SaaSの今後はどうなる?AIエージェントと価格モデルの転換・日本市場の展望と企業の備え

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  • SaaSはなくなるのではなく、AIの普及で提供の形と料金の決め方が作り直されている
  • シート課金から使用量・成果ベースへの転換で、契約条件の確認がより重要になる
  • 利用中のSaaSの棚卸しと契約情報の一元管理が、どんな変化にも効く備えになる

「SaaSの今後」が気になって調べている方の多くは、AIエージェントの登場でSaaSはどう変わるのか、いま使っているサービスの料金や契約はこの先どうなるのか、自社として何に備えればよいのかを知りたいのではないでしょうか。2026年に入り、海外ではソフトウェア企業の株価が大きく下がる局面があり、「SaaSpocalypse(SaaSの黙示録)」という言葉まで使われるようになりました。一方で、SaaSへの支出そのものは今後も増えるという予測も多く、見通しは「なくなる」か「伸びる」かの二択では語れません。この記事では、変化の中心にある「価格モデルの転換」を軸に、AIエージェントの影響、日本市場の特徴、そしてSaaSを使う企業の側が今から進めておける備えまでを、中立的な立場で整理します。投資判断を目的とした記事ではない点をあらかじめご了承ください。

いちばん気になる論点から、読むべき章を診断

Q1. SaaSの今後で、いちばん気になるのは?

目次

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  1. SaaSの契約見直しに備える電子契約システムの比較
  2. SaaS市場の現状|AI SaaSの急成長と「SaaSの死」論
  3. 「SaaSpocalypse」とは何が起きたのか
  4. 価格モデルの転換|シート課金から使用量・成果ベースへ
  5. AIエージェントは「マシンカスタマー」になるのか
  6. 日本市場への影響と展望(2030年に向けて)
  7. SaaS利用企業が今からできる備え
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

SaaSの契約見直しに備える電子契約システムの比較

SaaSの今後を考えるうえで、利用する企業の側に最初に効いてくるのは「契約」の変化です。この記事で詳しく見ていくように、SaaSの料金はユーザー数に応じた定額から、使った量や成果に応じた課金へと移り始めています。料金体系が変わると、更新のたびに新しい条件の契約書や申込書、利用規約への同意が発生し、どの契約がいつ更新され、どんな条件で結ばれているのかを把握しておく必要が高まります。紙やメール添付で契約を交わしていると、条件変更の履歴を追いにくく、気づかないうちに不利な条件で自動更新されていた、ということも起こりえます。

そこで、契約の締結から保管、更新期限の管理までをオンラインでまとめられる電子契約システムが、SaaS時代の契約管理の土台として役立ちます。当サイトの中小企業向け電子契約システムの比較記事では、選ぶ際の重要なポイントとして「電子署名のタイプは当事者型か立会人型か」「自社の契約件数とコストが見合っているか」「自社に必要な機能が搭載されているか」の3つを挙げています。比較記事で紹介されているサービスのうち、特徴の異なる3つを抜き出すと次のとおりです。

サービス名(提供会社) 強み 留意点
マネーフォワード クラウド契約(株式会社マネーフォワード) 契約書の作成、申請・承認、締結、保存、管理までひとつで完結。契約書送信料・保管料がかからず、契約書が増えても追加課金がない ハンコの印影の表現にもう少し工夫がほしいという声がある
freeeサイン(freeeサイン株式会社) リモートでも承認できるワークフローを搭載。従量課金制ではないため送信件数が増えても料金が変わらず、契約相手も電話サポートを利用できる 画面がシンプルな一方、機能の場所がわかりにくい部分もある
WAN-Sign(株式会社NXワンビシアーカイブズ) 紙とデジタルの契約書を一元管理でき、検索や権限設定などの利便性が高い。セキュリティと内部統制機能が充実している 利用に条件があり、プランによっては割高になる場合がある

電子契約システム自体もSaaSとして提供されているものが多く、料金体系は月額固定型、送信件数に応じた課金型などに分かれます。まさにこの記事のテーマである「価格モデルの違い」を、自社の契約件数に照らして選ぶ練習台にもなるでしょう。各サービスの詳しい比較や導入の流れは、比較記事でまとめています。

