SaaS展示会の歩き方|導入前に見るべき比較ポイント
Check!
- 会場では機能・連携性・TCOを全ブースで同じ聞き方で確認する
- 同じ業務シナリオを持ち込み、デモで例外的な操作まで見る
- 展示会後は翌営業日までに比較表へ転記して候補を絞る
SaaS展示会で見るべきなのは、機能の必要性、既存システムとの連携性、総保有コスト(TCO)の3点です。この3点を全ブースで同じ聞き方で確認し、展示会後に比較表へ転記すれば、会場の熱気に流されずに候補を絞れます。出展企業向けの解説が多いなかで、この記事は来場する側の視点に絞り、来場前の準備、デモの見方、持ち帰った資料の読み方、導入前チェックリストまでを順に整理します。冒頭では、身近な勤怠管理システムを例に、比較の軸を実際に試してみます。
来場の目的から、先に読むべき章を診断
Q1. 今回の来場で、いちばん近い状況は?
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展示会の比較軸をそのまま試せる勤怠管理システムの比較
SaaS展示会で使う比較軸は、身近なカテゴリで一度試しておくと会場で迷いません。練習台に向いているのが勤怠管理システムです。ほぼすべての企業に関係があり、打刻方法という機能、給与計算ソフトとの連携性、利用人数に応じた費用の違いが表れやすいためです。
商品ページで確認できる情報から、性格の異なる2つのサービスを役割の違いで並べました。優劣や順位ではなく、会場で聞くべき観点の例として読んでください。
展示会の比較軸を試せる勤怠管理システム2サービスの違い
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:ジンジャー勤怠ジンジャー人事労務や給与計算ソフトとの連携が特徴で、導入時のサポートも用意されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:カオナビ勤怠アラート機能で管理画面から確認でき、スケジュールに合わせた3つの打刻方法があります。
資料を無料ダウンロード| サービス | ジンジャー勤怠 |
カオナビ勤怠 |
|---|---|---|
| 向いている会社 | 給与計算や人事労務のシステムとデータをつなぎたい会社、導入後のサポートを重視する会社 | 打刻漏れや承認待ちを管理画面で素早く確認したい会社、テレワークやシフトの勤怠も扱う会社 |
| 特徴 | 打刻、シフト管理、自動集計、申請承認、有給管理などの基本機能。スマホアプリに対応 | 打刻データが日々リアルタイムで反映される。シフトや工数管理、テレワーク機能も搭載 |
| 注意したい点 | スマホアプリでは、申請や修正の画面がわかりにくいという指摘がある | カオナビのオプション扱いのため、詳細な費用は問い合わせで確認する |
| 資料・詳細 |
2サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
機能とサポートの聞き方を確かめる一例が、ジンジャー勤怠(jinjer株式会社)です。商品ページでは、打刻、シフト管理、自動集計、申請承認、有給管理などの基本機能と、ジンジャー人事労務や給与計算ソフトとの連携が特徴として挙げられています。初期設定から定着まで電話・チャット・WEBなどでサポートがあり、24時間365日問い合わせできる点は、サポート体制を確認する際の例になります。注意点として、スマホアプリでは申請や修正の画面がわかりにくいという指摘があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
jinjer株式会社
ジンジャー勤怠
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ジンジャー勤怠
正確な労働時間の管理や働き方改革の促進をお考えの方に
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- 初期設定から定着まで電話・チャット・WEBなどでサポート
- 24時間365日お問い合わせ可能
- スマホアプリ対応で場所を問わず簡単に打刻ができる
- 月末の締め日に見直すだけで簡単に勤怠管理ができる
- 個人だけでなくチーム全体の勤怠管理ができる
気になる…
- スマホアプリだと申請や修正画面がわかりにくい
-
