下請法と取適法の違いとは?2026年1月施行の改正点と対応を解説
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- 取適法は2026年1月施行の改正下請法
- 対象は取引内容と資本金・従業員で判定
- 義務は4つ、禁止行為は11項目ある
取適法とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、2026年1月1日から名称と内容が変わった法律の通称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は「中小受託取引適正化法」で、読み方は「とりてきほう」です。下請法が廃止されて別の法律ができたのではなく、同じ法律の改正で、適用基準に従業員数が加わり、特定運送委託、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止が追加されました。この記事では、旧下請法との違い、対象の判定、4つの義務と11の禁止行為、違反時の勧告・罰則、発注側と受注側の対応を、公正取引委員会の資料と法令にもとづいて整理します。
取適法に向けた発注書類・契約書の管理、どこから見直す?2問でチェック
Q1. 取適法の対応で、いま一番不安なのはどちらですか?
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取適法とは?下請法から2026年1月に変わった7つのポイント
取適法とは、2026年1月1日に施行された改正下請法の通称で、法律の名称と用語の変更、適用対象の拡大、禁止行為の追加などが行われました。
目的は、委託事業者の中小受託事業者に対する取引を公正にし、中小受託事業者の利益を保護することです(法第1条)。改正法は2025年5月23日に公布されました。
| ポイント | 分類 | 内容 |
|---|---|---|
| 1. 法律の題名と用語 | 名称・用語 | 題名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わり、通称は取適法です。親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者、下請代金は製造委託等代金に改められました。 |
| 2. 従業員基準の追加 | 適用対象の拡大 | 従来の資本金基準に加えて、従業員基準(300人、100人)が追加されました。 |
| 3. 特定運送委託の追加 | 適用対象の拡大 | 製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が、対象取引に加わりました。 |
| 4. 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 | 禁止行為の追加 | 代金の協議に応じない、必要な説明をしないなど、一方的な代金決定が禁止されました。 |
| 5. 手形払等の禁止 | 禁止行為の追加 | 手形払が禁止され、電子記録債権等も、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難なものは禁止されます。 |
| 6. 指導・助言の権限 | 面的執行の強化 | 事業所管省庁が指導・助言をできるようになり、報復措置の禁止に係る情報提供先にも事業所管省庁が加わりました。 |
| 7. 電磁的方法による明示など | その他 | 書面交付義務について、承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法で行えるようになりました。製造委託の対象物品には、金型以外の型等も追加されました。 |
7つのうち、日々の事務に直接かかわるのは、発注内容の明示を電子メールなどの電磁的方法で行えるようになった点です。委託事業者には、取引の記録を作成して2年間保存する義務もあります。発注書、契約書、見積書、請求書を紙とメールで個別に管理していると、記録を探す手間が増えるため、法改正を機に、書類を電子化して取引先ごとに管理する方法を検討する会社もあります。役割の違いは、次の比較表で確認できます。
発注書類・契約書の管理、3つの電子契約システムの役割の違い
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| 注意したい点 | 導入時にパラメータ設定などの工程があり、取引先への案内や管理者アカウントの登録は自社で行う必要があります。 | 連携できる電子契約サービスは限られるため、すでに使っているサービスとの相性を事前に確認する必要があります。 | 契約締結前の相手方の本人確認や権限確認は、自社で行う必要があります。 |
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取適法の対象になる取引と会社は?取引内容と資本金・従業員基準で判定
取適法の対象かどうかは、取引の内容が5つの委託類型に当たるかと、委託事業者と中小受託事業者の資本金または従業員数が基準を満たすかの2段階で決まります。
取適法の対象になる5つの委託類型
法第2条は、対象になる取引を次の5つに分けています。取引の名前ではなく、中身が定義に当たるかどうかで判断します。
| 委託類型 | 内容(法第2条) | 具体例 |
|---|---|---|
