決算書とは?財務三表の読み方・種類・電帳法対応まで中小企業向けに解説

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  • 決算書の意味と計算書類の4つがわかる
  • 財務三表の読み方と4つの指標がわかる
  • 作り方・提出期限・保存期間と電帳法がわかる

決算書とは、会社が1事業年度の経営成績と、決算日時点の財産の状態をまとめた書類の総称です。会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれ、中小企業の多くは貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つを作成します。法人税の申告に添付するだけでなく、融資の審査や取引先の与信判断、株主への報告、経営者自身の判断材料としても読まれます。本記事では、決算書の意味、財務三表の読み方、含まれる書類の一覧、作り方と提出先・期限、自分で作れるか、他社の決算書の入手先、保存期間と電子帳簿保存法との関係、よくある失敗までを、経理担当者や中小企業の経営者向けに順に解説します。

決算書のどこでつまずいている? かんたん診断

Q1. いま知りたいのはどちらですか?

目次

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  1. 決算書とは|正式には財務諸表・計算書類という
  2. 財務三表の読み方|貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書
  3. 決算書に含まれるその他の書類|株主資本等変動計算書・個別注記表ほか
  4. 決算書の作り方|流れ・提出先と期限・自分で作れるか
  5. 電子帳簿保存法(電帳法)と決算書作成の関係
  6. 決算書作成でよくある失敗パターン
  7. 中小企業が決算書を活用する場面|融資・取引・経営判断
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

決算書とは|正式には財務諸表・計算書類という

決算書とは、会社の1事業年度の経営成績と、決算日時点の財産の状態をまとめた書類の総称です。「決算書」は実務上の呼び方で、法律上は、会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれます。

中小企業庁の「中小企業の会計 31問31答」では、決算とは一会計期間の経営成績と期末の財政状態を確認する作業で、そのために作成される書類が決算書だと説明されています。株式会社の計算書類は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つで、これに加えて事業報告と附属明細書の作成が義務づけられています。

計算書類と財務諸表の違い

すべての株式会社は、会社法にもとづいて計算書類を作成します。会社法第435条では、株式会社は各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの)と事業報告、これらの附属明細書を作成しなければならないとされています。一方、財務諸表は、上場企業など金融商品取引法の適用を受ける会社が有価証券報告書に含めて開示する書類で、キャッシュ・フロー計算書の作成が求められます。

項目 計算書類 財務諸表
根拠となる法律 会社法 金融商品取引法
作成する会社 すべての株式会社(合同会社なども会社法上の計算書類を作成) 上場企業など有価証券報告書を提出する会社
主な書類 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表 貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書、附属明細表
主な報告先 株主、債権者 投資家(内閣総理大臣への提出を通じて開示)

つまり、多くの中小企業が作る「決算書」は、会社法上の計算書類に、法人税の申告で添付する勘定科目内訳明細書などを加えたものを指すのが一般的です。中小企業にはキャッシュ・フロー計算書の作成義務はありませんが、資金繰りを把握する目的で任意に作成する会社もあります。

決算書を作る4つの目的

  • 株主への報告:経営を任されている取締役が、1年間の成果と財産の状況を株主に説明し、株主総会に提出する
  • 税務申告:法人税の確定申告書には貸借対照表や損益計算書を添付する。課税所得は決算書の利益をもとに調整して計算する
  • 利害関係者への信用の提示:金融機関の融資審査や取引先の与信判断で、決算書の提出を求められる
  • 経営判断:利益の出ている事業、資金が滞っている部分などを数字で把握し、次の打ち手を考える

決算書の数字は日々の記帳の積み上げで決まる

決算書は、決算日を過ぎてから一から作るものではなく、1年分の仕訳を集計した結果として出来上がります。日々の記帳に誤りがあれば、様式を丁寧に整えても数字は正しくなりません。表計算ソフトで帳簿をつけて決算期にまとめて集計する方法では、転記漏れや科目の付け間違いが決算直前に見つかり、作業が集中しやすくなります。自社で記帳している、月次で業績を確認したい、決算期の作業を分散させたいといった場面の一例が、マネーフォワード クラウド会計です。商品ページでは、2,400社以上の金融機関との連携で取引明細を取り込めること、AIが登録済みの仕訳を学習して勘定科目を提案すること、仕訳データの入力から決算書やキャッシュフローレポートを自動で作れることが紹介されています。一方で、AIが誤った仕訳を学習する可能性があるため、入力内容の確認は欠かせません。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。取引の件数がごく少なく、顧問税理士に記帳から任せている会社であれば、無理に導入する必要はありません。

