bpo healthcareとは?ヘルスケアBPOの業務範囲と医療情報管理の注意点

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  • ヘルスケアBPOの業務範囲と情報の違いがわかる
  • 医療情報の扱いと委託先の監督のポイントがわかる
  • 認証の見方と委託先との共有の整え方がわかる

bpo healthcare(ヘルスケアBPO)とは、病院・クリニック、製薬企業、医療機器メーカー、保険会社などのヘルスケア領域の事業者が、予約受付や請求処理、問い合わせ対応、バックオフィス業務などを、手順の設計から運用・改善まで含めて外部の専門事業者に委託する取り組みです。BPOはBusiness Process Outsourcingの略で、医療機関向けに限って「医療BPO」と呼ぶこともありますが、ヘルスケアBPOでは委託先が患者や利用者の医療情報に触れる場面が多く、情報管理の設計が一般的なBPOより重くなります。この記事では、業務範囲と委託先との情報共有の整え方を整理したうえで、個人情報保護法上の要配慮個人情報としての扱い、委託先選定で確認したい認証とガイドライン、AI-OCRなどのDXとの組み合わせ、よくある失敗と効果測定の方法まで解説します。

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目次

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  1. 委託先との情報共有をどう整えるか|bpo healthcareの前提
  2. bpo healthcareとは|業務範囲の全体像
  3. 医療情報管理|要配慮個人情報としての扱い
  4. 情報セキュリティ認証|ISO27001と委託先選定
  5. AI-OCR等のDXとの組み合わせ
  6. ヘルスケアBPOのメリットと導入の流れ
  7. 導入でよくある失敗パターン
  8. 効果測定の方法
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ
  11. 参考文献

委託先との情報共有をどう整えるか|bpo healthcareの前提

bpo healthcareを始める前にまず決めたいのは、院内のスタッフと委託先がどこで連絡し、誰がどの情報を見られるかです。業務の中身を決めるより先に共有の場を決めておくと、医療情報の管理が委託前より弱くなる事態を防げます。

ヘルスケアBPOを導入すると、業務マニュアル、シフト、問い合わせの引き継ぎ記録、請求処理の進捗などを、院内と委託先でやり取りする機会が一気に増えます。このとき、メールの個別送信や紙のメモ、個人のチャットアプリに頼ったままだと、誰がどの情報を見られるのかが曖昧になり、記録も散らばります。委託先の監督は委託元の義務でもあるため(詳しくは後述の医療情報管理の章で説明します)、共有の場は「閲覧できる人を区切れること」と「やり取りの記録が残ること」を軸に選びます。

共有の場に求めたい条件 確認すること 足りないと起きやすいこと
閲覧範囲を区切れる 委託先の担当者ごと、業務ごとに、見られる場所を分けられるか 全員がすべての情報を見られる状態になり、渡す情報が増えすぎる
やり取りが1か所に残る 連絡・ファイル・タスクが1つの場にまとまるか メールや個人の端末に記録が散らばり、引き継ぎで抜けが出る
人の出入りに対応できる 担当者の追加・削除、管理者の交代を管理者がすぐ行えるか 委託先の担当者が退職・異動したあとも、アクセスが残る
本人確認を強められる 2段階認証など、ログインの確認を強められるか 1つのパスワードの漏えいが、そのまま情報漏えいにつながる

