DX成功事例の共通要因|経産省DXセレクション2026から学ぶ4つのポイント

Check!

  • DXセレクション2026の11者の取組がわかる
  • DX成功事例に共通する4つの要因がわかる
  • 事例を自社に生かす視点と失敗例がわかる

DXの成功事例に共通するのは、経営者の旗振りと現場の主体性をセットにし、業務とデータの土台を整え、取引先や業界まで含めて変え、全社員のスキルを底上げしながら進めている点です。経済産業省が中堅・中小企業の優良事例を選ぶ「DXセレクション」の2026年の選定企業を見ると、訪問看護、製造、建設、飲食、宿泊と業種は違っても、この4つが形を変えて現れています。本記事では、選定企業11者の取組と成果を公的資料で確認したうえで、4つの共通要因を整理し、事例を自社に置き換える視点と、事例を真似するだけで失敗するパターンまで解説します。

自社のDXで、まず確かめたいのはどこ? かんたん診断

Q1. 自社のDXで、いま一番手を付けにくいのはどこですか?

目次

開く

閉じる

  1. 成功事例を自社に生かす第一歩|現場の状態を知る組織診断ツールの役割の違い
  2. DXセレクションとは|経産省が選ぶ中堅・中小企業の優良事例
  3. DXセレクション2026の成功事例一覧|11者の取組と報告されている成果
  4. 共通要因1|経営者の旗振りと、現場のボトムアップをセットにする
  5. 共通要因2|業務とデータの「土台」を先に整える
  6. 共通要因3|取引先・顧客・業界まで見通して業務の流れを変える
  7. 共通要因4|全社員のスキルを底上げし、外部の力も使う
  8. 事例を「自社ごと」に変換する3つの視点
  9. 事例を真似するだけで失敗するパターン
  10. DXセレクション以外に参考にすべき公的情報
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|事例を自社に生かすために今日からできる5つのこと
  13. 参考文献

成功事例を自社に生かす第一歩|現場の状態を知る組織診断ツールの役割の違い

成功事例を自社に当てはめる前にできるのは、従業員の意欲や組織の状態を数字で把握しておくことです。組織診断ツールは、その把握と、取り組み後の変化の確認に使えます。

DXセレクション2026でグランプリに選ばれたプーラビダ株式会社(福岡県・訪問看護)は、離職率83.3%という状況をきっかけにDXを本格化し、取り組み後の離職率は7.7%になったと、経済産業省のレポートに記載されています。変化を数字で示せたのは、出発点の数字があったからです。組織診断ツールは目的によって役割が違うため、次の表では、お名前.comビジネスコンシェルジュに掲載されている3つのサービスを、商品ページで確認した内容(2026年10月15日確認)で並べました。優劣や順位を示すものではありません。

現場の状態を知る組織診断ツール 3つの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

自社の状況:

この状況に合う一例:Wevoxは、2-3分で答えられるパルスサーベイを定期的に配信し、意欲の変化を追えます。

資料を無料ダウンロード

この状況に合う一例:ラフールサーベイは、スコアの背景にある要因まで分析し、対策の検討まで伴走を受けられます。

資料を無料ダウンロード

この状況に合う一例:ミキワメAI 適性検査は、社員の性格傾向の分析を、推進役の人選や配属を話し合う材料にできます。

資料を無料ダウンロード
サービス Wevox ラフールサーベイ ミキワメAI 適性検査
向いている会社 従業員の意欲の変化を、短い間隔で続けて追いたい会社。最低利用人数と最低利用期間が無く、少人数から試せる サーベイを実施して終わりにせず、スコアの背景にある要因の分析と、対策の検討まで進めたい会社 社員の受検データから社風と活躍する人材の傾向をつかみ、採用基準や配属の検討に生かしたい会社
特徴 2-3分で答えられるパルスサーベイを定期的に配信でき、回答は自動集計される。結果をAIが要約し、AIへの質問もできる 短い間隔のショートサーベイと、組織課題を深掘りするディープサーベイを使い分ける。専任のカスタマーサクセス担当が伴走する 社員の受検結果から採用基準を自動で策定し、候補者が自社で活躍する可能性を14段階で比較できる。配属にも活用できる
注意したい点 高度分析やセキュリティのオプションは別途契約が必要。一部の機能はスタンダードプランでの利用になる 課題に応じた対策のオプションサービスは、見積もりでの依頼になる 紙や会場での受検には対応していない。従業員サーベイは同社の別サービス
資料・詳細

3サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)

