DXの効果とは?6つの効果と定量・定性の測り方、IPA調査で見る成果の実態
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- DXで得られる6つの効果と4象限がわかる
- 日本企業のDXの成果の実態がわかる
- 効果測定の4ステップと代理指標がわかる
DXの効果とは、データとデジタル技術を活用した取り組みによって得られる成果のことで、業務効率化やコスト削減といった数字に表れやすいものから、新しい事業の創出や組織文化の変化まで幅広く現れます。効果は、業務時間の削減のような定量的なものと、意思決定の速さや社員のデジタル活用力のような定性的なものに分かれ、現れる時期も短期と中長期で異なるため、1つの指標だけでは全体をつかめません。この記事では、DXで得られる6つの効果、4象限での整理、IPA「DX動向2025」から見た日本企業の成果の実態、効果測定の4ステップと定性効果を代理指標で測る方法、経営層への説明の仕方、よくある失敗までを順に解説します。
DXの効果、どこまで確認できていますか? かんたん診断
Q1. いま、DXの効果として確認できているのはどちらに近いですか?
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DXの効果を出して測るには「人の学び」が土台|社内の学習を支える仕組みの選択肢
DXの効果は、ツールを導入しただけでは現れにくく、使う人の理解とスキルが追いついて初めて、業務や事業の変化として数字に表れます。
経済産業省の「DXレポート2」も、DXは製品・サービスの導入のみで達成されるものではなく、ツール導入が完了したからといってDXが達成されるわけではないと指摘しています。あわせて、DXとはどういうもので自社のビジネスにどう役立つのかという最低限の共通理解を、関係者の間で最初に形成する必要があるとも述べています。
効果を測る場面でも同じことが言えます。人の変化は目に見えにくく、受講の記録や理解度の結果が残る仕組みがなければ、「研修はやったが効果は不明」という状態になりがちです。受講状況やテストの結果を残せるeラーニングを使えば、数字にしにくい人材面の効果を、受講率やテスト結果といった定量データとして記録できます。ここでは「学びの一元管理」「理解度のテスト」「ルール周知の記録」という3つの役割で、3つのサービスを整理します(2026年10月15日時点で、各社の商品ページに掲載されている内容にもとづきます)。いずれもDXの教材そのものではなく、学習の管理や理解度の確認といった運用面を担うサービスです。DX向けの教材が含まれるかどうかは、資料で確認してください。
DXの効果を支えるeラーニング3サービスの役割の違い
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:Smart Boardingは、研修・OJT・eラーニングを1つの仕組みでまとめ、受講者ごとの進捗や理解度を確認したい場合の一例です。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:SAKU-SAKU Testingは、学習の結果をテストの数字で残し、ダッシュボードで受講状況を確認したい場合の一例です。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:OneCompliance(ワンコンプライアンス)は、DXで扱う情報や著作権などのルールを研修で周知し、受講状況の記録を残したい場合の一例です。
資料を無料ダウンロード| サービス | Smart Boarding |
SAKU-SAKU Testing |
|
|---|---|---|---|
| 向いている会社 | 社員研修・OJT・eラーニングを1つの仕組みで管理し、受講状況を把握したい会社 | 学習の結果をテストで測り、受講状況や結果を数字で把握したい会社 | コンプライアンス研修を全社員に実施し、受講の記録を残したい会社 |
| 特徴 | 学習管理システムで受講者ごとの進捗や理解度を確認でき、自社の資料や動画と用意されたコンテンツを組み合わせた研修コースを作れる | CBTの技術を生かしたテスト機能があり、ダッシュボードで受講状況やデータ分析をグラフで確認できる。テストの統計情報の確認やデータ出力もできる | 情報セキュリティ・個人情報保護法・著作権などのコンプライアンス研修に特化し、ダッシュボードで受講状況を把握でき、自動リマインダーで受講を促せる |
| 注意したい点 | 電話やメールでの相談、教育プログラムの設計といった手厚いサポートは「充実サポートプラン」のみが対象 | 事務局の運営代行やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱い | 費用は受講人数に応じた課金体系のため、問い合わせでの確認が必要 |
| 資料・詳細 |
3サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
DXの学びを全社員に広げ、受講状況を誰でも把握できるようにしたい場合の一例が、株式会社FCEのSmart Boardingです。社員研修・OJT・eラーニングを1つのシステムで進められるとされ、学習管理システムで受講者ごとの進捗や理解度を確認できるほか、自社の資料や動画と用意されたコンテンツを組み合わせた研修コースを作成できます。注意したい点は、電話やメールでの相談、教育プログラムの設計といった手厚いサポートが「充実サポートプラン」の対象であることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。


LearnOとの比較はこちら

【2026年最新】LearnO vs Smart Boardingを徹底比較|どちらがあなたに合う?評判・機能・料金で検証!
