BPOプロセスとは?業務棚卸からSLA設計・効果測定までの進め方
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- BPOプロセスが目的の明確化から改善まで7ステップで進むことがわかる
- 業務棚卸の項目と工数の見積もり、RFPへの引き継ぎ方がわかる
- SLAの5要素と、委託後の効果測定・見直しの進め方がわかる
BPOプロセスとは、業務を外部に委託するまでの設計(目的の明確化、業務棚卸、委託範囲の決定、事業者の選定、標準化、SLA設計)と、委託後の運用・効果測定・改善までを一続きで捉えた進め方のことです。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の「プロセス」は業務プロセスを指すため、まず自社の業務プロセスを可視化し、任せる範囲と求める水準を決めてから委託するのが基本の順番になります。この記事では、導入の7ステップを最初に整理したうえで、業務棚卸と工数の見積もり、RFPと手順書への引き継ぎ、SLA設計、よくある失敗、効果測定、委託後の見直しまでを、発注企業の担当者の視点で順に解説します。
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BPOプロセスとは|意味と導入の7ステップ
BPOプロセスとは、委託前の設計から委託後の改善までを7つのステップで進める一連の流れです。業務プロセスの整理が出発点で、SLAの合意と、運用後の測定がゴールになります。
| ステップ | やること | この段階の成果物 |
|---|---|---|
| 1. 目的の明確化 | 人手不足の解消、コスト、品質、コア業務への集中など、委託で解決したい課題と測る指標を決める | 目的と指標の一覧 |
| 2. 業務棚卸と委託範囲の決定 | 業務を同じ粒度で一覧にし、標準化しやすさと情報リスクで委託する業務を選ぶ | 業務棚卸表、委託対象業務リスト |
| 3. RFPの作成と事業者の選定 | 棚卸の結果を要件にまとめ、複数の事業者の提案を同じ前提で比べる | RFP(提案依頼書)、比較表 |
| 4. 標準化 | 手順、判断基準、例外時の連絡先を文書にする | 業務手順書 |
| 5. SLA設計と契約 | 品質・スピード・コストの基準値と測り方を委託先と合意する | SLA定義書、契約書 |
| 6. 移行とテスト運用 | 並行稼働で処理結果を照合し、手順を直してから切り替える | 照合結果、修正済みの手順書 |
| 7. 本稼働と改善 | SLA達成率と工数削減効果を測り、委託範囲と基準値を見直す | 月次報告、改善提案 |
事業者の選び方を含む進め方の全体像はBPOの進め方を5段階で解説|検討から運用開始までの手順と失敗しない始め方で、移行から安定稼働までの体制づくりはBPOプロジェクトの進め方|立ち上げから安定稼働までの手順・体制・失敗対策で詳しく解説しています。この記事では、業務プロセスを数字で整理して合意する部分、つまりステップ2の業務棚卸、ステップ3から4へのつなぎ方、ステップ5のSLA設計、ステップ7の効果測定に焦点を当てます。
委託の前後で工数・原価を同じ物差しで比べるには
ステップ2の業務棚卸とステップ5のSLA設計では、業務ごとの工数と原価の実績が、判断の根拠になります。担当者へのヒアリングだけでは記憶に頼った見積もりになりやすく、委託後に「以前より良くなったのか」を比べる材料も残りません。受託開発、広告、コンサルティングなど、案件ごとに工数と原価を管理するプロジェクト型の事業であれば、日々の作業時間を業務管理システムに記録しておくことが、棚卸の材料にも、委託後に委託先の報告工数と社内の実績を突き合わせる裏付けにもなります。なお、ここで紹介する2つは案件・工数・原価・請求を1つのシステムで扱う業務管理システムで、問い合わせ対応や給与計算のような定型業務が中心の会社の選択肢ではありません。当サイトに掲載している2つを、役割の違いで並べます。
委託前後の工数・原価をそろえる業務管理システム2サービスの役割の違い
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|
