2025年の崖とは?意味とその後を経産省DXレポートからわかりやすく解説
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- 2025年の崖の意味と12兆円の試算の根拠がわかる
- 2025年問題・2027年問題との違いと、その後の状況がわかる
- 誤解を避け、DX推進指標で自社の現状を確認する方法がわかる
2025年の崖とは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムを放置してDXが進まない場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとした、経済産業省の2018年のDXレポートの警告です。2025年にシステムが一斉に止まるという予言ではなく、システムの老朽化、IT人材の不足、ソフトウェアのサポート終了といったリスクが2025年前後に重なると見込まれたことから、「崖」と表現されました。2025年を過ぎた今も、2025年5月の総括レポートでユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有していると示されるなど、課題は続いています。この記事では、意味と試算の根拠、なぜ2025年だったのか、2025年問題・2027年問題との違い、その後の状況、よくある誤解、DX推進指標での確認方法を整理します。
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2025年の崖で問われる「人」の問題|社内で学ぶ仕組みの選択肢
2025年の崖への対応は、システムの刷新だけでなく、仕組みを理解して判断できる人を社内に増やすことでもあります。
システムの仕様を理解し、何を残して何を変えるかを判断できる人がいなければ、刷新しても同じ問題が繰り返されます。経済産業省の総括レポートも、ユーザー企業が取るべき対策に上流人材の育成・確保を挙げています。人材の面では、IPAの「DX動向2025」で、日本企業の85.1%がDXを推進する人材が不足しているとされています。人を増やす方法は採用だけではなく、今いる社員が学べる環境を整えることも選択肢です。その手段の1つが、教材の提供と受講状況の管理をサービスに任せられるeラーニングです。サービスごとに得意分野が違うため、ここでは「学びの一元管理」「理解度の確認」「ルールの周知」という3つの役割で整理します(2026年10月16日時点で、各社の商品ページに掲載されている内容にもとづきます)。
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2025年の崖とは|経産省DXレポートの警鐘
2025年の崖とは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムが残ったままDXが進まなかった場合に、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるという経済産業省の警告です。
この言葉が登場したのは、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が2018年9月7日に公表した「DXレポート ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」です。レポートは、企業が競争力を維持するにはDXが欠かせないとしたうえで、その足かせとなっている既存システムの問題に焦点を当てました。多くの企業がDXの必要性を理解し、実証実験(PoC)などに取り組んでいる一方で、実際のビジネスの変革にはつながっていないという現状認識が出発点になっています。
「崖」という強い表現が使われたのは、2025年前後にいくつかのリスクが重なると見込まれたためです。長く使われてきた基幹システムの老朽化、システムを支えてきた人材の引退、主要なソフトウェアのサポート終了などが同じ時期に集中し、対応が遅れた企業ほど急激に不利になる、という見立てでした。DXレポートで示された主な数値を整理すると、次のようになります。
| 項目 | DXレポート(2018年)で示された内容 |
|---|---|
| 想定される経済損失 | 2025年以降、最大で年間12兆円(現在の約3倍) |
| 老朽化した基幹システム | JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査をもとに、最も大きなシステム(基幹系)が21年以上稼働している企業の割合が、当時の20%から2025年には60%になると試算 |
| IT人材の不足 | 2015年の約17万人から、2025年には約43万人まで不足が拡大すると想定 |
| IT予算の使われ方 | JUASの調査を引用し、IT関連予算の約80%が現行ビジネスの維持・運営に割り当てられ、その割合が90%以上の企業も40%を超えていると指摘(技術的負債) |