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個人事業主の決算書との違い

個人事業主の場合は会社法の計算書類ではなく、所得税の確定申告で青色申告決算書や収支内訳書を作成します。青色申告決算書にも損益計算書と貸借対照表の欄がありますが、様式や記載内容は法人の決算書とは異なります。法人成りを検討している場合は、作成する書類が変わる点を押さえておきましょう。

財務三表の読み方|貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書

財務三表は、損益計算書で儲かっているか、貸借対照表でつぶれないか、キャッシュ・フロー計算書でお金が回っているかの順に見ると、決算書の全体像をつかめます。それぞれが示す内容と、最初に確認したいポイントは次のとおりです。

書類 示す内容 確認ポイント
損益計算書(P/L) 1年間の収益、費用、利益(経営成績) 本業で稼げているか(営業利益)、利益率が前期と比べてどう変わったか
貸借対照表(B/S) 決算日時点の資産、負債、純資産(財政状態) 短期の支払いに対応できるか(流動比率)、自己資本の厚さ(自己資本比率)
キャッシュ・フロー計算書(C/F) 1年間の現金の増減とその理由 本業で現金を生み出せているか(営業キャッシュ・フローがプラスか)

損益計算書|5つの利益で「儲かっているか」を見る

損益計算書は、売上高から費用を段階的に差し引き、5つの利益を示す書類です。売上高から売上原価を引いたものが売上総利益(粗利)、そこから販売費及び一般管理費を引いたものが営業利益、受取利息や支払利息などの営業外損益を加減したものが経常利益、固定資産の売却損益など臨時の特別損益を加減したものが税引前当期純利益、法人税等を差し引いたものが当期純利益です。

最初に見たいのは営業利益です。本業でどれだけ稼げているかを表すため、営業利益が赤字なのに経常利益が黒字という場合は、本業以外の収入で補っている状態と読み取れます。また、当期純利益だけを見ると、土地の売却益などの一時的な要因で黒字に見えることがあるため、段階ごとの利益を順に追うのが基本です。

貸借対照表|資産と調達元で「つぶれないか」を見る

貸借対照表は、左側に資産(お金をどう使っているか)、右側に負債と純資産(お金をどこから集めたか)を並べた書類で、資産の合計が負債と純資産の合計に常に等しくなります。資産と負債は、1年以内に現金化または支払いが予定されている流動資産・流動負債と、それ以外の固定資産・固定負債に分かれます。

安全性を見る代表的な指標は、流動資産を流動負債で割った流動比率と、純資産(自己資本)を総資本で割った自己資本比率です。流動比率が100%を下回っていると、1年以内に支払う債務を1年以内に現金化できる資産でまかなえない状態を意味します。自己資本比率は業種によって目安が異なるため、同業他社や自社の過去の数字と比べて見るのが現実的です。流動比率の計算式や改善の考え方は、流動比率とは?計算式・業種別目安・改善策を財務省データで解説で詳しく扱っています。

キャッシュ・フロー計算書|「お金が回っているか」を見る

キャッシュ・フロー計算書は、1年間の現金の動きを、営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて示す書類です。損益計算書の利益と手元の現金は一致しません。売上を計上しても売掛金が回収できていなければ現金は増えず、黒字なのに資金が足りなくなる、いわゆる黒字倒産の原因になります。

一般的には、営業キャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で設備投資(投資キャッシュ・フローのマイナス)を行い、余った分で借入れを返済している(財務キャッシュ・フローのマイナス)状態が健全とされます。営業キャッシュ・フローが続けてマイナスの場合は、売掛金の回収条件や在庫の持ち方を見直すきっかけになります。

財務三表はつながっている

3つの書類は独立しているわけではありません。損益計算書の当期純利益は、配当などを除いて貸借対照表の純資産(利益剰余金)に積み上がります。また、キャッシュ・フロー計算書の期末の現金残高は、貸借対照表の現金及び預金と対応します。この関係を知っておくと、書類間で数字が合わないときに、どこかの記帳に誤りがあると気づけます。

読み方の早見表|最初に確認する4つの指標

決算書を初めて読むときは、すべての数字を追うよりも、次の4つの指標から確認すると要点をつかみやすくなります。いずれも前期、できれば3期分を並べて推移を見るのが基本です。

