医療BPOとは|病院・クリニックで委託できる業務・できない業務と注意点

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  • 医療機関が委託できる業務・できない業務の違いがわかる
  • 最初に委託しやすい電話・受付の進め方がわかる
  • 委託先の選び方と患者情報の監督のポイントがわかる

医療BPOとは、病院やクリニックが受付・予約・電話対応・医療事務・経理といった資格を要しない業務を、工程ごと外部の専門事業者に委託する仕組みのことです。BPOはBusiness Process Outsourcing(業務プロセスの外部委託)の略で、医師や看護師が診療に集中できる体制をつくる手段として使われます。一方で、診察や診断、医学的な説明など資格者でなければ行えない業務は委託できません。本記事では、委託できる業務・できない業務の切り分け、最初に委託しやすい電話・受付業務、医療事務BPO、委託先の選び方と導入の進め方、BCP(事業継続計画)としての意義、委託でよくある失敗までを、厚生労働省や個人情報保護委員会の資料を参照しながら解説します。

医療機関の電話・事務の委託、どこから確認する?

Q1. 最初に外へ出したい業務は?

目次

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  1. 医療BPOとは|委託できる業務・できない業務の切り分け
  2. 最初に委託しやすい電話対応・予約受付|引き継ぎの線引きと応対の確認
  3. 医療事務BPO(請求業務・データ管理)
  4. 受付・コンタクトセンター業務のBPO
  5. 医療BPOが求められる背景と、メリット・注意点・費用の見方
  6. 委託先の選び方と導入の進め方|小さく始めて広げる
  7. BCP対策としての医療BPOの意義
  8. 委託時によくある失敗パターン(責任範囲の曖昧さ等)
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|医療BPOを始める前に押さえたい6つのこと
  11. 参考文献

医療BPOとは|委託できる業務・できない業務の切り分け

医療BPOとは、医療機関が受付・電話・医療事務などの資格を要しない業務を、工程ごと外部の専門事業者に委託することです。診察や診断といった診療行為そのものは委託できません。

単に作業を手伝ってもらう人材派遣とは異なり、業務の進め方や品質の管理まで含めて委託先が担う点が特徴です。BPOという言葉そのものの意味や、派遣との違いは、【厚労省告示準拠】BPOとは|定義・派遣との違い・5ステップで整理しています。医療機関の業務は、委託の可否という点で大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。

区分 業務の例 委託の考え方
委託しやすい業務(資格を要しない事務・周辺業務) 電話対応、予約受付、窓口受付、書類整理、経理、給与計算、採用事務、ITの運用補助 一般の企業と同様にBPOを活用できる。患者情報を扱う業務は、委託先の情報管理体制を確認する
基準を満たした事業者に委託できる業務 検体検査、医療機器等の滅菌消毒、患者給食、患者等の搬送、医療機器の保守点検、医療ガス供給設備の保守点検、寝具類の洗濯、施設の清掃 医療法で、診療等に著しい影響を与える業務として定められ、厚生労働省令の基準に適合する事業者に委託する必要がある
委託できない業務(資格者が担う業務) 診察、診断、治療方針の決定、処方、患者さんへの医学的な説明、緊急時の医学的判断 医師・看護師などの資格者が担う。委託先が受けた相談のうち、医学的な判断が必要なものは医療機関へ引き継ぐ

2つ目の区分は医療法で定められた業務で、厚生労働省令の基準に適合する事業者に委託します(詳しくは後述)。多くの医療機関が「医療BPO」として検討するのは1つ目の区分、つまり受付・電話・医療事務・バックオフィスといった業務です。以下では、この領域を中心に解説します。

最初に委託しやすい電話対応・予約受付|引き継ぎの線引きと応対の確認

医療BPOで最初に委託しやすいのは、電話対応と予約の受付です。診療時間の問い合わせ、予約の受付や変更、検査結果の確認依頼など、医療機関にかかってくる電話は件数が多い一方で、用件の多くは決まった流れで対応できるためです。受付スタッフが窓口対応と電話対応を同時に抱えると、待合室の患者さんを待たせたり、電話がつながらないという不満につながったりしやすいため、電話だけを切り出して委託する医療機関は少なくありません。