レポートは、既存システムを放置した場合のリスクとして大きく3つを挙げています。1つ目は、データを十分に活用できず、市場の変化に合わせてビジネスモデルを柔軟に変えられなくなること。2つ目は、システムの維持管理費が膨らみ続ける技術的負債の問題。3つ目は、保守運用の担い手がいなくなることで、サイバー攻撃や災害によるシステムトラブル、データの消失といったリスクが高まることです。
一方でレポートは、危機だけを示したわけではありません。2025年までに既存システムを集中的に刷新しつつ、新しいデジタル技術で新しいビジネス・モデルを創出できれば、2030年に実質GDPを130兆円超押し上げられるという「DX実現シナリオ」もあわせて示していました。2025年の崖は、崖から落ちるか、崖を越えて成長するかの分岐点として描かれていたといえます。
ここで押さえておきたいのは、12兆円という数字の出し方です。レポートは、21年以上稼働している基幹システムを持つ企業の割合が20%から60%に増えることを踏まえ、レガシーシステムに起因するトラブルリスクも3倍になると推定したうえで、経済損失は最大で約12兆円/年になると推定しています。つまり「確実に起こる損失」ではなく、一定の前提を置いた「最大で生じる可能性がある損失」の試算です。数字の大きさだけが独り歩きしがちですが、レポートの本来の狙いは、経営者に既存システムの問題を自分事として捉えてもらうことにありました。
なぜ「2025年」なのか|重なるとされた3つの要素
2025年が節目とされたのは、人材の不足、基幹システムの老朽化、ソフトウェアのサポート終了という複数のリスクが、2025年前後に重なると見込まれたためです。
DXレポートの概要図には、人材面と技術面の出来事が時系列で並んでいます。主な要素を、現在の状況とあわせて整理します。
| 要素 | 2018年のDXレポートの記載 | 現在の状況(公的資料・公式発表) |
|---|---|---|
| IT人材の不足 | 2015年の約17万人から、2025年には約43万人まで不足が拡大すると想定 | IPAの「DX動向2025」では、日本企業の85.1%でDXを推進する人材が不足していると示されている |
| 基幹システムの老朽化 | 最も大きなシステム(基幹系)が21年以上稼働している企業の割合が、2025年には60%になると試算 | 総括レポートの市場動向調査(2024年12月-2025年2月)では、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有。調査の定義が異なるため、単純には比較できない |
| SAP ERPのサポート終了 | 概要図に「2025年 SAP ERPサポート終了」と記載 | SAPは保守期限を見直し、SAP Business Suite 7の標準保守は2027年12月31日まで、オプションの延長保守は2030年12月31日までと説明している(2026年10月7日付のSAP公式ブログ) |
SAP ERP 6.0は、SAP Business Suite 7に含まれる製品です。自社でSAP製品を使っている場合は、対象のバージョンと保守契約の内容を、ベンダーや保守担当者に確認してください。なお、2025年を過ぎたからといって、基幹システムやソフトウェアの保守期限の問題がなくなったわけではありません。期限が延びた分だけ、準備の時間が与えられていると考えるのが実態に近いといえます。
「2025年問題」「2027年問題」との違い
2025年の崖は企業のITシステムとDXの問題、2025年問題は主に団塊の世代が75歳以上になることによる社会全体の問題、2027年問題はIT分野ではSAPの保守期限を指して使われることが多い言葉です。名前が似ていても、扱う分野が違います。
| 呼び方 | 何についての言葉か | 主な分野 | 確認できる出典 |
|---|---|---|---|
| 2025年の崖 | 老朽化した既存システムとIT人材不足により、2025年以降に経済損失が生じうるという警告 | 企業のITシステム、DX | 経済産業省「DXレポート」(2018年9月) |
| 2025年問題 | 一般に、団塊の世代が75歳以上になる2025年前後に、医療・介護や人手不足などの課題が重なるとされる問題 | 医療・介護・労働力 | 厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、地域包括ケアシステムの構築を推進してきたと説明している |
| 2027年問題 | IT分野では、SAP Business Suite 7の標準保守が終わる期限を指して使われることが多い(使われ方は資料によって異なる) | 基幹システム(ERP) | SAP公式ブログ(2026年10月7日) |
