勤怠管理とは?法律上の義務・システムの選び方・失敗しないポイントを解説【2026年最新】
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- 勤怠の意味と勤務との違い、勤怠管理が法律上の義務とされる根拠がわかる
- 記録すべき項目と保存期間、紙・Excel・システムの管理方法の違いがわかる
- 勤怠管理システムの選び方と、警備業など業種別の注意点・失敗パターンがわかる
勤怠(きんたい)とは、従業員の出勤・欠勤・遅刻・早退・休憩・休暇の取得状況など、日々の勤務の状況を指す言葉です。そして勤怠を記録・集計し、給与計算や法令対応に使える状態で管理することを勤怠管理と呼びます。勤怠管理は「やったほうがよい業務」ではなく、労働基準法や労働安全衛生法によって、従業員を1人でも雇う事業者に求められている義務です。
とはいえ、「タイムカードで記録しているが月末の集計が重い」「テレワークや直行直帰が増えて出退勤を把握しきれない」「法改正のたびに就業規則と計算方法を見直すのが不安」といった悩みを抱える担当者は少なくありません。この記事では、勤怠の意味と勤務との違い、勤怠管理が義務とされる法的根拠、記録すべき項目と保存期間、紙・Excel・システムといった管理方法の比較、勤怠管理システムの選び方、業種別の注意点、よくある失敗パターンまでを、厚生労働省などの公的資料をもとに整理します。勤怠管理システムの機能そのものを詳しく知りたい方は勤怠管理システムとは?機能と選び方をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
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勤怠管理システムの比較|汎用型2サービスの特徴
勤怠管理をシステム化するなら、まず「打刻方法の柔軟性」と「自社の就業規則・法改正への対応力」の2軸で比べると違いが見えやすくなります。ここでは、業種を問わず使える汎用型のクラウド勤怠管理システムとして、特徴の異なる2サービスを比較の一例として紹介します。どちらにも長所と留意点があり、自社の課題に合うほうを選ぶことが大切です。
| 比較項目 | ジンジャー勤怠 | オフィスステーション |
|---|---|---|
| 提供会社 | jinjer株式会社 | 株式会社エフアンドエム |
| 向いているケース | オフィス・外回り・テレワークなど、働く場所が混在していて打刻方法を柔軟に選びたい | 自社独自の就業規則や運用ルールに合わせて設定し、法改正にも追従させたい |
| 主な強み(GOOD) | パソコン・スマホ・タブレット・交通系ICカード・Chatwork・Slack・GPS・顔認証など打刻方法が多い。初期設定から定着まで電話・チャット・WEBでサポートし、問い合わせは24時間365日受付 | 自社の就業規則に合わせて管理でき、独自の運用や要望にも対応。法改正に合わせた無償アップデートがあり、完全従量制で追加費用なしに全機能を利用できる |
| 他システムとの連携 | ジンジャー人事労務や給与計算ソフトとの連携に対応 | 他社システムとの連携には対応していない |
| 留意点(MORE) | スマホアプリでは申請・修正画面がわかりにくいという声がある | 機能は豊富だが、既存の他社製給与ソフト等とデータ連携したい場合は運用方法の確認が必要 |
選び分けの目安としては、テレワークや直行直帰が多く「どこで働いても同じ手順で打刻させたい」ならジンジャー勤怠のように打刻手段の選択肢が多いサービス、「変形労働時間制や独自の手当ルールなど、就業規則の再現性を最優先したい」ならオフィスステーションのように自社ルールへの合わせ込みと法改正対応を強みとするサービスが検討しやすくなります。一方で、既に他社製の給与計算ソフトを使っていて勤怠データを自動で受け渡したい場合は、連携の可否が選定の分かれ目になります。この点は後述の「勤怠管理システムの選び方」で詳しく解説します。
なお、警備業のように交代制・夜勤・現場直行が前提となる業種では、汎用型ではなく業種特化型のシステムが適する場合があります。警備業向けの考え方は業種別に見る勤怠管理の注意点(警備業)で紹介しています。より多くのサービスを横並びで比較したい方は勤怠管理システムおすすめ20選(全36選)を比較も参考になります。
ここがおすすめ!