電話の委託で最初に決めておくのは、委託先が答えてよい範囲と、医療機関へ引き継ぐ範囲です。「受診したほうがよいか」「この薬を飲んでもよいか」といった相談は医学的な判断を含むため、委託先のオペレーターは回答せず、看護師などに引き継ぎます。どのような言葉が出たら引き継ぐのか、引き継ぐときに何を記録するのかを、応対マニュアルとして取り決めておきましょう。

もう1つ、委託を始める前に考えておきたいのが、応対の中身を後から確認する方法です。電話の応対は、通話が終わると何も残りません。委託先から応答件数や引き継ぎ件数の報告が届いても、患者さんにどう案内されたかという中身は、報告書だけでは確かめにくくなります。応対の記録を残せる状態にしておけば、引き継ぎ漏れや案内の食い違いに早く気づけます。

応対の確認手段の一例がMiiTel Phoneです。音声解析AIを搭載したIP電話で、通話の録音と文字起こしを活用でき、架電数・通電数・商談化数などのデータを可視化できます。文字起こしにより、情報共有の工数や管理コストを減らせる点も特徴です。一方で、サポート対応は平日9時から18時までとされているため、導入後の問い合わせ時間帯は確認しておく必要があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。なお、MiiTel Phoneは通話の確認や分析を支えるサービスで、電話対応を代わりに行う受託先ではありません。

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株式会社レスメッドは、支援先の訪問診療クリニックの応対品質を高めるため、MiiTel Phoneに加えて生成AIのMiiTel Synapseを導入し、確認が必要な応対を自動で抽出して集計できる環境を整えたとされています。事例の見出しでは、集計工数が10分の1に削減されたと紹介されています。

出典:MiiTel導入事例 株式会社レスメッド

医療機関の通話には患者さんの個人情報が含まれるため、録音データの保管場所、閲覧できる人、保存期間は、院内の規程と委託契約で定めておく必要があります。

電話対応の委託の3つの形

医療機関向けの電話対応の委託は、大きく次の3つの形に分けられます。電話の件数、かかってくる時間帯、用件の内容に合わせて選ぶのが基本です。

形態 強み 確認しておきたい点
医療機関に特化した電話代行 医療用語や診療科ごとの問い合わせに慣れたオペレーターが対応し、予約受付や一次聞き取りを任せやすい 症状に関する相談を受けたときに、医療機関側へ引き継ぐルールを事前に決めておく必要がある
一般の電話代行(時間外・あふれ呼のみ) 昼休みや診療時間外、電話が集中する時間帯だけを任せられ、費用を抑えやすい 医療機関の対応実績や、患者情報を扱う際のセキュリティ対策を確認する
自動音声応答・予約システムとの併用 予約の受付や変更を24時間受け付けられ、有人対応の件数そのものを減らせる 高齢の患者さんなど、自動応答が使いにくい方への有人の窓口を残しておく

電話代行を選ぶときは、医療機関での対応実績があるか、個人情報の取扱いに関する体制が整っているか、夜間や休日にも対応できるか、そして緊急性の高い電話をどう医療機関側へつなぐかを確認します。コールセンター業務の委託そのものの設計やKPIの考え方は、コールセンターBPOとは|委託範囲とKPI・派遣との違いを整理も参考になります。

医療事務BPO(請求業務・データ管理)

医療事務BPOとは、診療報酬の請求に関わる業務や、診療記録以外の各種データの管理を外部に委託することです。医療事務は専門知識が必要な一方で、担当者の退職や休職によって業務が止まりやすいという課題を抱えています。委託によって、特定の担当者に頼る状態を解消できる点が大きな利点です。

