SaaS業界ランキングの正しい見方|企業とサービスの違いと5つの評価観点

Check!

  • 企業ランキングとサービスランキングの違いがわかる
  • 売上高やレビューなど指標の読み分け方がわかる
  • 自社に合う候補を絞る5つの観点がわかる

SaaS業界ランキングには、SaaSを提供する会社を売上高やARR、平均年収などで並べる企業ランキングと、特定分野のSaaS製品をレビューや資料請求数などで並べるサービスランキングの2種類があります。同じ「ランキング」でも並べる対象と指標がまったく違うため、順位だけを見ても、自社に合うサービスは判断できません。この記事では、2種類の違いと指標の読み分け方、「SaaS業界で1位はどこか」「5大SaaS企業とは」といったよくある疑問への答え、企業規模や業種で変わる重視点、総務省の情報開示指針とASPIC認定という客観的な判断材料、ランキングを参考にするときの5つの評価観点を、SaaSを選ぶ企業の立場から整理します。

ランキングの読み方タイプを診断

Q1. SaaSのランキングを見る目的はどれですか?

目次

開く

閉じる

  1. SaaS業界ランキングの2種類|企業ランキングとサービスランキング
  2. ランキングの指標を読み分ける|売上高・ARR・レビュー・資料請求数
  3. SaaS業界で1位はどこか|5大SaaS企業・日本の有名SaaS企業の答え
  4. 企業規模で重視点が変わる理由
  5. 業界特化型SaaSと横断型SaaSの違い
  6. 客観的な判断基準|総務省の情報開示指針とASPIC認定
  7. ランキングを参考にする際の5つの評価観点
  8. よくある失敗パターン
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ
  11. 参考文献

SaaS業界ランキングの2種類|企業ランキングとサービスランキング

SaaS業界ランキングは、SaaSを提供する会社を並べる「企業ランキング」と、特定分野のSaaS製品を並べる「サービスランキング」の2種類に分けられ、並べる指標が異なります。

企業ランキングは、上場しているSaaS企業を売上高、ARR(年間経常収益)、時価総額、平均年収などで並べたものです。決算資料や有価証券報告書といった公開情報をもとにしているため数値そのものの信頼性は比較的高い一方、もともと投資家や転職を考える人に向けた情報であることが多く、導入するサービスの使いやすさを表すものではありません。サービスランキングは、会計ソフトや勤怠管理システムなど特定の分野のSaaSを、レビューの評価や資料請求数、機能、導入実績などで並べたものです。導入を検討する企業にとってはこちらが出発点になりますが、評価の基準や順位の決め方は運営者によって異なり、広告掲載の有無が表示順に影響している場合もあります。両者の違いを整理すると、次のとおりです。

項目 企業ランキング サービスランキング
並べる対象 SaaSを提供する会社 特定分野のSaaS製品
主な指標 売上高、ARR、時価総額、平均年収 レビューの評価と件数、資料請求数、機能、導入実績
情報源 決算資料、有価証券報告書など公開情報 運営者の調査、利用者のレビュー、提供会社の資料
主な読者 投資家、転職希望者 導入を検討する企業の担当者
選定での使い方 提供会社の事業継続性を確認する参考材料 候補を絞り込む出発点

SaaSを選ぶ立場では、サービスランキングで候補を絞り込み、企業ランキングや公開情報は、その提供会社が長く事業を続けられそうかを確かめる補助材料として使う、という役割分担が現実的です。ただし、サービスランキングで候補に挙がった製品も、順位ではなく自社の条件で確かめる必要があります。たとえば経理の記帳や決算を紙や表計算ソフトで続けている会社が、クラウド会計ソフトへ切り替える場合の一例が、株式会社マネーフォワードが提供するマネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関と連携して取引明細を取得でき、AIが登録済みの仕訳を学習して勘定科目を提案します。仕訳データから決算書や各種レポートが作成され、経営状況をリアルタイムで確認できるとされています。注意点として、AIが誤った仕訳も学習する可能性があるため、入力内容の確認は欠かせません。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード クラウド会計

株式会社マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計

他システムの移行や機能性重視の方におすすめ!

