物流DXとは?2024年問題から考える進め方・事例・単なる効率化との違い

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  • 物流DXの意味と単なる効率化の違いがわかる
  • 2024年問題と再配達など背景・事例がわかる
  • 5段階の進め方と荷主企業の役割がわかる

物流DXとは、デジタル技術で物流の業務や仕組みそのものを変える取り組みです。国土交通省は「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と説明しており、配車システムや倉庫ロボットの導入だけを指す言葉ではありません。2024年4月にトラックドライバーの時間外労働の上限規制が始まり、運べる量が減るなかで、運送会社も荷主企業も業務の見直しを迫られています。この記事では、物流DXの意味と単なる効率化との違い、2024年問題の中身、求められる背景、事例、5つの段階での進め方、中小事業者がつまずきやすい点、データ活用、荷主企業が主導すべき理由までを順に解説します。

物流DXの最初の一歩を診断

Q1. 物流DXの5つの段階のうち、いまの自社に近いのはどれですか?

目次

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  1. 物流DXとは|2024年問題でまず負担が増えるのは労務と給与計算
  2. 物流の2024年問題とは|時間外労働の上限規制と割増賃金率
  3. 物流DXと単なる効率化の違い
  4. 物流DXが求められる背景|輸送力の不足と小口配送・再配達
  5. 物流DXで使われる主な技術とシステム|領域別に整理
  6. 物流DXの事例|荷待ち時間の削減と、運送会社の勤怠・申請のデジタル化
  7. 物流DXの進め方|5つの段階で考える
  8. 中堅・中小事業者がつまずきやすい課題
  9. 物流DXにおけるデータ活用の重要性
  10. 物流DXは荷主企業が主導すべき理由
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ
  13. 参考文献

物流DXとは|2024年問題でまず負担が増えるのは労務と給与計算

物流DXとは、機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変えていく取り組みです。作業を速くするだけでなく、運び方や取引のしかたまで見直す点が特徴で、単なる効率化とは区別されます。

物流DXは配車や倉庫の自動化から語られがちですが、2024年問題で最初に負担が増えたのは、労務と給与計算の現場です。トラックドライバーの給与は、基本給に歩合給、運行手当、長距離手当、深夜手当、休日出勤手当などが組み合わさることが多く、そこに時間外労働の上限管理と、月60時間を超える時間外労働への50%以上の割増賃金率(2023年4月から中小企業にも適用)が加わりました。表計算ソフトや手作業では確認漏れが起きやすくなっています。

中堅・中小の運送会社では、配車担当者が勤怠集計や給与計算まで兼ねていることも少なくありません。給与計算と勤怠をデジタル化すると、手作業が減るだけでなく、ドライバーごとの労働時間と人件費がデータとして残り、物流DXの次の段階である配車の見直しや荷主との交渉で使える材料になります。選ぶ際は、手当の種類や勤怠データの取り込み方に対応できるかを確認します。代表的な2つのサービスの役割の違いを整理します。

運送業の給与計算と勤怠をそろえるサービスの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

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特徴 給与体系ごとに項目と計算式を登録でき、年次や勤務形態、各種手当に応じて自動計算する。ジンジャー勤怠と連携すると、CSVを介さずに勤怠データを取り込める 勤怠管理、給与計算、給与明細の作成、入社・退社手続き、年末調整の電子申告を一つのサービスで扱える。打刻忘れや残業の申請状況を知らせるアラート機能がある
注意したい点 単体では打刻機能と人事データの管理機能がなく、勤怠・人事データの反映にはジンジャーの他サービスとの連携かCSV連携が必要 複数人で管理や実務を行う場合やカスタマイズをする場合は、融通が利きづらい面がある
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他システムとの比較記事はこちら

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ジンジャーの導入事例には、2024年問題(時間外労働の上限規制)をきっかけに勤怠と給与をまとめた総合建設会社の例があります。運送業ではありませんが、残業時間の上限管理と給与計算を同時に見直した事例として参考になります。

勤怠集計から給与計算までの業務に関してはこれまで10日ほどかかっていましたが、ジンジャー導入後は集計から計算まで自動でおこなわれ、勤怠・給与間のデータ連携もワンクリックで対応できるようになり、5日で完了するようになりました。

出典: 西田工業株式会社の導入事例(ジンジャー)

