BPOで業務改善を進める方法|BPR・RPAとの違いと進め方3ステップ
Check!
- BPOは担い手を変える手段で組み合わせて使う
- 可視化から委託先選びまで3ステップで進める
- 委託前後で同じ指標を比べて効果を確かめる
BPOによる業務改善とは、業務の流れを見直したうえで、定型的な業務を外部の専門事業者に任せ、社内の手間と誤りを減らす進め方です。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は業務の担い手を外に移す手段で、業務の流れを作り変えるBPRや、今の流れのまま無駄を減らす業務改善と組み合わせて使います。ただし、見直さないまま任せると、二重入力や手戻りといった非効率ごと委託することになります。この記事では、BPO・BPR・業務改善・RPAの違い、メリットとデメリット、3ステップの進め方、委託先の選び方、契約と法令の注意点、進行管理、失敗パターン、効果の確かめ方を順に説明します。
BPOで業務改善を進める前の課題から、検討の方向を診断
Q1. いま、先に知りたいのはどちらですか?
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BPOによる業務改善とは|BPR・業務改善・RPAとの違い
BPOは業務を担う主体を外部に移す手段で、BPRは業務の流れ、業務改善は個別の作業を見直す取り組みです。3つは変える対象が違うため、組み合わせて使います。
| 用語 | 変える対象 | 実行する主体 | 成果の出方 |
|---|---|---|---|
| BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) | 業務の担い手。企画や設計から運用までの一連の流れを外部に任せる | 受託事業者 | 移管が済めば比較的早く表れるが、元の業務の質に左右される |
| BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング) | 業務の流れ、組織、ルールそのもの。なぜその業務があるのかから問い直す | 自社(経営層の関与が前提) | 時間はかかるが、構造が変わるため効果が大きくなりやすい |
| 業務改善 | 今の流れのなかの個別の作業。重複、手戻り、待ち時間を減らす | 自社(現場が中心) | 小さな効果を積み重ねる。始めやすいが範囲は部分的 |
| RPA | パソコン上の定型的な操作。人の手作業をソフトウェアに置き換える | 自社または受託事業者 | 手順が決まっていれば早い。手順が曖昧な業務には向かない |
BPRと業務改善は「業務をどう変えるか」という中身の話で、変える幅が違います。BPOとRPAは「変えた後の業務を誰が、何が担うか」という手段の話です。BPRは目的に近く、BPOやRPAはその目的を実現する手段のひとつ、と捉えると混乱しません。BPOの定義や対象業務は、当サイトのBPOの定義と進め方5ステップを解説した記事で確認できます。任せる前に入力のしかたを見直すだけで減る作業もあるため、次にその仕組みを紹介します。
任せる前に見直したい、案件別の入力と工数の管理|業務管理システム2選
BPOの対象に挙がりやすい請求、経費精算、作業時間の集計は、案件ごとに別の表やシステムへ同じ数字を入れ直している会社が少なくありません。この二重入力は、外部に任せる前に、入力を一度にまとめることで減らせる場合があります。受託開発、広告、コンサルティングのように、案件ごとに工数と原価を管理するプロジェクト型の事業では、案件、工数、原価、請求を1つのシステムで扱う業務管理システムが選択肢になります。当サイトに掲載している2つを、役割の違いで並べます。
案件別の入力と工数を管理するシステム2サービスの役割の違い
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:ZACは、案件・請求・経費の入力を二重にしない設計です
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:MA-EYESは、自社の運用に合わせた設定を重視する会社向けです
資料を無料ダウンロード| サービス | MA-EYES |
|
|---|---|---|
| 向いている会社 | IT・広告・クリエイティブ・コンサルティング業など、案件ごとの損益を管理したい会社 | システム開発会社やコンサルティング会社など、主な原価が人件費となるプロジェクト型の会社 |
| 特徴 | プロジェクト・案件・売上明細の3階層で売上を管理し、個別原価計算の自動化に対応。見積から請求まで二重入力の心配がないシングルインプット設計 | 予算や企業規模、運用ニーズに合わせて導入できるERP。標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析に使う項目を独自に追加できる。導入前から導入後までのサポート体制を備える |
| 注意したい点 | 導入完了まで最短で3か月、平均で半年ほどかかる。詳しい料金やプランは問い合わせが必要 | 工数管理を軸にした製品のため、工程管理まで必要な場合は対応範囲の確認が必要 |
| 資料・詳細 |
表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
請求・経費・工数が案件ごとに分かれていて、同じ数字を何度も入力している場合の一例が、株式会社オロの「ZAC」です。IT・広告・クリエイティブ・コンサルティング業などのプロジェクト型ビジネス向けのクラウドERPで、プロジェクト・案件・売上明細の3階層で売上を管理でき、個別原価計算の自動化に対応しています。見積から請求まで二重入力の心配がないシングルインプット設計で、勤怠管理と工数管理を一元化できる点も、委託する前に作業を減らす手段になります。注意したいのは、商品ページで導入完了まで最短3か月、平均で半年ほどかかると案内されている点で、急いで人手不足を解消したい場合は導入期間の確認が欠かせません。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

ここがおすすめ!