打刻の漏れや修正についての対応漏れが減った(対応率が向上した)また管理職としてメンバーの勤怠管理が容易になった。管理部門側での対応負荷も減ったようで業務時間が減少、効率化が実現できたため導入満足度は高かった
-
⚫︎自社ではエクセル管理からデジタルアプリへの移行だったため出退勤管理の手間や集計ミスの軽減につながり大幅な効率アップができた。 ⚫︎スマホ連携ができることで、営業の直行時や在宅勤務時もリアルタイムで打刻ができるようになった。(後修正の手間が省けた)
-
出勤、退勤時にボタンを押して完結することだけでなく、ボタンを押し忘れても簡単に出退勤の入力ができます。振休や有給消化の申請に関してもシンプルでわかりやすいです。通常パソコンから申請をしていますが、アプリも使いやすいです。
導入事例の一例として、社会福祉法人三重ベタニヤの事例ページでは、導入前の課題が次のように紹介されています(出典:jinjer導入事例)。
タイムカードの回収から給与計算までの業務効率が悪く、毎月2営業日以上の工数が発生していた。
jinjer株式会社「導入事例」
展示会で連携性を確かめるときも、「データがどこまで自動でつながるか」を、こうした具体的な作業に置き換えて聞くのがコツです。
もうひとつの一例が、カオナビ勤怠(株式会社カオナビ)です。商品ページでは、わかりやすい画面設計、打刻データが日々リアルタイムで反映されること、アラート機能で管理画面から素早く確認できること、その日のスケジュールに合わせて使える3つの打刻方法、シフトや工数管理、テレワーク機能が挙げられています。デモでは、こうした「日常の細かい操作」と「確認のしやすさ」を見る、という観点の例になります。注意点は、カオナビのオプション扱いとされ、詳細な費用は問い合わせで確認する点です。料金は資料や公式サイトで確認してください。
株式会社カオナビ
カオナビ勤怠
株式会社カオナビ
カオナビ勤怠
すでにカオナビを利用中の人にも◎自社好みのプランを作りたい方におすすめ
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- 「アラート機能」搭載で管理画面で素早い確認と管理が可能
- その日のスケジュールにあわせて使える3つの打刻方法を提供
- 打刻だけでなく、シフトや工数管理・テレワーク機能なと機能充実
気になる…
- カオナビのオプション扱いのため、詳細な費用は問い合わせで確認
2つを並べると、同じ勤怠管理でも、連携とサポートに強みを置くか、確認のしやすさに強みを置くかで、聞くべきことが変わるとわかります。この見方を、次の章から展示会そのものに当てはめていきます。
SaaS展示会とは|種類と来場者にとっての使い分け
SaaS展示会とは、インターネット経由で利用する業務ソフトウェア(SaaS)の提供会社が集まり、デモや相談を通じて自社サービスを紹介するイベントです。「SaaS展示会」という名称の単独イベントよりも、IT総合展やDX関連の展示会のなかにSaaSのブースが集まっている形が一般的です。SaaSそのものの定義は、SaaSとは|PaaS・IaaS・ASPとの違いで整理しています。
総務省の情報通信白書では、企業のクラウドサービス利用の広がりが継続的に取り上げられています(総務省「令和7年版 情報通信白書」)。選択肢が増えた分、資料請求だけで候補を絞るのは難しくなっており、複数のサービスを同じ日に同じ条件で見比べられる展示会の価値は、導入を検討する側にとって小さくありません。展示会は、大きく次の4種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 | 向いている来場目的 | 来場者側の注意点 |
|---|---|---|---|
| IT・DX総合展 | 大規模会場に幅広い分野の出展社が集まる | 複数カテゴリのSaaSをまとめて見たい | 会場が広く、事前に回るブースを決めないと時間が足りなくなる |
| 部門・テーマ特化型の専門展 | 人事労務、経理、営業・マーケティングなど部門別に構成される | 導入したいカテゴリが決まっている | 同じカテゴリの競合が並ぶため、比較軸をそろえて質問する |
| オンライン展示会 | 会期中にWeb上で資料や動画、セミナーを視聴できる | 遠方で会場に行けない、まず候補を広く集めたい | 操作感は確かめにくい。資料を取得すると連絡先が出展社に渡る点を理解しておく |
| 提供会社・販売代理店の主催イベント | 特定の会社や取扱製品を中心に、体験型の展示やセミナーを行う | 候補がある程度絞れていて、深く知りたい | 比較対象が主催側の取扱製品に限られる |