まとめて資料をダウンロード

表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

意欲の変化を短い間隔で追いたい場合の一例が、株式会社アトラエが提供する「Wevox」です。商品ページによると、定期的に配信するパルスサーベイは2-3分ほどで回答でき、回答はリアルタイムで自動集計されてスコアやグラフで表示されます。チーム別・個人別の結果をAIが要約し、今後のアクションをAIに質問することもできます。最低利用人数や最低利用期間は設けられておらず、1か月の無料トライアルもあるため、少人数のチームで試してから広げる進め方も取れます。注意点として、高度分析やセキュリティのオプションは別途契約が必要で、カルチャーサーベイなど一部の機能はスタンダードプランでの利用になります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社アトラエ

Wevox

Wevox
出典:get.wevox.io

株式会社アトラエ

Wevox

組織のパフォーマンスが向上!まずは導入したいあらゆる企業におすすめ

全体評価
3.7 (3件)

1人当たり300円/月~で気軽にサーベイを始められ、AIによるビッグデータを基にしたサポートと組織のコミュニケーション強化を図れるツールを選択するなら、Wevoxの導入がおすすめです。

評判・口コミを紹介

Wevoxが最も手軽に経営幹部へ意見を届けられるツールだと感じている従業員が多いように思います。直属の上司に相談しづらい、あるいは、どこに相談すればいいかわからないような悩みを伝えられることに加え、匿名であることにメリットを感じている従業員が多いようです。

導入事例(NECネッツエスアイ・サービス株式会社)|株式会社アトラエ

GOOD

ここがおすすめ!

  • 1ヶ月の無料トライアルがあり、最低利用人数・最低利用年数なし、初期費用や契約の縛りもない
  • 測定機能だけでなく「学習支援」や「活用支援」サービスも提供
  • 充実した機能で使いやすく、金融や物流・飲食・ITなど、あらゆる業種・業界で導入ができる
MORE

ここが少し気になる…

  • 高度分析・セキュリティオプションなどは別途契約が必要
評価・口コミ(一部抜粋)
3.7
  • サービスを導入したことで、これまで感覚に頼っていた組織の状態を定量的に可視化できるようになり、エンゲージメントの低下や離職リスクを早期に発見できるようになりました。スマホでも簡単に回答できるユーザーインターフェースで、回答率が高く、現場の声をリアルタイムで把握可能でした。グループ単位での分析やアドバイスコメントもあり、具体的な改善アクションにつなげやすい点を評価しています

  • 社員の満足度や不満ポイントを毎月認識できるので、納得度の高い福利厚生や不満が多い社内施策などリアルボイスを回収できる。さらに、毎月のポイント推移が見れるのでスコアが上がっているのか下がっているのかなど分析するのに便利。

  • 当社では、この結果をもとに部署ごとにエンゲージメント指数をはかり、チーム単位でエンゲージメント指数をもっと上げていこう、というエンゲージメント活動をスタートしました。普段関わりの少ない他部署メンバーと交流する機会を作る等、このサービスを通して直接業務には関係なくとも仕事のモチベーションを上げるためにどうしたらいいか、と考える機会ができたことが大きなメリットだと思います。

Wevoxの公式サイトには、ナガセヴィータ株式会社(従業員500-999名・製造)が2021年にWevoxを導入し、サーベイの結果をもとに経営層向けの研修に取り組んだ経緯が掲載されています(個別の事例であり、効果は会社の規模や運用によって異なります)。

全社のスコアを直視したときに、どうしても看過できない2つの大きな課題が見えてきたのです。

出典:Wevox公式サイトのEngagement Story(ナガセヴィータ株式会社、2026年8月6日掲載)

DXセレクションとは|経産省が選ぶ中堅・中小企業の優良事例

DXセレクションとは、経済産業省が2022年から実施している、中堅・中小企業等のDX優良事例を選ぶ取り組みです。デジタルガバナンス・コードに沿って成果を出した企業をモデルケースとして公表し、地域内や業種内での横展開を図ります。

民間のDX事例記事は、大企業や有名企業が中心になりがちです。一方、DXセレクションは中堅・中小企業等が対象で、予算や人材が限られる中でどう成果を出したかが分かります。選定は書類による審査を経て、グランプリ、準グランプリ、優良事例が決まります。2026年の選定からは、最終選考に経営者自らが10分間でプレゼンテーションを行う審査が加わりました。

近年の選定状況

回 選定数 グランプリ
DXセレクション2024 32社 浜松倉庫株式会社(静岡県浜松市、倉庫業・運送業)
DXセレクション2025 15社(グランプリ1社、準グランプリ3社、優良事例11社) 株式会社後藤組(山形県米沢市、建設業)
DXセレクション2026 11者(グランプリ1者、準グランプリ2者、優良事例8者)。応募は81社 プーラビダ株式会社(福岡県北九州市、訪問看護)