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実際に使用してみたレビューはこちら

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ジンジャー給与と比較

弥生給与 Nextと比較

マネーフォワード クラウド給与と比較

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ここまでが、物流DXの入口である労務・給与計算の話です。次に、そもそも何が起きて労務の負担が増えたのかを、2024年問題の中身から確認します。

物流の2024年問題とは|時間外労働の上限規制と割増賃金率

物流の2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーなど自動車運転業務に時間外労働の上限規制が適用されたことで、輸送能力の不足が懸念されている問題です。働き方改革関連法によって一般の業種には2019年から上限規制が導入されていましたが、自動車運転業務は5年間の猶予が設けられていました。その猶予が終わったのが2024年4月です。

同じ時期に、トラック運転者の拘束時間や休息期間を定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)も見直されました。さらに、それより前の2023年4月には、中小企業にも月60時間を超える時間外労働の割増賃金率50%が適用されています。つまり物流業界では、労働時間を短くしなければならないことと、長時間の時間外労働にかかる人件費が上がることが、ほぼ同時に起きたことになります。主な変更点を表で整理します。

項目 主な内容 実務への影響
時間外労働の上限規制(2024年4月から) 自動車運転業務の時間外労働は、特別条項付きの36協定を結んだ場合でも年960時間が上限 ドライバー1人あたりの運行距離が減り、配車の組み直しや人員の追加が必要になる
改善基準告示の見直し(2024年4月から) 年間や月ごとの拘束時間の上限、1日の休息期間などの基準が見直された 残業時間だけでなく、待機時間を含む拘束時間と休息期間の管理が必要になる
割増賃金率の引き上げ(2023年4月から中小企業にも適用) 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%以上から50%以上に 長時間の時間外労働の人件費が上がり、給与計算の区分も増える
改正物流効率化法(2025年4月から努力義務、2026年4月から一部義務) 荷主と物流事業者に荷待ち時間の短縮などの努力義務。一定規模以上の特定事業者には中長期計画の作成や定期報告、荷主には物流統括管理者の選任などが求められる 物流の効率化が荷主企業の経営課題として位置付けられ、荷主側にもデータにもとづく報告が求められる

改善基準告示の具体的な上限時間や例外の扱いは、厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」で確認できます。制度の適用範囲や自社の36協定の内容によって対応は変わるため、実際の運用にあたっては社会保険労務士などの専門家にも確認してください。本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。

2024年問題が「問題」と呼ばれるのは、規制そのものよりも、規制を守ると今までと同じ量の荷物を同じ体制で運べなくなるという点にあります。ドライバーの労働時間を減らしつつ輸送力を保つには、運行の組み方、荷待ちや荷役の時間、事務作業のやり方まで含めて仕組みを見直す必要があります。ここで物流DXが必要になります。

月75時間の時間外労働があるときの割増賃金の計算例

割増賃金率を数字で確かめるため、仮の数値で計算してみます。労働基準法第37条では、時間外労働の割増賃金率は25%以上、月60時間を超える部分は50%以上と定められています。時間単価を1,800円、1か月の時間外労働を75時間と仮定すると、60時間までと60時間超の15時間で率が変わります。

区分 時間 計算 金額
月60時間までの時間外労働(25%以上) 60時間 1,800円 × 1.25 × 60時間 135,000円
月60時間を超える時間外労働(50%以上) 15時間 1,800円 × 1.5 × 15時間 40,500円
合計 75時間 – 175,500円

上記は割増賃金率の最低ラインを使った仮の計算で、実際の金額は就業規則や36協定、歩合給の扱い、深夜・休日労働との重なりによって変わります。月60時間を超える時間外労働が増えるほど1時間あたりの人件費が上がるため、ドライバーごとの時間外労働を月の途中から把握できる仕組みが必要になります。法令の適用や計算方法は、労働基準法の条文を確認したうえで、社会保険労務士などの専門家にも確認してください。本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。

物流DXと単なる効率化の違い

物流DXとは、デジタル技術を使って物流の業務や仕組みそのものを変革する取り組みです。国土交通省は、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と説明しています。ポイントは「これまでのあり方を変革する」という部分で、今の業務をそのまま速くすることだけを指しているわけではありません。