情報収集の初期はオンライン展示会で候補を広げ、候補が数社に絞れたらリアル会場で操作感と担当者の対応を確かめる、という使い分けが現実的です。国内のIT総合展としては、RX Japan株式会社が主催するJapan IT Weekなどが知られていますが、会期、会場、出展分野は回ごとに変わります。来場を決める前に、主催者の公式サイトで最新の開催概要と出展社一覧を確認してください。AIやDXを主題にした展示会との違いは、AI展示会とは?参加前の準備・当日の見方・商談後フォローを解説やDX展示会の目的と回り方でも整理しています。
専門展の組み合わせで、見たい分野に合う会を選ぶ
総合展は、専門展の集まりとして構成されていることがあります。たとえば、DX 総合EXPO 2026 秋 東京の公式案内では、人事・労務、経理・財務、法務、マーケティング、営業、業務改革、情報セキュリティの7つの展示会で構成され、会期は2026年11月4日から6日、会場は幕張メッセと案内されています(DX 総合EXPO 2026 秋 東京 公式案内)。導入したいカテゴリが決まっているなら、そのカテゴリの専門展が含まれるか、同時開催の展示会がどれかを、出展分野の一覧で先に確認しましょう。開催概要は変更される場合があるため、来場前に必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。
展示会で見るべき3つの比較ポイント(機能・連携性・TCO)
SaaS展示会で確認すべき比較ポイントは、機能の必要性、既存システムとの連携性、総保有コスト(TCO)の3つです。この3つを全ブースで同じ聞き方で確認すると、展示会後にそのまま比較表へ転記できます。
| 評価軸 | 会場で確認すること | 担当者への質問例 | 勤怠管理システムでの例 |
|---|---|---|---|
| 機能の必要性 | 自社の業務がどの画面で、何手順で処理できるか | この業務を標準機能だけで処理できますか。オプションや個別設定が必要な部分はどこですか | シフト制、フレックス、直行直帰など自社の就業形態に対応できるか |
| 連携性 | いま使っているシステムとデータをやり取りする方式と手間 | この製品とはAPIで自動連携できますか、それともCSVの出力と取り込みですか。連携に追加費用はかかりますか | 集計した勤怠データを給与計算ソフトへ渡す方法 |
| TCO | 導入から数年間でかかる費用の内訳と、増減する条件 | 初期費用、月額、オプション、サポート費用を分けて教えてください。人数が増えた場合や解約時の条件はどうなりますか | 無料で使える人数の上限、最低利用人数、打刻機器の費用 |
機能は「できること」ではなく「自社の業務が何手順で終わるか」で見る
ブースの説明は、そのサービスが得意な場面を中心に組み立てられています。機能の多さに目を奪われるのではなく、自社の具体的な業務を1つ伝え、それがどの画面で何手順かかるのかを見せてもらいましょう。同じ業務でも、サービスによって必要な操作の数や、管理者と利用者のどちらが作業するのかが変わります。
連携性は「つながるか」だけでなく「どうつながるか」まで聞く
「連携できます」という回答には幅があります。データが自動で同期されるのか、担当者がファイルを書き出して取り込むのか、連携先ごとに別料金がかかるのかで、導入後の手間は大きく変わります。来場前に、自社で使っている会計、給与計算、グループウェアなどの製品名を一覧にしておくと、その場で具体的に確認できます。
TCOは月額料金以外の費用を分けて聞く
TCO(Total Cost of Ownership)は、導入から運用、場合によっては解約までにかかる費用の総額を指します。SaaSは月額料金が目に入りやすい一方、初期設定の代行、データ移行、オプション機能、サポートの範囲、利用者の追加、最低契約期間といった項目で総額が変わります。金額そのものは会場で即答してもらえないことも多いため、「見積もりに必要な条件は何か」を聞いておくと、後日の比較が進めやすくなります。評価軸の立て方をさらに詳しく知りたい場合は、SaaS比較の正しい方法もあわせてご覧ください。
2サービスの違いを比較表でもう一度見る来場前の準備|同じ業務シナリオを全ブースに持ち込む
来場前にやっておきたい準備は、自社の業務シナリオを1つ決め、それを全ブースで同じように見せてもらえる状態にしておくことです。質問が毎回変わると、後から比べようとしても条件がそろいません。