全体評価
4.2 (14件)
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら
30秒で完了!かんたん入力 資料を無料ダウンロード
料金・機能をまとめて確認 サービス詳細はこちら

GOOD

おすすめ!

  • 面倒な帳簿・レポート・決算書を自動作成
  • 金融機関の入出金データを自動取得してリアルタイムで数字を共有
  • 他サービスとの連携で勤怠管理やマイナンバー管理が可能
MORE

気になる…

  • ある程度の簿記知識が必要な場合も
評価・口コミ(一部抜粋)
4.2
  • 最も大きく解決された課題は、他システムとのデータ連携における手間の大幅な削減です。給与計算や経費精算、販売管理といった各システムから自動で仕訳データが取り込まれるようになったため、手動での入力作業が不要になり、ヒューマンエラーの削減と業務効率の向上を実感しております。 これにより、月次決算の早期化にも貢献し、経営状況をより迅速に把握できるようになった点も大きなメリットです。

  • freeeを使用していたとき、ネットバンク連結の更新エラーが頻発しストレスを感じていました。マネーフォワードは連結が安定しており、操作もシンプルで目的の資料がすぐに見つかります。仕訳も柔軟に設定できて視認性が高く、一から必要な設定を自分で構築できた点も好印象でした。freeeの自動仕訳は精度が低く、会計と合わないことも多くむしろ手間になることがあったため、手動管理とのバランスも重視しました。また、freeeの時のように、頻繁に仕様が変わることもなく、安定して使用できている。

  • リアルタイムで金融機関の残高推移が確認できるため、インターネットバンキングをあける必要がない。また、必要以上の機能がなく最低限になるのでシンプルでわかりやすい、初心者向けの会計システムかと思います。

実際に使ってみたレビュー記事はこちら

【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】

数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。

導入企業が選んだ理由も参考になります。介護・福祉・医療分野で事業を展開する株式会社HITOMIOテクノロジーズは、オンプレ型の会計ソフトからの乗り換えを考えていた時期に、顧問税理士の紹介で導入を決めたと紹介されています(2021年公開の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません)。

口座連携やクレジットカード連携などのサービス連携が充実していることが魅力的で、安価に導入できそうだったのでマネーフォワード クラウド会計の導入を決めました。

出典: 株式会社HITOMIOテクノロジーズ「マネーフォワード クラウド会計」導入事例(マネーフォワード公式サイト、2021年8月31日公開。公開当時の情報)
マネーフォワード クラウド会計

銀行・カードの明細連携で記帳の手間を減らしたい会社に

マネーフォワード クラウド会計の資料を無料でダウンロードできます

無料・30秒で完了 資料を無料ダウンロード

ランキングの指標を読み分ける|売上高・ARR・レビュー・資料請求数

ランキングの順位は、並べる指標によって変わります。売上高は事業の規模、ARRは継続収益の規模、レビュー評価は利用者の満足度、資料請求数は関心の高さを表すため、同じ会社やサービスでも指標が違えば順位は入れ替わります。

指標 何を数えているか 向いている目的 読むときの注意
売上高 決算期の1年間の売上。決算短信や有価証券報告書で確認できる 企業の事業規模を知る 決算期と連結か非連結かを確認する。SaaS以外の事業の売上を含む場合がある
ARR サブスクリプションなど継続収益の年換算額。決算説明資料で開示される SaaS事業の継続収益の規模を知る 定義や算出方法は会社ごとに異なる。開示していない会社は並べられない
時価総額 株価と発行済株式数から求めた会社の評価額 投資家から見た評価を知る 株価で毎日変わるため、並べた日付を確認する
平均年収 有価証券報告書に記載される従業員の平均年間給与 転職や就職の参考にする 従業員の待遇を表すもので、サービスの品質とは関係しない
レビュー評価 利用者が投稿したレビューの満足度や件数 導入した人の評価を知る 投稿者の属性や検証の方法、対象期間を確認する
資料請求数 比較サイトで一定期間に行われた資料請求の件数 検討されている製品の傾向を知る 関心の高さを表す数字で、使いやすさの評価とは別