指標 計算の考え方 載っている書類 見方
売上高営業利益率 営業利益を売上高で割る 損益計算書 本業の売上のうち、どれだけ利益が残っているか。前期や同業と比べる
流動比率 流動資産を流動負債で割る 貸借対照表 100%を下回ると、1年以内の支払いを1年以内に現金化できる資産でまかなえない状態
自己資本比率 純資産(自己資本)を総資本で割る 貸借対照表 返済不要の資金でどれだけ運営しているか。業種で目安が違うため同業や自社の過去と比べる
営業キャッシュ・フロー 営業活動によるキャッシュ・フローの金額 キャッシュ・フロー計算書 プラスか、利益に比べて現金が増えているか

月次決算の読み方|試算表で決算書を先取りする

月次決算とは、決算日を待たずに毎月、試算表で損益と残高を確認する作業です。読み方の基本は年次の決算書と同じで、当月と累計の損益計算書で売上総利益と営業利益を、貸借対照表で預金残高と借入金の増減を、前月や前年同月と比べます。月次で数字が合っていれば、年次の決算書を作る段階で大きなずれが見つかる事態を減らせます。

決算書に含まれるその他の書類|株主資本等変動計算書・個別注記表ほか

会社法上の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つで、事業報告と附属明細書もあわせて作成します。財務三表のうち貸借対照表と損益計算書以外の書類と、法人税申告で添付する書類は次のとおりです。

株主資本等変動計算書

貸借対照表の純資産の部が、1年間でどのような理由で増減したかを示す書類です。当期純利益による増加、配当の支払いによる減少、増資や自己株式の取得などが記載されます。期首と期末の純資産の金額をつなぐ役割があり、貸借対照表の純資産と一致しているかどうかが確認のポイントです。合同会社などの持分会社では、社員資本等変動計算書と呼ばれます。

個別注記表

貸借対照表や損益計算書の数字だけでは分からない情報を補足する書類です。固定資産の減価償却の方法や棚卸資産の評価方法といった重要な会計方針、担保に入れている資産、会計方針の変更などが記載されます。会社の規模や種類によって記載が求められる項目は異なり、中小企業では記載項目が限られることが多いものの、同じ数字でも会計方針が違えば意味が変わるため、他社と比較するときは目を通しておきたい書類です。

事業報告・附属明細書・勘定科目内訳明細書

事業報告は、会社の状況や事業の経過を文章で説明する書類で、会社法第435条第2項により計算書類と並んで作成が求められます。附属明細書は、有形固定資産の増減や引当金の明細など、計算書類の内容を補足する書類です。また、法人税の確定申告では、預貯金や売掛金、借入金などの取引先別の内訳を記載した勘定科目内訳明細書を添付します。金融機関の融資審査では、この内訳明細書も細かく確認されることがあります。

書類 主な内容 中小企業での位置づけ
貸借対照表 決算日の資産・負債・純資産 会社法上の計算書類として作成
損益計算書 1年間の収益・費用・利益 会社法上の計算書類として作成
株主資本等変動計算書 純資産の増減とその理由 会社法上の計算書類として作成
個別注記表 会計方針などの補足情報 会社法上の計算書類として作成(記載項目は規模で異なる)
事業報告 事業の経過や会社の状況の説明 計算書類とは別に作成が求められる
附属明細書 固定資産の増減、引当金などの明細 計算書類・事業報告の補足として作成
キャッシュ・フロー計算書 現金の増減と理由 作成義務はないが、資金繰り管理のため任意で作る会社もある
勘定科目内訳明細書 主な勘定科目の取引先別内訳 法人税の申告書に添付

決算書の作り方|流れ・提出先と期限・自分で作れるか

決算書は、日々の仕訳を集計して試算表で検算し、決算整理仕訳を行ったうえで、貸借対照表と損益計算書などにまとめて作成します。決算日を過ぎてから一から作るのではなく、日々の記帳の積み上げが土台です。

決算書を作成する流れ

  1. 日々の取引を仕訳帳に記録し、総勘定元帳に転記する
  2. 試算表を作成し、借方と貸方の合計が一致しているか、残高が実際の預金や現金と合っているかを確認する
  3. 減価償却費の計上、売掛金や在庫の確定、未払費用や前払費用の調整などの決算整理仕訳を行う
  4. 決算整理後の試算表から貸借対照表と損益計算書を作成し、株主資本等変動計算書と個別注記表をまとめる
  5. 株主総会に提出し、確定した決算にもとづいて法人税等の申告書を作成する