- 初期設定から定着まで電話・チャット・WEBなどでサポート
- 24時間365日お問い合わせ可能
- スマホアプリ対応で場所を問わず簡単に打刻ができる
- 月末の締め日に見直すだけで簡単に勤怠管理ができる
- 個人だけでなくチーム全体の勤怠管理ができる
ここが少し気になる…
- スマホアプリだと申請や修正画面がわかりにくい
-
以前は1台のパソコンでしか作業ができず、作業待ちが発生していましたが、クラウド型のジンジャー勤怠を導入したことで、場所を問わず複数人が同時にアクセス・作業できるようになりました。業務効率が大きく向上しました。
-
jinjer勤怠を利用することによって、取り急ぎ問題となっていた「社内システムでは不可能な日付を跨いだ打刻」に関する問題が解決しました。 また、個人個人で日勤・夜勤がバラバラになっているシフト管理も、あらかじめスケジュールを登録できることにより解決しました。現場の責任者からも「シフト表を作る手間が省けた!」と大変好評でした。 労務部の立場としても、無理なシフトになっていないかの連携がリアルタイムにできることは大きなメリットでした。
-
打刻の漏れや修正についての対応漏れが減った(対応率が向上した)また管理職としてメンバーの勤怠管理が容易になった。管理部門側での対応負荷も減ったようで業務時間が減少、効率化が実現できたため導入満足度は高かった
ここがおすすめ!
- 自社の就業規則に合わせて管理でき、独自の運用や要望にも対応
- 法改正に合わせて無償アップデートを行い、永続的に利用できる
- 従業員1名あたり300円で運用でき、追加費用なしで全機能利用可能
ここが少し気になる…
- 豊富な機能が備わっているが、他社システムとの連携には対応していない
勤怠とは|意味・読み方と「勤務」「勤怠管理」との違い
勤怠は「きんたい」と読み、「勤しむ(いそしむ)」と「怠る(おこたる)」を組み合わせた言葉で、働いたか休んだかという勤務の状況全体を表します。出勤・退勤の時刻だけでなく、欠勤・遅刻・早退・休憩・休日出勤・有給休暇の取得までを含むのが特徴です。「勤退」と書くのは誤りで、正しくは「勤怠」と表記します。
似た言葉に「勤務」があります。勤務は「会社に勤めて職務に従事すること」そのものを指すのに対し、勤怠は「その勤務がどのような状況だったか」を記録として捉える言葉です。たとえば「今月の勤務は20日だった」は働いた事実を、「今月の勤怠を締める」は出勤日数・残業時間・休暇取得などの記録をまとめる作業を指します。実務では「勤怠連絡(遅刻・欠勤の連絡)」「勤怠の締め(月次の集計確定)」「勤怠不良(遅刻・欠勤が多い状態)」といった使い方をします。
| 用語 | 意味 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 勤怠 | 出勤・欠勤・遅刻・早退・休憩・休暇などを含む勤務の状況 | 勤怠を締める、勤怠連絡を入れる |
| 勤務 | 会社に勤めて職務に従事すること | 勤務先、勤務時間、夜間勤務 |
| 出勤・出社 | 出勤は仕事を始めること、出社は会社(オフィス)に行くこと | 在宅で出勤する、明日は出社する |
| 勤怠管理 | 勤怠を客観的に記録・集計し、給与計算や法令対応に使える状態で管理すること | 勤怠管理システムを導入する |
テレワークの普及で「出勤しているが出社はしていない」という状態が当たり前になり、出勤と出社を区別して記録する必要性が高まっています。この2つの違いは出勤と出社の違い|勤怠管理を解説で詳しく整理しています。
勤怠管理の目的は大きく3つあります。1つ目は、残業代や休日出勤手当を含めて給与を正しく計算すること。2つ目は、時間外労働の上限や年次有給休暇の取得義務といった法令を守ること。3つ目は、長時間労働を早めに見つけて従業員の健康を守ることです。3つ目の健康確保は見落とされがちですが、後述するとおり労働安全衛生法が「労働時間の状況の把握」を求める直接の理由になっています。つまり勤怠管理は、給与担当の事務作業であると同時に、従業員の健康と会社の法令順守を支える基盤でもあるのです。
勤怠管理が企業の義務とされる法的根拠
勤怠管理の義務は、主に労働基準法(労働時間・休日・割増賃金・年次有給休暇・賃金台帳)と労働安全衛生法(労働時間の状況の把握)の2つの法律から生じています。どちらも従業員の人数や業種を問わず、労働者を1人でも雇用する事業者が対象です。正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣労働者も含まれます。