| 製造委託 | 業として販売または請け負う物品や、その半製品・部品・原材料、専らその製造に用いる金型などの製造を、他の事業者に委託すること | 自社製品の部品の製造を他社に依頼する |
| 修理委託 | 業として請け負う物品の修理の全部または一部を、他の事業者に委託すること | 請け負った機器の修理の一部を外注する |
| 情報成果物作成委託 | プログラム、映像・音声、文字・図形などの情報成果物の作成を、他の事業者に委託すること | ソフトウェア開発、デザイン、設計図の作成を外注する |
| 役務提供委託 | 業として提供する役務の提供の全部または一部を、他の事業者に委託すること(建設業者が請け負う建設工事の再委託は除く) | 請け負った保守作業の一部を再委託する |
| 特定運送委託 | 販売・製造・修理・作成の目的物である物品を、取引の相手方へ運送する行為を委託すること(2026年1月から追加) | メーカーが完成品の配送を運送会社に委託する |
新しく加わった特定運送委託は、どの運送が対象か
特定運送委託の対象になる物品は、事業者が、業として行う販売の目的物、業として請け負う製造の目的物、業として請け負う修理の目的物、業として請け負う作成の目的たる情報成果物が記載・記録・化体された物品のいずれかに限られます(法第2条第5項、公正取引委員会のQ&A Q36)。たとえば、無償のサンプル品やダイレクトメール、産業廃棄物の運搬、発注者が無償で提供する支給品の運送、中元・歳暮などは、通常は該当しないと考えられています。製品を製造した工場から自社の物流センターまでのように、自社の拠点間の運送を委託する場合も、通常は該当しません(Q38)。ただし、特定の取引の相手方向けに仕分けた商品を運ぶ経路の一部として自社の拠点を使う場合は、該当することがあります。
資本金基準と従業員基準:いずれかに当てはまれば対象
委託事業者と中小受託事業者の組み合わせが、取引の内容に応じた次の基準のいずれかに当てはまると、取適法の対象です(法第2条第8項・第9項、公正取引委員会のリーフレット)。
| 取引の内容 | 資本金基準(委託事業者と中小受託事業者の組み合わせ) | 従業員基準 |
|---|---|---|
| 製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託のうちプログラム作成、役務提供委託のうち運送・物品の倉庫における保管・情報処理 | 資本金3億円超の委託事業者と、資本金3億円以下の中小受託事業者(個人を含む) 資本金1千万円超3億円以下の委託事業者と、資本金1千万円以下の中小受託事業者(個人を含む) | 従業員300人超の委託事業者と、300人以下の中小受託事業者 |
| 情報成果物作成委託と役務提供委託のうち、上の行以外 | 資本金5千万円超の委託事業者と、資本金5千万円以下の中小受託事業者(個人を含む) 資本金1千万円超5千万円以下の委託事業者と、資本金1千万円以下の中小受託事業者(個人を含む) | 従業員100人超の委託事業者と、100人以下の中小受託事業者 |
従業員は事業者単位で数え、グループ会社の従業員は含みません。正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなども含まれます(公正取引委員会のQ&A Q7・Q8)。基準は、製造委託等をした時点の人数で判断します(Q10・Q11)。委託事業者に、相手方の従業員数を確認する義務まではありませんが、人数の変動が多い相手や基準付近の相手には、積極的に確認することが望ましいとされています(Q13)。確認は、見積依頼書にチェック欄を設けて返送してもらうなど、記録に残る方法が望ましいとされています(Q15)。
基準の当てはめ例(説明用の仮の例)
次の4つは、基準の当てはめを確かめるために作った仮の例です。実在の会社や取引ではありません。
| 例 | 取引の内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 例1 | 資本金1億円のA社が、資本金3,000万円のB社に、デザインと文章のみのウェブサイト制作を委託する | 情報成果物作成委託で、A社は5千万円超、B社は5千万円以下のため、資本金基準で対象です。 |
| 例2 | 資本金1億円・従業員200人のA社が、資本金3,000万円・従業員50人のB社に、部品の製造を委託する | 製造委託では、資本金1千万円超3億円以下のA社の相手は資本金1千万円以下である必要があり、B社は当たりません。A社は従業員300人超でもないため、対象外です。 |
| 例3 | 例2のA社の従業員が350人だった場合 | A社が300人超、B社が300人以下のため、従業員基準で対象になります。 |
| 例4 | 資本金3,000万円のA社が、個人のデザイナーにチラシのデザインを委託する | 情報成果物作成委託で、資本金1千万円超5千万円以下のA社の相手が個人のため、対象です。 |
取適法の対象にならない取引
次のような取引は、取適法の対象になりません(公正取引委員会のQ&A、法第2条)。
- 規格品・標準品を購入するだけの取引: 仕様などを指定していなければ「委託」に当たらず、製造委託になりません(Q17)。事業者が仕様などを指定して製造を依頼すれば、委託に当たります。
- 自社で用いる役務の委託: 弁護士、公認会計士、産業医との契約(Q32)や、労働者派遣の受け入れ(Q4)は、自ら用いる役務のため対象外です。