帳簿の名称も押さえておくと、書類の関係が整理しやすくなります。仕訳帳と総勘定元帳は取引の全体を記録する主要な帳簿で、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳などは特定の勘定の動きを補う帳簿です。国税庁のタックスアンサーでも、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などが帳簿の例として挙げられています。売上台帳の書き方や保存期間は、売上台帳とは?書き方・記載例・保存期間・電子帳簿保存法対応を解説も参考になります。

提出先ごとの期限と提出する書類

決算書は、作って終わりではなく、税務署、株主、債権者など複数の相手に提出や開示をします。主な提出先と根拠、期限の目安は次のとおりです。

提出・開示先 根拠 期限・内容
税務署(法人税の確定申告) 法人税法第74条 事業年度終了の日の翌日から2か月以内。申告書に貸借対照表、損益計算書などを添付する。定款の定めや特別の事情で決算の定時株主総会が2か月以内に招集されない場合は、申請により期限の延長が認められる特例がある(同法第75条の2)
株主総会 会社法第438条 取締役が計算書類と事業報告を定時株主総会に提出または提供し、計算書類は承認を受ける。取締役会設置会社は、あらかじめ取締役会の承認を受ける(第436条第3項)。会計監査人設置会社で一定の要件を満たす場合は、承認ではなく内容の報告で足りる(第439条)
決算公告 会社法第440条 定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)を公告する。有価証券報告書を提出する会社は対象外
本店での備置きと閲覧 会社法第442条 計算書類などを定時株主総会の1週間前(取締役会設置会社は2週間前)から5年間、本店に備え置く。株主と債権者は営業時間内にいつでも閲覧を請求できる

本記事は一般的な情報の紹介であり、法的助言ではありません。決算書の提出方法や期限の延長の可否は、会社の種類や機関設計によって異なるため、個別の判断は税理士などの専門家や所轄の税務署、法務局に確認してください。決算整理仕訳や在庫の確定に時間がかかると申告期限が迫るため、月次で試算表を確認して決算期の作業を減らしておくことが大切です。

決算書は自分で作ってもよいか

決算書は、会社が自社で作成して構いません。会社法第435条は計算書類の作成義務を株式会社に課しており、条文には作成者の資格を限る定めはありません。会計ソフトで仕訳を入力すれば、貸借対照表や損益計算書を自動で出力できます。

ただし、他人の求めに応じて税務書類の作成や税務代理を業として行えるのは、税理士法により税理士などに限られています。記帳や申告書の作成を外部に任せる場合は、税理士に相談してください。自社で作る場合も、決算整理仕訳や会計方針の判断に不安があるときは、決算期だけ税理士に確認してもらう方法があります。

決算書はどこで入手できるか

自社の決算書は、会計ソフトから出力するか、記帳を任せている税理士から受け取ります。他社の決算書を見たい場合は、会社の種類によって入手先が異なります。

  • 上場企業など有価証券報告書を提出する会社:金融庁のEDINET(電子開示システム)で、提出された有価証券報告書の財務諸表を閲覧できる
  • 決算公告をしている会社:会社が定款で定めた方法で公告した貸借対照表を確認できる。公告の有無や掲載場所は会社ごとに異なる
  • 株主・債権者:会社法第442条にもとづき、営業時間内に計算書類などの閲覧を請求できる
  • 取引先の与信判断など:相手の会社に、直近の決算書の提出を依頼する

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電子帳簿保存法(電帳法)と決算書作成の関係

電子帳簿保存法は、税法で保存が義務づけられている帳簿や書類を、一定の要件のもとで電子データで保存することを認める法律です。パソコンで作成した決算書は要件を満たせば電子データのまま保存でき、紙で作った決算書をスキャンして保存する方法の対象にはなりません。

電帳法の3つの区分

区分 対象 決算書との関係
電子帳簿等保存 最初からパソコンで作成した帳簿や書類 会計ソフトで作成した仕訳帳・総勘定元帳や、貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類は、要件を満たせば電子データのまま保存できる
スキャナ保存 紙で受け取った、または作成した請求書や領収書など 貸借対照表、損益計算書、決算に関して作成された書類などは、スキャナ保存の対象から除かれている
電子取引 メールやWebで受け取った請求書などの取引データ 決算書の基になる取引の証拠書類。電子データでの保存が必要

2024年1月以降、電子取引で受け取ったデータは、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが求められています。決算書そのものの保存方法だけでなく、決算書の元になる請求書や領収書のデータをどう管理するかも、決算作業の効率に影響します。取引の証拠書類が紙と電子データに分かれていると、決算整理のときに確認の手間が増えるためです。経理業務全体を電子化していく進め方は、経理DXとは?電帳法・インボイス対応と進め方を3段階で解説で整理しています。