厚生労働省は2017年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定し、使用者は労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録すること、その方法は原則として使用者自らの現認か、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録など客観的な記録を基礎とすることを示しています。やむを得ず自己申告制とする場合も、申告時間と入退場記録・パソコンの使用時間との間に著しい乖離があれば実態調査と補正を行うことが求められています(出典:厚生労働省「ガイドラインの主なポイント」)。
| 根拠となる法令 | 事業者に求められること | 勤怠管理で必要になる記録 |
|---|---|---|
| 労働基準法第32条・第35条 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)と法定休日(毎週少なくとも1回)を守る | 日ごとの始業・終業時刻、休憩時間、休日 |
| 労働基準法第36条 | 36協定の範囲内で時間外・休日労働をさせる。上限は原則月45時間・年360時間 | 月ごと・年ごとの時間外労働時間、休日労働時間 |
| 労働基準法第37条 | 時間外・休日・深夜労働に割増賃金を支払う | 時間外・休日・深夜それぞれの労働時間数 |
| 労働基準法第39条 | 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に年5日を確実に取得させ、年次有給休暇管理簿を作成する | 付与日・付与日数・取得日・残日数 |
| 労働基準法第108条・第109条 | 賃金台帳を作成し、労働関係の重要な書類を保存する | 労働日数・労働時間数・時間外等の時間数、出勤簿・タイムカード |
| 労働安全衛生法第66条の8の3 | 健康確保のため、客観的な方法で労働時間の状況を把握する | 出退勤時刻・入退室時刻・パソコンのログイン/ログアウト時刻など |
時間外労働の上限は、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満かつ2から6か月の平均がいずれも80時間以内とされ、原則の月45時間を超えられるのは年6か月までです(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)。「月100時間未満」「2から6か月平均80時間以内」は休日労働を含めて判定するため、残業時間だけを見ていると違反に気づけない点が勤怠管理の難しいところです。
管理職(管理監督者)も勤怠管理の対象になる
「管理職は残業代が出ないから勤怠管理はいらない」という誤解はよくあります。確かに、労働基準法第41条の管理監督者には労働時間・休日に関する規定が適用されません。しかし、2019年4月施行の改正労働安全衛生法により、労働時間の状況の把握は、管理監督者、裁量労働制の適用者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、派遣労働者、短時間労働者などを含めた全ての労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)が対象とされました。時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者には、管理監督者も含めて、その時間に関する情報を速やかに本人へ通知する必要があります(出典:岩手労働局「平成31年4月施行の安衛法の改正点」)。
また、年5日の年次有給休暇の確実な取得は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者であれば管理監督者を含めて対象です(出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」)。管理職の勤怠を記録していない会社は、健康確保と有給取得の両面で確認漏れが起きやすいため、一般社員と同じ仕組みで記録しておくのが安全です。
なお、本記事は勤怠管理に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。自社の就業規則や労使協定の解釈に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家に確認してください。
勤怠管理で記録すべき項目と保存期間