業務 委託先が担うこと 医療機関側に残ること
レセプト作成・点検 診療報酬明細書の作成、算定漏れや記載誤りの点検 算定内容の最終確認、請求の責任
返戻・査定への対応 返戻理由の整理、再請求に向けた資料の準備 医学的な理由の説明が必要な場合の症状詳記
未収金の管理 未収金の一覧管理、支払いの案内状の作成と送付 分割払いなど個別の相談への判断
データ入力・書類管理 問診票や各種書類の入力、紹介状などの書類の整理と保管 診療録(カルテ)への記載
経理・人事などのバックオフィス 記帳、支払い処理、給与計算、求人の掲載と応募者との日程調整 経営判断、採用の可否の決定

訪問診療・訪問看護の事務は請求が月初に集中しやすい

在宅医療では、医療保険と介護保険の両方にまたがる算定や、訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所との連絡調整が加わります。請求に関わる事務が月末から月初に集中しやすく、少ない人員では残業が常態化しがちです。そのため、利用者情報の入力、実績や加算の確認、請求データの作成、ケアマネジャーへの実績の送付といった事務を外部に任せる例があります。ただし、算定内容の最終確認と請求の責任は医療機関に残るため、委託先が作った請求データを院内の担当者が確認する流れを残しておくことが大切です。

患者さんの情報を扱う委託の注意点

医療事務BPOで特に注意したいのが、患者さんの情報の扱いです。病歴などの医療情報は、個人情報保護法で「要配慮個人情報」とされ、取扱いに特に配慮が必要な情報です。個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」では、個人データの取扱いを委託する場合、医療機関は委託先を適切に選び、委託契約で安全管理の内容を定め、取扱いの状況を把握するなど、委託先を監督する必要があるとされています。

また、電子カルテやレセプトコンピューターなどのシステムに委託先がアクセスする場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第7.0版、令和8年6月)も確認しておきます。アクセスできる範囲、利用する端末、作業の記録の残し方を、契約の段階で取り決めておくことが大切です。ヘルスケア分野で医療情報を扱うBPOの注意点は、bpo healthcareとは?ヘルスケアBPOの業務範囲と医療情報管理の注意点でも解説しています。

受付・コンタクトセンター業務のBPO

受付やコンタクトセンターの業務は、患者さんと直接やり取りする業務でありながら、その多くは資格を要しないため、医療BPOの中でも委託の範囲を広げやすい領域です。窓口に人を派遣してもらう形と、電話やWebでの問い合わせを院外のコンタクトセンターで受ける形があります。

業務 委託の形 期待できること
窓口受付・会計 委託先のスタッフが院内の窓口で、受付、保険証やマイナ保険証の確認、会計を行う 欠員が出ても窓口を止めずに運営できる
予約の受付・変更 院外のコンタクトセンターが電話で受け、予約システムに登録する 電話がつながりやすくなり、予約の取りこぼしが減る
一般的な問い合わせ対応 診療時間、アクセス、持ち物など、決まった内容に回答する 院内のスタッフが対応する電話の件数を減らせる
外国語での対応 通訳や多言語対応のオペレーターが、電話や窓口での会話を支援する 外国人の患者さんの受け入れ体制を整えやすい

問い合わせ業務の委託では、「受ける電話」だけでなく、問い合わせの種類ごとに誰がどこまで答えるかの設計が欠かせません。問い合わせ対応を種類別に切り分けて委託する考え方は、BPO対応とは|問い合わせ・カスタマーサポート業務の委託設計で詳しく整理しています。

受付や電話の一次受けを外部に任せても、予約の確認、検査や書類の準備ができたことの連絡、折り返しの電話といった、医療機関側からかける連絡は院内に残ることがあります。これらが担当者の手作業のままだと、連絡の漏れや、誰にいつ連絡したかの把握のしにくさが次の課題になります。発信の連絡を、結果が見える形で運用する場合の一例がDream Call Nextです。アウトバウンド(発信)向けのコールセンターシステムで、クラウド型のため自院のパソコンから使えます。全通話録音(6か月保存)や架電禁止番号の一括登録、一覧分析やステータス割合といった分析機能を備え、発信の結果を数字で振り返れる点が特徴です。一方で、最低利用期間は導入月から6か月で、録音の保存期間を延ばす場合は別途オプションの契約が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。なお、Dream Call Nextは発信業務を支えるシステムで、電話対応を代わりに行う受託先ではなく、受電が中心の窓口には向きません。医療機関での利用の可否や運用は、資料で確認することをおすすめします。