実際の検索結果上位のランキングでも、指標はさまざまです。たとえば上場SaaS企業を対象にした解説記事は、2026年4月に公表された決算説明資料を反映したARRのランキングを掲載しています(note「【2026年4月更新】上場SaaS KPI公表の全て」)。レビューを基にしたものとしては、ITreviewの「The Best Software in Japan 2026」があり、対象期間は2025年4月から2026年3月、上位100製品を、満足度や認知度、レビュー数、使いやすさ、サポート品質など複数の評価軸で選んだと説明されています(ITreview Labo)。比較サイトのITトレンドには、過去30日間の資料請求数をもとに集計した「資料請求ランキング」があります(ITトレンド「介護業で選ばれているSaaS管理システム|最新ランキング8選」)。同じ「SaaSランキング」という名前でも、ARR、レビュー、資料請求数という別の物差しで作られていることがわかります。

企業ランキングを補助材料として読むときは、売上高の順位よりも、SaaS企業ならではの指標に目を向けると提供会社の安定性を判断しやすくなります。代表的なのが、ARRの成長率、解約率(チャーンレート)、既存顧客からの売上がどれだけ維持・拡大しているかを示す売上継続率(NRR)です。解約率が低く、既存顧客の利用が広がっている会社は、利用者に継続して選ばれているサービスを持っていると考えられます。上場企業であれば、これらの指標は決算説明資料などで開示されていることが多いため、候補サービスの提供会社について一度確認しておくと安心です。ただし、指標の定義や算出方法は会社ごとに異なる場合があるため、数値を単純に横並びで比べるのではなく、同じ会社の推移を見る使い方が向いています。公的な統計や決算資料を使ってランキングを読む方法は、SaaSランキングの見方|国内8社の最新売上高と、記事ごとに順位が違う理由で詳しく解説しています。

売上高の順位を読むときは、売上の中身にも注意が必要です。たとえばビジョナル株式会社の2026年7月期(連結)の売上高は99,300百万円ですが、同社の決算短信によると、HR Techセグメントの売上高は93,807百万円で、そのうちSaaSの「HRMOS」事業の売上高は9,289百万円です(ビジョナル株式会社「2026年7月期 決算短信」)。このように、ランキングで「SaaS企業」として並ぶ会社でも、売上高の全額がSaaSとは限りません。セグメント情報を見て、SaaS以外の事業の売上がどれだけ含まれるかを確認すると、数字の意味を取り違えずに済みます。

SaaS業界で1位はどこか|5大SaaS企業・日本の有名SaaS企業の答え

SaaS業界で1位の企業は、売上高、ARR、時価総額、レビュー評価のどの指標で並べるかによって変わり、すべての指標で共通する唯一の1位はありません。検索でよく見かける3つの疑問に、順に答えます。

SaaS業界で1位はどこですか?

国内の上場企業を売上高で並べる場合、SaaSランキングの見方|国内8社の最新売上高と、記事ごとに順位が違う理由で決算を確認した8社のうち、直近通期の売上高が最も大きいのはビジョナルです(2026年7月期の連結で99,300百万円)。ただし前の章のとおり、売上高の全額がSaaSではありません。ARRは決算説明資料で開示している会社だけが比較の対象になり、レビューを基にしたランキングでは別の顔ぶれになります。「1位」と書かれた記事を読むときは、指標、決算期、集計時点の3つを確認してください。

5大SaaS企業とはどの会社ですか?

「5大SaaS企業」について、公的機関が定めた定義は確認できていません。記事によって、売上高の大きい世界の企業を挙げるものや、国内の上場企業を挙げるものがあり、顔ぶれは一致しません。名前を挙げた記事に出会ったら、何の指標で、いつの数字で、どの範囲の企業から選んだのかを確認し、決算資料などの一次情報で確かめる使い方が安全です。

日本の有名なSaaS企業は?