たとえば、紙の運行日報をタブレット入力に置き換えるのは、事務作業の効率化です。これ自体は大切な一歩ですが、入力されたデータを誰も使わず、配車の決め方も荷主との取引条件も変わらなければ、物流DXとは言いにくいでしょう。一方、運行日報のデータから荷待ち時間の長い取引先を特定し、荷主と受付時間の予約制を話し合い、配車の組み方そのものを変えるところまで進めば、業務のあり方が変わったことになります。

観点 業務の効率化(デジタル化) 物流DX
目的 今の作業を速く、少ない手間で行う 運び方、働き方、取引のしかたを変える
対象範囲 一つの部署、一つの作業 配車、倉庫、労務、荷主との取引までつながる
データの扱い 記録として残る 判断や交渉の根拠として使われる
例 日報の電子化、給与計算ソフトの導入 労働時間データをもとにした配車ルールの変更、荷待ち削減の荷主交渉

ただし、効率化と物流DXは対立するものではありません。多くの場合、物流DXは効率化の積み重ねの先にあります。紙や手入力のままではデータが集まらず、変革の判断材料が得られないからです。効率化を「DXの入口」と位置付け、どのデータをどの判断に使うのかをあらかじめ決めておくと、ツールを入れただけで終わる失敗を避けやすくなります。

物流DXが求められる背景|輸送力の不足と小口配送・再配達

物流DXが求められる最大の理由は、人手を増やして補おうとしても、運べる量が足りなくなる見通しが示されているためです。

経済産業省・国土交通省・農林水産省の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の最終取りまとめでは、荷待ち時間の削減などの対策を行わなかった場合、2024年度に輸送能力の14.2%、ドライバー数の減少も加味した2030年度には34.1%が不足する可能性があると試算されました。加えて、電子商取引の広がりによる小口・多頻度の配送の増加や、脱炭素への対応も、これまでのやり方のままでは対応しにくい要因として挙げられます。

小口配送の増加は、再配達の問題にもつながります。国土交通省の調査によると、令和8年4月の宅配便の再配達率は約7.6%(大手宅配事業者6社ベース。令和7年10月は約8.3%)でした。改善は進んでいますが、受け取れなかった荷物を運び直す手間は、ドライバーの労働時間に直接かかります。背景を課題別に整理します。

課題 現場で起きていること 物流DXで取り組むこと
人手不足・高齢化 ドライバーが減り、配車や事務を担う人も少ない 定型業務の自動化、配車の標準化、勤怠・給与のデジタル化
時間外労働の上限規制 運べる量が減り、拘束時間と休息期間の管理が必要になる 運行記録や勤怠データによる残り時間の見える化
荷待ち・荷役の長時間化 荷主や倉庫の都合で待機時間が長くなる トラック予約受付システム、出荷情報の事前共有
小口配送・再配達の増加 配送件数が増え、受け取れない荷物の運び直しが発生する 配送予定の事前通知、受取方法の多様化、配送ルートの最適化
脱炭素への対応 走行距離や積載率の改善が求められる 共同配送、帰り荷の確保、積載率のデータ管理

背景を押さえると、物流DXが運送会社だけの課題ではなく、荷主企業や倉庫、宅配の受け手まで含めた仕組みの見直しだとわかります。

物流DXで使われる主な技術とシステム|領域別に整理

物流DXで使われる技術は、倉庫、輸配送、事務、事業者間の連携という4つの領域に分けると整理しやすくなります。どの領域から着手するかは、自社の時間とコストがどこで多く失われているかによって決まります。主な技術とシステムを領域別にまとめます。

領域 主な技術・システム 期待できること 導入前に確認したい点
倉庫 倉庫管理システム(WMS)、無人搬送車(AGV)やピッキングロボットなどの自動化機器 在庫と作業状況の一元管理、入出庫やピッキングの省人化、作業ミスの防止 自動化機器は投資額が大きく、取り扱う荷物の形状や量が変わると使いにくくなる場合がある
輸配送 輸配送管理システム(TMS)、自動配車、デジタル式運行記録計、車両の位置情報の把握 配車計画の標準化、走行距離や積載率の改善、運行状況の見える化 荷主ごとの細かな条件を事前にデータとして登録する手間がかかる
荷待ち・荷役 トラック予約受付システム(バース予約)、パレットなどの規格の統一 到着時間の分散による荷待ち時間の短縮、荷役作業の負担の軽減 施設側だけでなく、運送会社やドライバーが使いこなせる運用ルールが必要になる
事務 伝票の電子化、文字認識(AI-OCR)、勤怠・給与計算・請求のシステム化、遠隔点呼 手入力と転記の削減、労働時間や人件費の正確な記録 システムごとにデータが分かれると二重入力が残るため、連携方法を確認する
事業者間の連携 出荷・入荷情報の事前共有、データ連携の基盤、荷物と車両のマッチング 共同配送や帰り荷の確保による積載率の向上 伝票やコードの形式が会社ごとに違うと連携しにくく、標準化の合意が前提になる