検索すると別の分野の記事が混ざることがあるため、自社に関係するのが、ITシステムの問題なのか、人手不足など社会全体の問題なのかを、まず切り分けて読むと整理しやすくなります。
2025年の崖が生まれた背景|レガシーシステムとIT人材不足
2025年の崖の背景には、長年の改修で複雑になったレガシーシステムと、それを支える人材の不足という2つの問題があり、両者が互いに悪化させ合う構造になっています。経営層の認識とベンダー企業との関係も、この構造を長引かせる要因として指摘されています。
レガシーシステムとは何か
レガシーシステムとは、古い技術で作られ、長年の改修の積み重ねで複雑になり、全体像を把握できる人がいなくなった既存システムのことです。DXレポートは、単に「古い」ことではなく、複雑化・老朽化・ブラックボックス化によって、変化に合わせて手を入れにくくなっていることを問題視しました。古い技術で作られていても、仕組みが文書化され、社内で説明できる人がいれば、必ずしもレガシーシステムとはいえません。逆に比較的新しいシステムでも、場当たり的な改修が重なって誰も全体を説明できなくなれば、レガシー化は進みます。
日本企業でレガシー化が進みやすかった理由として、システム開発を外部のベンダー企業に委託し、要件定義から保守までを任せる形が一般的だったことが挙げられます。業務に合わせて個別に作り込んだシステムは使い勝手が良い反面、仕様を知る人が社内に残りにくく、担当者の異動や委託先の変更のたびに知識が失われていきました。事業部門ごとに別々のシステムを作ったことで、全社でデータをつなげにくくなったケースも少なくありません。
技術的負債が新しい投資を圧迫する
DXレポートは、短期的な観点でシステムを開発した結果、長期的に保守費や運用費が高騰している状態を「技術的負債」と表現しました。JUASの調査を引用し、日本企業のIT関連予算の約80%が現行ビジネスの維持・運営に割り当てられ、その割合が90%以上の企業も40%を超えていると指摘しています。借金の利息を払い続けるように、既存システムの維持に予算と人手が取られ、データ活用やクラウド移行といった新しい取り組みに資源を回せなくなります。予算が保守に消えるほど刷新は遠のき、刷新が遅れるほど保守費がさらに膨らむという悪循環です。
IT人材の引退と不足
もう1つの背景が人材です。古いシステムを支えてきたのは、当時の開発言語や業務の経緯を知るベテラン技術者でした。こうした人材が定年などで現場を離れると、システムの中身を説明できる人がいなくなり、ブラックボックス化が一気に進みます。同時に、クラウドやデータ分析など新しい技術を扱える人材も不足しており、DXレポートは2015年の約17万人から、2025年にはIT人材の不足が約43万人まで広がると想定していました。
この2つは切り離せません。古いシステムの保守に人材が張り付くほど新しいスキルを学ぶ時間がなくなり、新しい技術を扱える人がいないほど刷新が進まず、古いシステムが残り続けます。2025年の崖を「システムの入れ替え」だけで解決しようとしても、人材の問題が残れば、新しいシステムもいずれ同じ道をたどるおそれがあります。
経営層の認識と情報システム部門の立場
2025年の総括レポートは、経営面の課題にも触れています。大企業の経営者意識の課題として、中期経営計画に大規模システムの導入・刷新を記載するユーザー企業は12%にとどまり、大半の企業が自社のシステムに関する方針を社外に説明できていないと示しました。また、情報システム部門が自社システムの運用維持保守にかかりきりで、事業部門との連携や投資の検討が十分にできていないこと、システムをコストと捉える経営層から、システムの課題が経営課題として取り上げられないケースもあることを挙げています。
システムの老朽化は技術の問題に見えますが、刷新を決めて予算と人をつけるのは経営の判断です。経営層が現状を把握していなければ、技術者がいくら問題を訴えても、対策は先送りされやすくなります。
ユーザー企業とベンダー企業の関係
DXレポートは、ユーザー企業とベンダー企業の関係にも課題があると指摘しています。ユーザー企業が要件を十分に示せないまま開発を委託し、ベンダー企業は受託した範囲を作ることに専念する、という関係では、システム全体をどう変えていくかを誰も主導できません。2025年の崖の克服には、ユーザー企業自身がシステムと業務の両方を理解し、主体的に判断できる体制が求められているのです。
DXレポート2・2.1・2.2の内容と最新の動向
2018年のDXレポート以降、経済産業省はDXレポート2・2.1・2.2を順に公表し、問題の焦点を「レガシーシステムの刷新」から「企業文化やビジネスモデルの変革」へと広げてきました。
| レポート | 公表時期 | 主なメッセージ |
|---|---|---|
| DXレポート | 2018年9月 | 既存システムの問題を放置すると2025年の崖に直面する。システムの刷新が必要 |