今、eラーニングシステムを導入する企業が増えています。特に「LearnO」と「Smart Boarding」は2大人気サービスで、評価を見てもどちらが本当に自社に合うサービスなのか悩んでいる方も少なくありません。本記事では、徹底比較したビジコン編集部が目的別・使い方別に違いを明確に解説します。
ここがおすすめ!
- 内定者・新人教育からリーダー・管理職育成まであらゆるシーンで活用
- 属人化を防いでいつでも何回でも学習できる環境を実現
- 自社オリジナルコースの作成や学習進捗管理も行える
ここが少し気になる…
- 電話やメール相談、教育プログラム設計といった手厚いサポートを受けられるのは「充実サポートプラン」のみ
同サービスの導入事例では、研修の管理に課題があった企業が、導入後の変化を次のように説明しています。
誰が研修を受けたか、受けていないかが一目でわかるようになり、管理が非常に簡単になりました。
出典: 日鉄保険サービス株式会社(Smart Boarding導入事例) https://smartboarding.net/example/11530/
DXの効果とは|得られる6つの効果と、現れるまでの時間
DXの効果は、業務効率化、コスト削減、働き方の見直し、顧客満足度の向上、新しい商品・サービスの創出、変化に強い組織づくりの6つに整理できます。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」は、DXを、データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデル、さらに業務や組織、企業文化まで変革し、競争上の優位性を確立することと位置づけています。そのため、DXの効果も業務の効率化にとどまらず、事業や組織の変化にまで及びます。測り方を決める前に、自社がどの効果を狙っているのかを確認しておくと、指標を選びやすくなります。
DXで得られる6つの効果
| 効果 | 内容 | 指標の例 | 主に対応する象限 |
|---|---|---|---|
| 業務効率化・生産性の向上 | 手入力や転記、集計を自動化し、人が判断や提案などの業務に時間を使えるようにする | 作業時間、処理件数、入力ミスの件数 | 短期・定量 |
| コスト削減 | 紙や印刷、郵送、移動、残業にかかる費用を減らす。古いシステムの維持費の見直しも含む | 費目ごとの支出額、残業時間 | 短期・定量 |
| 働き方の見直し・人手不足への対応 | 場所を選ばない働き方を可能にし、少ない人数でも業務を回せる体制をつくる。災害時などの事業継続にもつながる | 残業時間、離職率、従業員アンケート | 短期・定性から中長期・定量 |
| 顧客満足度の向上 | 顧客データをもとに、問い合わせ対応や提案、購入後のフォローの質と速さを高める | 回答までの時間、リピート率、顧客アンケート | 中長期・定量 |
| 新しい商品・サービスやビジネスモデルの創出 | 蓄積したデータやデジタル技術を使い、これまで提供できなかった価値を事業にする | 新規事業の売上、新サービスの利用者数 | 中長期・定量 |
| 変化に強い組織づくり | 経験や勘だけに頼らず、データを根拠に素早く判断して動ける組織になる | 承認にかかる日数、スキル診断の結果、DX推進指標のレベル | 中長期・定性 |
表の上にある効果ほど早く数字に現れ、下にある効果ほど現れるまでに時間がかかります。すべてを同時に狙う必要はなく、自社の経営課題に近いものから優先順位をつけることが現実的です。
定量・定性、短期・中長期の4象限で見る
DXの効果は、数値で測れる定量と数値にしにくい定性、施策の直後に現れる短期と時間をかけて現れる中長期を組み合わせた4象限で捉えると、見落としを防げます。
| 区分 | 効果の例 | 主な測り方 |
|---|---|---|
| 短期・定量 | 業務時間の削減、紙や郵送のコスト削減、処理件数の増加 | 導入前後の数値比較 |