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医療BPOが求められる背景と、メリット・注意点・費用の見方

医療機関でBPOの検討が進む背景には、医療事務や受付の人材の採用・定着が難しくなっていることに加え、診療報酬の請求業務が月末から月初にかけて集中しやすく、限られた人員では残業が常態化しやすいという事情があります。こうした業務を外部に任せることで得られる効果と、あらかじめ理解しておきたい注意点を整理すると、次のようになります。BPO全般のメリット・デメリットを業務別・規模別に見たい場合は、BPOのメリット・デメリット完全解説|規模別の向き不向きまで整理も参照してください。

観点 メリット 注意点
人員・コスト 採用や教育の負担、請求業務の繁忙期の時間外勤務を抑えやすい 委託の範囲が広がるほど費用は増えるため、院内で続ける業務との比較が必要
診療への集中 医師や看護師、院内スタッフが患者さんへの対応に時間を使える 院内と委託先の引き継ぎのルールを決めないと、かえって確認の手間が増える
業務の品質 複数の医療機関を支援する事業者の知見や、ダブルチェックの体制を取り入れられる 業務を任せきりにすると院内にノウハウが残らず、委託をやめるときに困る
情報管理 情報管理の体制が整った事業者を選べば、院内の管理を見直すきっかけにもなる 患者さんの氏名や病歴を扱うため、委託先のセキュリティ体制の確認が欠かせない

費用は金額より「何に対して払うか」を見る

医療BPOの費用は、委託する業務の範囲、受ける件数、対応する時間帯によって大きく変わります。そのため、金額の大小だけで比べると、条件の違うものを並べてしまうことになります。見積もりを依頼するときは、次の項目を同じ条件で揃えて比べると違いが見えやすくなります。料金の具体額は、各事業者の資料や公式サイトで確認してください。

確認する項目 見方
対応する曜日・時間帯 診療時間内だけか、昼休み・夜間・休日を含むか。時間外の対応は別料金になることがある
受ける件数と超過時の扱い 月に受けられる件数の上限と、超えたときの課金の仕方
回線数と同時に対応できる数 電話が集中する時間帯に、あふれた電話をどうするか
初期費用・月額・通話料の区分 導入時にかかる費用と、毎月かかる費用、実費として別に負担する費用を分けて見る
報告の内容と頻度 件数、引き継ぎ件数、苦情の内容などを月次などで報告してもらえるか
業務を追加するときの費用 電話のあとに予約登録や書類入力を足す場合の扱い

委託先の選び方と導入の進め方|小さく始めて広げる

委託先は、医療機関での実績、情報管理の体制、業務範囲と引き継ぎの取り決め、報告と改善の仕組みの4点で比べます。導入は、院内の業務の書き出し、小さな範囲での試行、院内の連絡ルールづくりの順に進めると、失敗が起きにくくなります。

委託先を比べる観点と確認の方法

観点 確認すること 確認の方法
医療機関での実績 同じ規模・診療科の支援経験、対応した業務の範囲 実績の説明を依頼し、可能であれば同じ診療科の事例を聞く
情報管理の体制 安全管理の措置、再委託の有無、従事者への研修、事故が起きたときの報告手順。プライバシーマークやISMS(ISO/IEC 27001)などの認証の有無 契約前に質問票で確認し、契約書に取扱いの内容を定める
業務範囲と引き継ぎ 回答してよい内容と引き継ぐ内容、緊急性の高い電話のつなぎ方 応対マニュアルを共同で作り、試行期間に見直す
報告と改善 件数や引き継ぎ件数の報告、苦情の共有、定例の見直しの場 報告の項目と頻度を契約書に定める
非常時の対応 拠点の所在地、災害時に優先して続ける業務 BCPと委託契約の両方で確認する