経済産業省とJ-Net21の公表資料によると、選定企業の業種は製造、建設、倉庫・運送、不動産、医療・福祉、飲食、宿泊と幅広く、所在地も北海道から九州まで全国に分かれています。「DXは都市部のIT企業のもの」という思い込みを崩してくれる点も、この制度の価値です。

審査で見られている5つの観点

DXセレクション2025の公表資料では、デジタルガバナンス・コードの項目に対応する次の取組を中心に評価したとされています。成功事例を読み解く際のものさしとしても使えます。

  1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
  2. DX戦略の策定
  3. 組織づくり・人材・企業文化に関する方策(組織づくり、デジタル人材の育成・確保、ITシステム・サイバーセキュリティ)
  4. 成果指標の策定・DX戦略の見直し
  5. ステークホルダーとの対話

注目したいのは、ツールやシステムそのものではなく、ビジョン、組織、人材、成果の測り方といった経営の仕組みが評価の中心に置かれている点です。成功事例を読むときも、どのシステムを入れたかより、なぜそれを入れ、誰が動かし、どう効果を確かめたかに目を向けると、自社に持ち帰れる学びが増えます。DXの定義そのものを確認したい方は「DXとは?経産省の定義とデジタル化との違い、業種別・規模別の始め方」もあわせてご覧ください。

DXセレクション2026の成功事例一覧|11者の取組と報告されている成果

DXセレクション2026の選定企業11者は、従業員12名から399名までの規模で、いずれも体制づくり、データやAIの活用、取り組み前後の数字をそろえて報告しています。主な取組を一覧にまとめます。

企業(業種・所在地) 取組の軸 報告されている成果
プーラビダ株式会社(訪問看護・福岡県)グランプリ 高い離職率をきっかけに、トップダウンの意思決定と現場のボトムアップを合わせた「全員参加型DX体制」を構築。生成AIを使った内製プラットフォームで報告書作成を支援 報告書の作成時間を90%削減(1時間から5分)。離職率は83.3%から7.7%に。利益率10%超の黒字化
三行合成樹脂株式会社(プラスチック製品製造・新潟県)準グランプリ 社長が最高責任者のDX推進委員会を発足し、各部門の若手を招集。業務システムを一元化し、属人化した工程を分析して業務を見直し 重大クレーム件数が16件から6件に。有給取得率は2021年度から2024年度で10.1%増
株式会社ヒューマングループ(自動車教習所・観光・長崎県)準グランプリ 経営者が率先してIT資格やAI開発スキルを習得。30年使った既存システムからクラウドの統合業務プラットフォームに全面移行し、全社員にAIアシスタントを配置 離職率が12%から3%に。会議時間を75%削減
株式会社三城(オフィス用品販売・北海道) 社長が責任者となり、営業日報や顧客情報をデータ化して営業プロセスを可視化。組織営業を推進 移動工数を年約2,000時間削減
株式会社加藤工務店(土木・舗装・愛知県) 地域課題を起点にDX戦略を策定し、効果の出やすいICT活用工事やクラウド化から着手。受発注プラットフォーム「GOzai」を開発 出荷トンベースで予約の約7割がアプリ経由
株式会社ネクサスエージェント(不動産・大阪府) 取引の属人性を減らす不動産流通プラットフォーム「イエリーチ」を開発。全社員を対象に実践型のAI研修を実施 全社で年約3,000時間の業務時間を削減。イエリーチ事業は赤字から単月黒字に
コマツ株式会社(建設・内装・大阪府) 産学連携で壁紙AI識別アプリ「かべぴた」を開発。受発注システムで業界の慣習を見直し、関係者みんなが恩恵を受けるDXを目指す 年間休日数が100日から127日に。かべぴたの会員数は37,000人以上
旭光電機株式会社(自動ドア用センサ等の製造・兵庫県) 社長と各部門が参加する「DXサークル」を設置。工場への自動搬送ロボットの導入など守りのDXと、センサ機器の新規開発など攻めのDXを両立 売上高が2023年度55.0億円から2025年度69.6億円に。3期連続で11%超の成長
株式会社エヌエスケーケー(携帯電話販売・兵庫県) 社長直轄のDX推進プロジェクトチームを置き、全社員が生成AIを使える環境を整備。月1回の勉強会で全部署に改善成果の報告を義務づけ 売上高が2023年度16.8億円から2025年度20.6億円に
株式会社川六(宿泊業・香川県) 全店舗で毎週RAG(検索拡張生成)の活用検討会議を開き、60代の社員やパートを含む全従業員がRAGを開発 離職率が13.9%から6.5%に(2023年から2025年)。人時生産性は44.0%増
株式会社ヤマナミ麺芸社(飲食店経営・食品製造・大分県) 顧客の声や店舗運営、製造のデータをGoogle Workspaceに一元化し、生成AIが課題抽出から改善提案まで担う 人時生産性が2019年度3,678円から2024年度4,814円に。22年連続の増収