業務シナリオとは、「月末に、シフト勤務のパート従業員20人分の残業時間を集計し、給与計算ソフトへ渡す」といった、具体的な場面のことです。抽象的な「勤怠管理を効率化したい」という相談では、どのブースでも標準的な説明が返ってくるだけで、差が見えません。準備は次の3点にまとめられます。
- 業務シナリオを1つから2つ書き出す(誰が、いつ、何件、どのデータを、どこへ渡すか)
- 利用人数、いま使っているシステムの製品名、導入したい時期、予算の考え方をメモにする
- 公式サイトの出展社一覧から、回るブースを5社から8社程度に絞り、会場図で順番を決める
事業の規模によって、重視する点も変わります。個人事業主や少人数の会社は、1人でも設定と運用を回せるか、無料の範囲や最低利用人数の条件が合うかが中心になります。数十人から数百人の企業は、承認の流れや権限の分け方、サポート窓口の対応時間を確認します。さらに規模が大きい企業は、シングルサインオン、操作記録の保存、データの保管場所など、情報システム部門の審査に必要な項目を事前に預かっておくとよいでしょう。こうした性能やセキュリティに関する確認項目は、SaaSの非機能要件とはで分類ごとに整理しています。
来場登録と当日の持ち物は、展示会ごとに確かめる
来場の方法は展示会によって異なります。DX 総合EXPOの公式案内では、事前登録制で参加は無料、来場者バッジを印刷して持参する方式で名刺は不要とされ、団体で来場する場合は一人ずつの登録が必要と案内されています。また、特別講演は配信やアーカイブがなく現地のみで、正規の出展者以外による営業や宣伝は禁止とされています。こうした条件は他の展示会では異なることがあるため、登録方法、入場に必要なもの、講演の予約や配信の有無、撮影の可否を、公式サイトのよくある質問で事前に確認しておきましょう。
展示会に参加する社員の勤怠|出張・休日・直行直帰の確認点
展示会への来場や出展対応は、出張、休日の出勤、直行直帰、設営や撤収による長時間の勤務が重なりやすく、勤怠の記録と承認の手間が一時的に増えます。比較軸を決める前に、送り出す側の勤怠ルールも確認しておきましょう。
労働基準法では、使用者は労働者に毎週少なくとも1回の休日を与えることとされ(第35条)、休日に労働させた場合は割増賃金の支払いが必要です(第37条)。週末に開催される展示会へ社員を行かせる場合は、事前に別の日へ休日を振り替えるのか、後から代休を与えるのかで賃金の扱いが変わるため、勤怠のルールを先に確認しておきます(条文はe-Gov法令検索「労働基準法」)。なお、ここで述べた内容は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な判断が必要な場合は、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
| 場面 | 起きやすいこと | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 遠方の会場へ直行直帰する | 始業・終業の時刻が、会社での打刻と別になる | 会場から打刻できるか、自己申告にするかを決め、記録の方法をそろえる |
| 土日・祝日に開催される会に参加する | 休日の出勤になる | 事前の申請と承認の手順、振替休日にするか代休にするか |
| 設営・撤収や会場での対応で遅くなる | 長時間の勤務になりやすい | 残業時間の申請と、上長による確認の手順 |
| 複数の社員が交代で参加する | 誰がどの時間帯に出たかがあいまいになる | シフトと実績を突き合わせる方法 |
厚生労働省のガイドラインでは、始業・終業時刻の確認と記録の方法として、客観的な記録を基礎とすることなどが示されています(詳しくは後述の「必ず必要な機能とあると望ましい機能の切り分け方」で触れます)。展示会のような単発の出張でも、普段と同じ方法で記録できる状態にしておくと、月末の集計で迷いません。次のセルフチェックで、今の勤怠の扱いに手作業が残っていないか確認してみましょう。
展示会の出張・休日出勤、今の勤怠の扱いで大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
出展企業側の差別化戦略から見る競合分析の視点