| DXレポート2(中間取りまとめ) | 2020年12月 | DX推進指標の自己診断結果を提出した企業の約95%が、DXにまったく取り組んでいないか、散発的な実施にとどまる段階だった。本質は企業文化の変革 |
| DXレポート2.1(追補版) | 2021年8月 | ユーザー企業とベンダー企業が互いに依存し合う関係から抜け出し、デジタル産業へと変わっていく姿を提示 |
| DXレポート2.2(概要) | 2022年7月 | デジタル投資の約8割が既存ビジネスの維持・運営に向かっている状況が続くと指摘し、収益向上につながる変革への転換を求めた |
| レガシーシステムモダン化委員会総括レポート | 2025年5月 | 2025年の崖を迎えたレガシーシステムの現状を把握し、経営層の意識変革やITガバナンスの強化などの対策を提言 |
DXレポート2で「本質は企業文化の変革」と整理
DXレポート2の大きな特徴は、最初のDXレポートが「レガシーシステムの刷新」を強調しすぎた結果、DXをシステムの入れ替えと同じ意味で捉える企業が出てきたという反省を踏まえている点です。DXレポート2は、DXの本質は企業文化の変革にあるとし、新型コロナウイルス感染症の拡大で事業環境が急変したことも踏まえて、変化に素早く対応できる組織になることの重要性を強調しました。
DXレポート2.1・2.2で示された方向性
DXレポート2.1では、ユーザー企業はベンダー企業にシステムを任せ、ベンダー企業は受託開発で安定した収益を得るという、互いに依存し合う関係そのものが変革を妨げていると指摘されました。DXレポート2.2では、DX推進に取り組む企業が増えても、デジタル投資の内訳はDXレポートの公表後も変わらず、約8割が既存ビジネスの維持・運営にあてられている状況を課題とし、デジタルを使って新しい価値や収益を生み出す方向へ舵を切ることが求められています。
2025年のレガシーシステムモダン化委員会総括レポート
2025年を迎え、経済産業省はデジタル庁やIPA(情報処理推進機構)とともに「レガシーシステムモダン化委員会」を設置し、2025年5月に総括レポートを取りまとめました。このレポートでは、2024年12月から2025年2月に行った市場動向調査の分析をもとに、経営者との情報共有やCxO(最高責任者)の設置の状況と、IT資産の可視化や内製化の状況には有意な相関があると示されています。そのうえで、レガシーシステムのモダン化に有効な要素として、次の4つが挙げられました。
- 経営層の意識変革とITガバナンスの強化
- 情報システム部門の自律性
- 事業部門との連携
- ベンダー企業の変革と協力関係
ユーザー企業が取るべき対策としては、システムの可視化と内製化を進めること、現行の仕様をそのまま引き継ぐ「現行踏襲」を見直しつつ標準化を検討すること、上流人材を育成・確保することが示されています。国の政策としても、企業が自社のIT資産を把握するための指標やツールの整備に加え、IT・デジタル人材の継続的な学びを促す人材育成の基盤づくりが掲げられました。2025年の崖は「その年で終わる話」ではなく、2025年以降も続く課題として、政策の中で引き継がれているといえます。
2025年、実際はどうなったか|実態調査の結果
2025年を迎えても、日本経済が一気に崩れるような事態は起きていませんが、課題が解消されたわけではありません。総括レポートの調査では、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有していると示されています。
「崖から落ちなかった」ことの意味
2025年の崖は、ある日突然システムが一斉に止まるような出来事を予言したものではありません。レポートが想定していたのは、保守費の増大、変化への対応の遅れ、人材の引退によるトラブルのリスクといった形で、競争力が少しずつ失われていく状態です。こうした損失は毎年の決算に「崖の損失」として現れるわけではないため、目に見える大事件がなかったからといって、問題が解決したとは限りません。
公的な資料から見える現状
2025年以降の状況は、経済産業省とIPAの調査で確認できます。主な数字を整理します。
| 資料 | 示されている内容 |
|---|---|
| 総括レポート(市場動向調査、2024年12月17日-2025年2月14日) | ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有。企業規模別では大企業が74%で、中小企業より大企業の保有率が高い。保有率が高い産業分野でも、モダン化が進んでいる企業はある |
| 総括レポート(同調査の相関分析) | 経営者との情報共有やCxOの設置の状況と、システム仕様の可視化や内製化の状況との間には、それぞれ有意な相関が確認されている |
| IPA「DX動向2025」(2025年2-3月調査、日本企業1,535社) | DXに取り組む日本企業の割合は約8割。成長につながるDXの取り組みは7割を超えるが、効率化のDXに比べて成果が出ている割合は相対的に低い |