|---|---|---|
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| 注意したい点 | 機能ごとにライセンスが分かれているため、必要な機能と利用人数を整理してから検討する | 工数管理に特化しているため、工程管理には対応していない可能性があり、必要な場合は対応範囲の確認が要る |
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表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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従来はバラバラだったデータを一ヵ所に集めて一元管理できる点が挙げられます。集計作業がすぐに、しかも楽にできるようになったのは大きいですね。
株式会社カヤックのZAC導入事例(インタビュー掲載時点の内容) 出典:ZAC導入事例 株式会社カヤック(株式会社オロ)
どちらも案件・工数・原価・請求を扱う業務管理システムで、BPOの委託先を探す仕組みではありません。委託そのものの判断は、次の章以降で説明する業務棚卸とSLA設計の手順で進め、その判断の元になる数字をどこに置くかを決める手段として検討してください。
BPOと似た言葉の違い|アウトソーシング・BPR・BPM・人材派遣・PMO
BPOは業務プロセスのまとまりを外部の事業者に任せる手法で、アウトソーシング全般より任せる範囲が広く、人材派遣とは指揮命令を行う主体が異なります。BPRは業務プロセスそのものを見直す取り組み、BPMは業務プロセスを継続的に管理・改善する考え方、PMOはプロジェクトの管理を支える機能です。
| 用語 | 何をするか | BPOとの違い |
|---|---|---|
| アウトソーシング | 業務の一部を外部に任せる手法の総称 | BPOは、業務の設計から運用までをまとまりで任せ、成果や水準で管理するのが一般的 |
| BPR(業務改革) | 業務プロセスそのものを抜本的に見直す | BPRは見直しの取り組み、BPOは整えた業務を専門の事業者に任せる手段。BPRで見直してからBPOを使う、という順で組み合わせることもある |
| BPM(ビジネスプロセスマネジメント) | 業務プロセスを可視化し、継続的に管理・改善する取り組み | BPMは業務プロセスを管理・改善する考え方、BPOはその業務の実行を外部に任せる手段。BPMで可視化した業務をBPOの対象として選ぶ、という使い分けができる |
| 人材派遣 | 派遣された人が、派遣先の指揮命令のもとで働く | BPOでは、委託先が自らの責任で業務を遂行し、作業者への指示は委託先の責任者が行う |
| PMO(プロジェクトマネジメントオフィス) | プロジェクトの進捗や課題を整理し、管理のルールを整える支援の機能 | PMOの業務そのものをBPOで任せることもできるが、判断は発注側に残る |
ITO・SaaS・DXとの違いまで含めた整理はBPOとBPRの違いとは?ITO・SaaS・DXまで5用語を1枚の表で整理で、PMOとBPOの関係はbpo pmoとは?BPO導入を支えるPMOの役割と体制設計、委託時の注意点を解説で詳しく扱っています。BPOとアウトソーシングの定義や、BPOの全体像はBPOとは?アウトソーシング・派遣との違いとメリット・デメリットで解説しています。
ステップ1-2|目的の明確化と業務棚卸、委託範囲の決め方
棚卸の前に、委託で何を解決したいのかと、それを何で測るのかを決めます。目的が曖昧なまま業務を洗い出すと、どの情報を記録すべきかが決まらず、後のSLA設計でも基準が定まりません。そのうえで、業務棚卸とは、部署や担当者が日々行っている業務を洗い出し、同じ粒度で一覧にする作業です。委託の判断とSLA設計に使える情報まで記録することが大切です。
目的は、測る指標とセットで書き出す
目的を「業務を効率化したい」とだけ書くと、委託後に成否を判断できません。目的ごとに、委託前後で比べる指標をあわせて書き出します。