表のとおり、どの技術にも向き不向きがあります。倉庫の自動化機器や自動配車は効果が大きい一方で、投資額と準備の手間も大きくなります。反対に、事務の領域は投資が小さく、成果を確かめやすいのが特徴です。物流DXの解説では倉庫ロボットやAIによる配車が取り上げられることが多いものの、自社の規模と課題に合わない技術を先に入れると、現場に定着しないまま終わるおそれがあります。

効果を測る指標(KPI)を先に決める

技術を選ぶ前に、何をどこまで改善するのかを数字で決めておくと、導入そのものが目的になる失敗を避けやすくなります。物流DXでよく使われる指標は、荷待ち時間、荷役時間、積載率、ドライバー1人あたりの時間外労働時間、事務作業にかかる時間などです。

目安になるのが、経済産業省・農林水産省・国土交通省が2023年6月に策定した「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」です。このガイドラインでは、1運行あたりの荷待ちと荷役作業などにかかる時間を計2時間以内とし、すでに達成している場合は1時間以内を目標にさらに短縮に努めることが示されています。自社の荷待ち・荷役時間を計測し、この水準との差を確認することが、指標づくりの出発点になります。指標を追うには、ドライバーごと、取引先ごとの時間の記録が欠かせません。勤怠と給与のデータが整っていれば、時間外労働時間や人件費の指標はそのまま毎月集計できます。

導入費用の負担を抑える補助金を確認する

システムや機器の導入費用については、国の補助金を使える場合があります。物流DXに関係するものとしては、ソフトウェアなどの導入を支援する「デジタル化・AI導入補助金」(旧名称はIT導入補助金)、省力化につながる機器の導入を支援する「中小企業省力化投資補助金」、物流施設の自動化・機械化とシステム導入を対象とした国土交通省の「物流施設におけるDX推進実証事業」などが挙げられます。

ただし、補助金は年度ごとに名称、対象、補助率、公募期間が変わり、申請すれば採択されるとは限りません。対象になる事業者の要件や、交付決定の前に契約した費用の扱いなども制度ごとに定められています。検討する際は、各制度の最新の公募要領を確認し、補助金がなくても採算が合う計画かどうかをあわせて見ておくと、判断を誤りにくくなります。

物流DXの事例|荷待ち時間の削減と、運送会社の勤怠・申請のデジタル化

物流DXの事例は、荷待ち時間を減らす施設側の取り組みと、運送会社が事務や労務をデジタル化する取り組みに大きく分けられます。ここでは公的資料と企業の公開事例から、確認できたものを紹介します。

トラック予約受付システムで待機時間を減らす

国土交通省の物流審議官部門が2017年4月にまとめた「トラック予約受付システム」の導入事例資料には、導入前後の変化が「効率化の事例(イメージ)」として示されています。この資料では、トラックドライバーなどが倉庫への到着時刻をスマートフォンなどから事前に予約できるシステムを導入すると、到着車両が分散し、待機時間が短くなるとされています。

項目 導入前 導入後
1台当たりの平均待機時間 83分 24分(約70%削減)
倉庫の1時間当たり取扱貨物数 659個 833個(約20%増加)
待機時間1時間超の車両 8割超 待機時間が1時間以内に収まった

数字は資料に載っている1つの取り組み例で、公表から年数が経っているため、そのまま自社に当てはまるとは限りません。また、予約システムは倉庫や荷主側が導入するものなので、運送会社が単独で進められるものでもありません。だからこそ、荷待ち時間を自社のデータで示し、荷主と話し合う材料を持つことが、運送会社側の物流DXの出発点になります。