- 個別原価計算の自動化で業務を効率化できる
- 独自設計で柔軟性を保ちつつ、安価での導入が可能
- タイムリーなプロジェクト管理で利益の着地が可視化できる
ここが少し気になる…
- 詳しい料金やプランを確認するには問い合わせが必要
-
見積発行の際、承認を電子化できる。また、低粗利で提案する際、ユーザーが各上長に直接フェイストゥフェイスでお伺いを立てなくとも、電子的に承認に入れるため、履歴も残り、管理の観点で負担軽減になる。

従来はバラバラだったデータを一ヵ所に集めて一元管理できる点が挙げられます。集計作業がすぐに、しかも楽にできるようになったのは大きいですね。
株式会社カヤックのZAC導入事例(インタビュー掲載時点の内容) 出典:ZAC導入事例 株式会社カヤック(株式会社オロ)
手順や管理項目が会社ごとに違い、画一的なツールでは合わない場合の一例が、株式会社ビーブレイクシステムズの「MA-EYES」です。システム開発会社やコンサルティング会社など、主な原価が人件費となるプロジェクト型の企業向けのクラウドERPで、予算や企業規模、運用ニーズに合わせて導入できます。クラウドでありながら標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析に使う項目も独自に追加でき、導入前から導入後までのサポート体制を備えています。一方で、工数管理を軸にした製品のため、工程管理まで必要な場合は対応範囲を事前に確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

ここがおすすめ!
- 予算や企業規模、運用ニーズに合わせて導入できるオールラウンドなERPシステム
- 導入前から導入後まで充実したフルサポート体制を完備
- クラウドでありながら標準機能へのカスタマイズも柔軟で、分析設定にも独自の項目追加が可能
ここが少し気になる…
- 工数管理に特化しているため、工程管理には対応していなそう
導入前に比べ、営業事務の作業ボリュームを三分の一へ削減し、経理の月次締め処理作業を一日短縮しました
テックファーム株式会社のMA-EYES導入事例(2016年5月時点のインタビュー。効果は各社の導入条件によって異なります) 出典:ERP導入事例 テックファーム様(株式会社ビーブレイクシステムズ)
どちらも基幹業務まで含むシステムのため、問い合わせ対応や給与計算など、案件と関係の薄い事務を任せたい場合の選択肢ではありません。その場合は、次の章以降で説明するBPOの進め方に沿って、任せる範囲を決めていきます。
BPOによる業務改善のメリット・デメリット
BPOによる業務改善のメリットは、標準化と品質の安定、コスト構造の見直し、コア業務への集中です。デメリットは、ノウハウの空洞化、情報管理の負担、立ち上げの手間です。
| 観点 | 期待できること | 起きやすいこと | 事前にできる対策 |
|---|---|---|---|
| 業務の品質 | 手順書を作る過程で業務が標準化され、担当者による出来のばらつきが減る | 手順が決まっていない業務は、任せても品質が安定しない | 任せる前に手順を文章にしておく |
| コスト | 繁忙期と閑散期に合わせて体制を変えられ、費用を変動費にしやすい | 管理や引き継ぎの社内工数が残り、委託費だけでは効果を測れない | 委託費と社内の管理工数の合計で比べる |
| 社員の時間 | 社員が本来力を入れるべきコア業務に時間を使える | 例外対応の問い合わせが多いと、結局社員が毎回判断することになる | 判断の基準を文章にして渡す |
| ノウハウ | 受託事業者が同種の業務で培った進め方を取り入れられる | 手順を知る社員がいなくなり、社内にノウハウが残りにくい | 手順書の共有と更新を契約で決める |
| 情報の扱い | 報告の項目を決めておくと、業務の状況が定期的に見えるようになる | 顧客や従業員の情報を社外で扱うことになる | 委託先の管理体制を確認し、取り扱いを監督する(後述) |
| 立ち上げと終了 | 移管が済めば、繁忙期の人員確保や教育の負担が減る | 立ち上げに数か月かかり、終了時に社内へ戻す手間もある | 並行運用の期間と、終了時の引き継ぎ方法を決めておく |
任せる業務の選び方|コア業務とノンコア業務