勤怠管理で記録すべき項目は、始業・終業時刻、休憩時間、時間外・休日・深夜の労働時間、出勤日と休日、遅刻・早退・欠勤、年次有給休暇の取得状況が基本です。これらは給与計算に使う賃金台帳の記載事項と重なっており、勤怠の記録が不正確だと、そのまま給与の誤りにつながります。
| 記録項目 | なぜ必要か | 記録時の注意点 |
|---|---|---|
| 始業・終業時刻 | 労働時間を確定させる出発点 | 所定の時刻ではなく実際の時刻を記録する |
| 休憩時間 | 実労働時間の計算と休憩付与義務の確認 | 休憩中に電話番をさせると手待時間として労働時間になり得る |
| 時間外・休日・深夜の労働時間 | 割増賃金の計算と36協定の上限管理 | 休日労働を含む合計でも上限を確認する |
| 出勤日・休日・欠勤・遅刻・早退 | 賃金の控除や手当の計算、法定休日の確保 | 振替休日と代休を区別して記録する |
| 年次有給休暇の取得状況 | 年5日の取得義務と年次有給休暇管理簿の作成 | 付与日(基準日)が人ごとに違う場合は個別に管理する |
記録の保存期間にも注意が必要です。2020年4月施行の改正労働基準法により、賃金台帳や、出勤簿・タイムカードといった賃金計算に係る記録など、労働基準法第109条の対象となる記録の保存期間は原則5年に延長され、経過措置として当分の間は3年とされています。保存期間の起算日も明確化され、たとえば賃金の支払期日が記録の完結日より後になる場合は、その支払期日から起算する必要があります(出典:厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」)。あわせて、労働安全衛生法にもとづく労働時間の状況の記録は3年間の保存が求められています。
紙のタイムカードで数年分を保管すると、保管場所の確保や、労働基準監督署の調査・労使トラブルの際に必要な月だけを探し出す手間が負担になります。保存期間を満たしつつ必要な記録をすぐ取り出せるかどうかも、勤怠管理の方法を選ぶ際の判断材料になります。
勤怠管理の方法4つを比較|紙・タイムカード・Excel・システム
勤怠管理の方法は、紙の出勤簿、タイムカード、Excel、勤怠管理システムの4つに大別され、従業員数と働き方が多様になるほどシステムの優位性が高まります。少人数で全員が同じ場所・同じ時間帯に働く職場なら、紙やタイムカードでも運用は可能です。一方、テレワーク・シフト制・複数拠点が混在すると、集計と確認の手間が一気に増えます。
| 方法 | 記録の客観性 | 集計の手間 | 法改正への対応 | 向いている職場 |
|---|---|---|---|---|
| 紙の出勤簿 | 低い(自己申告になりやすい) | 大きい(手計算) | 担当者が手作業で見直す | 従業員が数名で働き方が単純 |
| タイムカード | 比較的高い(打刻機の記録) | 大きい(転記・集計が必要) | 担当者が手作業で見直す | 1拠点で全員が同じ場所に出社 |
| Excel | 低い(入力値を後から変更できる) | 中程度(関数で自動化できるが保守が必要) | 計算式を自社で改修する | 少人数で、表の管理に慣れた担当者がいる |
| 勤怠管理システム | 高い(打刻ログ・GPS等を保持) | 小さい(自動集計) | 提供会社のアップデートで追従しやすい | テレワーク・シフト制・複数拠点がある |
Excelは無料で始められる手軽さが魅力ですが、入力した時刻を後から書き換えられるため、ガイドラインが求める「客観的な記録」としては弱くなりがちです。また、36協定の上限や有給の付与日数を関数で管理していると、法改正や就業規則の変更のたびに計算式を見直す必要があり、作った担当者しか仕組みを理解していない属人化も起きやすくなります。
テレワークでの勤怠管理では、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が参考になります。同ガイドラインでは、テレワークで使うパソコンなど情報通信機器の使用時間の記録によって労働時間を把握する方法が示されるとともに、労働時間管理の方法や中抜け時間の取扱いを、あらかじめ労使で話し合ってルール化しておくことが重要とされています。オフィスのタイムカードでは在宅勤務の時間を記録できないため、テレワークがある職場ほどクラウド型の勤怠管理が選ばれやすくなっています。クラウド型の仕組みや費用の考え方はクラウド勤怠とは?導入メリット・費用相場・選び方を徹底解説で詳しく解説しています。