運送会社が勤怠と残業申請をシステムにまとめた例

事務の領域では、ジンジャーの導入事例として、運輸・倉庫・物流管理を手がける玉村運輸株式会社(13拠点)が公開されています。同社は、勤怠管理がタイムカードで、月末にデータをExcelへ入力して集計しており、有休・残業の申請もFAXやメールで管理本部に届いていました。ジンジャー(勤怠)の導入後は、勤怠データの自動集計が実現してタイムカードの確認作業がなくなり、工数が大幅に減ったとされています。申請もシステムに集約され、従業員の残業時間への意識が高まるきっかけにもなったと紹介されています。

この事例はジンジャーの勤怠が対象で、給与計算までを含むものではありません。勤怠から給与計算まで続けて自動化したい場合は、勤怠データと給与データがつながるかどうかを確認すると、集計と転記の手間を減らせます。出典: 玉村運輸株式会社の導入事例(ジンジャー)

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物流DXの進め方|5つの段階で考える

物流DXは一度に全体を変えるものではなく、段階的に進めるのが現実的です。ここでは、中堅・中小の運送会社や荷主企業でも取り組みやすい順番として、5つの段階に分けて整理します。

1. 現状の業務と時間を洗い出す

最初に、ドライバーの1日の時間が何に使われているかを把握します。運転時間、荷待ち時間、荷役時間、点呼や日報作成などの事務時間に分けて記録すると、どこに削れる時間があるかが見えてきます。事務所側でも、配車、請求、給与計算、勤怠集計にそれぞれどれだけの時間がかかっているかを洗い出します。この段階ではツールを選ぶ必要はなく、1週間から2週間程度の記録でも十分な手がかりになります。

2. 毎月必ず発生する業務からデジタル化する

次に、発生頻度が高く、ルールが決まっている業務からデジタル化します。勤怠集計と給与計算、運行日報、請求書の発行などが代表例です。特に勤怠と給与は毎月必ず発生し、法令対応のミスが直接コンプライアンスの問題になるため、優先度が高い領域です。ここでデジタル化したデータは、次の段階で配車や運行の分析にも使えます。

3. 運行と配車を見える化する

デジタル式運行記録計や車両の位置情報、配車システムなどを使って、運行状況と配車の判断を見える化します。配車担当者の経験に頼っていた判断を、ドライバーごとの残り拘束時間や過去の運行実績といったデータで補えるようにするのが目的です。

4. 取引先とデータをつなぐ

荷待ち時間の多くは、自社だけでは解決できません。荷主や倉庫と受付時間の予約、出荷情報の事前共有、伝票の電子化などを進めることで、待ち時間や手待ちを減らします。国土交通省も、物流情報の標準化やデータ連携を物流DXの柱の一つとしています。

5. データをもとに運び方や取引条件を変える

最後に、集まったデータをもとに、中継輸送の導入、共同配送、運賃や付帯作業料金の見直し、配送頻度の調整などを検討します。ここまで来て初めて、物流の「あり方」が変わったと言えます。重要なのは、どの段階でも前の段階のデータが根拠になるということです。

段階 主な取り組み 得られるもの
1. 現状把握 ドライバーと事務所の時間の使い方を記録する 改善すべき時間の優先順位
2. 定型業務のデジタル化 勤怠、給与計算、日報、請求の電子化 事務作業の削減と、正確な労働時間・人件費データ
3. 運行と配車の見える化 運行記録や位置情報、配車システムの活用 属人化していた配車判断の共有
4. 取引先とのデータ連携 受付予約、出荷情報の事前共有、伝票の電子化 荷待ち・荷役時間の削減
5. 運び方・取引条件の変革 中継輸送、共同配送、運賃や料金の見直し 持続的な輸送力の確保

この5段階のうち、多くの事業者が最初の成果を出しやすいのが2番目の定型業務のデジタル化です。なかでも給与計算は、2024年問題によって計算区分が増えた一方、ルールが明確で手順を標準化しやすい業務です。まずは労務管理の負担を減らし、事務担当者や配車担当者が改善に使える時間を生み出すところから始めると、その後の段階にも進みやすくなります。

DX全般の進め方は、DX推進の進め方|6ステップで作るロードマップと失敗回避策でも整理しています。物流に限らず、目的と指標を決めてから小さく始める考え方は共通です。