国内の上場企業でSaaS事業を持つ会社として、SaaSランキングの見方|国内8社の最新売上高と、記事ごとに順位が違う理由ではSansan、freee、マネーフォワード、ラクス、サイボウズ、オービックビジネスコンサルタント、ビジョナル、エス・エム・エスの8社の決算を確認しています。これは検索結果の売上高ランキングに挙がりやすい企業を選んだもので、国内の上場SaaS企業を網羅した一覧ではありません。売上高、時価総額、年収などの数字は日本のSaaS企業ランキング|売上高・時価総額・年収・評価の4つの切り口と正しい読み方も参考にしてください。SaaS業界の分類や職種は、SaaS業界とは?ホリゾンタル・バーティカルの分類、収益構造、代表企業と職種を解説で整理しています。

企業規模で重視点が変わる理由

ランキングの上位サービスが自社に合わない最も大きな理由は、企業規模によって必要な機能と重視すべき点が違うことです。ランキングは幅広い読者に向けて作られているため、特定の規模の企業にとって最適な順番にはなっていません。

個人事業主や小規模な事業者の場合、専任の担当者がいないことが多く、操作のわかりやすさと、始めやすさが重視されます。機能が豊富なサービスでも、使いこなせなければ費用に見合いません。無料プランや長めの無料トライアルがあるか、スマホで操作できるか、困ったときに相談できるサポートがあるかが判断の中心になります。

中小企業になると、複数の担当者がサービスを使うため、権限の設定や、他の業務システムとの連携が重要になってきます。たとえば会計ソフトなら、給与計算や勤怠管理、請求書発行のサービスとデータを連携できるかどうかで、二重入力の手間が大きく変わります。部署ごとに別々のSaaSを導入してデータが分断されるのを防ぐためにも、連携できる範囲を事前に確認しておくことが大切です。

上場企業やその準備をしている企業、グループ会社を持つ企業では、内部統制への対応が欠かせません。承認フローや操作ログ、権限の細かい設定、監査への対応などが求められるため、個人事業主向けに評価の高いサービスでは要件を満たせないことがあります。逆に、大企業向けの高機能なサービスを小規模な事業者が導入すると、機能を持て余して割高になりがちです。規模ごとの重視点を整理すると、次のようになります。

企業規模 重視されやすい点 ランキングを見るときの注意
個人事業主・小規模事業者 操作のわかりやすさ、無料で試せるか、サポート 多機能さで上位のサービスは使いこなせない場合がある
中小企業 複数人での利用、権限設定、他システムとの連携 単体の評価だけでなく、既存ツールと連携できるかを確認する
上場企業・グループ企業 内部統制、承認フロー、監査対応、グループ管理 個人向けに評価の高いサービスは要件を満たさない場合がある

ランキングを見るときは、そのランキングがどの規模の読者を想定しているかを確認し、自社の規模の欄で強みを持つサービスを拾い上げる読み方をすると、候補を無理なく絞り込めます。規模ごとのメリットとデメリットは、SaaSのメリット・デメリット|規模別の導入判断ガイドも参考にしてください。

業界特化型SaaSと横断型SaaSの違い

SaaSは、業種を問わず使える「横断型(ホリゾンタルSaaS)」と、特定の業界向けに作られた「業界特化型(バーティカルSaaS)」に分けられます。この区別も、ランキングを読むうえで見落とされがちなポイントです。

横断型SaaSは、会計、人事労務、チャット、グループウェアなど、どの業界の企業にも共通する業務を対象にしています。利用者が多いため、企業ランキングでもサービスランキングでも上位に入りやすく、情報も集めやすいのが特徴です。一方で、業界ごとの独自の商習慣や帳票、法令への対応は、標準機能ではカバーしきれないこともあります。