決算書や帳簿の保存期間

保存期間は、根拠となる法律ごとに異なります。国税庁の案内では、法人は帳簿と、取引に関して作成・受領した書類(貸借対照表、損益計算書、契約書、領収書など)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があり、青色申告書を提出した事業年度で青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年間とされています。会社法では、計算書類とその附属明細書を作成した時から10年間、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を会計帳簿の閉鎖の時から10年間保存することが定められています。

対象 根拠 保存期間
帳簿と、取引に関して作成・受領した書類(貸借対照表・損益計算書を含む) 法人税法(国税庁 タックスアンサー No.5930) 確定申告書の提出期限の翌日から7年間(青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年間)
計算書類とその附属明細書 会社法第435条第4項 作成した時から10年間
会計帳簿とその事業に関する重要な資料 会社法第432条第2項 会計帳簿の閉鎖の時から10年間

電子データで保存する場合も、この期間は検索や表示ができる状態を保つ必要があります。電子保存の具体的な要件(検索機能の確保、真実性の確保など)は、保存する書類の種類や会社の状況によって異なります。電子保存に切り替える際は、国税庁の電子帳簿保存法のページや一問一答を確認し、必要に応じて税理士に相談してください。

決算書作成でよくある失敗パターン

決算書の数字がおかしくなる原因の多くは、決算期の作業そのものではなく、日々の記帳の積み重ねにあります。中小企業で起きやすい失敗と、その改善策をBefore/After形式で整理します。

失敗パターン Before(起きがちな状態) After(改善後)
帳簿と決算書の不整合 表計算ソフトの集計式が途中で崩れ、貸借対照表の利益剰余金と損益計算書の利益が合わない 仕訳から決算書までを1つのデータで処理し、書類間の数字の一致を毎月確認する
預金残高のずれ 通帳と帳簿の残高を決算期まで照合しておらず、原因の特定に時間がかかる 月末ごとに通帳や入出金明細と帳簿残高を照合し、差額をその月のうちに解消する
決算整理仕訳の漏れ 減価償却費や未払費用の計上を忘れ、利益が実態より大きく表示される 決算整理の項目をチェックリスト化し、毎期同じ順番で確認する
勘定科目の使い方がばらばら 担当者によって同じ支出を別の科目で処理し、前期比較ができない よく使う取引の科目を社内ルールとして決め、継続して同じ処理をする
証拠書類が見つからない メールで受け取った請求書が個人のフォルダに散らばり、決算時に探し回る 電子取引のデータを決まった場所に、日付・金額・取引先で探せる形で保存する

これらの失敗に共通するのは、決算期に1年分をまとめて確認しようとしている点です。月次で試算表を出して確認する習慣があれば、ずれは小さいうちに見つかります。表計算ソフトの集計や書類間の整合確認を人の手に頼っている場合は、仕訳から決算書までを1つのデータで処理できる会計ソフトに切り替えるかどうかも、見直しの選択肢になります。

中小企業が決算書を活用する場面|融資・取引・経営判断

決算書は「税務署に出すための書類」と考えられがちですが、実際には社外のさまざまな相手に読まれています。誰がどの書類のどこを見ているかを知っておくと、自社の決算書を見直す際の優先順位がつけやすくなります。

読み手 主な目的 よく見られる箇所
金融機関 融資の可否や条件の判断 返済の原資となる利益とキャッシュ・フロー、借入金の残高、勘定科目内訳明細書の中身
取引先 取引開始や与信枠の判断 売上の規模と推移、自己資本比率、債務超過になっていないか
公的機関・入札 補助金の審査や入札参加資格の確認 直近の決算書の提出、財務状況の評価
経営者・社内 事業の見直しや投資の判断 事業ごとの粗利、販管費の内訳、営業キャッシュ・フローの推移

融資の場面で気をつけたいこと

金融機関は、決算書の利益だけでなく、その数字の信頼性も見ています。たとえば、社長への貸付金や仮払金が多額に残っている、売掛金が売上に比べて極端に大きいといった状態は、説明を求められやすい項目です。中小企業庁は、中小企業が無理なく利用できる会計ルールとして「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」を公表しており、こうしたルールに沿って決算書を作ることは、金融機関などに対して財務の透明性を示すことにつながります。