こうした共有の場の一例が、株式会社kubellが提供するビジネスチャットのChatworkです。当サイトの商品ページでは、チャットのほかにビデオ通話・音声通話が標準で使えること、タスクの担当者を決めて完了するとチャットに自動で通知されること、ファイルをアップロードしてチャットの参加メンバーだけで共有できることが特徴として紹介されています。公式のプラン別機能一覧(2024年11月時点、2026年10月15日に確認)では、ユーザーの追加・削除や管理者権限の委譲、2段階認証(アプリ認証・SMS認証)がスタンダード以上で、社外ユーザー制限やIPアドレス制限、ファイル送信禁止、チャットログのエクスポートがプロフェッショナルで提供されるとされています。一方で、フリープランは過去40日分・5,000件までしか閲覧できないため、業務の記録を残す用途ではプランの確認が欠かせません。また、医療情報のやり取りに使えるかどうか(ガイドラインへの対応状況や、提供事業者が出す開示書の有無など)は、資料や提供元への確認が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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医療機関での使われ方の例として、Chatworkの導入事例に、医療法人忠恕 春日部在宅診療所ウエルネスの事例があります(取材2024年12月)。連携する事業所への申し送りをグループチャットで行い、電子カルテの内容を薬局のグループチャットに共有している使い方が紹介されています。

Chatworkで業務が効率化できたことで、診ることのできる患者数が増加しました。

Chatwork導入事例(医療法人忠恕 春日部在宅診療所ウエルネス、取材2024年12月) 出典:導入事例ページ

なお、この事例は在宅診療所でのChatworkの使い方であり、BPOを導入した事例ではありません。委託先との共有の場として使う場合の運用ルールは、自院で決める必要があります。

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bpo healthcareとは|業務範囲の全体像

bpo healthcareで委託される業務は、患者や利用者と接する窓口業務、請求や医療データを扱う業務、組織を支えるバックオフィス業務の3つに大きく分けられます。対象は医療機関に限らず、製薬企業、医療機器メーカー、健康保険組合や保険会社、健診機関なども含まれます。

単発の作業代行と違い、手順の設計から運用・改善までを含めて外部に任せる点がBPOの特徴です。BPOという言葉そのものの意味や、発注者と受託者での使い分けは、当サイトのBPOとはビジネスで何の略?発注者と受託者で違う使い方と提案書の確認点で整理しています。業務ごとに扱う情報の種類と、委託先に求める管理の強さが変わるため、最初にこの整理をしておくと委託範囲を決めやすくなります。

業務の区分 主な業務例 扱う情報の例 情報管理の注意度
窓口業務 診療・健診の予約受付、受診案内、電話やメールでの問い合わせ対応、オンライン診療のアフターフォロー 氏名、連絡先、受診予定、問い合わせ内容に含まれる症状 中から高(会話の中で病状が伝わることがある)
請求・医療データ業務 診療報酬の請求事務、未収金の管理、健診結果のデータ化、医薬品情報の管理事務 病名、診療内容、健診結果、保険情報 高(要配慮個人情報をまとまって扱う)
バックオフィス業務 給与計算、勤怠集計、経理、採用事務、書類の整理・発送 職員の個人情報、取引先情報(患者情報は原則含まない) 中(職員の健康診断結果などは要配慮)

医療機関の場合は、医師法などで有資格者が行うべきとされる行為は当然委託できないため、あくまで事務や周辺業務が中心になります。病院・クリニックに絞った委託業務の選び方は、当サイトの医療BPOとは|病院・クリニックで委託できる業務・できない業務と注意点で詳しく解説しています。この記事では、ヘルスケア領域全体に共通する「医療情報をどう管理するか」を中心に掘り下げます。

製薬・ヘルスケア企業で委託される業務

製薬企業や医療機器メーカーでは、医療機関とは違う種類の業務が委託されます。業務の例として、事業者の公開情報では、医療従事者からの問い合わせのうち資格がなくても答えられる一次対応、MRの講演会手配や経費処理、薬事に関する事務、医薬品情報の管理事務、健康保険組合の特定健診の受診促進などが挙がっています。

委託元 委託される業務の例 情報管理で気をつけたい点
製薬企業・医療機器メーカー 医療従事者や利用者からの問い合わせの一次対応、講演会の手配、薬事・医薬品情報の管理事務 副作用などの健康に関わる相談が含まれることがあり、要配慮個人情報を扱う可能性がある
健康保険組合・保険会社 健診の予約受付、受診促進の連絡、問い合わせ対応 加入者の健診結果や保険情報をまとめて扱うため、渡す情報の範囲を絞る
健診機関 予約受付、結果のデータ化、結果通知の発送 健診結果は要配慮個人情報に当たるため、保存場所と返却・消去の方法を契約で定める