業界特化型SaaSは、介護、医療、建設、不動産、飲食など、特定の業界の業務の流れに合わせて設計されています。対象となる市場が限られるため、総合的なランキングでは目立たないことが多いものの、その業界の企業にとっては横断型より使いやすい場合があります。たとえば介護分野の請求業務や、建設業の工事台帳のように、業界固有の処理が多い業務では、特化型の方が設定や運用の手間を抑えられることがあります。

項目 横断型SaaS 業界特化型SaaS
対象 業種を問わない共通業務 特定業界の業務の流れ
例 会計、人事労務、チャット、グループウェア 介護、医療、建設、不動産、飲食向けの業務システム
ランキングでの見え方 利用者が多く上位に入りやすい 総合ランキングでは目立ちにくい
強み 情報が多く、他サービスとの連携先も豊富 業界固有の処理や帳票に最初から対応している
留意点 業界独自の業務はカスタマイズが必要な場合がある 比較できる候補が少なく、情報も集めにくい

実務では、会計や人事労務のような共通業務は横断型、業界固有の中核業務は特化型というように、組み合わせて使う企業も少なくありません。このとき重要になるのが、両者のデータを連携できるかどうかです。業界特化型の業務システムで作った売上データを、横断型の会計ソフトに取り込めるかは、導入前に確認しておきたい点です。たとえば本記事の前半で紹介した導入事例の企業も、業界向けのPOSシステムとは会計ソフトが連携しておらず、売上データをCSVで書き出して取り込んでいると紹介されています。連携できない場合の運用まで含めて、事前に確かめておきましょう。

客観的な判断基準|総務省の情報開示指針とASPIC認定

ランキングの順位は運営者の基準で決まるため、それだけでは客観的とはいえません。そこで参考になるのが、公的な指針に基づいて整理された情報です。総務省は、利用者がクラウドサービスを比較・評価・選択しやすくするため、事業者が開示すべき情報の項目をまとめた「クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示指針」を公表しています。

この指針は、ASP・SaaS、IaaS・PaaS、データセンターなど、サービスの種類ごとに分かれています。SaaSに関係するのは「ASP・SaaSの安全・信頼性に係る情報開示指針」で、平成19年に策定され、その後改定が重ねられています。令和4年には、AIを用いたASP・SaaS向けの指針も追加されました。指針では、情報開示項目ごとに内容と、開示が必須か選択かが示されています。

開示項目には、事業者の名称や所在地、財務状況といった事業者自身に関する情報、サービスの稼働率やサポート体制、データのバックアップ、セキュリティ対策、障害発生時の対応などが含まれます。つまり、ランキングでは比較しにくい「このサービスを安心して使い続けられるか」という観点を、共通の物差しで確認できるようになっているのが特徴です。

この指針に沿って適切に情報を開示しているサービスを、第三者が認定する制度もあります。一般社団法人日本クラウド産業協会(ASPIC)が運営する「クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」です。認定を受けたサービスは、決められた形式で情報を公開しているため、利用者は複数のサービスを同じ項目で見比べることができます。

注意したいのは、この認定は「情報開示が適切に行われていること」を認めるもので、サービスの優劣や品質そのものを保証するものではない点です。認定を受けていないサービスが劣っているという意味でもありません。認定の有無はあくまで判断材料の一つとして使い、開示されている具体的な内容を自社の要件と照らし合わせることが大切です。また、政府機関向けのクラウドサービスには、安全性を評価して登録する制度(ISMAP)もあり、セキュリティ要件の高い企業では参考にされることがあります。

ランキングを参考にする際の5つの評価観点

ランキングを使うときは、順位をそのまま受け取るのではなく、次の5つの観点で候補を見直すと、自社に合うサービスを見つけやすくなります。

評価観点 確認すること 確認先の例
1. ランキングの前提 企業かサービスか、何の指標で並べているか、いつ時点の情報か、広告の表記はあるか ランキング記事の注記、調査方法の説明
2. 規模と業種の適合 自社の規模や業種に向けたサービスか、同業の導入事例があるか 提供会社の導入事例、サービスランキングの規模別の区分
3. 機能と連携 必要な機能がどのプランに含まれるか、既存のツールと連携できるか 料金プランの一覧、連携サービスの一覧
4. 安全性と情報開示 稼働率、バックアップ、セキュリティ対策、障害時の対応が開示されているか SLA、情報開示認定の公開情報、セキュリティに関するページ
5. 試せるかと続けられるか 無料トライアルの有無、サポート体制、解約条件、データを取り出せるか 利用規約、サポートページ、資料請求で得られる情報