- 資本金基準・従業員基準を満たさない組み合わせ: 取引の内容が委託類型に当たっても、上の例2のように基準を満たさなければ対象外です。
- 建設工事の再委託: 建設業者が請け負った建設工事を他の建設業者に請け負わせる取引は、役務提供委託から除かれています(法第2条第4項)。建設業者でも、建設資材の製造や設計図の作成を他の事業者に委託する場合は、製造委託や情報成果物作成委託に当たることがあります(Q5)。
業務委託・請負・委任の契約形態の違いは、偽装請負の観点とあわせて、偽装請負と言われないBPO契約の作り方の記事で整理しています。
自社が対象かを確かめる3ステップ
- 取引の内容が、5つの委託類型のどれに当たるかを決めます。
- 取引の相手方の資本金と従業員数を確認し、取引の内容に応じた基準の区分に当てはめます。確認は記録に残る方法で行います。
- 製造委託等をした時点の状況で判断し、取引先ごとの結果を一覧にしておきます。
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委託事業者が負う4つの義務:明示・支払期日・遅延利息・書類保存
委託事業者が負う義務は、発注内容の明示、取引記録の作成と2年間の保存、受領日から60日以内の支払期日の設定、遅延利息の支払いの4つです。
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 発注内容の明示 | 給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面または電子メールなどの電磁的方法で、直ちに明示すること | 法第4条 |
| 支払期日を定める義務 | 検査の有無を問わず、給付を受領した日から起算して60日の期間内で、できる限り短い期間内に支払期日を定めること | 法第3条 |
| 遅延利息の支払義務 | 支払遅延や減額があった場合に、遅れた日数や減じた額に応じて遅延利息(年率14.6%)を支払うこと | 法第6条、リーフレット |
| 書類等の作成・保存義務 | 取引が完了したときに、給付の内容、代金の額など取引の記録を書類または電磁的記録として作成し、2年間保存すること | 法第7条、リーフレット |
発注内容の明示:電子メールで行う場合の注意
明示する事項は、給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日、支払方法などで、製造委託等をしたら直ちに明示します(法第4条第1項)。内容を定められない正当な理由がある事項は、定まった後に直ちに明示します。2026年1月からは、中小受託事業者の承諾がなくても、電子メール等の電磁的方法で明示できます。ただし、電磁的方法で明示したあとに、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、原則として遅滞なく書面を交付する必要があります(同条第2項)。日本弁護士連合会のQ&Aは、電話だけの発注は明示義務を満たさず、行政指導や勧告のほか、50万円以下の罰金の対象になり得ると説明しています。
注文書と請書のやり取りを電子で行う場合の考え方は、請書とは?意味・注文書との違い・書き方・電子化・費用まで解説で整理しています。
明示の内容は取引ごとに違っても、書式と送り方をそろえておけば、発注のたびに作り直す手間を減らせます。同じ形式の書類を取引先ごとに作って送る作業を、電子で行いたい場合の一例が、SMBCクラウドサイン株式会社の「SMBCクラウドサイン」です。商品ページでは、弁護士監修のクラウド型電子契約サービスで、CSVデータを読み込んで契約書を作成し、一括で送信できること、電子帳簿保存法の検索要件を満たす検索機能があることが紹介されています。一方で、契約締結前の相手方の本人確認や権限確認は、自社で行う必要がある点に注意が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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支払期日と遅延利息:計算例つき
支払期日は、検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)から起算して60日の期間内で、できる限り短い期間内に定めます(法第3条第1項)。支払期日を定めなかったときは受領した日が、60日を超えて定めたときは受領日から60日を経過した日の前日が、それぞれ支払期日とみなされます(同条第2項)。
支払期日までに代金を支払わなかったときは、受領日から60日を経過した日から支払う日までの日数に応じて、遅延利息を支払います(法第6条第1項)。率は公正取引委員会規則で定められ、公正取引委員会のリーフレットでは年率14.6%と示されています。たとえば、未払の代金が100万円で、受領から60日を過ぎてさらに30日後に支払った場合、100万円に年率14.6%を掛けて30日分(30/365)を計算すると、遅延利息は1万2,000円です。代金を減額した場合にも遅延利息が生じます(同条第2項)。手形で支払った場合は、手形割引を受けたかどうかにかかわらず、手形の満期日を支払日として扱います(公正取引委員会のQ&A Q83)。
書類の作成・保存:2年間、探せる形で残す