企業名・数値は、経済産業省「DXセレクション2026選定企業レポート」(2026年6月)の記載によります。数値は各社の取り組み前後の比較であり、同じ取り組みをしても同じ結果になるとは限りません。個々の事例の読み方は、DX事例の探し方と業種別の実例の記事で詳しく整理しています。

2026年の傾向|生成AIの活用と、職人の勘の形式知化

レポートの記載を数えると、11者のうち10者の取組にAIの活用が含まれていました。報告書の作成支援、取引履歴の分析、壁紙の識別、全従業員によるRAGの開発など、使い道は業種ごとに違います。目立つのは、コマツの「職人の勘」、川六の「ベテラン従業員の経験知」、ヤマナミ麺芸社の「職人のノウハウ」のように、人に染みついていた暗黙知をAIで形式知にする使い方です。AIは単なる効率化の道具にとどまらず、属人化の解消に使われています。

もう一つ目立つのが、離職率を成果指標にした事例です。プーラビダ、ヒューマングループ、川六の3者が、取り組み前後の離職率の低下を成果として報告しています。離職の背景には、人間関係、仕事のやりがい、組織への理解など複数の要因が考えられ、取り組み前からその要因を把握できているかどうかが、打ち手の精度を左右します。スコアの背景にある要因まで分析して対策につなげたい場合の一例が、株式会社ラフールが提供する「ラフールサーベイ」です。

商品ページによると、ラフールサーベイは、エンゲージメントや従業員満足度、仕事のやりがい、人間関係、組織理解、離職・ハラスメントのリスクなどを調べ、スコアの背景にある要因まで分析できるとされています。変化を継続して追うショートサーベイと、組織課題を深掘りするディープサーベイを使い分けられ、厚生労働省準拠のストレスチェックも含まれます。専任のカスタマーサクセス担当が、運用の定着から結果の読み解き、対策の検討まで伴走する点も特徴です。既存の人事・労務システムとのAPI連携にも対応しています。注意点として、課題に応じた対策のオプションサービスは見積もりでの依頼になります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社ラフール

ラフールサーベイ

ラフールサーベイ
出典:survey.lafool.jp

株式会社ラフール

ラフールサーベイ

課題発見にも◎サポート体制の手厚さを求める企業におすすめ

企業に関わる人すべてが身体的・精神的・社会的に満ち足りた状態を実現し、従業員のセルフマネジメントを促進するなら、ラフールサーベイの導入がおすすめです。

評判・口コミを紹介

「ショートサーベイ」で把握できる、メンタル・フィジカル・エンゲージメントの結果をもとに、気になる点数が出ている時、振れ幅が大きい時などに、社員に声をかけたり、面談を行うようにしています。

悪化する前に未然に対応できるようになったことは大きな利点です。

活用事例(株式会社平山組)|株式会社ラフール

GOOD

ここがおすすめ!

  • 専任担当による、徹底的なサポートを受けられる
  • 組織の状態を可視化するための設問を網羅し、強みと課題の発見につながる
  • 従業員設定や実施プランの自動作成など、簡単に導入や運用が行える
MORE

ここが少し気になる…

  • 組織課題解決に効果的なオプションサービスは見積もりで依頼

同社の公式サイトでは、フルリモートで120名の株式会社プログレス(IT・インターネット)が、月1回のショートサーベイと年2回のディープサーベイを運用している事例が紹介されています(個別の事例であり、効果は会社の規模や運用によって異なります)。

回答率100%、年間離職率を全社員の1割未満に抑制する成果を実現

出典:ラフールサーベイ公式サイトの導入・活用事例(株式会社プログレス)

共通要因1|経営者の旗振りと、現場のボトムアップをセットにする

1つ目の共通要因は、経営者が方向を示したうえで、現場が自分ごととして動く仕組みを作っていることです。トップダウンだけでも、ボトムアップだけでも、DXは定着しにくくなります。