費用面では、クラウド型の勤怠管理システムは初期費用と、従業員1人あたりの月額従量課金を組み合わせた料金体系が多く見られます。紙やExcelは利用料がかからない代わりに、毎月の転記・集計・確認に担当者の時間が使われています。システムの利用料だけを比べるのではなく、担当者の作業時間や集計ミスの修正にかかる手間まで含めて比較すると、自社にとっての費用対効果を判断しやすくなります(後述のシミュレーターで試算できます)。
勤怠管理システムの選び方|導入前に確認する4つの観点
勤怠管理システムは、打刻方法・就業規則と法改正への対応・給与計算との連携・サポート体制の4つの観点で確認すると、導入後のミスマッチを防げます。機能の多さや料金の安さだけで決めると、現場に定着しなかったり、給与計算の段階で手作業が残ったりしがちです。
打刻方法は「働く場所」に合わせて選ぶ
打刻方法には、パソコンのブラウザ打刻、スマートフォンアプリ(GPSで位置を記録)、ICカード、顔認証、生体認証、チャットツールからの打刻などがあります。オフィス勤務中心ならパソコン打刻とICカード、外回りや直行直帰が多いならスマホのGPS打刻、店舗や工場で共有端末を置くなら顔認証やICカードといったように、働く場所ごとに最適な方法は異なります。1つの会社の中に複数の働き方が混在している場合は、打刻方法を複数併用できるかが重要です。
また、打刻漏れを本人に自動で通知する機能や、GPS・IPアドレスで打刻できる場所を制限する機能があると、不正打刻の防止と月末の修正作業の削減につながります。拠点や働き方ごとの打刻方法の選び方は勤怠管理システムの打刻方法とは?拠点・働き方別の選び方で詳しく比較しています。
自社の就業規則と法改正に対応できるか
勤怠管理システム選びで最も差が出やすいのが、自社の就業規則をどこまで再現できるかです。1か月単位・1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、交代制勤務、独自の手当の計算ルールなどが正しく設定できないと、システムを入れても一部を手計算で補う運用が残ってしまいます。導入前のデモや無料トライアルでは、自社で実際に起きている複雑なケース(深夜をまたぐ勤務、休日出勤の振替、月の途中での入退社など)を設定し、計算結果を手計算と突き合わせて確認するのが確実です。
もう1つの確認ポイントが法改正への追従です。時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇の取得義務のように、勤怠管理に関わる制度はここ数年で大きく変わってきました。法改正のたびに自社で計算方法やアラートの条件を作り直す必要があるのか、提供会社のアップデートで自動的に反映されるのかによって、運用の負担は大きく変わります。自社独自の運用ルールへの合わせ込みと、法改正時の無償アップデートの両方を重視するなら、オフィスステーションのように就業規則への対応力を強みとするサービスが候補になります。
ここがおすすめ!
- 自社の就業規則に合わせて管理でき、独自の運用や要望にも対応
- 法改正に合わせて無償アップデートを行い、永続的に利用できる
- 従業員1名あたり300円で運用でき、追加費用なしで全機能利用可能
ここが少し気になる…
- 豊富な機能が備わっているが、他社システムとの連携には対応していない
給与計算・労務管理との連携方法を確認する
勤怠データの最終的な行き先は給与計算です。勤怠管理システムと給与計算ソフトの間でデータを自動連携できるのか、CSVで出力して取り込むのか、手入力で転記するのかによって、毎月の締め作業の負担は大きく変わります。同じシリーズの人事労務・給与計算製品と連携できるサービスもあれば、他社システムとの連携に対応していないサービスもあります。既に給与計算ソフトを使っている場合は、そのソフトとどのような方法でデータを受け渡すのかを、導入前に具体的に確認しておきましょう。給与・会計ソフトとの連携の考え方は給与・会計ソフトと連携できる勤怠管理システムとはで詳しく解説しています。
給与明細の作成まで自社で行っている場合は、勤怠の締めから給与明細の発行までの流れを一度書き出してみると、どこに手作業が残っているかが見えてきます。給与明細の必須記載項目は給与明細テンプレートの作り方と必須記載項目で確認できます。
サポート体制と定着までの支援
勤怠管理システムは、導入時の初期設定(就業規則・雇用区分・承認ルートの登録)が最も手間のかかる工程です。電話・チャット・メールでの初期設定支援があるか、問い合わせ窓口の受付時間はどうか、操作説明の資料が従業員向けにも用意されているかを確認しましょう。特にITツールに不慣れな従業員が多い職場では、打刻画面のわかりやすさがそのまま定着率を左右します。導入・切り替えの具体的な進め方は勤怠管理システムの導入・切り替えで失敗しないための進め方が参考になります。