SaaS市場の現状|AI SaaSの急成長と「SaaSの死」論

SaaS市場は、縮小しているのではなく「伸び方の中身が変わっている」段階にあると整理できます。AIを組み込んだSaaSが急速に伸びる一方、従来型のサービスには厳しい目が向けられています。

SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアを自社のサーバーに導入せず、インターネット経由でサービスとして利用する形態です。基本的な仕組みやサブスクリプションとの違いはSaaSモデルとは|サブスクとの違いで解説しています。会計、勤怠、顧客管理、グループウェア、電子契約など、企業の業務のかなりの部分がすでにSaaSで動いており、総務省の情報通信白書でも、企業のクラウドサービスの利用が年々広がっていることが継続的に報告されています。

海外の調査会社や金融機関のレポートを見ても、SaaSへの支出や、AIを組み込んだSaaSの市場は今後も拡大するという見方が主流です。特に伸びが大きいのが、生成AIやAIエージェントを組み込んだ「AI SaaS」の領域で、市場規模が数年で何倍にもなるという予測が複数の調査会社から出ています。一方、国内でも第一ライフ資産運用経済研究所のレポートのように、AIエージェントがSaaS企業にとって脅威なのか追い風なのかを冷静に見直す分析が出ています(AIエージェントはSaaS企業の敵か味方か)。

一方で、2025年から2026年にかけて「SaaSの死」「SaaSはオワコン」といった強い言葉が広がりました。背景にあるのは、AIが人の代わりに業務をこなすようになると、人がログインして使うことを前提にしたSaaSの価値や料金の根拠が揺らぐのではないか、という懸念です。この論点の全体像はSaaSの死とは|利用者の3つのリスクやSaaS終焉論|論点・反論・判断軸で詳しく扱っています。本記事では「死ぬか、生き残るか」の議論には深入りせず、変化の具体的な中身と、使う側への影響に焦点を当てます。

観点 伸びている領域 見直しを迫られている領域
機能 AIによる自動処理、要約、判断支援を組み込んだサービス 人が画面で入力・操作することが前提の単機能サービス
データ 業務データを大量に蓄積し、AIの学習や分析に生かせるサービス データを外に出しにくく、ほかのサービスとつながりにくいサービス
料金 処理量や成果に応じて課金する設計 利用者数だけで料金が決まる設計

AIの普及でSaaSが直面する2つのリスクと、伸びると見られる領域

証券会社や業界メディアの分析では、AIの本格的な普及がSaaSにもたらすリスクとして、主に2つが挙げられています。1つは、利用企業がAIを使って業務用のソフトウェアを自社で作れるようになり、SaaSを契約する必要が薄れる「内製化」のリスクです。もう1つは、AIエージェントが人の作業を肩代わりすることで企業の従業員数が減り、利用者の人数に応じて課金するSaaSの売上が減るリスクです。

ただし、内製化については行き過ぎた見方だとする意見も少なくありません。AIで試作品のようなアプリを作ることはできても、大量の利用に耐える性能、セキュリティ、法令への対応、障害時の保守までを自社で担い続けるのは簡単ではないためです。そのため、SaaSがすべて置き換わるのではなく、「どの領域のSaaSが伸び、どの領域が見直されるのか」という選別が進むと見るのが現実的でしょう。複数の分析で共通して伸びる領域として挙げられているのは、次のようなものです。

伸びると見られる領域 理由 利用企業にとっての意味
既存のSaaSにAIエージェントを組み込んだサービス 蓄積された業務データを使ってAIに処理させられ、既存の契約をAI付きのプランに上げる形で売上を伸ばせる 使い慣れたサービスのままAIを試せる一方、上位プランや追加料金の条件を確認する必要がある
業界特化型(バーティカル)SaaS 建設、医療、物流など、業界固有の業務や規制の知見は汎用のAIでは代替しにくい 業界の商習慣に合った機能を選べるが、提供会社が小規模な場合は事業の継続性も確認したい
セキュリティ関連のSaaS AIの利用が広がるほど、情報漏えいや不正アクセスへの対策の重要性が高まる AI活用とあわせて、データの扱いや権限管理を見直すきっかけになる