1つ目の「ランキングの前提」は、最初に確認しておきたい点です。2023年10月1日から、広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)は景品表示法違反として規制の対象になっており(消費者庁「ステルスマーケティング」)、広告を含む記事には「PR」「広告」などの表記が求められます。表記があること自体は問題ではありませんが、順位の決め方と広告の関係がどうなっているかを意識して読むと、情報を冷静に受け止められます。

レビューや導入実績を根拠にしたランキングを載せる比較サイトを見るときは、次の点が書かれているかを確かめましょう。運営会社がどこか、掲載しているサービスや会社との関係(広告掲載など)が示されているか。レビューの投稿者の属性や、投稿の確認方法が説明されているか。順位の基準、集計期間、対象範囲が書かれているか。これらが明記されているサイトは、数字の根拠をたどれるため、判断材料として使いやすくなります。

2つ目と3つ目は、ランキングからは読み取りにくい、自社固有の条件です。候補を3つ程度まで絞ったら、提供会社の資料や導入事例で、自社と近い規模や業種の企業が使っているかを確認しましょう。4つ目の安全性は、前の章で紹介した情報開示の項目が参考になります。5つ目は、導入してから後悔しないための確認です。無料トライアルで実際の業務データを使って試し、解約時にデータを取り出せるかまで確認しておくと安心です。契約時に確認したい条項は、SaaS契約とは?利用規約・SLA・解約条項の確認ポイントと契約前チェックリストで詳しく整理しています。

クラウド会計ソフトを例に、5つの観点を当てはめてみます。規模と業種の適合は、マネーフォワード クラウド会計の商品ページによると、個人事業主や小規模から中小企業向けと、従業員51名以上向けで料金プランが分かれ、51名以上は問い合わせによる見積もりとされています。機能と連携は、2,400社以上の金融機関との連携や、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応が紹介されています。安全性と情報開示は、商品ページには開示項目の記載が見当たらないため、資料や公式サイトで確認が必要です。試せるかと続けられるかは、1か月の無料トライアルがあり、有料プランへの自動移行はないと紹介されています。また、導入事例が示すように、業界向けの別システムとの連携は個別に確認が必要です。順位ではなく、このように観点ごとに確かめた結果で候補を残していくのが、この章の考え方です。

会計ソフトの候補を確かめる前に、今の状況をセルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

この5つの観点は、どの分野のSaaSにも当てはめられます。気になる分野のサービスランキングを開き、候補を観点ごとに見比べて、資料や無料トライアルで確かめるところから始めてみてください。

よくある失敗パターン

ランキングを参考にしたSaaS選びでは、次のような失敗がよく見られます。いずれも、順位を判断の中心に置いてしまったことが原因です。

失敗パターン 起きやすい結果 防ぐための考え方
企業ランキングの上位企業だから安心と考えた 会社は大きいが、導入したサービスは自社の業務に合わなかった 企業の規模とサービスの適合は別に確認する
1位のサービスだけを検討した 他の候補と比べていないため、料金や機能が妥当か判断できない 最低でも3つ程度の候補を同じ観点で比較する
機能の多さで選んだ 使いこなせずに費用だけがかかり、現場に定着しなかった 必要な機能を先に洗い出し、無料トライアルで確かめる
既存ツールとの連携を確認しなかった データを手作業で移す二重入力が発生した 連携先の一覧とデータの形式を事前に確認する
古いランキングを参考にした 料金やプランが変わっており、想定と違う条件で契約した 情報の時点を確認し、最新の条件は提供会社の資料で確かめる