DXセレクション2024でグランプリに選ばれた浜松倉庫株式会社は、2015年から若手管理職を中心としたDXプロジェクトを始め、ボトムアップ、社員の意識改革、サプライチェーン全体を見通した業務改革を進めたと、J-Net21が伝えています。同社の社長は表彰式で、DXでは「X」(変革)が重要で、「D」(デジタル)はあくまで手段だという考え方で取り組んだと述べています。

2026年の選定企業にも同じ形が見られます。プーラビダは、トップダウンでの迅速な意思決定と現場からのボトムアップを融合させた「全員参加型DX体制」を築きました。三行合成樹脂は、社長が最高責任者を務めるDX推進委員会を発足し、各部門から若手を中心に人材を招集しています。旭光電機は、経営層が方向性と投資枠を示したうえで、社長と各部門のメンバーが参加する「DXサークル」を設置し、テーマ選定から課題解決、決裁までを一気通貫で進めています。2025年のグランプリである後藤組は「全員DX」を掲げ、現場社員が作った業務アプリは3,000件を超え、現場からの改善提案が経営に反映されるボトムアップ型の文化が定着したと報告されています。経済産業省の「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」も、成功のポイントの最初に、経営者がリーダーシップを取ってDXを推進することを挙げています。

意識改革を進めるための具体的な工夫

  • 推進の責任者を経営者が担い、各部門から若手や中堅の担当者を招集する(三行合成樹脂、旭光電機)
  • 効果の出やすい取り組みから着手し、小さな成功体験を積み重ねる(加藤工務店)
  • デジタルに詳しくない従業員も含め、全員が学べる機会を用意する(エヌエスケーケー、川六)
  • 部署をまたいで改善の成果を報告し合う場をつくる(エヌエスケーケー、ネクサスエージェント)

意識改革は、取り組む前の状態が分かっていないと、進んでいるのかどうかを判断できません。従業員がどの程度変化に前向きか、どの部署で不満がたまっているかを、定期的に数字で確かめておくと、どこから手を付けるべきかが見えてきます。

Wevox

従業員の意欲の変化を、短い間隔で追いたい会社に

Wevoxの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード
3サービスの役割を比較表で見る

共通要因2|業務とデータの「土台」を先に整える

2つ目の共通要因は、新しいサービスより先に、業務の進め方とデータの置き場所という土台を整えていることです。土台が散らばったままでは、データを使った判断ができません。

浜松倉庫は、基幹システムの刷新で生産性を30%向上させたとJ-Net21が伝えています。2026年の三行合成樹脂は、全社の業務システムを一元化するとともに、属人化した工程を分析してシステムに合わせた業務の見直しを行い、現場の帳票入力端末を自社開発して各製造工程の状況をリアルタイムで集められるようにしました。ヒューマングループは、30年使っていた既存システムから、クラウドの統合業務プラットフォームに全面移行しています。ヤマナミ麺芸社は、顧客の声、店舗運営、製造のデータをGoogle Workspaceに一元化しました。いずれも、システムを入れること自体ではなく、データがつながる状態を先に作っている点が共通しています。

経済産業省の手引き2025は、DXに取り組む企業の多くが、紙の台帳のデジタル化や、グループウェアによるスケジュール・勤怠の管理など、身近で取りかかりやすいところから始めて成功体験を重ねていると説明しています。最初から大がかりなシステムを入れる企業ばかりではなく、小さなデジタル化から始めて取り組みを広げていく企業が多いということです。

土台づくりで確認したいポイント

確認項目 見るべき点
データの所在 同じ情報を複数の場所に入力していないか、担当者しか分からないファイルがないか
システムの老朽化 保守できる人が限られていないか、改修に時間と費用がかかりすぎていないか
業務の標準化 人によって手順が違い、システム化の前提がそろっていない業務はないか
セキュリティ DXセレクションの審査項目にも含まれるサイバーセキュリティ対策が後回しになっていないか

土台への投資は効果が見えるまでに時間がかかるため、社内の理解を得にくい面があります。だからこそ、共通要因1の意識改革と組み合わせ、なぜいまシステムを変えるのかを現場と共有しながら進めることが大切です。

共通要因3|取引先・顧客・業界まで見通して業務の流れを変える

3つ目の共通要因は、自社の一部門の効率化で終わらせず、取引先や顧客を含む業務の流れ全体を見直していることです。

コマツ株式会社(建設・内装)は、局所の効率化は別の場所に負荷や責任を転嫁して新たな問題を生むと考え、関係するみんなが恩恵を受けるDXを目指して、受発注システムで業界の慣習を見直しました。加藤工務店は、アスファルト合材の受発注をWeb上で一元化する「GOzai」を開発し、プラントと工事会社をデータでつなぎました。後藤組は、協力業者との契約、発注、請求などの事務手続きをデジタル化して、協力業者の業務負担を減らしています。浜松倉庫も、サプライチェーン全体を見通した業務改革を進めたと伝えられています。