| IPA「DX動向2025」(人材に関する分析) | 日本企業の85.1%で、DXを推進する人材が不足している |
「61%が保有」という数字は、レガシーシステムを持つこと自体が問題というより、モダン化が必要な資産を抱えている企業が多数派だという意味で読むのが実態に近いといえます。総括レポートは、モダン化は通常、数年にわたる計画になり、着手後に問題化や停滞が起きると、さらに長い期間を要すると指摘しています。自社の状況を確認するうえでは、保有しているかどうかよりも、システムの仕様を可視化できているか、内製化や社内の説明体制が進んでいるかを見ることが重要です。
残り続ける課題は「人」
2025年を過ぎても解消されていない課題として、多くの資料が共通して挙げるのが人材の問題です。レガシーシステムを刷新しようとしても、現行システムの仕様を把握している人がいなければ、何を残し何を変えるかを判断できません。刷新後のシステムを使いこなし、データを業務に生かせる人がいなければ、投資の効果も出にくくなります。総括レポートが上流人材の育成・確保を対策に挙げているのも、このためです。
人材の育成は、システムの刷新と違って一度で終わるものではありません。技術は変わり続けるため、社員が継続して学べる仕組みそのものを社内に持っておくことが、崖を越えた後も同じ問題を繰り返さないための土台になります。新しい技術を学ぶ機会を研修の年間計画に組み込み、受講状況を記録して、誰がどの程度のスキルを持っているかを把握できるようにしておくと、刷新プロジェクトのメンバー選びにも役立ちます。
2025年の崖への対応でよくある誤解
2025年の崖はインパクトの強い言葉だったぶん、本来の意味とずれた受け止め方も広がりました。代表的な誤解と、実際の考え方を整理します。
| よくある誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| 2025年を過ぎたので、もう関係ない | 2025年は目安の年であり、既存システムの問題は2025年以降も続く。政策も2025年以降の課題として引き継いでいる |
| システムを新しくすればDXは完了する | DXレポート2が示すとおり、本質は企業文化やビジネスの変革。刷新は手段の1つにすぎない |
| 大企業の話で、中小企業には関係ない | 総括レポートではレガシーシステムの保有率は大企業のほうが高いが、規模を問わず、担当者1人しか中身を知らないシステムや、サポートが終わったソフトウェアは同じリスクを抱える |
| 今のシステムの機能をそのまま移せばよい | 総括レポートは現行踏襲の見直しを求めている。使われていない機能や非効率な手順まで移すと、新しいシステムも複雑になる |
| ベンダーに任せれば解決する | 委託先任せが、ブラックボックス化の一因だった。自社で判断できる人材と体制が必要 |
| 12兆円の損失が必ず発生する | 一定の前提を置いた最大の試算であり、確定した予測ではない |
特に注意したいのが、「システムを新しくすれば終わり」という誤解です。この誤解のもとで刷新を進めると、新しいシステムを導入したものの業務の進め方は変わらず、数年後に再び複雑化してしまうことがあります。刷新の前に、業務のどこを変えたいのかを明確にし、システムの仕組みを社内で説明できる人を育てておくことが、同じ失敗を繰り返さないための備えになります。
もう1つ見落とされやすいのが、中小企業にとってのリスクです。大規模な基幹システムを持たない企業でも、長年使い続けている販売管理ソフトや、特定の担当者が作った表計算ファイルのマクロが業務の中心になっていることは珍しくありません。これらも、作った人がいなくなれば誰も直せないという意味で、規模は小さくてもレガシーシステムと同じ構造を持っています。中小企業が進まない理由と対処は、DXの課題とは?3つの課題と対策、「2025年の崖」と中小企業が進まない理由でも整理しています。
刷新や内製化を進めると、クラウドサービスの利用や委託先とのデータのやり取りが増え、情報セキュリティや個人情報の取り扱いといった基本ルールを全社員が理解している必要が出てきます。こうしたルールの周知を担う選択肢の一例が、株式会社OysterのOneCompliance(ワンコンプライアンス)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、個人情報保護法、情報セキュリティ、著作権(AIに関する内容を含む)などのコースが用意されており、ダッシュボードや自動リマインダーで管理工数を抑えられる点が特徴とされています。ただし、2025年の崖やDXそのものを学ぶ内容ではなく、刷新を進める際に守るルールの周知を担う位置づけである点に注意してください。費用は受講人数に応じた課金体系のため、問い合わせで確認する必要があります。