| 短期・定性 | 操作への不満の減少、従業員の業務満足度 | アンケート、ヒアリング |
| 中長期・定量 | 新規事業の売上、顧客数やリピート率の増加、利益率の改善 | KGI・KPIの推移を四半期から年単位で追跡 |
| 中長期・定性 | 組織文化の変化、意思決定の速さ、社員のデジタル活用力 | 代理指標(スキル診断、利用率等)と定点アンケート |
DXの本来の効果は、表の右下にある中長期・定性の領域まで及びます。短期・定量の効果だけで「DXは成功した」と判断すると、ツール導入による業務効率化(デジタル化)の段階にとどまっているのか、事業や組織の変革まで進んでいるのかを見分けられません。
もう1つ押さえておきたいのは、4象限の効果が現れるタイミングのずれです。業務時間の削減は導入から数週間で見えることが多い一方、組織文化や顧客数の変化は半年から数年単位でしか現れません。効果測定では「いつ、どの象限を確認するか」をあらかじめ決めておくことが、短期の結果だけで拙速に判断しないための前提になります。
定性的な効果とは
定性的な効果とは、意思決定の速さ、従業員の満足度、社員のデジタル活用力、組織文化の変化のように、数字にしにくく、状態や質の変化として現れる効果のことです。対になる定量的な効果は、削減できた時間や金額、件数のように数字で表せる効果を指します。
定性的な効果は、定量的な効果より軽く扱われがちですが、DXで事業や組織を変えていくうえでは中心になる部分です。数字にならないから測らないのではなく、後述する代理指標に置き換えて、変化の方向を確認していきます。
段階別に見る効果|デジタイゼーション、デジタライゼーション、DX
経済産業省の「DXレポート2(中間取りまとめ)」は、DXを3つの段階に分けて整理しています。自社がいまどの段階にいるかによって、期待できる効果と見るべき指標が変わります。
| 段階 | DXレポート2での位置づけ | 得られやすい効果 | 見るべき指標の例 |
|---|---|---|---|
| デジタイゼーション | アナログ・物理データのデジタルデータ化 | ペーパーレス化、書類を探す時間や保管コストの削減 | 紙の書類の件数、印刷や郵送の費用 |
| デジタライゼーション | 個別の業務・製造プロセスのデジタル化 | 部門単位での業務効率化、ミスの削減、データの蓄積 | 処理時間、エラーの件数、ツールの利用率 |
| デジタルトランスフォーメーション | 組織横断・全体の業務や製造プロセスのデジタル化と、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革 | 新しい価値の提供、顧客との関係の変化、競争上の優位性 | 新規事業の売上、リピート率、組織の成熟度 |
同レポートは、3つの段階を必ず順番どおりに進めなければならないものとはしていません。ただ、効果測定の観点では、前の段階で蓄積したデータが次の段階の土台になるため、いまの段階に合わない指標を置くと「効果が出ていない」と誤って判断しやすくなります。たとえば紙の書類を電子化したばかりの段階で新規事業の売上をKPIにしても、数字は動きません。まずは現在の段階で得られやすい効果を確実に測り、次の段階の指標を先行して少しずつ加えていく進め方が無理のない方法です。
日本企業のDXの効果の実態|IPA「DX動向2025」から読み解く
IPAの「DX動向2025」によると、日本企業の約8割がDXに取り組んでいますが、成果が出ている割合は取り組みの内容で大きく異なり、業務効率化は6割弱、ビジネスモデルの変革は15.6%にとどまります。
この調査は、2025年2月から3月にかけて日本企業1,535社、米国企業509社、ドイツ企業537社から回答を得たものです。DXの取り組みを7つの内容に分け、「すでに十分な成果が出ている」「すでにある程度の成果が出ている」と回答した企業の割合を成果創出としています。日本企業の結果を、DXレポート2の3段階に当てはめて整理すると次のとおりです。