取引が完了したときは、給付の内容、代金の額、支払などの記録を、書類または電磁的記録として作成し、2年間保存します(法第7条、リーフレット)。明示すべき事項を明示しなかったり、書類や電磁的記録を作成・保存しなかったりすると、罰金の対象になります(法第14条)。発注、納品、請求、支払の記録が部署ごとに分かれていると、相談や調査のときに、必要な書類を集めるだけで時間がかかります。紙の書類を減らして記録をまとめる進め方は、DXペーパーレスとは?紙を減らすだけで終わらせない進め方でも整理しています。
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委託事業者に禁止される11の行為:新設された項目はどれか
委託事業者には、受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたきなど11の行為が禁止され、2026年1月から、協議に応じない一方的な代金決定が加わりました。
禁止行為は法第5条に定められています。次の表は、公正取引委員会のリーフレットの整理にそろえたものです。
| No | 禁止行為 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受領拒否 | 中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否すること | 第5条第1項第1号 |
| 2 | 支払遅延 | 支払期日までに代金を支払わないこと。支払手段として手形払等を用いることを含む | 第5条第1項第2号 |
| 3 | 減額 | 中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決めた代金を発注後に減額すること | 第5条第1項第3号 |
| 4 | 返品 | 中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品すること | 第5条第1項第4号 |
| 5 | 買いたたき | 発注する物品・役務等に通常支払われる対価に比べ、著しく低い代金を不当に定めること | 第5条第1項第5号 |
| 6 | 購入・利用強制 | 正当な理由がないのに、指定する物品や役務を強制して購入・利用させること | 第5条第1項第6号 |
| 7 | 報復措置 | 公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、取引数量の削減や取引停止など不利益な取扱いをすること | 第5条第1項第7号 |
| 8 | 有償支給原材料等の対価の早期決済 | 有償支給した原材料等の対価を、代金の支払日より早く支払わせること | 第5条第2項第1号 |
| 9 | 不当な経済上の利益の提供要請 | 自己のために、中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させること | 第5条第2項第2号 |
| 10 | 不当な給付内容の変更・やり直し | 中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消しや内容の変更を行ったり、無償でやり直しや追加作業をさせたりすること | 第5条第2項第3号 |
| 11 | 協議に応じない一方的な代金決定(新設) | 価格協議の求めがあったのに応じない、必要な説明をしないなど、一方的に代金を決定すること | 第5条第2項第4号 |
受領拒否と返品、有償支給原材料等の対価の早期決済は、役務提供委託と特定運送委託では対象外です(法第5条)。また、受領拒否・減額・返品・不当な給付内容の変更ややり直しは、「中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに」行う場合に禁止されます。受託側に責任がある場合まで、一律に禁止されるわけではありません。
価格協議と手形払の新ルール:協議に応じない一方的な代金決定とは
協議に応じない一方的な代金決定とは、費用の変動などを理由に代金の協議を求められたのに、応じない、または必要な説明をせずに代金を決めることです。
日本弁護士連合会は、今回の改正の背景に労務費・原材料費・エネルギーコストの上昇があり、コスト増を取引価格へ適切に転嫁できる環境づくりが直接の目的だと説明しています。価格協議のルールは、その中心にある改正です。
協議に応じない一方的な代金決定の考え方
法第5条第2項第4号は、給付に関する費用の変動その他の事情が生じ、中小受託事業者が代金の協議を求めたのに、協議に応じない、または求められた事項について必要な説明や情報の提供をせず、一方的に代金を決定することを禁止しています。日本弁護士連合会のQ&Aでは、協議の求めを無視すること、協議を繰り返し先延ばしすることも「応じない」に含まれ、代金の引下げや据置だけでなく、引上げでも一方的に決定すれば該当することがあると説明されています。
公正取引委員会のQ&Aは、要請額の全部または一部を受け入れないこと自体が問題になるのではなく、実質的な協議が行われているかで判断されるとしています。要請額を受け入れられないときは、その理由や考え方の根拠を十分に説明することが必要です(Q134)。委託事業者が自ら妥当と判断したコスト上昇分で代金を引き上げても、申入れ額を下回る額を一方的に決めると、該当するおそれがあります(Q135)。