| 委託の目的の例 | 委託前に記録しておく指標の例 | 委託後に比べること |
|---|---|---|
| 人手不足を解消したい | 業務ごとの月間の作業時間、残業時間、処理の遅れの件数 | 社内に残った作業時間と、委託先の処理状況 |
| コストを抑えたい | 業務の人件費換算額、1件あたりの処理コスト | 委託費用に管理工数の人件費換算を加えた総額 |
| 品質を安定させたい | エラー率、再作業の件数、問い合わせの件数 | SLAで合意した品質指標の達成状況 |
| コア業務に集中したい | 担当者がコア業務に使えている時間 | 空いた時間を何に振り向けたか |
業務棚卸表に入れておきたい項目
棚卸表の列は、後の工程でそのまま使えるように設計します。次の項目を最初からそろえておくと、委託範囲の決定やSLA設計の段階で情報を集め直す手間が減ります。
| 項目 | 記録する内容の例 | 後工程での使い道 |
|---|---|---|
| 業務名・担当 | 請求書の発行、担当は経理2名 | 委託範囲の特定、引き継ぎ相手の決定 |
| インプットとアウトプット | 販売管理データを受け取り、請求書PDFを送付する | 委託先との受け渡し方法、成果物の定義 |
| 頻度と件数 | 月1回、約300件、月末に集中 | 処理量の見積もり、繁閑差への対応 |
| 工数 | 1件あたり平均5分、月合計25時間 | 委託コストとの比較、SLAの基準値 |
| 例外とその頻度 | 宛先変更や分割請求が月10件程度 | 手順書の例外ルール、エスカレーション基準 |
| 扱う情報と権限 | 取引先の担当者名・口座情報、販売管理システムの閲覧権限 | 情報リスクの評価、アクセス権の設計 |
| 使用システム | 販売管理システム、会計ソフト、メール | 委託先の作業環境、システム連携の要否 |
業務の粒度をそろえる
業務棚卸でつまずきやすいのが粒度のばらつきです。ある担当者は「経理業務」と大きくまとめ、別の担当者は「請求書の宛名確認」と細かく書く、という状態では比較ができません。目安としては、「一人の担当者が一度に着手して完了させる、成果物が一つ決まる単位」でそろえると、委託するかしないかの判断がしやすくなります。「請求書の発行」「入金の消込」「督促メールの送付」のように、動詞と成果物で表現すると粒度がそろいやすくなります。
工数の見積もり方法
工数の把握には、大きく3つの方法があります。一つ目は担当者へのヒアリングで、手軽ですが記憶に頼るため、実際より短く見積もられがちです。二つ目は一定期間の作業記録で、2週間から1か月程度、業務ごとの作業時間を記録してもらう方法です。月末や四半期末に集中する業務がある場合は、繁忙期を含む期間で記録しないと実態を過小評価してしまいます。三つ目はシステムのログの活用で、業務システムの操作履歴から処理件数や処理時間を補助的に把握する方法です。
実務では、ヒアリングで業務一覧を作り、作業記録で工数の実績を取り、ログで件数を裏づける、という組み合わせが現実的です。ここで得た「1件あたりの処理時間」「月間の処理件数」「例外の発生率」が、後のSLA設計でそのまま基準値の材料になります。工数を人件費に換算しておくと、委託費用の見積もりと比べる際の根拠にもなります。
業務フローを図にしてECRSで手順を見直す
棚卸表で業務を一覧にしたら、委託候補になりそうな業務はフローチャートで流れを図にしておくと、担当者の間の受け渡しや確認の待ち時間、同じ情報の二重入力といった無駄が見つけやすくなります。業務の流れを図で表す方法としては、BPMN(Business Process Model and Notation)のような表記法もありますが、BPOの準備段階では「誰が、何を受け取り、何を作って、誰に渡すか」が分かる程度の簡単な図で十分です。この図は、そのまま委託先への業務説明資料や手順書の骨子としても使えます。