| 取り組みの内容 | IPAの分類 | 日本企業の取り組み割合 | 成果が出ている割合 |
|---|---|---|---|
| アナログ・物理データのデジタル化 | デジタイゼーション | 9割以上 | 6割前後 |
| 業務の効率化による生産性の向上 | デジタライゼーション | 9割超 | 6割弱 |
| 組織横断・全体の業務・製造プロセスのデジタル化 | デジタルトランスフォーメーション | 9割以上 | 36.4% |
| 新規製品・サービスの創出 | デジタルトランスフォーメーション | 7割前後 | 18.8% |
| 顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革 | デジタルトランスフォーメーション | 7割前後 | 15.6% |
出典: IPA「DX動向2025-成長のためのDXに求められる取組」(IPA調査分析ディスカッション・ペーパー2025-01、2025年7月16日公開)の本文の記述を整理。割合は企業自身の回答にもとづく主観的な評価で、日本企業は慎重に自己評価をする傾向があるという指摘もあるため、米国・ドイツの企業との差は幅を持って読む必要があります。
この結果から読み取れるのは、デジタル化や業務効率化のような短期・定量の効果は比較的出やすい一方、事業や組織の変革に近い効果ほど、成果が出ている割合が低いということです。IPAは、日本企業が経営面の成果をコスト削減などの効率化として捉える傾向が強く、売上高や利益の増加といった成長面の成果を認識する割合が、米国・ドイツの企業より低いと整理しています。4象限でいえば、日本企業は短期・定量の効果は確認できていても、中長期の効果の確認はこれからという企業が多いと言えます。
さらに、日本企業と米国企業を比べると、「成果指標の設定」「DXを推進する人材の評価基準」「スキルの把握状況」などの項目で、米国企業の割合が日本企業を上回っています。効果を測る指標を決めておくことと、人材のスキルを把握しておくことが、成果の確認に関わる取り組みとして並んでいる点は、後述する効果測定の進め方と重なります。
また、効率化または成長のどちらかのDXで成果を上げている日本企業の多くに共通して取り組まれている項目として、IPAは、DX推進の専門の部署、情報セキュリティに関する組織全体の対応方針の制定、社内人材の育成などを挙げています。人材を育てる取り組みと、守るべきルールを組織全体で定める取り組みが、成果を上げている企業に共通している点は、実務の優先順位を考える参考になります。なお、IPAは、この分析が取り組みと成果の相関を見たものであり、因果を明らかにするにはさらに検討が必要だとしています。
情報セキュリティや個人情報、著作権といったルールを、全社員に周知して受講の記録を残したい場合の一例が、株式会社OysterのOneCompliance(ワンコンプライアンス)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、情報セキュリティ、個人情報保護法、著作権(AIに関する著作権を含む)などのコースがあり、ダッシュボードで受講状況を把握し、自動リマインダーで受講を促せます。注意したい点は、費用が受講人数に応じた課金体系のため、問い合わせでの確認が必要なことです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社Oyster
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
株式会社Oyster
OneCompliance(ワンコンプライアンス)
コンプライアンスに特化!上場準備中/IPO準備中、上場企業、大手グループ会社、監査法人、金融機関/フィンテック、中堅/中小企業の方に特におすすめ

ここがおすすめ!