これらの失敗に共通するのは、ランキングを「答え」として使ってしまったことです。ランキングは候補を知るための入口として使い、最終的な判断は自社の条件と公開情報に基づいて行うことが、失敗を防ぐいちばんの近道です。導入前の確認項目をまとめたSaaSの選び方|導入前チェックリスト10項目もあわせて活用してください。

候補を選ぶ前に、自社の運用を整理しておくと、こうした失敗を避けやすくなります。クラウド会計ソフトを検討するなら、明細の連携先や税理士との共有方法、無料トライアルの条件を、資料や公式サイトで確かめてから契約に進むと安心です。マネーフォワード クラウド会計であれば、連携や無料トライアルの案内を商品ページで確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaS業界ランキングはどこまで信用してよいですか?

A. 企業ランキングは決算資料などの公開情報をもとにしていることが多く、数値自体の信頼性は比較的高いといえます。ただし、売上高や年収はサービスの使いやすさを示すものではありません。サービスランキングは運営者によって基準が異なるため、何の指標で並べているかを確認したうえで、候補を知る入口として使うのがおすすめです。

Q2. SaaS業界で1位の企業はどこですか?

A. 並べる指標によって変わるため、共通の1位はありません。国内の上場企業で売上高を比べると、本記事で参照した8社の中ではビジョナルの99,300百万円(2026年7月期、連結)が最も大きい一方、その全額がSaaS事業の売上ではありません。ARRやレビュー評価では別の顔ぶれになるため、指標と決算期を確認してください。

Q3. 5大SaaS企業とはどの会社ですか?

A. 公的機関が定めた定義は確認できておらず、記事によって挙げる企業が異なります。名前を挙げた記事は、何の指標で、いつの数字で、どの範囲の企業から選んだのかを確認し、決算資料などの一次情報で確かめるのが安全です。

Q4. 日本の有名なSaaS企業はどこですか?

A. 国内の上場企業では、Sansan、freee、マネーフォワード、ラクス、サイボウズ、オービックビジネスコンサルタント、ビジョナル、エス・エム・エスなどが、売上高ランキングに挙がりやすい企業です。網羅した一覧ではないため、最新の決算資料で確認してください。

Q5. 企業ランキングとサービスランキングは何が違いますか?

A. 企業ランキングはSaaSを提供する会社を売上高、ARR、時価総額、平均年収などで並べたもので、主に投資家や転職希望者向けの情報です。サービスランキングは特定分野のSaaS製品をレビュー、資料請求数、機能などで並べたもので、導入を検討する企業の担当者に向いています。

Q6. ランキングを見たあと、何から始めればよいですか?

A. 導入を考えている分野のサービスランキングで候補を3つ程度に絞り、規模と業種の適合、機能と連携、安全性の開示、無料トライアルの有無を同じ観点で見比べましょう。そのうえで、提供会社の資料や無料トライアルで、実際の業務に合うかを確かめるのがおすすめです。

まとめ

SaaS業界ランキングは、SaaSを取り巻く市場や企業の動きを知るには便利な情報ですが、導入するサービスを決める「答え」ではありません。最後にポイントを整理します。

  1. ランキングには企業ランキングとサービスランキングがあり、並べる対象と指標が異なる
  2. 売上高、ARR、レビュー、資料請求数など、指標ごとに何がわかるかを読み分け、決算期や集計時点を確認する
  3. 企業規模や業種によって重視点が変わるため、横断型と特化型の違いも踏まえて自社に合う強みを拾い上げる
  4. 総務省の情報開示指針やASPICの認定制度を、安全性を比べる客観的な材料として使う
  5. 前提、適合、機能と連携、安全性、試せるかの5つの観点で候補を絞り、気になるサービスは資料請求や無料トライアルで確かめる

ランキングを入口に、自社の条件と公開情報で候補を確かめていく。この手順を踏めば、順位に振り回されず、長く使い続けられるSaaSを選べるはずです。

参考文献

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top