図にした業務は、委託する前にECRS(イクルス)の観点で見直すと、非効率な手順をそのまま委託先に引き継ぐことを防げます。ECRSは、排除(なくせないか)、結合(まとめられないか)、入替え(順序や担当を入れ替えられないか)、簡素化(簡単にできないか)の順に業務を検討する改善の考え方で、日本能率協会コンサルティングの用語集でも解説されています。たとえば、誰も使っていない帳票の作成をなくす、別々に行っていた確認作業を一度にまとめる、といった見直しを委託前に済ませておくと、委託する工数そのものが減り、SLAも簡潔に書けます。なお、業務棚卸と見直しは現場の協力がなければ進みません。「担当者の仕事を減らすための評価ではなく、業務を任せられる形に整えるための作業である」という目的を最初に共有し、記録の方法とスケジュールをそろえてから着手すると、記録の精度が上がります。
委託する業務を選ぶ2つの軸
棚卸表ができたら、委託候補を選びます。判断の軸は「標準化しやすさ」と「情報リスク」の2つです。手順が決まっていて例外が少ない業務は委託に向き、判断や交渉を伴う業務、社内にノウハウを蓄積したい業務は社内に残す方が安全です。また、個人情報や機密情報を多く扱う業務は、委託先の管理体制の確認や契約上の手当てが重くなります。
| 業務の性質 | 情報リスクが低い | 情報リスクが高い |
|---|---|---|
| 標準化しやすい | 優先して委託を検討する(データ入力、書類の発送など) | 管理体制と契約を固めたうえで委託する(給与計算、顧客データの更新など) |
| 判断を伴う | 判断基準を文書化できれば一部を委託する(一次問い合わせ対応など) | 原則として社内に残す(与信判断、人事評価など) |
ここまでの手順で、自社の業務の記録がどの程度そろっているかを確かめるために、次のセルフチェックを使ってください。
BPOの前に、業務の記録がそろっているかのセルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
ステップ3-4|棚卸の結果をRFPと手順書に引き継ぐ
RFP(提案依頼書)は、業務棚卸の結果を、事業者に伝わる要件に書き直したものです。棚卸表が整っていれば、業務の範囲、処理量、例外、求める水準の欄は、ほぼそのまま埋められます。
| RFPに書く項目 | 引き継ぐ元 |
|---|---|
| 委託する業務の範囲と成果物 | 棚卸表の「業務名・担当」「インプットとアウトプット」 |
| 処理量と繁閑差 | 棚卸表の「頻度と件数」(繁忙期を含めた実績) |
| 例外対応の範囲 | 棚卸表の「例外とその頻度」 |
| 扱う情報と求める管理体制 | 棚卸表の「扱う情報と権限」 |
| 使用システムと作業環境 | 棚卸表の「使用システム」 |
| 求める水準と報告の方法 | SLA案(定義、測定元、算出式と期間、基準値、未達時の対応) |
事業者の提案を比べるときは、件数、繁忙期、例外の扱いを同じ前提にそろえて見積もりを出してもらうことが大切です。前提が違うままでは、金額の差が業務の範囲の違いなのか、価格の違いなのか判断できません。提案の比較では、専門性、同種の業務の実績、情報セキュリティの管理体制、体制と対応できる規模、費用の内訳の5つを同じ書式で並べると、見比べやすくなります。
標準化|手順書に残す内容
委託先に選んだ事業者へ業務を引き継ぐ前に、手順書を整えます。手順書には、作業の手順だけでなく、判断の基準、例外が起きたときの連絡先とエスカレーションの条件、使うシステムの操作手順を残します。担当者の頭の中にしかない暗黙知は、棚卸の際に聞き取った例外処理の記録をもとに文書化すると漏れが減ります。特定の担当者しか手順を知らない属人化した業務は、棚卸の聞き取りでその人の判断の基準や例外の対応を言葉にし、手順書に落とし込む作業が標準化の中心になります。手順書は委託して終わりではなく、運用で見つかった抜け漏れを反映しながら更新していくものとして位置づけます。
ステップ5|SLA設計の基本|品質・スピード・コストの合意基準
SLA(Service Level Agreement)とは、委託先が提供するサービスの水準を、測定可能な指標と基準値で合意したものです。BPOでは、SLAが「委託先がきちんと仕事をしているか」を判断する共通のものさしになります。似た言葉にKPIがありますが、SLAは契約上の合意水準、KPIは運用状況を把握するための指標として使い分けると整理しやすくなります。たとえば「月次の処理エラー率0.5%以下」はSLA、「担当者別の処理件数」は改善のために見るKPIです。