「SaaSpocalypse」とは何が起きたのか

SaaSpocalypseは、AIエージェントの普及によってSaaS企業の収益モデルが崩れるのではないかという懸念から、海外のソフトウェア関連株が大きく売られた現象を指す造語です。SaaSの利用が止まったわけではなく、あくまで株式市場での評価の見直しである点に注意が必要です。

2026年に入り、AI企業が業務を自律的にこなすエージェント製品を相次いで発表したことをきっかけに、ソフトウェア関連銘柄の時価総額が短期間で大きく失われたと報じられました。市場が警戒したのは、AIエージェントが自ら計画を立て、人間の代わりにソフトウェアを直接操作して仕事を完結させる能力を持ち始めたことです。人が使う画面の使いやすさや、利用者の人数に応じた料金で稼いできたSaaSにとっては、ビジネスの前提が変わりうる出来事でした。経緯の詳細や分岐シナリオはSaaSはオワコン?アンソロピック・ショックの背景と3つの分岐シナリオでも整理しています。

ただし、この出来事の受け止め方はさまざまです。論点を整理すると、次のようになります。

論点 悲観的な見方 楽観的・中立的な見方
利用者数 AIが人の仕事を代替すると、ログインする人が減り、ユーザー数課金の売上が減る 課金の単位を処理量や成果に変えれば、売上はむしろ増える余地がある
画面(UI)の価値 AIが直接操作するなら、使いやすい画面の差別化が効かなくなる 人が確認・承認する場面は残り、画面が不要になるわけではない
自社開発との競争 AIで業務アプリを簡単に作れるようになり、SaaSを買う必要が薄れる 法改正対応、セキュリティ、保守まで自社で担うのは負担が大きく、SaaSの価値は残る
データの価値 AI企業がデータを取り込み、SaaSは単なるデータの置き場になる 業務データと業界の知見を持つSaaSこそ、AIを組み込みやすい立場にある

どちらの見方が当たるかは、提供会社ごと、業務領域ごとに異なるでしょう。利用企業の立場で押さえておきたいのは、株価の動き自体よりも、その背景にある「料金の決め方」と「使い方」の変化が、これからの契約更新に反映されてくるという点です。

価格モデルの転換|シート課金から使用量・成果ベースへ

SaaSの今後でもっとも実務への影響が大きいのが、料金の決め方の変化です。利用者1人あたりの定額(シート課金)から、処理した量に応じた課金(使用量ベース)や、得られた成果に応じた課金(成果ベース)へ移る動きが広がりつつあります。

なぜシート課金が揺らいでいるのか

これまでのSaaSの多くは、「1ユーザーあたり月額いくら」という料金体系でした。利用者が増えれば売上が増え、利用企業にとっても予算を立てやすいわかりやすい仕組みです。ところが、AIエージェントが人に代わって処理をこなすようになると、少ない人数で多くの仕事が回るようになり、人数を基準にした料金では、提供会社は売上を得にくく、利用企業は実際の価値と料金が一致しにくくなります。そのため、調査会社のIDCは2028年までに純粋なシート課金は廃れ、多くのソフトウェアベンダーが使用量ベースや成果ベースの課金に移行すると予測していると紹介されています(ITmediaオルタナティブ・ブログなどで引用)。

主な3つの価格モデルと利用企業への影響

価格モデル 課金の基準 利用企業のメリット 利用企業の注意点
シート課金 利用者の人数(アカウント数) 毎月の費用が読みやすく、予算化しやすい 使っていないアカウントにも費用がかかる
使用量ベース 処理件数、データ量、AIの利用回数など 使った分だけの支払いになり、小さく始めやすい 繁忙期やAIの使いすぎで費用が膨らみ、予算を超えやすい
成果ベース 解決した問い合わせ件数、自動化した業務など 効果が出た分だけ払うため、費用対効果を説明しやすい 「成果」の定義や計測方法を契約で決めておかないと、認識のずれが起きる