- 上場準備中/IPO準備中の企業にも最適
- ダッシュボードや自動リマインダーなど管理工数を最小化
- 初期費用なし、受講人数に合わせた料金体系のためコストを最適化
ここが少し気になる…
- 費用は人数に応じた課金体系のため、問い合わせで確認
同サービスの導入事例では、上場準備中の企業の担当者が、確認テストについて次のように説明しています。
管理する側としては、確認テストで細かく理解度を確認することが出来るのが、学習効果を高める上では有用だと感じました。
出典: 株式会社プリメディカ(OneCompliance導入事例、株式会社Oysterのプレスリリース) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000117367.html
効果が出にくくなる要因と、効果を高めるポイント
成果が出にくい企業には、共通する要因があります。ツールの導入そのものが目的になっている、経営層が関与せず現場任せになっている、変化に対する現場の抵抗が強い、デジタルを使いこなせる人材が足りない、といった点です。効果を高めるには、次の4つを意識します。
- 目的を先に決める:何のためにDXに取り組むのかを経営の言葉で示し、狙う効果を6つから絞り込む
- 経営層が関与する:部門をまたぐ判断や投資の継続は、現場だけでは決められないため、経営層が進捗を定期的に確認する
- 小さく始めて成果を積み重ねる:全社一斉ではなく、効果を測りやすい業務から着手し、短期の成果を社内に共有して次の取り組みへの理解を得る
- 人材育成を並行して進める:ツールを入れても使う人のスキルが追いつかなければ効果は出にくいため、研修とスキルの確認を計画に組み込む
DX全体のメリットとデメリットを中立の立場で整理した記事はDXのメリット・デメリットを中立解説、デメリットの根本原因と失敗パターンはDXのデメリット7選で解説しています。公的に選定された企業の取り組み事例はDX事例|経産省選定の業種別事例を参考にしてください。
経済産業省とIPAの「DX推進指標」で現在地を測る
DX推進指標は、自社のDXの取り組み状況を関係者で確認し合うための自己診断の枠組みで、効果測定の出発点となる「現状」を把握するのに役立ちます。
IPAの案内によると、設問はDX認定基準に関する設問と、望ましい方向性に基づく設問の2部構成です。後者では、現在のレベルと3年後に目標とするレベルを、レベル0から5までの6段階で評価します。診断の結果は、IPAの「DX推進ポータル」から提出でき、提出後にベンチマークレポートを取得できます(2026年9月18日からWebフォームでの提出に変わり、Excelでの受付は終了しています)。個々の企業の診断結果を外部に公表するものではないと案内されています。経営層と現場部門が一緒に回答すると、取り組み状況の認識のずれを見える化しやすくなります。
効果測定の観点では、次の3つの使い方が実務的です。
- DXの取り組みを始める前に一度診断し、「導入前の現状」として記録しておく
- レベルの低い項目を、優先して改善する領域としてKPIの設計に反映する
- 半年から1年ごとに同じ関係者で再診断し、レベルの変化を中長期・定性の効果として確認する
DX推進指標は、数値化しにくい「組織としてDXを進める力」の変化を、レベルという共通の物差しで追える点が大きな利点です。個々の施策の効果(業務時間やコスト)とは別に、組織全体の成熟度の変化を測る指標として組み合わせると、4象限の抜けを補えます。診断の進め方や結果の見方はDXアセスメントとは|DX推進指標で成熟度を測る方法で詳しく解説しています。
DXの効果測定とは|現状の可視化からKPI化までの4ステップ
DXの効果測定とは、DXで得られた成果を導入前の数値と比べて確認し、改善や投資の判断につなげることです。
効果測定は、施策を導入してから考えるのではなく、導入前に設計しておくことが基本です。次の4ステップで進めると、測るべきものが途中でぶれにくくなります。
ステップ1:現状を可視化する
対象業務の処理時間、件数、エラーの発生数、担当者の人数など、導入前の数値を記録します。あわせてDX推進指標の自己診断や、従業員アンケートで現状の課題感も残しておきます。導入前の数値がないと、後から効果を比べることができません。
ステップ2:KGIを決める
KGI(重要目標達成指標)は、DXで最終的に達成したい成果です。「受注から出荷までの日数を短縮する」「既存顧客のリピート率を高める」のように、経営の目標と結びつけて1つから3つ程度に絞ります。
ステップ3:KGIをKPIに分解する
KPI(重要業績評価指標)は、KGIに向かう途中経過を測る指標です。「具体的か」「測定できるか」「達成できるか」「KGIと関連しているか」「期限があるか」というSMARTの考え方で設計すると、誰が見ても達成度を判断できます。KPIには業務プロセスの指標だけでなく、「DX研修の受講率」「データ活用ツールの利用率」のような人材・組織面の指標も含めておくと、中長期の効果の先行指標になります。
| KGIの例 | 業務プロセスのKPI例 | 人材・組織のKPI例 |
|---|---|---|
| 受注から出荷までの日数を短縮する | 受注処理時間、入力ミスの件数 | 新システムの利用率、操作研修の完了率 |