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2025年の崖への対策|DXレポートが示す進め方
2025年の崖への対策は、既存システムの見える化、機能の仕分けによる刷新範囲の絞り込み、ベンダー企業との関係の見直し、人材の育成を、経営課題として順に進めることが基本です。
2018年のDXレポートは、警告とあわせて対応策も示していました。柱になっているのは、経営者が自社のシステムの状態を把握するための「見える化」指標と診断の仕組みづくり、DXを進めるうえで経営者が押さえるべき事項をまとめたガイドラインの策定、刷新にかかるコストとリスクを抑える工夫、ユーザー企業とベンダー企業の契約や関係の見直し、DX人材の育成と確保です。このうち「見える化」指標は、次の章で取り上げるDX推進指標として具体化されました。
既存システムを4つに仕分けて刷新範囲を絞る
すべてのシステムを一度に作り直そうとすると、費用も期間も膨らみ、計画そのものが止まりがちです。DXレポートは、刷新の前に情報資産の現状を分析し、機能ごとに扱いを分ける考え方を示しています。
| 機能の性質 | DXレポートが示す扱い方 |
|---|---|
| 頻繁に変更が発生する機能 | クラウド上で再構築する |
| 変更されたり、新たに必要になったりする機能 | 適宜クラウド上に追加する |
| 肥大化したシステムの中で不要になった機能 | 廃棄する |
| 今後あまり更新が発生しない機能 | 範囲を明らかにしたうえで、そのまま維持する(いわゆる塩漬け) |
ポイントは、「捨てる」と「そのまま残す」も選択肢に含まれていることです。レポートには先行事例として、情報資産の現状を分析した結果、半分以上が業務上止めても問題ない利用されていないシステムだったため、廃棄を決断した企業の例も挙げられています。使われていない機能を廃棄するだけでも保守の対象が減り、刷新の範囲と費用を抑えられます。仕分けには業務とシステムの両方を理解している人が欠かせないため、情報システム部門だけでなく事業部門も加わって判断することが重要です。
標準化とベンダー企業との関係の見直し
再構築する機能については、現在の業務手順に合わせて個別に作り込むのではなく、パッケージソフトやクラウドサービスの標準的な機能に業務の進め方を合わせるという考え方が広がっています。個別の作り込みを減らせば、仕様を知る人が限られる状態を避けやすくなり、将来の改修もしやすくなります。2025年の総括レポートが現行踏襲の見直しと標準化の検討を求めているのも、同じ問題意識によるものです。
ベンダー企業との関係では、要件定義から任せきりにする形を改め、何を実現したいのかをユーザー企業自身が決めたうえで、対等な立場で協力する形が求められます。DXレポートは、小さく作って改善を繰り返す開発の進め方に合った契約のあり方や、開発の過程でユーザー企業の人材が知識を身に付けていくことの必要性にも触れています。どの対策も、最終的には自社の中に判断できる人がいるかどうかに行き着きます。
刷新を主導し、仕様を引き継げる人を育てる
対策の最後の柱が人材です。総括レポートは、ユーザー企業が取るべき対策として、システムの可視化と内製化、現行踏襲の見直しとあわせて、上流人材の育成・確保を挙げています。どのような人材像や学習内容が必要かは、DX人材とは|DSS-P ver.2.0の6類型と中小企業の育成・確保の進め方で整理しています。
人を育てるときに見落としやすいのが、引き継ぎや研修が「実施された」ことと「理解された」ことの違いです。システムの仕様を知る担当者から次の担当者へ資料を渡して終わりにせず、理解度をテストの結果で確認できるようにしておくと、引き継ぎが進んでいるかを把握できます。
引き継ぎや研修の理解度を、確認テストの結果で確かめたい場合の一例が、株式会社イー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testingです。CBT(コンピュータ上で試験を行う方式)の技術を生かしたテスト機能があり、動画やスライドによる学習のあとに確認テストを組み込めます。既存問題とオリジナル問題を組み合わせたテストを作成することもできます。注意したい点は、事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いになることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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株式会社イー・コミュニケーションズ
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初心者にも◎受講者の管理をスムーズに行いたい方におすすめ
おすすめ!