どの業務を任せるかの目安は、その業務が自社の強みに直結するコア業務か、そうでないノンコア業務かです。手順が決まっていて件数が多く、判断の基準を文章にできる業務は任せやすく、自社の強みに直結する業務や、例外的な判断が多い業務は社内に残すほうが向いています。同じ経理業務でも、経理の代行を事業にしている会社では中核の業務になるため、線引きは業種と事業によって変わります。一般的な分類をそのまま当てはめず、自社の強みを基準に決めてください。
BPOと一般的なアウトソーシングの違い
アウトソーシングは業務の一部を外部に出すことの総称で、BPOはその一種です。違いは、任せる範囲と関わり方にあります。BPOは、業務の設計、運用、改善までを継続的に任せ、業務プロセス全体を受託事業者が担う形が一般的です。BPOが単なる外注と違うのは、任せる前に業務を書き出して手順を決める工程が入ることで、この工程そのものが業務の見直しになります。作業単位の外注や人材派遣との違いまで含めて確認したい場合は、当サイトのBPOとアウトソーシング・派遣・BPRの違いを整理した記事も参考になります。
2サービスの役割を比較表で見るBPOによる業務改善の進め方|3ステップ
BPOによる業務改善は、可視化して指標を決める、スリム化と標準化を済ませて委託範囲を決める、委託先を選んで移管し定着させる、という3つの段階で進めます。順番を入れ替えて委託先の選定から始めると、何を任せるのかが曖昧なまま見積もりを比べることになり、後から範囲の変更が重なります。
ステップ1:業務を可視化し、改善したい指標を決める
最初に行うのは、対象になりそうな業務を工程に分けて書き出すことです。誰が、何をきっかけに、どの資料やシステムを使って、どのくらいの時間をかけ、誰に渡しているのかを、月に何件あるかとあわせて記録します。担当者への聞き取りだけでは、慣れている人ほど手順を省略して話すため、実際の作業を横で見る、1週間だけ作業時間を記録してもらうといった方法を組み合わせると精度が上がります。
あわせて、何を良くしたいのかを指標の形で決めます。月末の残業時間を減らしたいのか、請求書の誤りを減らしたいのか、問い合わせへの回答を早くしたいのかによって、任せる範囲も委託先に求める条件も変わります。削減額だけを指標にすると品質や社員の負担が見落とされるため、処理時間や誤りの件数もあわせて決めておきます。この段階の数値が、後で効果を確かめるときの比較対象になります。
ステップ2:やめる・まとめる・標準化するを済ませて、委託範囲を決める
書き出した工程を見ながら、まず「やめられる作業」を探します。誰も読んでいない報告書、同じ内容を2つのシステムに入力する作業、形だけになっている承認などが候補です。次に、似た作業をまとめ、担当者によって違っている手順をひとつにそろえます。ここまでが、小さなBPRや業務改善にあたる部分です。
この順序は、業務改善の視点として知られるECRS(イクルス)と重なります。ECRSは、排除(Eliminate)、結合(Combine)、入替え(Rearrange)、簡素化(Simplify)の頭文字で、日本能率協会コンサルティング(JMAC)の用語集では、最初に排除、次に結合、入替え、簡素化の順に検討するとされています。BPOの前に当てはめると、次のようになります。
| 視点 | 意味 | 任せる前の見直しの例 |
|---|---|---|
| 排除 | 作業そのものをなくす | 誰も読まない報告書、形だけの承認をやめる |
| 結合 | 似た作業や入力をまとめる | 同じ内容を2つのシステムに入力している作業を、1回の入力にまとめる |
| 入替え | 作業の順序や担当を入れ替える | 承認を待つ間に別の作業を進められるよう、順番を組み替える |
| 簡素化 | 残った作業を単純にする | 動作や工程ごとに手順を整理し、手順書にする |
この順に見直すと、委託の対象になる作業が必要な分だけに絞られ、委託費の根拠も説明しやすくなります。そのうえで、残った工程を「社内に残すもの」と「任せるもの」に分けます。コア業務とノンコア業務の考え方は、前の章で説明したとおりです。領域ごとの例は次のとおりです。
| 業務の領域 | 任せやすい工程の例 | 社内に残したい判断の例 |
|---|---|---|
| 経理 | 請求書の受領と入力、支払データの作成、経費精算の確認 | 支払の最終承認、会計処理の方針 |
| 人事・労務 | 給与計算、入退社の手続き、勤怠データの集計 | 評価や処遇の決定、労務トラブルへの対応 |