医療法で基準が定められた業務を委託するとき

2つ目の区分は、医療法第15条の3と医療法施行令で定められた業務です。厚生労働省の通知「病院、診療所等の業務委託について」では、これらの業務ごとに、受託責任者の配置、従事者の研修、業務の記録の保存といった委託先に求める基準が示されています。一般財団法人医療関連サービス振興会が認定する「医療関連サービスマーク」は、こうした基準を満たしているかを判断する目安の1つになります。多くの医療機関が「医療BPO」として検討するのは1つ目の区分、つまり受付・電話・医療事務・バックオフィスといった業務です。以下では、この領域を中心に解説します。

導入の進め方は3ステップ

  1. 現在の業務を書き出す: 誰が、どの業務に、どれくらいの時間をかけているかを書き出し、特定の担当者に頼っている業務を見つけます。資格を要しない業務の中から、範囲を区切りやすいものを候補にします。
  2. 小さな範囲で試す: いきなり全面的に委託せず、昼休みや診療時間外の電話だけ、レセプトの点検だけといった範囲から始めます。費用感や対応の速さ、院内のスタッフとの相性を確かめてから範囲を広げます。
  3. 院内との連絡ルールを決める: 院内の窓口担当者を1人決め、連絡手段を統一し、定例の報告の場を設けます。情報の伝わり方のずれが、委託後のトラブルで最も多い原因の1つです。

次のセルフチェックで、委託を始める前に院内で整えておきたいことを確認できます。

電話・受付の委託、始める前の院内チェック

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BCP対策としての医療BPOの意義

医療BPOは、業務の効率化だけでなく、災害や感染症の流行、サイバー攻撃などの非常時に診療を続けるためのBCP(事業継続計画)の観点からも意味があります。厚生労働省は、医療施設の災害対応のための事業継続計画(BCP)について、災害拠点病院向け、それ以外の医療機関向けの手引きやチェックリストを公開し、策定を促しています。

非常時には、患者さんからの問い合わせが急増する一方で、院内のスタッフは診療や安全確認に追われ、電話や事務に手が回らなくなります。こうした場面で、外部の事業者が業務の一部を担える体制があると、診療への影響を抑えやすくなります。

非常時の場面 起こりやすいこと BPOで備えられること
地震・水害などの災害 診療の可否や予約の変更に関する電話が集中し、回線がふさがる 院外のコンタクトセンターで電話を受け、決められた案内を伝える
感染症の流行 スタッフの欠勤が重なり、受付や事務の人手が足りなくなる 委託先の人員で受付や事務を補い、業務を止めない
システム障害・サイバー攻撃 電子カルテや予約システムが使えず、予約の確認や会計が滞る 委託先と取り決めた手順で、紙での受付や患者さんへの連絡を分担する

ただし、委託先も同じ災害で被災する可能性があります。委託先の拠点が医療機関と同じ地域だけに集中していないか、非常時にどの業務を優先して続けるのかを、BCPと委託契約の両方で確認しておくことが大切です。特に予約や受付の電話は、非常時に最初に混乱しやすい業務です。平常時から電話対応を委託していれば、そのまま非常時の受け皿としても機能させやすくなります。

委託時によくある失敗パターン(責任範囲の曖昧さ等)

医療BPOの失敗は、委託先の能力よりも、委託する範囲と責任の決め方に原因があることがほとんどです。よく見られる失敗と、見直した後の形を整理します。

よくある失敗(Before) 起きること 見直した後(After)
委託先が答えてよい範囲を決めていない オペレーターが症状の相談に答えてしまい、医学的な判断を委託先が行った形になる 回答してよい内容と引き継ぐ内容を応対マニュアルで明確にし、定期的に見直す
業務をまるごと任せて院内に知識が残らない 請求内容の誤りに気づけず、委託先を変えるときに業務が止まる 最終確認は院内の担当者が行い、業務の手順書を委託先と共有して保管する
委託先の情報管理を契約前に確認しない 患者情報がどこで誰に扱われているか分からず、委託元としての監督責任を果たせない 契約前に安全管理の体制、再委託の有無、事故時の報告手順を確認し、契約書に定める
費用の比較だけで委託先を選ぶ 医療機関での実績が乏しく、医療用語や院内のルールに慣れるまでに時間がかかる 医療機関での対応実績や、同じ規模・診療科の支援経験を確認して選ぶ
委託後に業務の状況を確認しない 応対の品質や処理の遅れに気づくのが遅れ、患者さんからの苦情で初めて問題が分かる 対応件数、引き継ぎ件数、苦情の内容などを定期的に報告してもらい、改善を話し合う