- 不慣れな方でも作成・登録しやすいコンテンツ機能を多数搭載
- あらゆる企業ですぐに役立つ実践的な内容のコンテンツを厳選して用意
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気になる…
- 事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いとなる
同サービスの導入事例では、研修を拡充したい企業が、導入後の変化を次のように説明しています。
コンテンツの質の向上はもちろん、受講者への事前リマインドによる受講率向上や、受講状況・結果を容易に把握できるようになったことで、次の施策への展開が容易になった。
出典: メディカル・データ・ビジョン株式会社(SAKU-SAKU Testing導入事例) https://www.e-coms.co.jp/jirei/jirei29
自社の対応状況をどう確認するか|DX推進指標の活用
自社が2025年の崖にどの程度向き合えているかは、経済産業省が策定し、IPAが自己診断の受付と分析を行っている「DX推進指標」で確認できます。
DX推進指標とは
DX推進指標は、経営者や社内の関係者が、DXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供する自己診断です。現在のレベルと3年後に目標とするレベルを、レベル0からレベル5までの6段階で評価します。IPAは、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者が集まり、議論しながら記入することをすすめています。
自己診断の結果をIPAに提出すると、ほかの企業や業界の取り組み状況と比べられるベンチマークレポートを取得できます(個々の企業の診断結果は外部に公表されません)。なお、2026年9月18日から提出方法がWebフォーム(DX推進ポータル)に変わり、従来のExcelファイルによる提出受付は終了しています。古い手順の資料を見ながら進めないよう、最新の案内を確認してください。DXレポート2で示された「約95%の企業がDXに未着手か散発的な段階」という分析も、提出された自己診断の結果をもとにしたものです。
2025年の崖の観点で確認したいポイント
DX推進指標のすべての項目に一度に取り組むのが難しい場合は、総括レポートの内容を踏まえ、2025年の崖に直結する観点から確認を始めると進めやすくなります。
| 確認の観点 | 具体的に確かめること |
|---|---|
| システムの見える化 | 自社のシステムの一覧、導入時期、保守期限、担当者を把握できているか |
| ブラックボックス化の程度 | 仕組みを説明できる人が社内に複数いるか。担当者1人に依存していないか |
| IT予算の配分 | 予算のうち、既存システムの維持と新しい取り組みにそれぞれどれだけ使っているか |
| 経営層の関与 | システムの課題が経営層に共有され、刷新の判断が経営の議題になっているか |
| 人材の状況 | DXを担う人材の数とスキルを把握し、育成の計画があるか |
診断結果を行動につなげる
自己診断は、点数を付けること自体が目的ではありません。経営層、情報システム部門、事業部門がそれぞれの立場で回答し、認識のずれを話し合うことに価値があります。たとえば経営層は「システムは問題なく動いている」と考えていても、現場は「中身を知る人が1人しかいない」と感じている、といったずれが見つかれば、それが最初に手を付けるべき課題です。
課題が見えたら、システムの可視化、現行踏襲の見直し、人材の育成といった対策に優先順位を付け、年次で自己診断を繰り返して変化を確認します。DXの効果を定量・定性の両面で測る方法は、DXの効果とは?6つの効果と定量・定性の測り方、IPA調査で見る成果の実態で詳しく解説しています。
人材の項目で課題が見つかった企業は多いはずです。刷新を主導する中核人材の育成と、現場全体のDXリテラシーの底上げは、どちらも一朝一夕には進みません。受講状況を記録できるeラーニングを使えば、自己診断の「人材」の項目の変化を、受講率や理解度の結果として追いやすくなります。最後に、本文で整理した内容をもとに、自社の現状をセルフチェックしてみてください。
自社のレガシーと人材の現状、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
よくある質問(FAQ)
Q1. 2025年の崖とは何ですか?