決算書を経営判断に使う3ステップ

決算書を社内の判断材料にする場合は、次の順番で確認すると要点をつかみやすくなります。

  1. 収益性を見る:損益計算書の売上総利益率と営業利益率を前期と比べ、どの段階で利益が増減したかを確認する
  2. 安全性を見る:貸借対照表の流動比率と自己資本比率で、支払い能力と財務の安定性を確認する
  3. 資金の流れを見る:営業キャッシュ・フローがプラスか、利益と比べて現金が増えているかを確認する

1期分の数字だけで良し悪しを判断するのは難しいため、少なくとも3期分を並べて推移を見るのが基本です。毎年同じ様式・同じ科目ルールで決算書を作っていれば、比較が容易になり、変化の理由も追いやすくなります。

この3つの確認を決算期だけでなく毎月行うには、月次で記帳が締まっていることが前提になります。仕訳データを自動で集計する会計ソフトであれば、月次の試算表や決算書のレポートをその都度確認でき、金融機関への説明材料も早めにそろいます。マネーフォワード クラウド会計の機能や対応範囲は、商品ページで確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 決算書とは何ですか?

A. 決算書とは、1事業年度の経営成績と決算日時点の財産の状態をまとめた書類の総称です。会社法では計算書類、金融商品取引法では財務諸表と呼ばれ、呼び方の根拠が異なります。上場企業などが作る財務諸表にはキャッシュ・フロー計算書が含まれ、会社法の計算書類には含まれないといった違いがあります。

Q2. 決算書にはどんな書類がありますか?

A. 会社法上の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つで、事業報告と附属明細書もあわせて作成します。法人税の確定申告では勘定科目内訳明細書も添付します。キャッシュ・フロー計算書は中小企業に作成義務はありませんが、資金繰り管理のために任意で作る会社もあります。

Q3. 決算書は自分で作ってもよいですか?

A. 会社が自社で作成して構いません。会社法第435条の条文に、作成者の資格を限る定めはありません。ただし、他人の求めに応じた税務書類の作成や税務代理を業として行えるのは税理士法により税理士などに限られるため、申告書の作成を外部に任せる場合は税理士に相談してください。

Q4. 決算書はどこで入手できますか?

A. 自社の決算書は、会計ソフトから出力するか、記帳を任せている税理士から受け取ります。他社の決算書は、上場企業などであれば金融庁のEDINETで有価証券報告書を閲覧でき、そのほかは決算公告で公開された貸借対照表、株主・債権者としての閲覧請求、取引先への提出依頼などが主な方法です。

Q5. 決算書はいつまでに作成し、何年保存すればよいですか?

A. 法人税の確定申告は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、その前に決算書を作成して株主総会に提出します。保存は、法人税法上の帳簿書類が原則7年(青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年)、会社法上の計算書類は作成した時から10年です。期限の延長の可否などは、税理士に確認してください。

Q6. 電帳法に対応して決算書を保存するにはどうすればよいですか?

A. パソコンで作成した決算関係書類は、一定の要件を満たせば電子データのまま保存できます。紙で作成した決算書は、スキャナ保存の対象から除かれています。あわせて、メールなどで受け取った請求書などの電子取引データは電子のまま保存する体制を整えることが大切です。要件は書類や会社の状況によって異なるため、国税庁の案内を確認し、必要に応じて税理士に相談してください。

まとめ

  1. 決算書は1事業年度の経営成績と財産の状態をまとめた書類の総称で、会社法では計算書類、金融商品取引法では財務諸表と呼ばれる
  2. 財務三表は、損益計算書で儲かっているか、貸借対照表でつぶれないか、キャッシュ・フロー計算書でお金が回っているかを見る。3つの書類は数字でつながっている
  3. 中小企業の計算書類は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つで、事業報告と附属明細書も作成し、法人税申告では勘定科目内訳明細書も添付する
  4. 決算書は会社が自社で作成でき、法人税の確定申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。株主総会への提出や決算公告、本店での備置きも必要になる
  5. 帳簿書類は原則7年、計算書類は会社法上10年保存する。パソコンで作った決算関係書類は電子データのまま保存でき、電子取引のデータは電子のまま保存する
  6. 決算書の作成を手作業の集計に頼っている場合は、会計ソフトで記帳から決算書までを一元化できるかを、資料で確認する

決算書は、税務申告のためだけでなく、融資や取引、そして経営判断のための材料です。まずは自社の直近3期分の決算書を並べ、営業利益、自己資本比率、現金の増減の3つの数字を確認するところから始めてみてください。

参考文献

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