出展企業がどんな狙いでブースを作っているのかを知っておくと、来場者は説明を一段深く読み解けます。SaaS展示会について書かれた記事の多くは出展企業向けで、名刺の獲得数や商談化率を高める方法が解説されています(例:フレッシュタウン、PLAINER)。来場者は、その設計を理解したうえで情報を引き出す側に回りましょう。
| 出展企業側の狙い | ブースでの表れ方 | 来場者としての見方 |
|---|---|---|
| 短時間で関心を引く | 看板のキャッチコピーで、いちばん訴えたい強みを一言で示す | 各社が何を強みとして掲げているかを並べると、そのカテゴリの競争の軸がわかる |
| 名刺や来場者情報を多く集める | ノベルティの配布、アンケート、来場者バッジの読み取り | 情報を渡すと後日連絡が来る。検討の対象外なら、その場で伝えてよい |
| 集めた情報を素早くフォローにつなげる | 名刺やバッジの情報をその場でデータ化し、会期後すぐに連絡する | 連絡が早いのは仕組みの結果。連絡してほしい時期や手段があれば、その場で伝えておく |
| 短い時間で価値を伝える | 数分で終わるように設計されたデモ | 短い分、例外的な操作は含まれにくい。自社の業務シナリオで追加の操作を見せてもらう |
| 導入後のイメージを持たせる | 得意な場面に沿って組まれたデモ、導入事例の紹介 | 事例の企業規模や業種が自社に近いかを確認し、自社のシナリオでも見せてもらう |
| 競合との違いを伝える | 比較資料、「選ばれる理由」の説明 | 比較資料は自社に有利な項目で作られる。載っていない項目こそ質問する |
| 会期後の商談につなげる | 個別デモや打ち合わせの日程をその場で提案する | 候補に残す会社だけ受ける。社内で比較表を作ってからでも遅くない |
特に役立つのが、「他社と比べて、御社のサービスが向いていないのはどんな会社ですか」という質問です。誠実な担当者ほど、向き不向きを具体的に答えてくれます。逆に、どんな会社にも合うという答えしか返ってこない場合は、導入後の相談でも同じ対応になる可能性を考えておくとよいでしょう。同じカテゴリの複数のブースで「強み」と「向いていない会社」を聞き取れば、展示会場そのものが、短時間でできる競合分析の場になります。
実際の操作性を確認するデモ活用法
デモは説明を聞く時間ではなく、自社の業務を画面上で再現してもらう時間として使います。可能であれば自分で操作させてもらい、管理者の画面だけでなく、従業員が毎日触れる画面も確認しましょう。
デモで確かめたいポイントは次のとおりです。
- 準備した業務シナリオを、最初から最後まで通して見せてもらう
- 管理者側と利用者側、両方の画面を見る。スマートフォンの画面も確認する
- 入力を間違えたとき、申請を差し戻すときなど、例外的な操作の流れを見る
- 初期設定は誰が行うのか、どのくらいの期間がかかるのかを聞く
- 見せてもらった機能が標準なのか、オプションや上位プランなのかをその場で確認する
- 撮影やメモの可否を聞き、許可を得たうえで画面を記録する
冒頭の勤怠管理システムの比較で見たように、利用者が感じる注意点は、申請や修正の画面、通知や確認の方法、サポートへの連絡方法といった「日常の細かい操作」に集まりやすい傾向があります。こうした点は機能一覧には表れず、デモで例外的な操作を見て初めてわかります。打刻を忘れた従業員がどう修正を申請し、管理者がどう承認するのか、という流れは、勤怠管理に限らず、多くのバックオフィス系SaaSに共通する確認ポイントです。
会場で見られるブースの数には限りがあります。展示会で使った評価軸は、出展していなかったサービスにもそのまま当てはめられますので、記憶が新しいうちに、同じカテゴリの資料を取り寄せて同じ項目で見比べておくと、候補の取りこぼしを防げます。
2サービスの違いを比較表でもう一度見る展示会後のフォローアップ資料の見方
展示会後は、持ち帰った資料や届いたメールを、記憶が薄れる前に同じ項目で比較表へ転記することが大切です。目安として、会期の翌営業日までに一度整理しておくと、デモで見た画面や担当者の回答を正確に残せます。
来場後には、お礼のメール、サービス紹介資料、導入事例集、料金表、個別デモの案内などが各社から届きます。これらは出展企業が商談につなげるために用意しているもので、読み方にはコツがあります。
| 資料の種類 | 見るポイント | 比較表に転記する項目 |
|---|---|---|
| サービス紹介資料 | 機能が標準か、オプションや上位プランかの区別 | 必要な機能ごとの対応状況 |
| 料金表 | 課金の単位、最低利用人数、最低契約期間、初期費用の有無 | 自社の人数で試算した数年分の総額 |