いずれの失敗にも共通するのは、「委託した業務の結果に対する責任は医療機関に残る」という点です。委託は業務を手放すことではなく、業務の担い手を変えることだと捉え、範囲、判断の線引き、報告の仕組みを最初に決めておくことが、医療BPOを長く続けるための前提になります。

特に最後の「委託後に業務の状況を確認しない」は、電話の応対のように記録が残りにくい業務ほど起きやすくなります。報告書の数字に加えて、実際の通話を録音と文字起こしで抜き出して確認できる状態にしておくと、苦情が出る前に応対の癖や案内の食い違いに気づけます。電話の応対内容を確認する仕組みを検討する場合は、MiiTel Phoneの商品ページで機能を確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 医療BPOとは何ですか?

A. 病院やクリニックなどの医療機関が、受付、電話対応、医療事務、経理などの業務を、工程ごと外部の専門事業者に委託することです。BPOはBusiness Process Outsourcingの略で、医師や看護師が診療に集中できる体制をつくることや、人手不足への対応が主な目的です。

Q. 医療機関が委託できない業務はありますか?

A. 診察、診断、治療方針の決定、処方、患者さんへの医学的な説明など、医師や看護師などの資格者が担う業務は委託できません。委託先が受けた相談のうち医学的な判断が必要なものは、医療機関へ引き継ぐ運用にします。

Q. 医療BPOで最初に委託しやすい業務は何ですか?

A. 電話対応や予約の受付が代表的です。件数が多く用件の多くが決まった流れで対応できるため、昼休みや診療時間外だけを委託するなど、小さな範囲から始めやすい業務です。

Q. 患者さんの個人情報を扱う業務を委託しても問題ありませんか?

A. 委託すること自体は可能ですが、医療機関には委託先を監督する責任があります。個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスに沿って、委託先の安全管理の体制を確認し、契約で取扱いの内容を定め、状況を定期的に把握しましょう。

Q. 医療BPOの委託先は何を見て選べばよいですか?

A. 医療機関での実績、情報管理の体制、業務範囲と引き継ぎの取り決め、報告と改善の仕組みの4点で比べます。導入は、院内の業務を書き出し、小さな範囲で試し、院内の連絡ルールを決める順に進めると失敗が起きにくくなります。

Q. 検体検査や清掃などの委託に決まりはありますか?

A. 検体検査、滅菌消毒、患者給食、患者等の搬送、医療機器の保守点検などは医療法で定められた業務で、厚生労働省令の基準に適合する事業者に委託する必要があります。医療関連サービスマークが判断の目安の1つになります。

まとめ|医療BPOを始める前に押さえたい6つのこと

医療BPOを活用するうえで大切なのは、何を委託できるかと同時に、何を医療機関に残すかを決めておくことです。最後に、押さえておきたいポイントを整理します。

  1. 電話対応や予約受付は医療BPOの中でも始めやすく、時間外や混雑時だけを委託する形も選べる
  2. 資格を要しない事務・周辺業務は委託しやすく、検体検査や清掃などは医療法の基準を満たす事業者に委託する
  3. 診察や診断、医学的な説明など資格者が担う業務は委託できず、委託先から医療機関へ引き継ぐ線引きが必要
  4. 患者さんの情報を扱う委託では、医療機関に委託先を監督する責任があり、実績・情報管理・報告の仕組みで委託先を比べる
  5. 委託後も応対の中身を確認できるように、通話の録音や文字起こしなど記録を残す仕組みのサービスの資料を取り寄せて検討する
  6. BPOは災害や感染症の流行などの非常時に業務を続けるためのBCP対策としても意味がある

まずは院内で負担の大きい業務を書き出し、資格を要しない業務の中から、電話対応のように範囲を区切りやすい業務を1つ選んで委託を試してみてください。

参考文献

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