業種別に見る勤怠管理の注意点
勤怠管理の難しさは業種によって大きく異なり、「どこで打刻するか」「勤務時間帯がどう組まれているか」「誰が勤務実績を確認するか」の3点で課題が分かれます。自社の業種の特徴を先に整理しておくと、システムに求める機能の優先順位が明確になります。
オフィスワーク・テレワーク中心の企業
オフィスワーク中心の企業で問題になりやすいのは、テレワーク時の労働時間の把握と、いわゆる「隠れ残業」です。退勤打刻の後もパソコンで作業を続けていたり、持ち帰り仕事をしていたりすると、記録上の労働時間と実態が乖離します。パソコンのログイン・ログアウト時刻と打刻時刻を突き合わせ、大きな乖離があれば理由を確認する運用にしておくと、ガイドラインが求める実態調査にも対応しやすくなります。中抜け時間の扱いを就業規則でどう定めるかも、テレワークを本格的に運用する前に決めておきたいポイントです。
店舗・工場・建設現場
店舗や工場ではシフト制・交代制が多く、日によって始業時刻や休憩の取り方が変わります。シフトの作成と実績の打刻が別々に管理されていると、予定と実績の差(シフト外の残業、休憩の取り忘れ)を把握しにくくなります。シフト作成機能と勤怠管理が一体になっているか、店舗の共有端末で打刻できるかが重要です。
建設業では、現場への直行直帰が多く、事務所のタイムカードでは実際の始業・終業時刻を記録できないという課題があります。さらに建設事業は、長く時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年4月1日から上限規制が適用されています(出典:岩手労働局「平成31年4月施行の安衛法の改正点」)。現場でスマホから打刻でき、月の途中でも残業時間の累計を確認できる仕組みがあると、上限に近づいた作業員を早めに把握できます。派遣スタッフが多い職場は、派遣先と派遣元で勤怠をやり取りする仕組みも必要になるため、派遣スタッフの勤怠管理とは?派遣先・派遣元間の仕組みと管理システムの選び方もあわせて確認してください。
警備業|交代制・現場直行・上番下番報告という特殊性
警備業は、勤怠管理の難易度が特に高い業種の1つです。警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、令和7年12月末時点で警備業者は1万949業者、警備員は59万6,985人にのぼり、警備員数100人未満の警備業者が全体の90.3%を占めています。業務区分別に見ると、交通誘導などの2号警備業務を行う業者が75.3%、施設警備などの1号警備業務を行う業者が63.7%と、日々異なる現場へ隊員を配置する形態が多いのが特徴です。また警備員の年齢構成では70歳以上が21.6%を占めており、スマホ操作に不慣れな隊員でも使える打刻方法が求められます。
警備業の勤怠管理が難しい理由は、主に3つあります。1つ目は、隊員が事務所に立ち寄らず現場へ直行直帰するため、上番(勤務開始)・下番(勤務終了)の報告を電話や紙で受け、管制担当者が転記していることが多い点です。2つ目は、日勤・夜勤・24時間勤務などの交代制勤務が組み合わさり、深夜手当や残業の計算が複雑になる点です。3つ目は、現場ごとに異なる配置人数・契約単価があり、勤怠の実績がそのまま取引先への請求の根拠になる点です。
加えて、夜間の施設警備などで生じる仮眠・待機時間の扱いにも注意が必要です。厚生労働省のガイドラインは、使用者の指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間)は労働時間に該当すると示しています。仮眠時間であっても、警報や呼び出しへの対応が義務付けられている場合は労働時間と判断される可能性があるため、勤務体系ごとに休憩・仮眠の扱いを整理しておくことが欠かせません。
こうした事情から、警備業では汎用型の勤怠管理システムよりも、配置(シフト)・上下番管理・給与計算・請求計算までを一体で扱える業種特化型のシステムが検討されます。警備フォースは、複雑な勤務体系や交代制勤務に対応したシフト作成、出退勤や勤務実績のクラウド上での自動集計、打刻機能とログ管理による勤務時間の把握を特徴とする警備業向けのシステムです。1号・2号警備の配置管理、LINEでの上下番報告、残業・深夜手当の自動計算、請求計算の自動化といった機能を備えています。一方で、料金は問い合わせが必要とされているため、隊員数や利用したい機能を整理したうえで見積もりを依頼するとよいでしょう。業界全体の動向は、一般社団法人全国警備業協会の「警備業の概況」でも確認できます。
ここがおすすめ!