DXセレクションの審査項目には、サプライチェーン内の取引先とのデータ連携や、自社にとどまらず社会や業界の課題解決に向けてDXを牽引しようとしているかを問う設問があります(経済産業省「DXセレクション2026審査項目の分析」)。取引先にとっても手間が減る仕組みであれば、デジタル化への協力を得やすくなり、地域や業界への波及にもつながります。

業務の流れ全体を見直すときの問い

  • 受注から納品、請求までの流れの中で、最も時間がかかっている工程はどこか
  • その工程の手間は、自社と取引先のどちらに多く発生しているか
  • 顧客にとって、問い合わせや注文の手間を減らせる部分はないか
  • 効率化で生まれた時間を、どの付加価値の高い業務に振り向けるか

共通要因4|全社員のスキルを底上げし、外部の力も使う

4つ目の共通要因は、DXを担う人材を一部の担当者に任せず、全社員のスキル向上と、外部の力の活用を並行して進めていることです。

エヌエスケーケーは、月1回の社内勉強会「DXスクール」で、全部署から生成AIを活用した改善成果の報告を義務づけ、成功事例や使い方を全社に共有しています。ネクサスエージェントは、全社員を対象にした実践型のAI研修を行い、現場から生まれた業務改善やAI活用の事例を全社ミーティングで共有しています。川六は、60代の社員やパートを含む全従業員がRAGを開発し、ヒューマングループは、経営者自らがIT資格やAI開発スキルの習得に取り組んでいます。2025年の後藤組は、スキルを定義して資格制度を設け、2024年時点でアソシエイトの77%、スペシャリストの34%が資格を取得しました。

一方で、人材を社内だけで確保するのは中小企業にとって高いハードルです。経済産業省の手引き2025は、ITベンダーやITコーディネータなど外部の支援を活用して不足するノウハウを補いながら、その過程で社内にスキルを蓄積することを勧めています。熊本県の運送業である株式会社ヒサノは、ITコーディネータとの対話を通じて5年後の経営ビジョンを明確にし、業務プロセス全体を紙からクラウドでの管理に切り替えたと紹介されています。

DXの推進チームを作るときは、推進役を経歴や役職だけで決めるのではなく、本人の志向や部署の特性も踏まえて話し合うことが欠かせません。その材料として、社員の性格傾向を把握する方法があります。人材の確保と配属を検討する場合の一例が、株式会社リーディングマークが提供する「ミキワメAI 適性検査」です。

商品ページによると、社員が適性検査を受けると、システムが社員の性格傾向を分析して自社独自の採用基準を策定し、候補者が自社で活躍する可能性をSからEの14段階で比較できます。部署やチームごとに社員の性格傾向を分析し、個人の特性と比べることで、相性が良いと判断される部署への配属や転属の検討にも使えるとされています。検査は10分の性格検査と20分の能力検査で構成され、カスタマーサクセスチームによるデータ活用の支援も用意されています。注意点として、紙や会場での受検には対応していません。また、これは性格傾向を把握する検査で、DXのスキルを測るものではないため、スキルの把握は研修や資格制度など別の方法と組み合わせる必要があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社リーディングマーク

ミキワメAI 適性検査

ミキワメAI 適性検査
出典:mikiwame.com

株式会社リーディングマーク

ミキワメAI 適性検査

従業員は無料で受検!低コストで採用ミスマッチを防止したい企業におすすめ

評価・口コミを紹介

以前は新卒採用者の50%にあたる人数が退職していたところ、ミキワメ導入から現在(2024年1月)まで新卒退職者がゼロになりました。導入前後の背景が異なるので、単純に数値を比較できないのですが、ミキワメのおかげで早期退職者が減ったのは紛れもない事実です。

導入事例(アサヒ物産株式会社)|株式会社リーディングマーク
GOOD

ここがおすすめ!