SLAに設定する指標の3分類
BPOのSLAで使われる指標は、品質・スピード・コストの3つに分けて考えると漏れが少なくなります。すべての業務に同じ指標を並べるのではなく、その業務で問題が起きたときに一番困るのはどれかを考えて、重点を置く指標を選びます。
| 分類 | 代表的な指標 | 向いている業務の例 |
|---|---|---|
| 品質 | 処理の正確性(エラー率)、手順書の遵守率、再作業の件数 | 経理処理、給与計算、データ入力 |
| スピード | 納期遵守率、受付から完了までの処理時間、応答率 | 問い合わせ対応、受発注処理、書類発送 |
| コスト | 1件あたりの処理単価、追加作業の発生件数と費用 | 処理件数が大きく変動する業務全般 |
1つのSLAを5つの要素で書く
SLAが運用で機能しない原因の多くは、指標の名前だけを決めて中身を詰めていないことです。「エラー率を低く保つ」と書いただけでは、何をエラーと数えるのか、誰が集計するのかで解釈が分かれます。1つのSLAごとに、次の5つの要素を書き出して委託先と確認すると、運用開始後の食い違いを防げます。
| 要素 | 決める内容 | 記入例(請求書発行業務) |
|---|---|---|
| 定義 | 何を数えるか | 金額・宛先・送付先の誤りがあった請求書を1件のエラーとする |
| 測定元 | どのデータから誰が集計するか | 委託先の作業記録と、委託元に届いた訂正依頼を突き合わせて委託先が集計 |
| 算出式と期間 | どう計算し、いつ締めるか | エラー件数÷発行件数、月次で集計 |
| 基準値 | 合格ラインの数値 | 現状の社内実績をもとに、立ち上げ期と安定期で段階的に設定 |
| 未達時の対応 | 基準を下回ったときに何をするか | 原因と再発防止策の報告、2か月連続の場合は改善計画の提出 |
基準値は業務棚卸の実績から決める
SLAの基準値は、業務棚卸で把握した社内の実績値(ベースライン)を出発点にします。現状のエラー率や処理時間を知らないまま「業界ではこの程度が一般的」といった数字を置くと、現状より緩い基準で合意してしまったり、逆に社内でも達成できていない厳しい基準を課して委託先との関係がこじれたりします。立ち上げ直後は引き継ぎの影響で実績が揺れやすいため、最初の数か月は現状と同程度の基準にし、安定期に入ってから段階的に引き上げる設計がよく使われます。
インセンティブ・ペナルティと契約上の注意
SLAの未達に対して料金の減額などのペナルティを設ける場合や、達成時に報酬を上乗せする場合は、その条件を契約書に明記します。ペナルティを重くしすぎると、委託先がエラーの報告を控えるなど、かえって実態が見えにくくなることもあります。まずは未達時の原因報告と改善計画を中心に設計し、金銭的な取り決めは必要な範囲にとどめる方が運用しやすいケースが多いです。
また、BPOは一般に業務の遂行そのものを委託する請負・準委任の形をとるため、委託元の社員が委託先の担当者に直接細かな作業指示を出すと、実態として労働者派遣にあたる「偽装請負」と判断されるおそれがあります。派遣か請負かは契約の名称ではなく、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に基づいて実態で判断されます。SLAや手順書で成果物と水準を定め、日々の指示は委託先の責任者を通す体制にしておくことが大切です。判断に迷う場合は、厚生労働省の疑義応答集を確認するか、都道府県労働局や専門家に相談してください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約内容は専門家にご相談ください。
ステップ6|移行とテスト運用で確かめること
移行では、旧体制と新体制を並行して動かし、処理結果を照合してから本番に切り替えます。切り替えの可否は、次の項目を見て判断します。移行の体制づくりと進め方の詳細はBPOプロジェクトの進め方|立ち上げから安定稼働までの手順・体制・失敗対策で解説しています。