訪問診療・訪問看護の事務とBPO

訪問診療や訪問看護では、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所など、連携先との連絡が多くなります。在宅医療のBPOを扱う事業者の公開情報では、レセプトの作成・点検、診療報酬の請求事務、電話・問い合わせ対応、訪問診療に関する書類作成の補助、連携先との連絡の補助などが委託できる業務の例として挙がっています。

院外で働く職員が多いため、連絡や申し送りが個人の携帯電話やメールに分かれやすく、情報が1か所に残らないことが課題になりがちです。委託先が連携先との連絡を補助する場合は、どの範囲まで委託先が見られるかを先に決めておく必要があります。なお、受け入れの可否のような医療上の判断は、事務の委託には含めず院内に残します。

ヘルスケアBPOが広がる背景

ヘルスケアBPOの活用が進む背景には、医療従事者の人手不足と、医療の現場に求められる事務の増加があります。医師の働き方改革への対応、オンライン資格確認や電子処方箋など新しい仕組みの運用、感染症対策に伴う問い合わせの増加などで、本来は診療やケアに集中すべき職員が事務に時間を取られやすくなっています。定型的な事務を外部に任せ、有資格者が専門業務に集中できる体制をつくることが、BPO導入の大きな目的です。

医療情報管理|要配慮個人情報としての扱い

ヘルスケアBPOで最も慎重に扱うのは、患者や利用者の医療情報です。個人情報保護法では、病歴や健康診断の結果、診療や調剤が行われたことなどを含む情報は「要配慮個人情報」(第2条第3項)として位置づけられ、取得の際に原則として本人の同意が必要になるなど、一般的な個人情報より厳しいルールが設けられています。医療機関が扱う情報は、その多くが要配慮個人情報に当たると考えておくのが安全です。

委託は第三者提供に当たらないが、監督義務がある

業務の委託に伴って委託先に個人データを渡すことは、一般的に本人の同意が必要な「第三者提供」には当たらないとされています。ただしその代わりに、委託元は委託先に対して「必要かつ適切な監督」を行う義務を負います(第25条)。つまり、BPOで患者情報を外部に渡すこと自体は可能でも、委託先で情報漏えいが起きた場合に委託元が監督を怠っていれば、委託元の責任も問われうるということです。

個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」では、委託先の監督として、適切な委託先を選ぶこと、委託契約で安全管理措置などを定めること、委託先での取扱状況を把握することが求められています。医療機関の担当者は、このガイダンスを確認したうえで委託の範囲と契約内容を決めることが大切です。

委託前に決めておきたい4つのこと

決めること 具体的な内容 決めていない場合に起きやすいこと
渡す情報の範囲 業務に必要な項目だけを洗い出し、病名や検査結果など不要な情報は渡さない 「念のため」でカルテ情報まで共有し、漏えい時の影響が大きくなる
アクセス権限 委託先の担当者ごとに、閲覧・編集できるデータやシステムを限定する 共用IDでログインし、誰がいつ見たか追跡できない
再委託のルール 再委託の可否、再委託する場合の事前承認と同等の管理を契約で定める 知らない間に別の事業者や海外拠点で処理されていた
事故時の連絡体制 漏えいや誤送信が起きた際の報告期限、報告先、院内のエスカレーション先 発覚から報告までに時間がかかり、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が遅れる

特に見落とされやすいのが「渡す情報の範囲」です。予約受付の委託であれば、氏名・連絡先・予約日時・診療科があれば足りる場合がほとんどです。委託先の業務に必要な最小限の情報に絞ることが、医療情報管理の基本になります。

