、「どの業務で何に困っているか」を部署ごとに書き出します。「会議の日程調整にメールが何往復も必要」「経費精算の紙の回収に毎月時間がかかる」「顧客への対応履歴が担当者の手元にしか残らない」のように、具体的な場面で書くことがポイントです。この段階では、製品名は一切出さないようにします。
段階2. 困りごとをカテゴリマップに当てはめる
書き出した困りごとを、前の章のカテゴリマップの業務領域に振り分けます。日程調整や社内連絡は情報共有、経費精算は会計・経理、対応履歴は営業・顧客管理という具合です。複数の困りごとが同じ領域に集まっている場合、そこが優先度の高い分野の候補になります。
段階3. 影響範囲と緊急度で3つに絞る
候補の分野を、影響する人数(全社か一部門か)と緊急度(法令対応や締め切りがあるか)の2軸で並べ、上位3つまでを今回の検討対象にします。残りの分野は「次の検討候補」として記録しておき、最初に導入したSaaSが定着してから着手します。
| 緊急度が高い | 緊急度が低い | |
|---|---|---|
| 影響範囲が全社 | 最優先で検討(例:法令対応が必要な請求書・帳簿の電子化) | 早めに検討(例:情報共有基盤としてのグループウェアやビジネスチャット) |
| 影響範囲が一部門 | 部門主導で検討(例:採用繁忙期前の採用管理) | 次の検討候補として記録 |
この整理を行うと、「全社に影響し、すぐに困っているわけではないが、あらゆる業務の土台になる」情報共有の分野が、早めに検討すべき候補として残ることが多くなります。社内の連絡手段がメールや口頭に分散していると、後から導入する他のSaaSの通知や承認も散らばってしまうためです。この作業を、今の自社の状況に当てはめて確認してみましょう。
社内の連絡・情報共有、今のやり方で足りている?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
カオスマップと情報源の使い方|全体像の把握に使い、選定には使わない
カオスマップは、ある分野にどのようなSaaSが存在するかを1枚の図で俯瞰するための資料で、候補を洗い出す段階で役立ちますが、製品の優劣を判断する資料ではありません。業界団体やメディア、調査会社などが分野ごとに公開しており、ロゴが領域別に並べられているのが一般的です。
カオスマップで分かること・分からないこと
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| その分野にどんなサブカテゴリがあるか | 自社の業務フローに合うかどうか |
| 候補になりうる製品の名前と数 | 料金体系やセキュリティの水準 |
| ホリゾンタル型とバーティカル型の分布 | サポートの質や導入後の定着しやすさ |
カオスマップを使うときの3つの注意点
- 作成時期を確認する:SaaSは新規参入や撤退、サービス統合が頻繁に起きるため、1年以上前のものは実態と異なる場合があります。
- 作成者の立場を確認する:特定の事業者が作成したものは、掲載基準がその事業者の視点に寄っていることがあります。
- 掲載の大きさを評価と混同しない:ロゴの大きさや配置は、必ずしも市場シェアや品質を表すものではありません。
SaaS選びに役立つ情報源の見分け方
SaaSの選定に役立つメディアや資料は、種類ごとに得られる情報と注意点が違います。1種類に頼らず、役割を分けて組み合わせると、偏りを減らせます。
| 情報源の種類 | 得られる情報 | 使うときの注意点 |
|---|---|---|
| 公的機関の統計・ガイドライン(総務省、経済産業省、IPAなど) | クラウドサービスの利用動向、セキュリティの考え方、確認すべき観点 | 個別の製品を比べる資料ではない。自社の判断基準を作る材料として使う |
| 比較サイト・レビューサイト | 機能や対象の横並び、利用者の評価 | 掲載基準や広告掲載の有無を確認する。順位だけで選ばない |
| 事業者の公式サイト・ヘルプ・導入事例 | 最新の機能、プランの違い、導入の進め方 | 自社に有利な情報に偏りやすい。取材時点の内容かどうかを確認する |
| カオスマップ | 分野の全体像と候補の洗い出し | 作成時期と作成者を確認する |
候補を洗い出したら、製品ごとの公式資料で5つの判断基準に沿って絞り込みます。カオスマップで数十のロゴを眺めるよりも、特徴の異なる製品を数社並べて資料を取り寄せたほうが、自社が重視すべき基準も見えやすくなります。
SaaS選定でよくある失敗パターン
SaaS選定の失敗は、製品の良し悪しよりも、選び方と導入の進め方に原因があることがほとんどです。よく見られるパターンと回避策を整理すると次のとおりです。
| 失敗パターン | 起きること | 回避策 |
|---|---|---|
| ランキングの上位だけで選ぶ | 自社の業務に合わない機能に費用を払い、現場が使わなくなる | ランキングの比較軸を確認し、5つの判断基準で改めて評価する |