| 問い合わせ対応 | よくある質問への回答、受付と担当部署への取り次ぎ | 苦情への対応方針、個別の例外対応 |
| 営業事務 | 受注データの入力、見積書や納品書の作成、発送の手配 | 価格や納期の交渉、与信の判断 |
ステップ3:委託先を選び、移管し、定着させて見直しを続ける
委託先は、提案を比べる前に評価基準を決めてから選びます。基準がないまま見積もりの金額だけで比べると、任せる範囲の食い違いが後から表面化します。確認する点の例は次のとおりです。
| 確認する点 | 見るところ |
|---|---|
| 対象業務への知見 | 同じ領域の業務の経験があるか、業務の流れを理解したうえで提案しているか |
| 委託範囲と責任分担 | 任せる範囲、例外の扱い、社内に戻す案件の条件が文書で決まっているか |
| 情報管理の体制 | 個人情報や機密情報の取り扱いの規程、アクセス権限、報告の方法が説明されているか |
| 継続的な改善の提案 | 移管後も、処理件数や誤りの件数をもとに手順の見直しを提案してくれるか |
委託先が決まったら、手順書を渡して終わりにせず、一定の期間は社内と委託先が並行して同じ業務を行い、結果を突き合わせます。手順書に書かれていなかった例外や、担当者が無意識に行っていた確認が、この期間に見つかります。本格的な運用に入った後は、処理件数や誤りの件数の報告を定期的に受け、月に1回程度の振り返りで手順を見直します。BPOによる業務改善は、移管した時点ではなく、この見直しが回り始めた時点でようやく形になります。運用の定着のさせ方は、当サイトのBPO運用の進め方を5段階で解説した記事でも説明しています。
BPOに任せる前の、今の業務のやり方セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
BPRとBPOを組み合わせる際のポイント
BPRとBPOを組み合わせる際は、どちらから着手するかを業務の状態で決め、委託後も手順を見直せる余地を契約に残しておくことが要点です。基本は業務を見直してから任せる順番ですが、すべての業務でBPRを先に終える必要はありません。
BPRとBPO、どちらから着手するかの判断基準
| 業務の状態 | 向いている進め方 | 理由 |
|---|---|---|
| 二重入力や形だけの承認が多く、担当者ごとに手順が違う | 見直しを先に行い、その後に委託する | そのまま任せると非効率な手順が契約で固定され、委託費にも反映される |
| 法令や制度で手順がほぼ決まっている(給与計算など) | 委託を先に進めてもよい | 見直しの余地が小さく、受託事業者の標準的な進め方に合わせやすい |
| 人手不足で、見直しに割ける社員がいない | 移管の準備として行う可視化を、見直しの入口にする | 手順書を作る過程で無駄が見つかるため、委託と見直しを同時に進められる |
| 件数が少ない、または自社の強みに直結している | 委託せず、社内の業務改善にとどめる | 引き継ぎや管理の手間が効果を上回りやすく、ノウハウを社外に出す不利益も大きい |
| 制度改正やシステムの入れ替えを控えている | 要件が固まるまで着手を待つ | 手順が変わる前に委託すると、仕様の変更と再見積もりが重なる |
業種別に見た組み合わせ方の例
同じ「見直してから任せる」でも、どの業務から手を付けるかは業種によって変わります。代表的な3つの業種で、着手しやすい組み合わせの例を整理します。
| 業種 | 先に見直したい点 | その後に任せやすい業務 |
|---|---|---|
| 製造業 | 電話やFAXで受けた注文を紙に書き写してから入力する流れ、拠点ごとに違う伝票の書式 | 受注データの入力、納期回答の一次対応、請求書の発行 |
| 小売・EC | 問い合わせの回答が担当者の記憶に頼っている状態、返品や交換の判断基準のばらつき | 問い合わせの一次対応、商品情報の登録、受注と出荷の処理 |
| サービス業・専門サービス | 予約や契約の情報が複数の表に分かれている状態、月末に集中する請求の作業 | 経費精算、請求と入金の確認、勤怠の集計と給与計算 |
中小企業庁の2026年版中小企業白書は、労働供給制約社会の到来を経営環境の転換期として挙げ、労働生産性の向上に有効となる取組を分析の中心に置いています。規模の小さい企業ほど、ひとりの担当者が複数の業務を抱えているため、見直しと委託を同時に進める3つ目の進め方が現実的な選択肢になります。