| 導入事例集 | 企業規模と業種が自社に近いか、効果の根拠が示されているか | 自社に近い事例の有無 |
| 他社との比較資料 | 比較の時点と出所。載っていない項目は何か | 参考情報として扱い、自社の比較表を正とする |
| セキュリティ関連資料 | 権限管理、操作記録、データの保管場所、認証の取得状況 | 社内審査に必要な項目の充足状況 |
資料に「満足度No.1」「導入社数No.1」といった表示がある場合は、調査の時期、対象、調査した機関が明記されているかを確認しましょう。根拠のはっきりしない表示は、比較表の評価に加えないのが無難です。セキュリティについては、会場で細部まで判断するのは難しいため、IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」や、政府のクラウドサービス評価制度であるISMAPのポータルサイトといった公的な情報を手がかりに、後日あらためて確認する項目として残しておくと安心です。
整理ができたら、候補を2社から3社に絞り、無料トライアルや個別デモで実際のデータを使って試します。この段階では、導入後に実際に使うメンバーにも触ってもらうことが、定着の成否を左右します。導入から定着までの進め方は、SaaS導入の進め方で段階ごとに解説しています。
必ず必要な機能とあると望ましい機能の切り分け方
機能は「これがないと業務が回らないもの」と「あれば便利なもの」に分け、前者を満たさないサービスは、ほかの点が魅力的でも候補から外します。この切り分けを来場前に済ませておくと、デモで見た目新しい機能に判断を引っ張られにくくなります。
切り分けの基準として使いやすいのは、次の3つの問いです。
- 法令や社内規程で求められているか(求められていれば、必ず必要な機能)
- その機能がないと、手作業や二重入力が残るか(残るなら、必ず必要な機能に近い)
- 使う人が限られ、頻度も低いか(当てはまるなら、あると望ましい機能)
勤怠管理システムを例にすると、次のように整理できます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、始業・終業時刻を確認し記録する方法として、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録を基礎とすることなどが示されています。自社の働き方でこうした記録を無理なく残せるかは、機能の好みではなく、必ず必要な機能の側で検討する項目です。
| 区分 | 勤怠管理システムでの例 | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 必ず必要な機能 | 自社の就業形態に合った打刻と集計、残業や休暇の申請と承認、給与計算へのデータ出力 | 労働時間の記録と給与の支払いに直結し、欠けると手作業が残る |
| あると望ましい機能 | 工数やプロジェクトの管理、シフトの自動作成、多言語表示 | 業務は楽になるが、なくても別の方法で代替できる |
| 自社には不要な機能 | 利用する予定のない打刻方法や、対象者がいない勤務形態への対応 | 評価に加えない。機能が多いことを加点にしない |
どの機能がどの区分に入るかは、会社の業種や働き方によって変わります。飲食業や小売業のようにシフト勤務が中心の会社では、シフト作成は必ず必要な機能に入るでしょう。建設業や訪問サービスのように現場へ直行直帰する働き方では、スマートフォンからの打刻と位置情報の記録が欠かせません。オフィスワーク中心の会社では、在宅勤務時の打刻や、パソコンの利用記録との突き合わせが論点になります。自社に当てはめた区分表を1枚作り、会場に持っていきましょう。
区分表を作ると、同じ機能でも自社では「必ず必要」か「あると望ましい」かが分かれます。たとえばカオナビ勤怠は、商品ページで、打刻に加えてシフトや工数管理、テレワーク機能が挙げられています。これらが自社にとってどの区分に入るかを決めてから資料を読むと、見比べやすくなります。
SaaS展示会の来場でよくある失敗パターン
SaaS展示会の来場でよくある失敗は、いずれも「比較の軸を持たずに歩いた」ことから起こります。代表的な4つのパターンと対策を整理します。
| よくある失敗 | 起きること | 防ぐための対策 |
|---|---|---|
| 目的を決めずに来場する | 目立つブースを回るだけで終わり、自社の課題と結びつかない | 業務シナリオを1つ決め、回るブースを事前に絞る |