| 部署ごとに別々に契約する | 似た機能のSaaSが乱立し、データが分散する | 契約中のSaaSの一覧を作り、新規契約前に重複を確認する |
| 試験導入の人数で費用を判断する | 全社展開時に総額が予算を超える | 1年後の利用人数と上位プランの必要性を前提に試算する |
| 導入して終わりにする | 操作ルールが決まらず、旧来のメールや紙と併用が続く | 利用ルールと推進担当を決め、定着率を定期的に確認する |
| 解約条件を確認しない | 乗り換え時にデータを取り出せない、違約金が発生する | データのエクスポート方法と解約時の返却・削除条件を契約前に確認する |
中でも見落とされやすいのが、部署ごとの個別契約によるSaaSの乱立です。SaaSはクレジットカードで手軽に契約できるため、情報システム部門が把握していないサービスが増えやすく、退職者のアカウントが残ったままになるといったセキュリティ上のリスクにもつながります。新しいSaaSを検討する際は、まず社内で既に契約しているサービスを棚卸しし、同じ目的のものがないかを確認する習慣をつけておくと安心です。
契約前に確認したい法務・データ管理のポイント
SaaSの契約では、利用規約とサービスレベルの内容、データの取り扱い、解約時の条件の3点を事前に確認しておくことが重要です。SaaSは事業者が定めた利用規約に同意して使う形が一般的で、個別の交渉ができないことも多いため、契約前の確認が実質的な唯一の機会になります。
- サービスレベル:稼働率の目標値、メンテナンスの告知時期、障害発生時の連絡方法
- データの取り扱い:保存場所(国内か海外か)、バックアップの頻度、事業者による利用範囲
- 委託・再委託:個人情報を預ける場合の安全管理措置と、再委託先の有無
- 解約条件:最低契約期間、解約の申し出期限、データのエクスポート形式と削除のタイミング
- 法令対応:会計・経理系は電子帳簿保存法、人事系は個人情報保護法への対応状況
個人情報を扱う場合、個人情報保護委員会のQ&Aでは、クラウドサービスの利用が個人データの「提供」や「委託」にあたるかを、事業者が個人データを取り扱うことになっているかどうかを軸に整理しています(Q7-53)。自社のケースがどちらにあたるかは契約の内容によって変わるため、利用規約や契約書の条項を確認してください。クラウドサービスの安全な利用については、総務省や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が利用者向けの情報を公開しており、確認すべき観点を整理する際の参考になります。なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約内容の判断については、弁護士などの専門家にご相談ください。
導入後の効果測定方法|利用率と削減時間で確認する
SaaSの導入効果は、「実際に使われているか(利用率)」と「どれだけ業務時間が減ったか(削減時間)」の2つで確認すると、継続・見直しの判断がしやすくなります。契約しているアカウント数に対して、実際にログインしている人が少なければ、費用のかなりの部分が無駄になっている可能性があります。
効果測定の3ステップ
- 導入前に基準値を記録する:対象業務にかかっている時間を、担当者へのヒアリングや作業ログで把握しておきます。
- 導入後1か月・3か月で利用率を確認する:管理画面のログイン履歴などから、アクティブな利用者の割合を確認します。
- 半年後に削減時間を再計測する:導入前と同じ方法で業務時間を測り、差分を費用と比べます。
以下は、利用人数と1人あたりの削減時間から、月あたりの削減時間を簡易的に試算するシミュレーターです。時給換算の金額は仮の前提で、実際の人件費や業務内容によって大きく変わるため、あくまで検討の目安としてご利用ください。
SaaS導入効果の簡易シミュレーター
月あたりの削減時間:63時間
時給2,000円と仮定した場合の換算額:約126,000円/月
利用率が低いと、契約人数分の費用に対して効果が小さくなります。利用率の改善も効果測定の対象にしましょう。
利用率が伸び悩む原因の一つとして考えられるのが、連絡や申請の手段が旧来のメール・紙と新しいSaaSに分かれている状態です。特に情報共有の基盤が定まっていないと、どのSaaSを入れても通知や確認がばらばらになり、効果が見えにくくなります。社内の連絡をまとめる土台としてビジネスチャットを見直す場合は、Chatworkのように、タスク管理や完了時の自動通知、ビデオ通話・音声通話まで同じ場所で使えるサービスがあります。他のSaaSの利用率を上げる前提として、連絡手段の見直しも検討してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaSサービスとは何ですか?