| 確認項目 | 見ること | 手順書・SLAへの反映 |
|---|---|---|
| 処理結果の照合 | 社内の処理結果と委託先の処理結果が、件数・金額で一致しているか | 食い違いの原因を手順書に追記する |
| 例外の差し戻し | 委託先が処理できず社内へ戻した件数と、その理由 | 委託先で対応する範囲と社内に残す範囲を決め直す |
| 問い合わせの件数 | 委託先から社内への質問の件数と内容 | 質問が多い箇所を手順書で補う |
| SLA指標の仮測定 | 合意した算出式で、実際に数字を出せるか | 測定元や集計の期間を見直す |
BPO導入でよくある失敗パターン
BPOプロセスの失敗は、委託先の能力よりも、委託前の設計不足に原因があることが少なくありません。特に多いのが、業務棚卸が不十分なままSLAを決めてしまうケースです。代表的なパターンと、事前にできる対策を整理します。
| 失敗パターン(Before) | 起きること | 対策(After) |
|---|---|---|
| 目的と測る指標を決めずに始めた | 委託後に成果を判断する基準がなく、評価が担当者の印象に左右される | ステップ1で目的と指標を書き出し、委託前の実績を記録しておく |
| 工数を把握しないまま委託費用を比較した | 委託後に「以前より高くなった」のか「安くなった」のか判断できない | 委託前に業務ごとの工数と人件費換算を記録し、比較の基準にする |
| 例外処理を棚卸表に書かなかった | 委託後に例外が社内へ差し戻され、社内の工数が思ったほど減らない | 例外の種類と頻度を記録し、委託先で対応する範囲と差し戻す範囲を決めておく |
| 基準値を感覚で決めた | SLAは毎月達成しているのに、現場の不満が減らない | 社内の実績値をベースラインにして、改善したい水準を数値で合意する |
| 繁忙期の件数を見ていなかった | 月末や決算期に処理が追いつかず、納期遵守率が大きく下がる | 繁忙期を含む期間で件数を記録し、ピーク時の処理量と体制を契約で確認する |
| 担当者の暗黙知を手順書にしなかった | 委託先から問い合わせが頻発し、元の担当者が結局対応し続ける | 並行稼働の期間を設け、問い合わせ内容を手順書に反映する |
これらの失敗に共通するのは、委託前の業務の姿が数字で残っていないことです。SLAは委託先との約束であると同時に、委託前と委託後を比べるための基準でもあります。社内の実績を記録していなければ、どれだけ丁寧にSLAを設計しても、その数字が妥当かどうかを確かめる手段がありません。委託を決める前の段階から、業務ごとの工数を継続して記録しておくと、SLA設計の土台がそろいます。
ステップ7|BPOの効果測定の方法|SLA達成率と工数削減を測る
BPOの効果測定では、委託先の水準を見る「SLA達成率」と、自社にとっての成果を見る「工数削減効果」の2つを分けて確認します。SLAをすべて達成していても、社内の工数が減っていなければ、委託の目的は果たせていない可能性があります。
SLA達成率の測り方
SLA達成率は、合意した指標ごとに「基準値を満たした月の割合」や「基準値に対する実績の比率」で確認します。月次の報告書には、実績値だけでなく、未達があった場合の原因と対策、翌月の見通しまで含めてもらうと、数字の背景が分かります。集計は委託先が行うことが多いですが、委託元に届いた訂正依頼や問い合わせの件数など、委託元側で把握できるデータと突き合わせると、報告の信頼性を確認できます。
工数削減効果の測り方
工数削減効果は、業務棚卸で記録した委託前の工数と、委託後に社内に残った工数を比べて確認します。見落としやすいのが、委託先とのやり取りや品質確認、例外対応といった「管理工数」です。委託によって作業そのものは減っても、管理工数が想定以上にかかっていると、実際の削減効果は小さくなります。
| 測定項目 | 委託前 | 委託後に確認すること |
|---|---|---|
| 作業工数 | 業務棚卸で記録した月間の作業時間 | 社内に残った作業の時間 |
| 管理工数 | なし(または上長の確認時間のみ) | 委託先との連絡、品質確認、例外対応、定例会議の時間 |