A. 経済産業省が2018年のDXレポートで示した警告です。老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムが残ったままDXが進まなければ、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされました。12兆円は前提を置いた最大の試算で、必ず発生する損失の予測ではありません。
Q2. 2025年を過ぎた今、2025年の崖はどうなりましたか?
A. 経済が一気に崩れる事態は起きていませんが、課題は解消されていません。2025年5月に経済産業省が取りまとめたレガシーシステムモダン化委員会の総括レポートでは、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有していると示され、2025年以降も続く課題として対策が提言されています。
Q3. 2025年問題と2025年の崖は何が違いますか?
A. 2025年の崖は、既存システムの老朽化とIT人材不足による経済損失を警告した経済産業省の言葉で、企業のITとDXの問題です。2025年問題は一般に、団塊の世代が75歳以上になることによる医療・介護や人手不足の問題を指し、扱う分野が違います。
Q4. 2027年問題と2025年の崖はどう違いますか?
A. 2027年問題は、IT分野ではSAP Business Suite 7の標準保守が2027年12月31日に終わることを指して使われます。2025年の崖はより広い警告で、DXレポートの図にはSAP ERPのサポート終了が要因の1つとして2025年に載っていました。その後SAPは保守期限を延長しています。
Q5. 中小企業も2025年の崖に対応する必要がありますか?
A. あります。総括レポートの調査では、レガシーシステムの保有率は中小企業より大企業のほうが高いと示されていますが、規模を問わず、担当者1人しか中身を知らないソフトウェアやマクロは同じリスクを抱えます。まずはシステムの一覧と担当者を把握することから始めましょう。
Q6. 2025年の崖への対策として、人材面では何から始めればよいですか?
A. DX推進指標で人材の状況を確認したうえで、刷新を主導する中核人材の育成と、社員全体のDXリテラシーの底上げを計画的に進めます。受講状況や理解度を記録できるeラーニングを使うと、育成の進み具合を把握しやすくなります。機能はサービスによって異なるため、資料で確認してください。
まとめ|2025年の崖を「過去の話」にしないための5つのこと
2025年の崖は、2025年という年を過ぎれば終わる問題ではなく、既存システムと人材の問題を先送りし続けるリスクへの警告です。最後に、押さえておきたい5つのポイントを整理します。
- 2025年の崖は、レガシーシステムと技術的負債、IT人材の不足が重なるリスクを示したもので、12兆円は前提を置いた最大の試算だと押さえる。
- 2025年問題(社会全体の問題)や2027年問題(SAPの保守期限)とは分野が違うことを区別し、自社に関係するものを切り分ける。
- 総括レポートで、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有していると示されたとおり、課題は2025年以降も続いていると認識する。
- システムの一覧・導入時期・保守期限・担当者を整理し、DX推進指標で自社の現在地を確認する。
- 仕様を引き継ぎ、刷新を主導できる人を育てる仕組みとして、eラーニングなどの資料を取り寄せて比べ、自社に合うかを検討する。
まずは、自社のシステムの一覧と担当者を整理するところから始めてみてください。
参考文献
- 経済産業省「DXレポート ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf
- 経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation_kasoku/pdf/20201228_3.pdf
- 経済産業省「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dxreport2.1_honbun.pdf
- 経済産業省「DXレポート2.2(概要)」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/002_05_00.pdf
- 経済産業省「レガシーシステム脱却に向けた『レガシーシステムモダン化委員会総括レポート』を取りまとめました」https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html
- 経済産業省・IPA「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート(本文)」https://www.ipa.go.jp/disc/committee/begoj90000002xuk-att/legacy-system-modernization-committee-20250528-report.pdf
- 経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進指標のご案内」https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025-成長のためのDXに求められる取組」https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/dx2025_activities_for_driving_growth.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成」https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/dx2025_digital_talent_ai_era.html
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- SAP News Center「Planning Beyond 2030: What SAP Business Suite 7 and SAP NetWeaver Customers Using Third-Party Databases or Java Need to Know」(2026年10月7日)https://news.sap.com/2026/10/beyond-2030-sap-business-suite-7-sap-netweaver-customers-third-party-databases-java/