| 既存顧客のリピート率を高める | 問い合わせへの初回回答時間、顧客データの登録率 | データ分析研修の受講率、分析レポートの作成件数 |
| バックオフィスの工数を減らす | 月次の締め作業にかかる時間、紙の書類の件数 | 自動化ツールを扱える担当者の人数 |
ステップ4:評価のタイミングと担当を決めて振り返る
短期の指標は月次、中長期の指標は四半期や半期ごとなど、象限ごとに確認のタイミングを決めます。担当者と記録の場所も決めておき、担当者が異動しても測定が途切れないようにします。振り返りでは、期待していた効果と実際の効果を比べ、ずれがあった理由を次の施策に反映します。
効果を見る4つの評価軸と、費用対効果の出し方
指標を選ぶときは、業務効率、顧客価値、財務、組織文化の4つの軸に分けて置くと、偏りに気づきやすくなります。日本企業は効率化の成果に偏りやすいと前の章で触れたように、効率の軸だけでなく、顧客価値や財務の軸にも指標を置くことが大切です。
| 評価軸 | 見る内容 | 指標の例 |
|---|---|---|
| 業務効率 | 作業の速さ、手間、ミスの減り方 | 工数削減率、残業時間、処理時間、入力ミスの件数 |
| 顧客価値 | 顧客にとっての便利さや満足 | 顧客満足度、リピート率、解約率、問い合わせへの回答時間 |
| 財務 | お金に換算した成果 | 売上、コスト削減額、投資額に対する効果(ROI) |
| 組織文化 | 人と組織の変化 | 研修の受講率、ツールの利用率、改善提案の件数、定点アンケート |
費用対効果は、削減できた業務時間に人件費の時間単価を掛けて金額に換算し、投資額と比べて示す方法がよく使われます。ROI(投資利益率)は、効果額から投資額を引いた金額を投資額で割り、100を掛けた割合です。ただし、中長期の効果は投資の直後には金額に表れないため、短期の費用対効果だけで判断しないようにします。算定式と評価の落とし穴はDX投資とは|ROIの計算方法と評価の落とし穴、費用対効果の考え方は費用対効果とは|ROIの算定式とDX投資の評価方法で整理しています。
ここまでの4ステップを、自社ではどこまで実施できているでしょうか。次のセルフチェックで確認してみてください。
DXの効果測定、今のやり方で足りていますか? セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
定性的な効果を代理指標で評価する方法
定性的な効果は、そのまま数値にできないため、変化を間接的に表す「代理指標」に置き換えて測るのが一般的な方法です。
意思決定の速さや組織文化、社員のデジタル活用力といった定性的な効果は、そのままでは数値になりません。そこで、その変化を間接的に表す指標に置き換えます。
| 測りたい定性効果 | 代理指標の例 | データの取り方 |
|---|---|---|
| 意思決定の速さ | 稟議の承認にかかる日数、会議資料の準備時間 | ワークフローシステムの記録、担当者の自己申告 |
| データに基づく経営への移行 | 会議でデータを根拠に使った議題の割合、ダッシュボードの閲覧数 | 議事録の確認、ツールのアクセスログ |
| 社員のデジタル活用力 | スキル診断の点数、研修の受講率と完了率、ツールの利用率 | eラーニングの受講記録、スキル診断の結果 |
| 組織文化の変化 | 業務改善の提案件数、定点アンケートの推移 | 提案制度の記録、同じ設問での年1回の調査 |
代理指標を選ぶときは、日々の業務の中で自然に記録が残るものを優先すると、測定の手間が増えません。アンケートを使う場合は、毎回同じ設問と同じ対象で実施し、変化を比べられるようにすることが大切です。
このうち「社員のデジタル活用力」は、DXの中長期の効果すべての土台になる指標です。経済産業省とIPAは、DXを推進する人材に求められるスキルを整理した「デジタルスキル標準」を公開しており、これに沿ったスキル診断や研修を使うと、社内の人材がどの段階にいるかを共通の基準で測れます(人材育成の進め方はDX人材育成とは|進め方5ステップ・DSS-LとDSS-P・助成金・事例を参照)。研修をやりっぱなしにせず、受講率や到達度を記録として残して定期的に確認する仕組みを作ると、数字にしにくい人材面の変化を経営層にも示しやすくなります。
学習の成果を、確認テストの結果という数字で残したい場合の一例が、株式会社イー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testingです。CBTの技術を生かしたテスト機能を備えたeラーニングで、受講状況や結果はリアルタイムで集計され、ダッシュボードでグラフとして確認できます。テストの統計情報の確認やデータの出力もできるため、スキル診断の点数や受講率を代理指標として時系列で追う用途に向きます。注意したい点は、事務局の運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いとなることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
株式会社イー・コミュニケーションズ
SAKU-SAKU Testing
株式会社イー・コミュニケーションズ
SAKU-SAKU Testing
初心者にも◎受講者の管理をスムーズに行いたい方におすすめ
ここがおすすめ!