実際には、基本料金にユーザー数課金を残しつつ、AI機能の利用分だけを従量で上乗せする「ハイブリッド型」の料金が増えていくと考えられます。利用企業にとっての変化は、料金表を一度見れば済む時代から、「自社の使い方だといくらになるのか」を試算し、上限や条件を契約で確認する時代への移行だといえます。

価格モデルが変わると契約で確認すべきこと

料金体系が変わるとき、利用企業が契約書や利用規約で確認しておきたいのは、主に次の点です。

  • 従量課金の単位(何を1件と数えるのか)と、月ごとの上限・アラートの有無
  • 成果ベースの場合の「成果」の定義と、計測データを誰がどう確認できるのか
  • 料金改定の通知時期と、改定に同意しない場合に解約できる条件
  • 自動更新の有無と、解約の申し出期限
  • 契約終了時のデータの返却・削除の方法

こうした条件は、更新のたびに少しずつ変わる可能性があります。複数のSaaSを利用している企業ほど、どの契約がどの条件で、いつ更新されるのかを一覧で把握し、必要なときにすぐ原本を確認できる状態にしておくことが重要になります。紙の契約書を倉庫にしまっておく運用では、この変化の速さに追いつきにくいでしょう。契約の締結と保管、更新期限の通知をまとめて扱える電子契約システムは、こうした契約管理の負担を軽くする手段のひとつです。

AIエージェントは「マシンカスタマー」になるのか

マシンカスタマーとは、人ではなくAIやプログラムが「利用者」としてサービスを使う状態を指す言葉です。AIエージェントが人に代わってSaaSを操作するようになると、SaaSの設計や販売の相手が変わる可能性があります。

米Gartnerは、2026年末までに企業向けアプリケーションの40%にAIエージェントが組み込まれると予測していると、多くの解説記事で引用されています(Hexabaseのコラムなど)。AIエージェントが請求書の処理や問い合わせへの回答、データの入力を自動でこなすようになれば、SaaSにとっての「使い手」は人間の担当者だけではなくなります。

この変化は、SaaSの側に次のような対応を求めます。

  • 画面を操作しなくても使えるよう、API(外部のプログラムからつなぐ窓口)を充実させる
  • AIが何をしたのかを後から確認できる操作記録(ログ)を残す
  • AIに任せる範囲と、人が承認すべき範囲を設定できる権限管理を用意する
  • AIによる大量の処理を前提にした料金体系に切り替える

利用企業の側から見ると、AIエージェントに業務を任せることは便利な反面、「誰が、何を根拠に、どの操作をしたのか」が見えにくくなるリスクもあります。特に契約、支払い、個人情報の扱いなど、責任が問われる業務では、AIに任せる範囲を決め、最終的な判断は人が行う体制が求められるでしょう。経済産業省も、DXの推進にあたってはデジタル技術の導入そのものより、業務や組織のあり方を見直すことが重要だと繰り返し示しています。AIエージェントの導入でも、どの業務をどこまで任せるのかという設計が、ツール選び以上に成果を左右すると考えられます。

なお、「マシンカスタマー」の時代になっても、SaaSがすぐに不要になるわけではありません。AIエージェントが動くには、正確な業務データと、法令や社内ルールに沿った処理の仕組みが必要です。そうした土台を提供するのは、これまで業務を支えてきたSaaSであることが多く、むしろAIとつながるかどうかがSaaSを選ぶ新しい基準になっていくと見られます。

日本市場への影響と展望(2030年に向けて)

日本のSaaS市場は、海外の変化の影響を受けつつも、独自の事情から当面は利用の拡大が続くと見られます。ただし、価格モデルの転換やAIへの対応は、国内の提供会社や利用企業にも数年遅れで波及していくでしょう。

国内の市場規模について、富士キメラ総研が2025年9月に発表した調査では、企業向けソフトウェア53品目のSaaS/PaaS市場は2029年度に3兆3,975億円(2024年度比73.0%増)に達すると予測されています。2025年度も前年度比10%以上伸びて3兆円を超える見込みとされ、先行していたマーケティング領域に加えて、バックオフィスや基幹系システムでのクラウド化が進むことが成長の要因に挙げられています(富士経済グループのプレスリリース)。海外で「SaaSの死」が語られる一方、国内では利用の拡大がまだ続いているというのが、数字から見える現状です。