海外拠点を使うBPOの注意点

ヘルスケアBPOの中には、コスト面から海外の拠点でデータ入力などを行うサービスもあります。外国にある第三者への個人データの提供には、個人情報保護法で本人の同意や相手国の制度に関する情報提供などのルールが別途定められています(第28条)。委託の形であっても、委託先がどの国で業務を行うのか、再委託先が海外にあるのかは、契約前に必ず確認しておきましょう。

なお、本記事の法令に関する記述は一般的な解説であり、法的助言ではありません。個別の委託契約や情報の取扱いについては、個人情報保護委員会の公表資料を確認のうえ、必要に応じて弁護士などの専門家に相談してください。

ここまでの内容を、自院の状況に当てはめて確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、委託を始める前に共有の場と権限を整理しておく必要があります。

委託先との情報共有、今のやり方で大丈夫?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

情報セキュリティ認証|ISO27001と委託先選定

委託先が医療情報を適切に管理できるかを判断する材料として、第三者認証の取得状況があります。代表的なものは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001と、個人情報の適切な取扱い体制を評価するプライバシーマークです。医療BPO事業者の公開情報には、プライバシーマークやISO/IEC 27001の認証取得、入退室の管理、私物の持ち込みの制限などを掲げている例があります。

認証・基準 評価の対象 委託先選定での確認ポイント
ISO/IEC 27001(ISMS) 組織の情報セキュリティを管理する仕組み 認証の適用範囲に、自院の業務を行う拠点・部署が含まれているか
プライバシーマーク 事業者全体の個人情報保護の体制 有効期限内か、更新されているか
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生労働省) 医療機関等における医療情報システムの安全管理 委託先が、自院の求める対応状況を説明できるか
医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(経済産業省・総務省) 医療機関にシステムやサービスを提供する事業者の安全管理 サービス仕様適合開示書など、対応状況を示す書類を出せるか

注意したいのは、認証を取得していることがそのまま「自院の業務も安全に扱われる」ことを意味するわけではない点です。ISO/IEC 27001は認証の適用範囲が組織ごとに決められており、本社の一部門だけが対象で、実際に作業する拠点は範囲外というケースもあります。認証書の写しで適用範囲を確認し、さらに作業現場の入退室管理や端末の持ち出しルールなどを具体的に質問するのが確実です。

医療機関とシステム事業者向けの2つのガイドライン

医療情報の安全管理では、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」の2つが基本になります(あわせて「3省2ガイドライン」と呼ばれます)。前者は主に医療機関向けで、2026年10月15日時点の厚生労働省のページでは第7.0版(令和8年6月)が掲載されています。後者は医療機関にシステムやサービスを提供する事業者向けで、経済産業省のページでは第2.0版(令和7年3月28日改定)が最新です。いずれも改定されることがあるため、確認するときは各省のページで最新版を見てください。

BPOでクラウドサービスや委託先のシステムを使う場合は、委託先が後者のガイドラインにどう対応しているかを確認しておくと、医療機関側の管理責任を果たしやすくなります。同じ厚生労働省のページには、医療機関・薬局を対象にしたサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年6月)も掲載されており、院内の対策を点検する際の手がかりになります。

契約前に委託先へ確認したい質問

  • 自院の業務を担当する拠点と、その拠点が認証の適用範囲に入っているか
  • 担当者の教育・誓約書の取得など、人的な安全管理の方法
  • 作業場所の入退室管理、私物の持ち込みや端末の持ち出しのルール
  • データの保存場所(国内か海外か)、保存期間、契約終了時の返却・消去の方法
  • 再委託の有無と、再委託先に求める管理水準
  • 定期報告や監査の受け入れ方法
  • 事故発生時の報告期限と連絡経路