A. ソフトウェアを自社のサーバーにインストールせず、インターネット経由で利用する提供形態のサービスです。多くは月額や年額の利用料で使え、サーバーの管理やアップデートは提供事業者が行います。
Q2. SaaSサービスの代表例にはどのようなものがありますか?
A. 分野ごとに、情報共有ではMicrosoft 365、Google Workspace、Chatwork、Slack、Zoom、営業・顧客管理ではSalesforce、会計ではfreee会計、マネーフォワード クラウド会計、人事・労務ではSmartHR、電子契約ではクラウドサイン、業務アプリの作成ではkintoneなどがあります。掲載は代表例の紹介で、優劣を示すものではありません。
Q3. 「日本の三大SaaS企業」「5大SaaS企業」はどこですか?
A. 決まった定義はなく、売上、導入社数、利用者数などの基準によって顔ぶれが変わります。企業の知名度で選ぶよりも、分野ごとに自社の業務に合うかを5つの判断基準で比べるのが基本です。
Q4. SaaSとIaaS・PaaSは何が違いますか?
A. SaaSは完成したアプリケーションをそのまま使う形態、PaaSはアプリケーションを動かすための実行環境、IaaSは仮想化されたサーバーなどのインフラを使う形態です。SaaSは利用者が管理する範囲が最も少なく、アカウントや権限、業務データの管理が中心になります。
Q5. SaaSサービスはどんな基準で選べばよいですか?
A. 機能適合、セキュリティ、コスト構造、拡張性・連携、運用体制・サポートの5つの基準で比較するのが基本です。自社の規模や業種によって、どの基準を重視するかの優先順位をつけると判断しやすくなります。
Q6. 最初に導入するSaaSは何がよいですか?
A. 業種を問わず全社員が使う、社内の連絡・情報共有の分野が入り口になりやすいです。グループウェアやビジネスチャットから始めると、SaaSのアカウント管理に社内が慣れるきっかけにもなり、後から導入するSaaSの通知や承認の受け皿にもなります。
まとめ|SaaSサービス選びで行う5つのこと
SaaSサービスを選ぶ際は、ランキングや知名度ではなく、自社の業務に合うかどうかを基準に進めることが大切です。次の5つの行動に沿って進めると、迷いにくくなります。
- SaaSの定義と、IaaS・PaaSとの違いを押さえ、自社が必要とするのが完成品のアプリケーションかどうかを確認する。
- 困りごとを分野別カテゴリマップに当てはめ、影響範囲と緊急度で検討対象を3つ以内に絞る。
- 機能適合、セキュリティ、コスト構造、拡張性・連携、運用体制・サポートの5つの基準で比較し、契約前に利用規約・データの取り扱い・解約条件を確認する。
- 最初の1つとして、社内の連絡・情報共有の手段を見直す。ビジネスチャットのChatworkなど、候補の資料を取り寄せて自社に合うかを確認する。
- 導入後は利用率と削減時間で効果を確認し、使われていないアカウントや重複するSaaSを定期的に見直す。