| 費用 | 作業工数の人件費換算 | 委託費用と管理工数の人件費換算の合計 |
| 空いた時間の使い道 | (記録なし) | 削減できた時間をどの業務に振り向けたか |
最後の「空いた時間の使い道」は数値にしにくい項目ですが、BPOの目的がコア業務への集中であれば、最も重要な成果です。削減できた時間で何に取り組んだかを四半期ごとに記録しておくと、委託の継続や範囲拡大を判断する際の説得材料になります。
委託後の運用改善|定期的な工数とSLAの見直し
BPOプロセスは、契約して委託を始めたら終わりではありません。業務量や制度、社内のシステムは変化するため、委託開始時に決めた範囲やSLAも定期的に見直す必要があります。見直しを仕組みとして回すために、次のようなサイクルを設けておくと運用が安定します。
- 月次:SLAの実績と未達の原因、例外の件数を確認し、手順書の修正が必要な点を洗い出す
- 四半期:社内に残った作業工数と管理工数を集計し、委託前の工数と比べて効果を確認する
- 半期から年次:業務棚卸表を更新し、委託範囲の拡大・縮小やSLA基準値の改定を検討する
- 随時:法改正や社内システムの変更があったとき、手順書と情報の取扱いルールを見直す
業務棚卸表を「生きた台帳」にする
委託前に作った業務棚卸表を、委託後も更新し続けることが運用改善の要です。委託した業務は委託先の実績で、社内に残した業務は社内の工数記録で更新すると、どの業務にどれだけの時間とコストがかかっているかを常に把握できます。この台帳があれば、次に委託を検討する業務の候補も見つけやすくなり、委託先との契約更新時の交渉材料にもなります。委託後の運用の進め方はBPO運用の進め方|検討から安定化まで5段階と定着のPDCAもあわせて参考にしてください。
個人情報を扱う業務は取扱状況も確認する
顧客や従業員の個人データを扱う業務を委託している場合、委託元には委託先を監督する義務があります。個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)は、法第25条に基づく委託先の監督として、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における個人データの取扱状況の把握を求めています。SLAの月次報告に、アクセス権限の付与・削除状況やインシデントの有無を含めてもらうと、運用改善の確認と監督を一度に行えます。
こうした見直しを続けるには、委託後も、社内に残った業務と管理工数を同じ分類で記録し続ける仕組みが欠かせません。委託前だけ工数を記録して、委託後は記録をやめてしまうと、効果測定も次の改善も根拠のない議論になってしまいます。月次の報告で見る指標(例外の件数や管理工数など)が自社独自で、委託先の様式に合わせて自社の型を崩したくない場合の一例が、株式会社ビーブレイクシステムズの「MA-EYES」です。予算や企業規模、運用ニーズに合わせて導入できるクラウドのERPで、クラウドでありながら標準機能へのカスタマイズが柔軟で、分析設定にも独自の項目を追加できると商品ページで案内されています。自社の指標を項目として加え、毎月同じ形で集計するといった使い方が考えられます。導入前から導入後までのフルサポート体制も備えています。一方で、工数管理に特化しているため、工程管理には対応していない可能性があると商品ページに記載があります。工程の管理まで同じシステムで行いたい場合は、対応範囲を事前に確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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自社に合った柔軟なプロジェクト管理を実現したい方におすすめ

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テックファーム株式会社のMA-EYES導入事例(2016年5月時点のインタビュー。効果は各社の導入条件によって異なります) 出典:ERP導入事例 テックファーム様(株式会社ビーブレイクシステムズ)
よくある質問(FAQ)
Q1. BPOプロセスとは何ですか?