| ブースごとに違う質問をする | 後から比べようとしても条件がそろわない | 機能・連携性・TCOの同じ質問を全ブースで行う |
| デモの印象だけで決める | 得意な場面しか見ておらず、導入後に例外的な操作でつまずく | 修正や差し戻しなど例外の流れを見て、トライアルで確かめる |
| 資料を持ち帰ったまま放置する | 記憶が薄れ、各社からの連絡対応だけが残る | 翌営業日までに比較表へ転記し、候補を2社から3社に絞る |
来場時に知っておきたい個人情報と表示の注意点
展示会では、来場登録や名刺交換を通じて自分の個人情報が出展企業に渡ること、そしてブースや資料の表示には広告としての側面があることを理解しておきましょう。
多くの展示会では、来場登録の際に、登録した情報が主催者や出展企業にどのように提供されるかが利用規約や個人情報の取扱いに関する説明に記載されています。来場者バッジを読み取ってもらったり、オンライン展示会で資料を取得したりすると、連絡先が出展企業に提供される仕組みが一般的です。個人情報の利用目的の特定や通知については、個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)で考え方が示されています。来場者としては、登録時の説明を読み、連絡が不要な場合はその場で伝える、という対応で十分です。
また、ブースの看板や配布資料にある「No.1」「最安」といった表示は、商品やサービスの内容を実際よりも著しく優良であると示す表示にあたる場合、景品表示法上の問題になりうるとされています(消費者庁「景品表示法」)。来場者の立場では、表示の根拠を質問し、答えが得られないものは評価に含めない、という姿勢が役立ちます。なお、ここで述べた内容は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な判断が必要な場合は、専門家にご相談ください。
導入前チェックリスト
展示会で得た情報を導入の判断につなげるために、契約前に確認しておきたい項目を一覧にまとめました。空欄が残っている項目は、提供会社への追加質問として使えます。
| 分類 | チェック項目 | 確認する方法 |
|---|---|---|
| 機能 | 必ず必要な機能を、標準機能ですべて満たしているか | 業務シナリオでのデモ、トライアル |
| 機能 | 修正や差し戻しなど、例外的な操作を無理なく行えるか | 実際に使うメンバーによるトライアル |
| 連携性 | 既存システムとの連携方式と、連携にかかる費用を把握しているか | 担当者への質問、連携先一覧の資料 |
| 連携性 | 現在のデータを移行する方法と、契約終了時にデータを書き出す方法を確認したか | 導入支援の資料、利用規約 |
| TCO | 初期費用、月額、オプション、サポート費用を含めた数年分の総額を試算したか | 見積書、料金表 |
| TCO | 人数の増減、最低契約期間、解約時の条件を確認したか | 契約書、利用規約 |
| 運用 | 初期設定の担当者と、運用開始までの期間が決まっているか | 導入スケジュールの提示を依頼する |
| 運用 | サポートの窓口、対応時間、連絡手段が自社の働き方に合っているか | サポート内容の資料 |
| セキュリティ | 権限管理、操作記録、データの保管場所が社内の基準を満たしているか | セキュリティ関連資料、チェックシート |
| 社内合意 | 実際に使う部門と、決裁する人の双方が比較表を確認したか | 比較表の共有、社内説明 |
チェックリストの最後に社内合意の項目を置いているのは、ツールを選ぶことと、使い方を社内で決めることがひと続きの作業だからです。より網羅的な確認項目は、SaaSの選び方|チェックリスト10項目も参考になります。
このチェックリストは、展示会で話を聞いたサービスだけでなく、候補に挙がったすべてのサービスに同じように当てはめて使えます。勤怠管理システムなら、「連携性」と「運用」の項目が、資料で確かめられる具体的な確認点です。ジンジャー勤怠は、商品ページで、ジンジャー人事労務や給与計算ソフトとの連携と、初期設定から定着までのサポートが挙げられています。空欄になった項目が、次に資料請求や問い合わせで確認すべきことです。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS展示会では何を見ればよいですか?