AI-OCR等のDXとの組み合わせ

ヘルスケアBPOは、業務をそのまま外に出すだけでなく、DXと組み合わせることで効果が高まります。代表的なのが、紙の問診票や紹介状、請求関係の帳票をAI-OCRで読み取ってデータ化する取り組みです。紙の帳票を委託先に郵送したりスキャンして送ったりする運用は、紛失や誤送付のリスクがつきまといます。データ化してから、権限を絞ったシステム上で委託先に処理してもらう形にすると、情報の受け渡しの回数そのものを減らせます。

組み合わせるDX BPOとの役割分担の例 情報管理上のメリット
AI-OCR 院内で帳票を読み取り、確認・修正を委託先が担う 紙の原本を院外に持ち出さずに済む
Web予約・問い合わせフォーム 定型的な予約は自動化し、例外対応を委託先が担う 電話メモなど記録が残りにくい情報のやり取りが減る
ビジネスチャット・グループウェア マニュアル・引き継ぎ・進捗を委託先と共有する 閲覧できる人を区切れ、やり取りの記録が1か所に残る

AI-OCRの読み取り結果は、帳票の書き方や手書きの癖によって誤りが出ることがあるため、最終確認を人が行う工程を残しておく必要があります。ここを委託先に任せる場合も、誤読が請求や患者対応にどう影響するかを院内で把握しておくことが大切です。

DXとBPOを組み合わせるほど、院内と委託先が同じ情報を見ながら仕事をする場面が増えます。そのため、共有の基盤をどうするかが情報管理の要になります。紙やメールに分散した情報を1つの共有の場に集め、委託先には必要なグループやフォルダだけを見せる形にすれば、委託の範囲と閲覧できる情報の範囲をそろえやすくなります。

ヘルスケアBPOのメリットと導入の流れ

ヘルスケアBPOのメリットは、職員が専門業務に集中できること、コストを適正化できること、業務の属人化を解消できること、事業継続の備えになることの4つに整理できます。導入は、業務の棚卸しから始めて段階的に移行するのが基本です。ここでは、メリットごとの前提条件と、導入の各段階で行う情報管理の作業をあわせて確認します。

期待できる4つのメリット

メリット 内容 効果を得るための前提
専門業務への集中 予約受付や請求事務を任せることで、医師・看護師・薬剤師などの有資格者が診療やケアに時間を使える 有資格者でなければできない業務と、資格がなくてもできる業務を切り分けておく
コストの適正化 月末月初の請求時期などに集中する時間外労働や、事務職員の採用・育成にかかる負担を抑えやすい 委託費だけでなく、院内に残る確認作業や監督の工数も含めて比較する
属人化の解消 委託にあたって手順を文書化するため、特定の職員しか分からない業務が減り、休職や退職の影響を受けにくくなる 作成したマニュアルを委託先任せにせず、院内でも保管・更新する
事業継続(BCP)の備え 災害や感染症の流行で院内の職員が出勤しにくい場合でも、院外の拠点で事務を続けられる可能性がある 委託先の拠点や代替体制、緊急時の連絡方法を契約前に確認する

一方で、BPOは依頼すればすぐに始められるものではありません。業務の整理やマニュアルの作成、担当者の研修に一定の準備期間がかかり、開始後も委託先の管理は委託元に残ります。前の章で見たとおり、医療情報を扱う以上、委託先の監督は委託元の義務でもあります。「任せたら終わり」ではなく、管理する仕事が新しく生まれると考えておくと、導入後のずれを防げます。

導入の流れと各段階で行う情報管理

段階 行うこと 情報管理の面で行うこと
1. 業務の棚卸し 事務作業の内容と所要時間を書き出し、委託する業務と院内に残す業務を分ける 業務ごとに、扱う情報の項目(氏名、病名、保険情報など)を洗い出す
2. 委託先の選定 医療分野の実績、対応できる業務範囲、体制を複数社で比較する 認証の適用範囲、作業拠点、再委託の有無を確認する
3. 業務設計と契約 業務フロー、品質の基準、報告の頻度を委託先と決める 渡す情報の範囲、アクセス権限、事故時の連絡体制を契約に定める
4. マニュアル整備と研修 手順書と判断基準を作成し、委託先の担当者に研修を行う 個人情報の取扱いに関する教育の実施状況を確認する
5. 試行と本稼働 一部の業務や時間帯から始め、問題がなければ範囲を広げる 付与した権限が業務に対して広すぎないかを見直す
6. 運用と改善 定例会で品質と件数を確認し、手順を更新する 定期報告と点検で、委託先での取扱状況を把握する