RPAやクラウドサービスとの使い分け
見直しの結果、手順が完全に決まっていてパソコン上の操作だけで完結する作業が残った場合は、人に任せるよりもRPAで自動化するほうが合うことがあります。また、経費精算や勤怠管理のように、クラウドサービスを導入すれば作業そのものがなくなる業務もあります。判断や例外対応が残る業務はBPO、操作の繰り返しはRPA、作業自体をなくせるものはクラウドサービス、という順に当てはめると、委託する量を必要な分だけに絞れます。委託先がRPAを使って処理する場合もあるため、両者は二者択一ではありません。RPAの種類や選び方は、当サイトのRPAツールを紹介した記事で、自動化まで含めた進め方はDXで業務効率化を進める3ステップの記事で確認できます。
委託後の見直しを左右する契約と法令の注意点
BPOで業務改善を続けるうえで見落とされやすいのが、委託した後は、発注側が自由に手順を変えられなくなるという点です。主な注意点は3つあります。
- 指揮命令の線引き:業務委託では、受託事業者のスタッフに作業の指示を出すのは受託事業者です。発注側の社員が個々のスタッフに直接指示を出す運用が続くと、実態が労働者派遣にあたると判断されるおそれがあります。区分の考え方は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)とその疑義応答集で示されています。改善の依頼は、受託事業者の責任者を通じて行う流れにしておきます
- 仕様の変更手続き:手順を変えたいときに、誰が申し出て、費用と期限をどう協議するのかを契約で決めておきます。この取り決めがないと、小さな改善のたびに交渉が必要になり、見直しが止まります
- 個人情報の監督:顧客や従業員の個人データの取り扱いを任せる場合、個人情報保護法は委託元に、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における取扱状況の把握が挙げられています
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。個別の契約や運用が法令に沿っているかどうかは、所管の行政機関や専門家に確認することをおすすめします。
業務改善プロジェクトの進行管理
BPOによる業務改善が計画どおりに進むかどうかは、発注側が自分たちの作業を管理できているかに大きく左右されます。委託先の作業は委託先が管理しますが、業務の棚卸し、社内の合意、手順書の確認、関係部署への周知といった発注側の作業は、発注側にしか進められません。ここが遅れると、移管の日程全体が後ろにずれます。
進行管理で最低限そろえておきたいのは、次の4つの一覧です。
| 管理する一覧 | 記録する内容 | ないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 作業の一覧 | 作業の内容、担当者、期限、前後の作業とのつながり | 誰の作業待ちで止まっているのかが分からない |
| 課題の一覧 | 見つかった例外や未決事項、決める人、決める期限 | 会議のたびに同じ話が繰り返され、決まらないまま移管日を迎える |
| 変更の一覧 | 委託範囲や手順の変更の依頼、費用と期限への影響、合意の日付 | 口頭で頼んだ変更が積み重なり、後から費用の認識が食い違う |
| 手順書の一覧 | 手順書ごとの作成者、確認者、最新の版、更新した日 | 古い版で作業が行われ、誤りの原因が追えない |
対象の業務がひとつで関係者も数人であれば、表計算ソフトの共有でも回ります。ただ、経理の移管が終わったら次は人事、その次は問い合わせ対応と、改善の対象を順に広げていく段階になると、複数の取り組みが同時に走り、同じ社員が複数の作業を掛け持ちすることになります。一覧が取り組みごとに別のファイルに分かれていると、特定の人に期限が集中していることに気づけません。複数の改善プロジェクトの作業、課題、担当者の負荷をひとつの画面で見られるようにしておくと、委託先との定例の場でも同じ情報を見ながら話せます。
プロジェクト型の事業で、案件ごとの工数と原価を軸に管理したい場合は、工数管理を軸に、自社の運用に合わせて管理項目や分析の項目を設定できる業務管理システムも選択肢になります。前の章で紹介したMA-EYESは、標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析に使う項目を独自に追加できると商品ページで案内されています。