- 複雑な勤務体系や交代制勤務にも対応し、シフト作成をスムーズに行える
- 出退勤や勤務実績をクラウド上で自動集計し、労務管理の手間を削減
- 打刻機能やログ管理により、勤務時間を正確に把握でき、透明性を確保
ここが少し気になる…
- 料金を確認するには問い合わせが必要
勤怠管理システム選定でよくある失敗パターン3つ
勤怠管理システムの導入でつまずく原因は、「料金だけで選ぶ」「現場の打刻環境を確認しない」「給与計算との受け渡しを確認しない」の3つに集約されます。いずれも導入前の確認で防げるものです。スイッチを切り替えると、それぞれの回避策を確認できます。
失敗パターン1:料金の安さだけで選んだ。変形労働時間制や独自手当が設定できず、結局Excelでの手計算が残った。
失敗パターン2:高機能だが現場に合わない打刻方法を選んだ。現場で打刻されず、月末に打刻漏れの修正申請が集中した。
失敗パターン3:給与計算との受け渡しを確認しなかった。勤怠データを給与ソフトへ手入力で転記し、二重入力と転記ミスが続いた。
3つの失敗に共通するのは、「管理部門の目線だけで選んでいる」ことです。勤怠管理システムを日々使うのは現場の従業員であり、毎月の締めを行うのは給与担当者です。選定の段階から、現場の代表者と給与担当者をトライアルに参加させておくと、導入後に「使われない」「結局手作業が残る」という事態を防ぎやすくなります。
もう1つ見落とされやすいのが、切り替え時期の設計です。給与の締め日の途中でシステムを切り替えると、1か月の中に旧方式と新方式の記録が混在し、集計の二重作業が発生します。賃金計算期間の区切りに合わせて切り替え日を決め、最初の1か月は旧方式の集計結果と並行して突き合わせると、設定ミスを早期に発見できます。
勤怠管理にかかる時間を数値で確認する
勤怠管理の負担は、「従業員数×1人あたりの集計・確認時間」でおおまかに見積もることができます。以下のシミュレーターで、自社の従業員数と、1人あたり毎月どれくらいの時間を転記・集計・確認に使っているかを入力し、システム化した場合に削減できる時間の目安を試算してみてください。
簡易シミュレーター:勤怠管理のシステム化で削減できる作業時間を試算
システム化すると、毎月約3.8時間、年間で約45時間の削減が見込めます。
※入力値と削減割合をもとにした簡易計算です。実際の削減効果は、就業規則の複雑さや運用方法によって異なります。
試算で出た時間は、そのまま担当者の工数です。削減できた時間を、36協定の上限に近い従業員へのフォローや、有給休暇の取得計画づくりといった「法令を守るための管理」に振り向けられるのが、システム化の本当の効果といえます。勤怠の集計だけでなく給与計算まで含めて社内の負担が大きい場合は、給与計算代行(アウトソーシング)とは?依頼できる内容や費用相場のように、業務自体を外部に任せる選択肢もあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 勤怠とはどういう意味ですか?「勤退」とは書かないのですか?
A. 勤怠(きんたい)は「勤しむ」と「怠る」を組み合わせた言葉で、出勤・欠勤・遅刻・早退・休憩・休暇の取得など、従業員の勤務の状況全体を指します。正しい表記は「勤怠」で、「勤退」は誤りです。勤務の状況を記録・集計して給与計算や法令対応に使える状態で管理することを勤怠管理と呼びます。
Q2. 勤怠管理は従業員が1人でも必要ですか?