  • 受検から分析・活用まで一貫したサービスを低コストで使える
  • 性格分析に特化しているため、活躍する人材の適正配属を実現
  • 充実したコンテンツと「カスタマーサクセスチーム」による丁寧な支援
MORE

ここが少し気になる…

  • 紙での受検や会場での受検には対応していない

同社の導入事例ページでは、従業員1,516人(2024年5月時点)の株式会社シーユーシー・ホスピスが、人事制度の見直しに先立つ現状分析として、社員の特性を把握するためにミキワメを使った事例が紹介されています(個別の事例であり、効果は会社の規模や運用によって異なります)。

社員のタイプが可視化できただけでなく、職場には様々な社員がいるという認識が生まれ、相互理解が生まれ始めた。

出典:ミキワメAI 適性検査の導入事例(株式会社シーユーシー・ホスピス)

ここまでの4つの要因は、独立したものではありません。意識改革で現場が動き、土台が整ってデータがつながり、業務の流れ全体が変わり、その過程で人が育つ。成功事例の多くは、この順番を意識しながら数年がかりで取り組んでいます。具体的な進め方は「DX化の進め方|6ステップとロードマップの作り方、よくある失敗5つ」でも解説しています。

3サービスの役割を比較表で見る

事例を「自社ごと」に変換する3つの視点

事例を自社で生かすには、出発点の課題、推進の体制、成果の測り方の3つの視点で、事例と自社を並べて比べます。表面ではなく構造を抜き出すことがポイントです。

視点 事例から読み取ること 2026年の選定企業の例 自社で確認すること
1. 出発点の課題 その企業は何に困ってDXを始めたのか プーラビダは高い離職率、ヒューマングループはコロナ禍での既存事業の停滞、三行合成樹脂と三城は事業承継をきっかけに本格化 自社にも同じ課題があるか、課題の大きさはどの程度か
2. 推進の体制 誰が旗を振り、誰が現場で動いたのか 三行合成樹脂は社長が最高責任者のDX推進委員会、旭光電機は社長と各部門が参加するDXサークル、エヌエスケーケーは社長直轄のプロジェクトチーム 自社に推進役を担える人がいるか、現場の意欲はどうか
3. 成果の測り方 何を指標にして効果を確かめたのか 離職率、重大クレーム件数、人時生産性、売上高など、取り組み前後の数字 自社の現状値を数字で把握できているか

この3つのうち、多くの企業でつまずきやすいのが「推進の体制」と「成果の測り方」です。どちらも、自社の組織の状態を客観的に把握していないと判断できません。現場の意欲が低い部署でいきなり大きなシステム導入を始めると、反発を招いて定着しないおそれがあります。逆に、変化に前向きな部署から小さく始めれば、成功体験を社内に広げやすくなります。

また、成果を測るには取り組み前の状態を記録しておく必要があります。業務時間や処理件数といった業務の指標に加えて、従業員の意識や働きやすさといった組織の指標も、取り組み前に一度測っておくと、意識改革が進んだかどうかを後から確かめられます。自社の準備状況を、次のセルフチェックで確かめてみてください。

自社のDX準備、今の把握方法で足りている? セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

事例を真似するだけで失敗するパターン

成功事例は、うまくいった結果だけが整理されて紹介されることが多く、その裏にある前提条件や試行錯誤は見えにくいものです。経済産業省の手引き2025の指摘と、DXセレクションの評価項目を手がかりに、事例をそのまま真似しようとして起こりがちな失敗と、改善の方向性を整理します。

よくある失敗(Before) 改善の方向性(After)
デジタル技術を入れること自体が目的になり、「AIで何か新しいことができないか」といった発想に陥る 実現したい未来から逆算し、自社の課題と達成したい状態を言葉にしてから、技術を選ぶ
最初から全社の大きな投資を始めてしまう 個別業務のデジタル化など、身近で取りかかりやすいところから着手し、成功体験を重ねる
経営者の号令だけで終わり、現場が使わない 各部門の担当者を推進役に加え、業務を知る人の意見を設計に反映する
取り組み前の状態を測らず、成果が出たのか判断できない 業務と組織の両方の指標で現状値を記録し、成果指標として定期的に見直す
一度の取り組みで終わり、改善が続かない DXは一度行えば終わるものではないと捉え、数年単位で継続的に変革する計画にする

これらの失敗に共通するのは、事例の企業と自社の違いを確かめないまま、手法だけを持ち込んでいる点です。DXセレクションの評価項目に成果指標の策定とDX戦略の見直しが含まれているように、成功している企業は、取り組みを測り、見直し続けています。真似るべきは手法ではなく、この継続的に改善する姿勢です。見直しを続けるには、サーベイの結果を読み解き、対策まで進める運用を支える仕組みが欠かせません。