業務改善でよくある失敗パターン
BPOを使った業務改善の失敗は、委託先の力不足よりも、任せる前の準備と任せた後の関わり方に原因があることが少なくありません。よくあるパターンを、原因と対策とあわせて整理します。
| 失敗パターン | 起きやすい原因 | 事前にできる対策 |
|---|---|---|
| 非効率な手順をそのまま任せてしまう | 人手不足を理由に、見直しを省いて現状のまま移管した | 移管前に「やめる作業」を最低限洗い出し、残りは移管後の見直し項目として合意する |
| 丸投げになり、中身が見えなくなる | 報告の項目と頻度を決めておらず、社内に窓口となる担当者もいない | 処理件数、誤りの件数、未処理の残数を定期的に報告してもらい、振り返りの場を設ける |
| 社員の負担が減らない | 例外や確認の問い合わせが多く、結局社員が毎回判断している | 判断の基準を文章にして渡し、社内に戻す案件の条件を決める |
| 削減額だけで効果を判断してしまう | 指標が費用だけで、品質や社員の負担を測っていない | 時間、品質、費用、社内への効果の4つの観点で指標を決める |
| 効果を説明できない | 委託する前の処理時間や件数を測っていなかった | ステップ1の段階で、比べたい指標の現状を記録する |
| 準備が遅れ、移管日だけが迫る | 発注側の作業と期限が一覧になっておらず、遅れに気づくのが遅い | 作業、課題、変更の一覧を1か所にまとめ、週単位で進み具合を確かめる |
| 委託をやめたくても戻せない | 手順書が委託先の手元にしかなく、社内に分かる人がいない | 手順書の共有と更新、終了時の引き継ぎの方法を契約で決める |
このうち最初の「そのまま任せてしまう」は、急いでいる企業ほど起きやすい失敗です。すべてを見直してから任せるのが難しい場合でも、明らかに不要な作業だけは先に外し、残りは「移管後3か月以内に見直す項目」として委託先と共有しておくと、非効率が固定されるのを防げます。
2サービスの役割を比較表で見る業務改善の効果をどう確認するか
業務改善の効果は、委託の前後で同じ指標を比べることで確かめます。委託費と人件費の差だけを見ると、誤りが減った、回答が早くなった、社員が別の業務に時間を使えるようになったといった変化が抜け落ちます。観点ごとに指標を決めておくと、費用以外の効果も説明できます。
| 観点 | 指標の例 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 時間 | 1件あたりの処理時間、依頼から完了までの日数、担当部署の残業時間 | 委託前に測った数値と月ごとに比べる |
| 品質 | 誤りの件数、差し戻しの件数、問い合わせや苦情の件数 | 委託先の報告と社内の記録を突き合わせる |
| 費用 | 委託費、社内に残る管理の人件費、システムの費用の合計 | 移管の準備にかかった費用を分けて、年単位で比べる |
| 社内への効果 | 社員が本来の業務に使えるようになった時間、社内に戻ってきた案件の件数 | 担当者の作業時間の内訳を、移管の前後で比べる |
| 改善の継続 | 見直しの提案の件数、実施した件数、手順書を更新した回数 | 定例の振り返りで、課題の一覧の消化状況を確かめる |
効果が出るまでの期間は、業務の規模や見直しの幅によって変わります。移管の直後は、引き継ぎの確認や問い合わせで一時的に手間が増えることも多いため、1か月目の数字だけで判断せず、数か月の推移を見ることが大切です。
表の最後の「改善の継続」は、数字を集めるだけでは確かめられません。見直しの提案が出ても、誰がいつまでに対応するのかが決まらなければ実施されないためです。提案を課題として登録し、担当者と期限を付け、完了したら指標の変化とあわせて記録する、という流れを同じ場所で管理できると、進捗と効果を一緒に振り返れます。
案件ごとの作業時間と原価を同じ場所で集計できるシステムを使っている会社は、委託の前後で「案件1件あたりの工数」をそのまま比べられます。前の章で紹介したZACは、案件ごとにタイムリーな粗利益を把握でき、月の途中でも損益の着地見込みを確認できると商品ページで案内されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. BPOとBPR、業務改善の違いは何ですか?