A. 委託前の設計(目的の明確化、業務棚卸、委託範囲の決定、事業者の選定、標準化、SLA設計)と、委託後の運用・効果測定・改善までを一続きで進める流れのことです。「プロセス」は業務プロセスを指し、自社の業務を整理してから委託することが出発点になります。
Q2. BPOプロセス(導入の流れ)はどのようなステップで進めますか?
A. 目的の明確化、業務棚卸と委託範囲の決定、RFPの作成と事業者の選定、標準化、SLA設計と契約、移行とテスト運用、本稼働と改善の7ステップで進めるのが一般的です。委託先を探す前の設計が、委託の成否を大きく左右します。
Q3. BPOとBPR・アウトソーシングは何が違いますか?
A. アウトソーシングは業務の一部を外部に任せる手法の総称で、BPOは業務の設計から運用までをまとまりで任せる点が特徴です。BPRは業務プロセスそのものを抜本的に見直す取り組みで、BPRで見直してからBPOで任せるという順で組み合わせることもあります。
Q4. PMOとBPOの違いは何ですか?
A. PMOはプロジェクトの進捗や課題を整理し、管理のルールを整える支援の機能で、BPOは業務プロセスの実行を外部の事業者に任せる手法です。PMOの業務そのものをBPOで任せることもできますが、最終的な判断は発注側に残ります。
Q5. 業務棚卸ではどのような項目を記録し、工数はどう見積もればよいですか?
A. 業務名と担当、インプットとアウトプット、頻度と件数、工数、例外とその頻度、扱う情報と権限、使用システムを同じ粒度で記録します。工数は、ヒアリングで業務一覧を作り、2週間から1か月程度の作業記録で実績を取り、システムのログで件数を裏づける方法が現実的です。月末などに集中する業務は、繁忙期を含む期間で記録します。
Q6. SLAの基準値はどう決め、委託後はどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
A. 業務棚卸で把握した社内の実績値を出発点にし、定義、測定元、算出式と期間、基準値、未達時の対応の5つを書き出して委託先と確認します。見直しは、月次でSLAの実績と例外を確認し、四半期ごとに作業工数と管理工数を集計し、半期から年次で業務棚卸表と基準値を更新するサイクルが目安です。
まとめ
BPOプロセスは、目的の明確化と業務棚卸から始まり、RFPと手順書、SLA設計を経て、委託後の効果測定と改善まで続く一連の流れです。次の5つを押さえると、委託の準備と運用を進めやすくなります。
- 委託の目的を、測る指標とセットで決め、業務棚卸では業務を同じ粒度で一覧化して、工数と例外の頻度を数値で記録する。
- 棚卸の結果をRFPと手順書に引き継ぎ、提案は件数・繁忙期・例外を同じ前提にそろえて比べる。
- SLAは品質・スピード・コストの中から重点指標を選び、定義・測定元・算出式と期間・基準値・未達時の対応の5要素で委託先と合意する。
- 委託後もSLA達成率と、社内の作業工数・管理工数を測り続け、業務棚卸表を更新しながら委託範囲と基準値を見直す。
- 案件ごとの工数・原価の記録が分散している場合は、ZACやMA-EYESなどの業務管理システムの資料を取り寄せ、数字を1か所にそろえられるかを確かめる。
まずは、委託を考えている業務の月間の作業時間を、繁忙期を含めて書き出すところから始めてみてください。書き出した数字が、委託する範囲とSLAの基準値を決める最初の材料になります。
参考文献
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 日本能率協会コンサルティング(JMAC)「ECRS(改善の4原則)」用語集 https://www.jmac.co.jp/glossary/a-m/ecrs.html