- 不慣れな方でも作成・登録しやすいコンテンツ機能を多数搭載
- あらゆる企業ですぐに役立つ実践的な内容のコンテンツを厳選して用意
- ユーザー管理機能を備えているため、より細かな対象でカテゴリーやグループを紐づけられる
ここが少し気になる…
- 事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いとなる
同サービスの導入事例では、研修の拡充に取り組んだ企業が、導入後の変化を次のように説明しています。
コンテンツの質の向上はもちろん、受講者への事前リマインドによる受講率向上や、受講状況・結果を容易に把握できるようになったことで、次の施策への展開が容易になった。
出典: メディカル・データ・ビジョン株式会社(SAKU-SAKU Testing導入事例) https://www.e-coms.co.jp/jirei/jirei29
経営層に効果を説明するときのまとめ方
経営層への報告は、4象限を1枚にまとめ、それぞれに数字と一言を添える形にすると判断しやすくなります。効果測定の結果は、経営層がDXへの投資を続けるかどうかを判断する材料になるためです。
- 短期・定量:削減できた時間やコストを、投資額と並べて示す(費用対効果の目安)
- 短期・定性:現場アンケートの結果から、定着の状況と課題を一言で示す
- 中長期・定量:KGIに対するKPIの進捗を、目標値との差として示す
- 中長期・定性:DX推進指標のレベルやスキル診断の推移を、前回との比較で示す
費用対効果を示す際は、中長期の効果は投資の直後には現れないため、短期の費用対効果が小さいことだけを理由に取り組みを止めないよう、「いつ、どの象限の効果が出る見込みか」というスケジュールを報告にあわせて示しておくことが重要です。
4象限のうち中長期・定性の欄は、記録がなければ報告できません。受講率や理解度の推移を報告のたびに手作業で集計していると、担当者の負担が大きくなり、報告の頻度も下がります。受講者ごとの進捗や理解度を管理画面で確認できる学習管理の仕組みがあれば、前回との比較を出しやすくなり、人材面の変化を継続して報告できます。
DXの効果測定でよくある失敗パターン
効果測定がうまくいかない原因は、測定方法の難しさよりも、設計の順序やバランスにあることが多く見られます。代表的な失敗と対策を整理します。
| 失敗パターン | 起こること | 対策 |
|---|---|---|
| 導入後に指標を決める | 導入前の数値がなく、効果を比べられない | 導入前に現状値を記録し、KGI・KPIを決めておく |
| 短期・定量だけで判断する | 業務効率化の段階で止まり、事業や組織の変化を見落とす | 4象限で確認し、中長期の確認時期を決めておく |
| 効率化の指標しか置かない | 業務時間やコストの削減は出ていても、売上や顧客満足度に結びついたかを確認できない | 顧客価値や財務の軸にも指標を置く |
| 定性効果を測らない | ツールが使われていない、現場が疲弊しているといった問題に気づけない | 代理指標と定点アンケートを組み合わせる |
| 指標を増やしすぎる | 測定作業が本業を圧迫し、途中で続かなくなる | KGIは3つまで、自然に記録が残る指標を優先する |
| 人材面の変化を測らない | 効果が出ない原因がツールか人かを切り分けられない | 研修の受講率やスキル診断をKPIに含める |
特に見落とされやすいのが最後の「人材面の変化を測らない」ケースです。システムの利用率が伸びないとき、原因が操作性にあるのか、使う人のスキルにあるのかが分からないと、的外れな対策に時間を使ってしまいます。
効果測定に使えるツールの活用例
効果測定のために専用ツールを新しく導入する前に、すでに使っているツールに残るデータを活用できないか確認すると、手間とコストを抑えられます。
| ツールの種類 | 取れるデータ | 対応する象限 |
|---|---|---|
| 勤怠管理システム | 残業時間や業務時間の推移 | 短期・定量 |
| ワークフローシステム | 申請から承認までの日数 | 短期・定量、中長期・定性の代理指標 |
| BIツール・ダッシュボード | KPIの推移、閲覧数 | 中長期・定量 |
| アンケートツール | 満足度や課題感の推移 | 短期・定性、中長期・定性 |
| eラーニング(学習管理機能) | 受講率、完了率、テストやスキル診断の結果 | 中長期・定性の代理指標 |