日本市場ならではの3つの事情

事情 内容 SaaSの今後への影響
法制度への対応 電子帳簿保存法、インボイス制度など、業務のデジタル化を求める制度改正が続いてきた 制度対応を任せられるSaaSの需要は根強く、AIの自社開発では代替しにくい
人手不足 生産年齢人口の減少で、少ない人数で業務を回す必要が高まっている AIによる自動化への期待が大きく、AI SaaSの普及を後押しする
中小企業のデジタル化の遅れ 紙や表計算ソフト中心の業務がまだ多く残っている これからSaaSを導入する企業が多く、市場の伸びしろになる

経済産業省は、既存システムの老朽化や複雑化が放置されることで大きな経済損失が生じうるという問題を「2025年の崖」として示し、企業にシステムの刷新を促してきました。自社で抱えていた古いシステムをSaaSに置き換える動きは、この流れのなかで今後も続くと考えられます。国税庁が公表している電子帳簿保存法の資料でも、電子取引データの保存要件などが整理されており、契約書や請求書を電子で扱うための仕組みづくりは、多くの企業にとって避けて通れない課題になっています。

2030年に向けて想定される変化

将来を断定することはできませんが、国内外の動向から、2030年に向けて次のような変化が想定されます。

  • 国内SaaSでも、AI機能を従量課金で上乗せする料金プランが一般的になる
  • 単機能のSaaSは、ほかのサービスとの統合や提供会社どうしの再編が進む
  • 業種特化型(建設、医療、物流など)のSaaSが、業界の知見とデータを強みに存在感を増す
  • 利用企業では、SaaSの数と費用を管理する役割(SaaS管理)の重要性が高まる

海外で見られたような株式市場の急な変動が、日本でもそのまま起きるかどうかはわかりません。ただ、利用企業にとっては、提供会社の再編やサービス終了、料金改定が「いつ起きてもおかしくない」前提で備えておくことが現実的です。

SaaS利用企業が今からできる備え

SaaSの今後がどう転んでも役に立つのは、「今使っているSaaSと、その契約条件を把握しておくこと」です。ここでは、多くの競合記事が触れていない、利用企業の側で今日から進められる5つの備えを紹介します。

1. 利用中のSaaSを棚卸しする

部署ごとに個別に契約したSaaSが増えると、会社全体で何にいくら払っているのかが見えなくなります。サービス名、利用部署、契約者、料金体系、更新日、利用者数を一覧にし、使われていないアカウントや、機能が重複しているサービスがないか確認しましょう。価格モデルが従量課金に変わると、この一覧が費用管理の出発点になります。

2. 契約書と利用規約をすぐ確認できる状態にする

SaaSの契約は、オンラインの申込画面での同意だけで済むことも多く、どの条件に同意したのかが記録として残りにくい面があります。申込時の画面や規約の版、個別に交わした契約書や覚書を、サービスごとにまとめて保管しておきましょう。料金改定や解約の条件を確認したいときに、すぐ根拠を示せることが交渉の土台になります。

3. 更新日と解約期限を管理する

自動更新のSaaSでは、解約の申し出期限を過ぎると次の契約期間分の費用が確定してしまいます。料金体系の変更が更新のタイミングで適用されることも多いため、更新日の数か月前に条件を確認し、見直すかどうかを判断できる仕組みを作っておくと安心です。

4. データの持ち出し方法を確認する

提供会社の再編やサービス終了、乗り換えに備えて、データをどの形式で書き出せるのか、契約終了後どのくらいの期間データが保持されるのかを確認しておきましょう。特定のサービスから抜け出せなくなる「ベンダーロックイン」を避けるためにも重要な確認事項です。