ここで、2段階目(定型業務のデジタル化)に当たる作業を、いまの自社の状況に当てはめて確認してみましょう。

物流DXの最初の一歩、今のやり方で大丈夫?セルフチェック

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中堅・中小事業者がつまずきやすい課題

国内のトラック運送事業者の多くは中小企業です。大手のように専任のDX推進部門を置けない事業者では、物流DXの必要性は理解していても、次のような壁にぶつかりやすくなります。

配車担当者の高齢化と属人化

配車は、荷主ごとの細かな条件、ドライバーの得意な道や車両、休息の取り方などを組み合わせる高度な仕事です。長年担当してきたベテランの頭の中にしかノウハウがなく、その人が休むと配車が回らないという会社は少なくありません。上限規制の下では、ドライバーごとの残り時間まで考えて配車を組む必要があり、属人化したままでは担当者の負担が限界を迎えます。対策としては、いきなり配車システムを入れるより先に、配車の判断で使っている条件を書き出し、労働時間のデータを誰でも見られる形で記録することが有効です。

兼務による改善時間の不足

中小の事業者では、配車担当者が勤怠集計や給与計算、請求書の発行まで兼ねていることがあります。毎月の締め作業に追われていると、物流DXの検討に使える時間はほとんど残りません。DXを進めるための時間をつくるために、まず定型の事務作業をデジタル化するという順番が現実的です。

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投資対効果が見えにくい

配車システムや倉庫の自動化設備は、効果が出るまでに時間がかかり、投資額も大きくなりがちです。効果が見えないまま大きな投資に踏み切るのは難しいため、小さく始めて成果を数字で確かめることが大切です。事務作業にかかる時間や、残業代の計算ミスによる修正の手間など、身近な指標から効果を測ると社内の合意を得やすくなります。国や自治体の補助金が使える場合もあるため、公募要領を確認するとよいでしょう。

よくある失敗パターンと、その対策を表にまとめます。

よくある失敗 起きること 対策
大型のシステムを最初に導入する 現場の入力が定着せず、データが集まらない 毎月必ず使う勤怠・給与などの業務から始める
ツールごとに別々のデータを持つ 日報、勤怠、給与で二重入力が発生する データの取り込みや連携の方法を導入前に確認する
ドライバーへの説明が不足する 監視されていると受け取られ、協力が得られない 労働時間の削減や正確な給与支払いなど、ドライバー側の利点を伝える
自社だけで完結させようとする 荷待ち時間など、取引先起因の課題が残る データを根拠に荷主と改善策を話し合う

物流DXにおけるデータ活用の重要性

物流DXの成否を分けるのは、どれだけ新しい機器を入れたかではなく、集めたデータを判断に使えているかです。物流の現場には、運行記録、配送実績、荷待ち時間、勤怠、給与、燃料費など、多くのデータがあります。ところが、それぞれが別の帳票やシステムに分かれていて、つなげて見ることができない状態がよく見られます。

たとえば、運行データと給与データを組み合わせると、取引先ごと、ルートごとに、1回の運行にどれだけの人件費がかかっているかがわかります。荷待ち時間の長い取引先では、待機中の賃金や割増賃金がかさんでいる可能性があります。こうした数字があれば、荷主に対して受付時間の調整や付帯作業の料金について具体的に話し合えます。感覚ではなくデータで話すことが、取引条件を見直すうえでの説得力になります。

データの組み合わせ わかること 活用例
運行記録と勤怠 ドライバーごとの拘束時間と残り時間 上限を超えない配車の計画
荷待ち時間と取引先 待ち時間が長い取引先や時間帯 受付予約や納品時間の調整の交渉
運行実績と給与 ルートや取引先ごとの人件費 運賃や付帯作業料金の見直し
勤怠と採用・離職 長時間労働と離職の関係 働き方の改善による人材の定着

データ活用を始めるうえで大切なのは、最初から高度な分析を目指さないことです。まず、同じ項目を同じ形式で毎月正確に記録し続けることが土台になります。給与や勤怠のデータは、法令上も正確な記録が求められ、毎月確実に更新されるため、データ活用の出発点として扱いやすい性質があります。

物流DXは荷主企業が主導すべき理由

物流DXは運送会社の取り組みと思われがちですが、荷待ち時間や急な発注変更、細かな納品時間の指定など、ドライバーの長時間労働の原因の一部は荷主側の商習慣にあります。改正物流効率化法でも荷主の役割が明確にされ、一定規模以上の荷主には中長期計画の作成や物流統括管理者の選任が求められるようになりました。物流を経営課題として扱い、経営企画部門や情報システム部門が関与することが期待されています。