A. BPOは業務を担う主体を外部に移すこと、BPRは業務の流れや組織を根本から作り変えること、業務改善は今の流れを保ったまま無駄を減らすことです。RPAはパソコン上の定型的な操作をソフトウェアに任せる手段です。BPRと業務改善は業務の中身をどう変えるかの話で、BPOとRPAは変えた後の業務を誰が、何が担うかという手段の話です。
Q2. BPOとBPRはどちらから始めればよいですか?
A. 二重入力や形だけの承認が多い業務は、見直しを先に行ってから委託するのが基本です。給与計算のように法令や制度で手順がほぼ決まっている業務は、委託を先に進めても支障が出にくいとされています。見直しに割ける人がいない場合は、移管の準備として行う業務の可視化を見直しの入口にする方法があります。
Q3. BPOによる業務改善はどのような手順で進めますか?
A. 業務を可視化して改善したい指標を決める、やめる作業と標準化する作業を整理して委託範囲を決める、委託先を選んで移管し定着させ見直しを続ける、という3つのステップで進めます。委託先の選定から始めると、任せる範囲が曖昧なまま見積もりを比べることになるため、順番を守ることが大切です。
Q4. 業務改善の原則(5原則・ECRS)とは何ですか?
A. 業務改善の原則として広く知られているのは、排除・結合・入替え・簡素化の頭文字をとったECRS(イクルス)で、改善の4原則と呼ばれます。「5原則」という呼び方は、目的の明確化などを加えて整理する解説もあり、内容は解説によって異なります。ECRSの順に検討すると、やめられる作業を先に外せるため、委託する量を必要な分に絞れます。
Q5. 業務改善の具体例にはどのようなものがありますか?
A. 同じ内容を2つのシステムに入力している作業を1回にまとめる、形だけの承認や読まれていない報告書をやめる、担当者ごとに違う手順をひとつにそろえて手順書にする、といった見直しが代表的です。そのうえで、請求書の受領や給与計算のように手順が決まった作業をBPOで任せ、パソコン上の定型操作をRPAに任せます。
Q6. 業務改善の効果はどのように確認すればよいですか?
A. 委託の前後で同じ指標を比べます。1件あたりの処理時間や残業時間、誤りや差し戻しの件数、委託費と社内の管理費用の合計、社員が本来の業務に使えるようになった時間などが指標の例です。そのためには、委託を始める前に現状の数値を測っておく必要があります。
まとめ
BPOは、業務を見直す工程と組み合わせることで、単なる外注ではなく業務改善の手段になります。取り組む際は、次の5つを押さえておきましょう。
- BPOは担い手を変える手段、BPRと業務改善は業務の中身を変える取り組み。対象が違うため、組み合わせて使う
- 可視化して指標を決める、スリム化と標準化を済ませて委託範囲を決める、委託先を選んで移管し定着させる、の3ステップで進める。見直しはECRSの順に行う
- どちらから着手するかは業務の状態で決める。手順にばらつきや重複が多い業務は見直しが先、制度で手順が決まっている業務は委託が先でもよい
- 委託後も見直しを続けられるよう、指示の経路、仕様の変更手続き、個人情報の監督、手順書の持ち方を契約で決め、委託の前後で同じ指標を比べる
- プロジェクト型の事業で、請求・経費・工数を案件ごとに二重入力している場合は、委託の前にZACやMA-EYESなどの業務管理システムの資料を取り寄せ、入力を一度にまとめられるかを確かめる
まずは対象にしたい業務をひとつ選び、工程と件数、かかっている時間を書き出すところから始めてみてください。書き出した時点で、任せる前にやめられる作業が見つかることも少なくありません。
参考文献
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 中小企業庁「中小企業白書」(2026年版) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
- 日本能率協会コンサルティング(JMAC)「ECRS(改善の4原則)」用語集 https://www.jmac.co.jp/glossary/a-m/ecrs.html