業務のデータは多くの企業で何らかの形で残っていますが、人材のスキルに関するデータは、意識して仕組みを作らない限り蓄積されません。研修を実施する際に、受講記録とテスト結果が残るeラーニングを選んでおくと、DX人材の育成効果を継続して測れるようになり、4象限のうち最も測りにくい中長期・定性の領域を補えます。
特に、情報セキュリティや個人情報、著作権といったルールの研修は、全社員が受けることが前提になります。受講漏れがないかをダッシュボードで確認し、未受講者へ自動でリマインダーを送れる仕組みがあれば、周知の実施状況そのものを記録として残せます。
よくある質問(FAQ)
Q1. DXの効果とは何ですか?
A. データとデジタル技術を活用した取り組みによって得られる成果のことで、業務効率化、コスト削減、働き方の見直し、顧客満足度の向上、新しい商品・サービスの創出、変化に強い組織づくりの6つに整理できます。数字で測れる定量的な効果と、数字にしにくい定性的な効果があります。
Q2. DXのメリットとデメリットは何ですか?
A. メリットは、業務効率化やコスト削減、働き方の見直し、新しい事業の創出などです。デメリットとして、効果が出るまでに時間がかかること、DXを推進する人材の確保や既存システムの見直しに負担がかかることが挙げられます。
Q3. DXの効果測定とは何ですか?
A. DXで得られた成果を導入前の数値と比べて確認し、改善や投資の判断につなげることです。導入前に現状を記録し、KGIとKPIを決め、評価の時期と担当を決めて振り返る4ステップで進めます。
Q4. 定性的な効果とは何ですか?どう測りますか?
A. 意思決定の速さ、従業員の満足度、社員のデジタル活用力、組織文化の変化など、数字にしにくい効果のことです。承認にかかる日数やスキル診断の点数、研修の受講率のように、変化を間接的に表す代理指標に置き換え、同じ設問の定点アンケートも併用して測ります。
Q5. DXの効果はいつ頃から現れますか?
A. 業務時間の削減などの短期・定量の効果は数週間から数か月で見えることが多い一方、顧客数や組織文化の変化は半年から数年単位で現れます。象限ごとに確認の時期を決めておくことが大切です。
Q6. DX人材の育成効果はどう測ればよいですか?
A. デジタルスキル標準などの共通の基準に沿ったスキル診断の結果や、研修の受講率と完了率を定期的に記録して推移を確認します。受講記録やテスト結果が残るeラーニングを使うと、測定の手間を抑えられます。
まとめ|DXの効果を確かめるために押さえたい4つのこと
DXの効果は、数字で見える業務効率化から、組織や人材の変化まで幅広く現れます。効果測定を形だけで終わらせないために、次の4点を押さえておきましょう。
- 狙う効果を6つの中から絞り、導入前に現状を記録したうえで、KGIとKPIを決めておく。
- 短期と中長期、定量と定性の4象限で効果を確認し、象限ごとに確認の時期を決めておく。
- 定性的な効果は代理指標に置き換え、日本企業で成果が出にくい事業や組織の変革の領域にも指標を置いて追う。
- DX人材のスキルや研修の受講状況を記録に残す仕組みとして、eラーニングの活用を検討し、資料で機能と費用を確認する。
参考文献
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025-成長のためのDXに求められる取組」 https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/dx2025_activities_for_driving_growth.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進指標のご案内」 https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html
- 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 中間とりまとめ(DXレポート2)」 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation_kasoku/20201228_report.html
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