ラフールサーベイ

サーベイの結果の読み解きから対策まで、伴走を受けたい会社に

ラフールサーベイの資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

DXセレクション以外に参考にすべき公的情報

DXの成功事例を調べる際は、民間の事例まとめだけでなく、公的機関が整理した情報もあわせて確認すると、信頼性の高い情報を効率よく集められます。

情報源 提供元 向いている使い方
DXセレクション選定企業レポート 経済産業省 中堅・中小企業の具体的な取組と成果の数字を、年度別に知りたいとき
中堅・中小企業等向けDX推進の手引き 経済産業省 選定企業の事例を交えた「DXの進め方」「成功のポイント」を確認したいとき
DX銘柄 経済産業省・東京証券取引所・IPA 上場企業の先進的な取り組みを知りたいとき
DX事例情報提供サイト IPA(情報処理推進機構) 業種や課題から事例を探したいとき
DX認定制度 経済産業省・IPA 自社のDXの準備状況を、国の基準に照らして整理したいとき

DXセレクションは中堅・中小企業向け、DX銘柄は上場企業向けと、対象とする企業の規模が異なります。自社に近い規模や業種の事例から読むと、学びを持ち帰りやすくなります。DX認定と各種支援制度の関係は「DX認定・DX補助金・DX加算・DX検定の4制度を1枚で整理|申請の流れと使い分け」で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. DXを成功させるには何が必要ですか?

A. 経済産業省の手引き2025は、成功のポイントとして、経営者のリーダーシップ、中長期の視点、身近なところから始めて成功体験を重ねること、データの分析・活用、人材の育成、継続的な変革、支援機関の伴走支援の活用の7つを挙げています。DXセレクション2026の事例からは、経営者と現場をセットで動かすこと、業務とデータの土台、取引先や業界まで広げる視点、全社員のスキルの底上げという4つの共通要因が読み取れます。

Q2. DXのわかりやすい例を教えてください。

A. DXセレクション2026では、訪問看護のプーラビダ株式会社が、生成AIを使った内製プラットフォームで看護師の報告書作成を支援し、作成時間を90%削減(1時間から5分)したと報告されています。土木・舗装の株式会社加藤工務店は、アスファルト合材の受発注をWeb上で一元化する「GOzai」を開発し、出荷トンベースで予約の約7割がアプリ経由になっています。

Q3. 中小企業のDX成功事例にはどのようなものがありますか?

A. 経済産業省のDXセレクションが代表的です。2026年は、従業員12名の建設・内装業のコマツ株式会社から、399名の飲食業の株式会社ヤマナミ麺芸社まで、11者が選ばれました。訪問看護、製造、不動産、宿泊など業種も幅広く、取組と成果の一覧は本記事の表で確認できます。

Q4. DXの最新トレンドは何ですか?

A. DXセレクション2026のレポートの記載を数えると、選定企業11者のうち10者の取組にAIの活用が含まれていました。報告書作成の支援や、ベテランの経験知を形式知にする使い方、全従業員によるAIの開発など、属人化の解消に使う事例が目立ちます。

Q5. 成功事例をそのまま真似してもよいですか?

A. そのまま真似するのはおすすめできません。事例の企業と自社とでは課題や体制が異なるため、出発点の課題、推進の体制、成果の測り方の3つの視点で比べ、自社に合う部分を取り入れることが大切です。

Q6. 事例研究のあと、最初に何をすればよいですか?

A. まず自社の現状を客観的に把握することから始めます。業務時間などの業務の指標に加え、従業員の意欲や組織の状態を組織診断ツールなどで数字にしておくと、どこから手を付けるか判断しやすくなり、取り組み後の効果も確かめられます。

まとめ|事例を自社に生かすために今日からできる5つのこと

DXの成功事例は、手法をそのまま真似るためではなく、成功した理由を抜き出して自社に置き換えるために読むものです。DXセレクション2026の事例からは、経営者と現場をセットで動かすこと、業務とデータの土台を整えること、取引先や業界まで見通すこと、全社員のスキルを底上げすることの4つの共通要因が読み取れます。

  1. 事例は、出発点の課題、推進の体制、成果の測り方の3つの視点で自社と比べる
  2. 経営者の方針と現場の主体性をセットにし、推進の責任者と各部門の担当を決める
  3. 新しいツールの前に、業務とデータの置き場所を整え、身近なところから小さく始める
  4. 取り組み前の従業員の意欲や組織の状態を数字で記録し、定期的に見直す
  5. 状態の把握や人材の確保・配属に使えるサービスの資料を取り寄せ、自社の目的に合うかを比較する

まずは自社の組織がいまどんな状態にあるかを数字で知ることが、事例研究を実際の一歩につなげる近道です。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top