A. はい、必要です。労働基準法と労働安全衛生法は、労働者を1人でも雇用する事業者に適用されます。正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も対象です。厚生労働省のガイドラインでは、始業・終業時刻を原則としてタイムカードやパソコンの使用時間の記録など客観的な記録で確認・記録することが求められています。
Q3. 管理職(管理監督者)も勤怠管理の対象ですか?
A. 対象です。管理監督者には労働基準法の労働時間・休日の規定が適用されませんが、労働安全衛生法にもとづく労働時間の状況の把握は、管理監督者を含む全ての労働者(高度プロフェッショナル制度の対象者を除く)が対象です。年5日の年次有給休暇の確実な取得も、年10日以上の年次有給休暇が付与される管理監督者に適用されます。
Q4. タイムカードなどの勤怠記録は何年保存すればよいですか?
A. 賃金台帳や、出勤簿・タイムカードなど賃金計算に係る記録は、2020年4月の改正労働基準法により保存期間が原則5年とされ、経過措置として当分の間は3年とされています。労働安全衛生法にもとづく労働時間の状況の記録は3年間の保存が必要です。起算日は、賃金の支払期日が記録の完結日より後になる場合はその支払期日となる点にも注意してください。
Q5. 勤怠管理システムを選ぶとき、最初に何を確認すべきですか?
A. まず、自社の働き方に合った打刻方法があるか、自社の就業規則(変形労働時間制・交代制・独自手当など)を正しく設定できるかを確認しましょう。そのうえで、給与計算ソフトとの連携方法、法改正時のアップデート、初期設定のサポート体制を比べます。無料トライアルで複雑な勤務ケースを実際に設定し、手計算と突き合わせるのが確実です。
Q6. 警備業のように交代制・現場直行が多い業種でも勤怠管理システムは使えますか?
A. 使えます。ただし、警備業は上番・下番の報告、日勤・夜勤・24時間勤務の組み合わせ、現場ごとの配置と請求計算など特有の管理が必要なため、汎用型よりも警備業向けに設計されたシステムのほうが運用に合う場合があります。仮眠・待機時間が労働時間に当たるかどうかも、勤務体系ごとに整理しておくことが大切です。
まとめ|今日からできる4つのこと
勤怠とは、出勤・欠勤・遅刻・早退・休暇などを含む従業員の勤務の状況であり、それを客観的に記録・管理する勤怠管理は、労働基準法と労働安全衛生法にもとづく事業者の義務です。従業員数や働き方が多様になるほど、紙やExcelでの管理は集計負担と法令違反のリスクが大きくなります。まずは次の4つから始めてみてください。
- 今の記録方法が「客観的な記録」になっているか確認する:自己申告のExcelや紙だけに頼っていないか、管理職の勤怠も記録しているかを見直します。
- 記録項目と保存期間を点検する:始業・終業時刻、休憩、時間外・休日・深夜の時間、有給の取得状況が揃っているか、賃金台帳やタイムカードを必要な期間保存できているかを確認します。
- 働く場所と就業規則を書き出す:オフィス・テレワーク・現場など打刻する場所と、変形労働時間制や交代制などの就業規則を一覧にし、システムに求める条件を整理します。
- 勤怠管理システムをトライアルで比較する:打刻方法・就業規則への対応・給与計算との連携・サポート体制の4観点で候補を絞り、現場と給与担当者を交えて実際に試してから決めます。
勤怠管理は、給与を正しく払うための事務作業であると同時に、従業員の健康と会社の信頼を守る仕組みです。法令の解釈に迷う場合は所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に相談しつつ、自社の働き方に合った方法を選んでいきましょう。
参考文献
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(ガイドラインの主なポイント)」、2026年9月24日確認
- 岩手労働局「平成31年4月施行の安衛法の改正点(労働時間の状況の把握・面接指導)」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年4月1日)」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」、2026年9月24日確認
- 厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」、2026年9月24日確認
- e-Gov法令検索「労働基準法」、2026年9月24日確認
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」、2026年9月24日確認
- 警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年における警備業の概況」、2026年9月24日確認
- 一般社団法人全国警備業協会「警備業の概況」、2026年9月24日確認