A. 機能の必要性、既存システムとの連携性、総保有コスト(TCO)の3つを、全ブースで同じ聞き方で確認します。自社の業務シナリオを1つ伝え、画面上で再現してもらうと、サービスごとの違いが見えやすくなります。
Q2. 日本の三大SaaS企業・5大SaaS企業はどこですか?
A. 三大・5大SaaS企業に公的に定まった定義はなく、売上高、ARR、時価総額など何を基準にするかで顔ぶれが変わります。比べるときは、基準と決算期、連結か単体かをそろえ、各社の決算資料で確認してください。国内SaaS企業の売上高の見方は「SaaSランキング」の記事で整理しています。
Q3. 今後伸びるSaaS企業は、どう見極めればよいですか?
A. 将来の成長を断定することはできないため、決算資料で売上高の伸びや継続利用の状況の開示、顧客の広がりを確認し、自社の用途に合うかを軸に見るのが現実的です。展示会では、導入事例が自社に近いか、サポートや連携の範囲が広がっているかを担当者に質問してみましょう。
Q4. SaaS展示会に行く前に何を準備すればよいですか?
A. 業務シナリオを1つから2つ書き出し、利用人数、いま使っているシステムの製品名、導入したい時期をメモにまとめます。あわせて、公式サイトの出展社一覧から回るブースを5社から8社程度に絞り、来場登録の方法も確認しておくと、限られた時間で比較しやすくなります。
Q5. 名刺を渡すと営業の連絡が多く来ませんか?
A. 名刺を渡したり来場者バッジを読み取ってもらったりすると、後日メールや電話で連絡が来るのが一般的です。検討の対象外であればその場で伝えて構いません。来場登録時の個人情報の取扱いに関する説明も確認しておきましょう。
Q6. 展示会の後は何から進めればよいですか?
A. 翌営業日までを目安に、資料と担当者の回答を同じ項目の比較表へ転記し、候補を2社から3社に絞ります。そのうえで無料トライアルや個別デモで実際に使うメンバーに試してもらい、導入前チェックリストの空欄を埋めていきます。
まとめ
SaaS展示会は、複数のサービスを同じ日に同じ条件で見比べられる場です。その価値を引き出せるかどうかは、会場に入る前に比較の軸を持っているかで決まります。
- 比較ポイントは、機能の必要性、既存システムとの連携性、総保有コスト(TCO)の3つ
- 同じ業務シナリオを全ブースに持ち込み、デモでは例外的な操作まで見せてもらう
- 出展企業の狙いを理解し、資料に載っていない項目や向いていない会社を質問する
- 翌営業日までに比較表へ転記し、導入前チェックリストの空欄を追加質問にする
- 勤怠管理システムなど身近なカテゴリで比較軸を試し、資料請求で自社に合うかを確かめる
展示会は、歩いて終わりではなく、比較表にまとめて社内で共有するところまでが一連の流れです。まずは自社の業務シナリオを1つ書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のサービスの優劣を保証するものでも、法的助言を行うものでもありません。
参考文献
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
- e-Gov法令検索「労働基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」 https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
- ISMAPポータル(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度) https://www.ismap.go.jp/csm
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 消費者庁「景品表示法」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
- RX Japan株式会社「Japan IT Week」公式サイト https://www.japan-it.jp/
- DX 総合EXPO 2026 秋 東京 公式案内 https://www.bizcrew.jp/expo/dx-tokyo
- jinjer株式会社「導入事例 社会福祉法人三重ベタニヤ」 https://hcm-jinjer.com/results/131464/