荷主企業が主導する意味は、主に3つあります。1つ目は、発注や出荷の情報を早めに共有するなど、荷主にしか変えられない業務があることです。2つ目は、運賃や付帯作業の費用を適正に負担することで、運送会社がドライバーの待遇改善やDXへの投資を続けられるようになることです。3つ目は、物流コストを正しく把握することで、自社の商品や販売の戦略を見直すきっかけになることです。

荷主と運送会社が話し合うときに欠かせないのが、共通の数字です。運送会社側で労働時間や人件費が正確に把握できていれば、荷待ちによってどれだけのコストが発生しているかを示せます。荷主側も、自社の物流にかかる人件費を含めた本当のコストを知ることで、改善の優先順位を判断しやすくなります。物流DXは、こうした労務コストの見える化から進めると、荷主と運送会社の双方が納得しやすい形で前に進められます。

物流業務そのものを外部に任せる選択肢もあります。委託できる範囲と進め方は、bpo 物流とは?2024年問題に備える委託領域と進め方で解説しています。どの形を選ぶ場合でも、運送会社と荷主が共通の数字を持つことが話し合いの前提になります。

その共通の数字は、運送会社側で勤怠と給与のデータが正確に残っていてはじめて作れます。労務コストの見える化に使えるサービスの一例として、ジンジャー給与の詳細を確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 物流DXとはどういう意味ですか?

A. デジタル技術を使って物流の業務や仕組みそのものを変える取り組みです。国土交通省は「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と説明しています。作業を速くするだけでなく、運び方や取引のしかたまで見直す点が単なる効率化との違いです。

Q2. DXとは何の略ですか?

A. デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略です。デジタル技術で業務や仕組みを変えることを指し、物流DXはその考え方を輸配送・倉庫・事務・荷主との取引に当てはめたものです。

Q3. 物流DXの事例にはどのようなものがありますか?

A. 国土交通省の資料には、トラック予約受付システムの導入で1台当たりの平均待機時間が83分から24分になった例が示されています。運送会社の事務では、タイムカードと申請書を勤怠システムにまとめて集計の工数を減らした例もあります。

Q4. 物流DXは何から始めればよいですか?

A. まず、ドライバーと事務所の時間の使い方を洗い出し、毎月必ず発生する勤怠集計や給与計算などの定型業務からデジタル化するのが現実的です。そこで得られる労働時間や人件費のデータが、配車や取引条件の見直しの根拠になります。

Q5. 2024年問題で給与計算は何が変わりましたか?

A. 時間外労働の上限管理が必要になったことに加え、2023年4月から中小企業にも月60時間を超える時間外労働の割増賃金率50%以上が適用されています。歩合給や各種手当と組み合わせた計算が複雑になるため、給与計算ソフトで区分ごとの計算を自動化する事業者が増えています。

Q6. なぜ荷主企業が物流DXを主導すべきなのですか?

A. 荷待ち時間や発注の変更など、長時間労働の原因の一部は荷主側の商習慣にあり、運送会社だけでは解決できないためです。改正物流効率化法でも荷主の役割が明確にされ、一定規模以上の荷主には中長期計画の作成や物流統括管理者の選任が求められています。

まとめ

物流DXは、2024年問題で運べる量が減るなかで、輸送力と働き方を両立させるための取り組みです。最後に、この記事のポイントを整理します。

  1. 物流DXは作業を速くするだけでなく、運び方や取引のしかたまで変える取り組みで、効率化はその入口になる。
  2. 2024年問題では、時間外労働の上限規制、改善基準告示の見直し、割増賃金率の引き上げが重なり、労務管理の負担が増えた。
  3. 輸送力の不足、小口配送・再配達、荷待ち時間といった背景を押さえ、予約システムのような事例を自社のデータで検討する。
  4. 進め方は、現状把握、定型業務のデジタル化、運行と配車の見える化、取引先とのデータ連携、運び方と取引条件の変革の順で段階的に考える。
  5. 勤怠と給与のデータをデジタル化する給与計算ソフトを検討する場合は、手当の種類と勤怠データの取り込み方に対応できるかを資料で確認する。

参考文献

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