契約の形(請負か準委任か)によって、委託元が行える指示や責任の範囲が変わります。契約類型と偽装請負の判断基準は、当サイトのBPOと業務委託の違いとは?請負・準委任の契約類型と偽装請負の判断基準を参照してください。

最初からすべての事務を委託するよりも、患者情報を含まないバックオフィス業務や、渡す情報が少ない予約受付から始めるほうが、情報管理の負担を抑えながら委託先との進め方を確かめられます。請求やレセプトのように要配慮個人情報をまとまって扱う業務は、委託先の管理体制と院内の監督の方法が固まってから広げるのが安全です。

導入でよくある失敗パターン

ヘルスケアBPOの失敗は、委託先の業務品質よりも、委託前の情報管理の設計不足から起きることが少なくありません。よくあるパターンと、改善後の姿を整理します。

失敗パターン Before(よくある状態) After(改善後)
価格だけで委託先を選ぶ 見積もりの安さを優先し、情報管理体制を確認しないまま契約した 認証の適用範囲、作業拠点、再委託の有無を比較項目に入れて選定する
情報を渡しすぎる 業務に不要なカルテの閲覧権限まで委託先に付与していた 業務ごとに必要な項目を定め、閲覧できるデータを最小限に絞る
共有方法が場当たり的 引き継ぎを個人のメールやチャットアプリで行い、記録が散らばった 共有の場を1つに決め、権限とやり取りの記録を管理する
丸投げにする 委託先に任せきりで、院内の担当者や判断する人が決まっていなかった 院内の窓口担当者を決め、定例会で品質と件数を確認する
契約後の監督がない 契約時に確認したきりで、運用中の取扱状況を把握していなかった 定期報告と年1回程度の点検を契約に盛り込み、実施する
院内にノウハウが残らない 手順が委託先にしかなく、契約終了時に業務が止まりかけた 業務マニュアルを院内でも保管し、変更のたびに更新する

最後の「院内にノウハウが残らない」は見落とされがちですが、委託先の変更や契約終了は数年単位で必ず起こりえます。業務手順と判断基準を院内の共有基盤に残しておくと、委託先の切り替えもスムーズになり、特定の事業者に依存しすぎる状態を避けられます。

効果測定の方法

ヘルスケアBPOの効果は、コスト削減額だけでは測りきれません。導入の目的が「職員が専門業務に集中できる体制づくり」である以上、業務負荷や患者の体験、情報管理の状態まで含めて評価することが大切です。導入前に現状の数値を測っておき、導入後に同じ方法で比べるのが基本です。

評価の観点 指標の例 測り方
職員の業務負荷 事務作業に使う時間、時間外労働の時間 勤怠データと、1週間程度の業務時間の記録を導入前後で比較
患者の体験 電話の応答率、予約までの待ち時間、窓口の待ち時間 電話システムの記録や受付時刻の記録、患者アンケート
業務品質 請求の返戻・査定の件数、入力ミスの件数 月次で件数を集計し、原因を分類
情報管理 誤送信などのヒヤリハット件数、権限の見直し実施状況 インシデント報告と、委託先からの定期報告

効果測定を続けるには、委託先からの報告や院内の集計を1か所に集め、関係者が同じ数字を見られるようにしておくことが欠かせません。報告書がメール添付で個人の受信箱に埋もれていると、改善の議論が進まないうえ、報告に含まれる情報の管理も甘くなりがちです。委託先との定例会の資料や議事録、改善タスクの進捗も、参加者を決められる共有の場で管理しておくと、BPOを継続的に見直す体制をつくりやすくなります。

ここまで見てきたとおり、委託先との共有の場は、導入前の準備から効果測定まで一貫して必要になります。共有の場に使うビジネスチャットを検討する場合は、資料でプランごとの管理機能を確認しておくと比較しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. bpo healthcare(ヘルスケアBPO・医療BPO)とは何ですか?