5. AIに任せる範囲のルールを決める

SaaSにAI機能が組み込まれると、便利さと引き換えに、社内データがどのように扱われるのかを確認する必要が出てきます。入力したデータがAIの学習に使われるかどうか、AIが自動で行った処理を誰が確認するのかなど、社内のルールを先に決めておくと、新しい機能を安心して試せます。

よくある失敗 起きること 防ぐための備え
料金改定の通知を見落とす 新しい料金のまま自動更新され、想定外の費用が発生する 更新日と通知の受け取り先を一覧で管理する
従量課金の上限を設定しない AI機能の利用が増え、月の請求額が膨らむ 契約前に上限やアラートの有無を確認する
契約条件の記録がない 解約や返金の条件を確認できず、交渉ができない 契約書と同意した規約の版をまとめて保管する
データの移行方法を知らない サービス終了時にデータを取り出せず、業務が止まる 書き出し形式と保持期間を事前に確認する

これらの備えに共通するのは、契約情報を一か所にまとめ、必要なときにすぐ取り出せるようにしておくことです。SaaSの契約だけでなく、取引先との契約も含めて電子化しておけば、締結から保管、更新期限の管理までを同じ仕組みで扱えます。契約件数や必要な機能に合わせて選べるよう、比較記事で各サービスの特徴を確認してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. SaaSは今後なくなるのですか?

A. なくなるという見方は少数派です。海外の調査会社の予測でもSaaSへの支出は今後も増えるとされており、変わるのはSaaSそのものの存在ではなく、料金の決め方や提供のされ方だと整理する論調が中心です。

Q. SaaSpocalypseとは何ですか?

A. AIエージェントの普及でSaaS企業の収益モデルが崩れるのではないかという懸念から、海外のソフトウェア関連株が大きく売られた現象を指す造語です。SaaSの利用が止まったわけではなく、株式市場での評価の見直しである点に注意が必要です。

Q. SaaSの料金は今後どう変わりますか?

A. 利用者の人数に応じたシート課金から、処理した量に応じた使用量ベースや、得られた成果に応じた成果ベースの課金へ移る動きが広がっています。当面は、基本料金に人数課金を残し、AI機能の利用分を従量で上乗せするハイブリッド型が増えると考えられます。

Q. AIエージェントが「マシンカスタマー」になるとはどういう意味ですか?

A. 人ではなくAIエージェントが利用者としてSaaSを操作する状態を指します。SaaSにはAPIの充実や操作記録、権限管理などが求められ、利用企業にはAIに任せる範囲と人が判断する範囲を決めることが求められます。

Q. 日本のSaaS市場は今後も伸びますか?

A. 法制度への対応、人手不足、中小企業のデジタル化の遅れといった事情から、当面は利用の拡大が続くと見られます。一方で、価格モデルの転換やサービスの統合・再編は、国内にも波及していくと考えられます。

Q. SaaSを利用する企業は今何をすべきですか?

A. 利用中のSaaSの棚卸し、契約書と利用規約の保管、更新日と解約期限の管理、データの持ち出し方法の確認、AIに任せる範囲のルールづくりが挙げられます。いずれも契約情報を一か所にまとめておくことが土台になります。

まとめ

SaaSの今後は、「なくなる」か「伸び続ける」かではなく、AIエージェントの普及によって提供の形と料金の決め方が作り直されていく段階にあります。利用企業にとって特に影響が大きいのは、シート課金から使用量・成果ベースへの価格モデルの転換で、これからの契約更新では条件の確認がこれまで以上に重要になります。

  • SaaS市場は縮小ではなく、AIを組み込んだ領域を中心に中身が入れ替わりながら伸びている
  • 価格モデルの転換により、従量課金の単位や上限、料金改定の条件を契約で確認する必要が高まる
  • AIエージェントが利用者になる時代に向けて、AIに任せる範囲のルールづくりが欠かせない
  • 今日からできる備えは、SaaSの棚卸しと、契約情報を一か所にまとめて管理すること

変化の方向を完全に予測することはできませんが、契約と利用状況を把握しておけば、どのような変化にも落ち着いて対応できます。まずは利用中のSaaSの一覧づくりと、契約書の保管方法の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、投資判断や法的助言を行うものではありません。

参考文献

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