A. 病院・クリニック・製薬企業・医療機器メーカー・保険会社などのヘルスケア領域の事業者が、予約受付や請求処理、問い合わせ対応、バックオフィス業務などを外部の専門事業者にまとめて委託する取り組みです。手順の設計から運用・改善まで含めて任せる点が、単発の作業代行との違いです。医療機関向けに限る場合は「医療BPO」と呼ばれることもあります。

Q2. BPOとは何の略ですか?

A. Business Process Outsourcingの略で、業務プロセスの一部または全部を外部の専門事業者に委託することを指します。ヘルスケア領域では、患者や利用者の医療情報を扱う業務が含まれるため、委託先の管理体制を確認することが特に重要になります。

Q3. ヘルスケアBPOではどのような業務を委託できますか?

A. 診療や健診の予約受付、問い合わせ対応などの窓口業務、診療報酬の請求事務や健診結果のデータ化などの業務、給与計算や経理などのバックオフィス業務が主な対象です。訪問診療・訪問看護では、請求事務や連携先との連絡の補助も例に挙がります。医師法などで有資格者が行うべきとされる行為は委託できないため、事務や周辺業務が中心になります。

Q4. 患者の医療情報を委託先に渡すには本人の同意が必要ですか?

A. 業務の委託に伴って個人データを渡すことは、一般的に本人の同意が必要な第三者提供には当たらないとされています。ただし委託元には委託先を必要かつ適切に監督する義務があり、委託先の選定、契約での安全管理措置の取り決め、取扱状況の把握が求められます。個別の判断は専門家に確認してください。

Q5. 委託先がISO27001を取得していれば安心ですか?

A. ISO/IEC 27001は判断材料の1つになりますが、認証の適用範囲は組織ごとに決められているため、自院の業務を行う拠点が範囲に含まれているかを確認する必要があります。あわせて、担当者の教育、データの保存場所、再委託の有無などを具体的に確認することが大切です。

Q6. BPOを導入する前に院内で準備しておくことはありますか?

A. 委託する業務の手順と判断基準の文書化、委託先に渡す情報の範囲の決定、委託先と情報をやり取りする共有の場の整備が重要です。Chatworkのように参加メンバーを決められるビジネスチャットなどで、閲覧できる人を区切れる基盤を用意しておくと、委託後も情報の管理を院内でコントロールしやすくなります。医療情報を扱えるかどうかは、プランや提供元への確認が必要です。

まとめ

bpo healthcareは、ヘルスケア領域の事業者が人手不足と事務負担の増加に対応するための有効な手段です。一方で、委託先が患者や利用者の医療情報に触れる場面が多いため、医療情報管理の設計が成否を分けます。導入にあたっては、次の5つを押さえておきましょう。

  1. 業務を窓口・請求・バックオフィスに分け、扱う情報の種類から委託範囲を決める。
  2. 医療情報は要配慮個人情報として扱い、委託先に渡す情報を最小限に絞ったうえで、監督の方法を契約に盛り込む。
  3. ISO/IEC 27001などの認証は適用範囲まで確認し、作業拠点や再委託の実態を具体的に確かめる。
  4. 委託先との連絡・引き継ぎ・報告を、閲覧できる人を区切れる共有の場に集める。ビジネスチャットを使う場合は、Chatworkなどの資料でプランごとの管理機能を確認して検討する。
  5. 導入前後で業務負荷・患者の体験・業務品質・情報管理を測り、見直しを続ける。

参考文献

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