入札やせり上げなどで代金を決める方式は、次の3つをすべて満たす場合、通常は「一方的な決定」に当たらないとされています(Q136)。1. 代金以外の主要な取引条件があらかじめ確定している。2. 委託事業者が指名する者でない複数の受託候補者が、代金を提示できる仕組みがある。3. 受託候補者が、代金の決定方法の考え方など、取引を行うかの判断に必要な情報を認識できる状態にある。取引を減らす、打ち切るなどを示唆して提示額を受け入れさせる場合は、問題になります。
価格まわりで起きやすい失敗:指値・見積後の作業増・遡及適用
公正取引委員会のQ&Aには、価格まわりの注意点が具体的に示されています。
- 指値: 中小受託事業者と十分に協議せず、一方的に単価を指定して通常より低い単価にすると、買いたたきに当たるおそれがあります(Q108)。
- 見積後の作業増: 見積書の提出後に作業内容が増えたのに、見積書を取り直さず当初の単価で発注すると、買いたたきに当たるおそれがあります。申出の有無にかかわらず、再見積りで単価を見直す必要があります(Q111)。
- 一律の引下げ: 個別の発注内容の違いを考慮せず、すべての発注で同じ比率に単価を引き下げると、買いたたきに当たるおそれがあります(Q109)。
- 新単価の遡及適用: 単価引下げの合意より前に発注したものにまで新単価を適用すると、代金の減額として問題になります。見積書に新単価が書かれているだけでは、合意したことになりません(Q97)。
協議の経過は記録に残す
協議の求めの有無や経過について、認識の食い違いを防ぐため、中小受託事業者は書面や電子メールなど形に残る方法で協議を求めて記録を保存し、委託事業者も、協議経過を議事録に残すなど記録化しておくことが望ましいとされています(Q137)。
手形払等の禁止:電子記録債権や一括決済にも注意
手形を交付すること、支払期日までに代金額に相当する金銭と引き換えることが困難な支払手段を使うことは、支払遅延の禁止に含まれます(法第5条第1項第2号)。公正取引委員会のリーフレットは、手形払の禁止とあわせて、電子記録債権等も、支払期日までに満額を得ることが困難なものは禁止されるとしています。日本弁護士連合会のQ&Aは、電子記録債権や一括決済方式が規制の対象になることがあるため注意が必要で、長期手形で支払ってきた業界は決済手段の変更が必須になると説明しています。
3サービスの役割を比較表で見る違反するとどうなる?勧告・指導助言・罰金のしくみ
取適法に違反すると、公正取引委員会から勧告を受けるほか、明示や書類保存などの義務違反には50万円以下の罰金が科されることがあります。
| 措置 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 指導・助言 | 公正取引委員会、中小企業庁長官、事業所管大臣が、委託事業者に対し、必要があると認めるときに指導・助言をできる | 法第8条 |
| 中小企業庁長官の請求 | 第5条の違反の事実があると認めるときに、公正取引委員会に適当な措置をとるよう求められる | 法第9条 |
| 勧告 | 第5条の違反があると認めるときに、受領、代金・減額分・遅延利息の支払い、引取り、代金の引上げ、不利益な取扱いをやめることなどを勧告する | 法第10条 |
| 報告・検査 | 委託事業者や中小受託事業者に報告をさせ、事務所などに立ち入って帳簿書類を検査できる | 法第12条 |
| 罰金 | 明示すべき事項を明示しない、書面を交付しない、書類・電磁的記録を作成・保存しない場合は、行為者が50万円以下の罰金。報告をしない・虚偽の報告・検査の拒否も50万円以下の罰金 | 法第14条・第15条 |
| 両罰 | 法人の従業者が業務に関して違反したときは、行為者のほか法人にも罰金刑が科される | 法第16条 |
中小受託事業者が、公正取引委員会、中小企業庁長官、事業所管大臣に違反の事実を知らせたことを理由に、取引数量を減らしたり取引を停止したりする報復措置も禁止されています(法第5条第1項第7号)。
この表は法令の概要です。個別の取引が取適法に当たるか、違反になるかの判断は、公正取引委員会、中小企業庁、弁護士などの専門家にご確認ください。この記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。
取適法への対応チェックリスト:発注側と受注側が確認すること
取適法への対応は、取引の洗い出し、発注書式の更新、支払条件の見直し、価格協議の記録づくりの4ステップで進めると整理できます。
発注側(委託事業者)の4ステップ
- 取引と取引先を洗い出す: 取引の内容が5つの委託類型に当たるかを確認し、取引先ごとに資本金と従業員数を記録に残る方法で確認して、対象かどうかを一覧にします。
- 発注書・契約書を見直す: 給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法を毎回そろえて明示できる書式にします。電磁的方法で明示するときは、書面を求められた場合の対応も決めます。書式に旧法の用語が残っていないかも見直します。
- 支払条件を見直す: 受領日(役務の提供を受けた日)から60日以内で、できる限り短い期間に支払期日を定めます。手形払や、満額を得ることが困難な支払手段が残っていないかを確認します。
- 価格協議の窓口と記録を決める: 協議の求めを受ける担当と手順を決め、経過を議事録などに残します。単価改定は、合意日より前の発注に新単価を適用しないようにします。
手順2の書式の更新と、取引先への送付を電子で進める場合の一例として、先に紹介したSMBCクラウドサインがあります。取引先を多く抱える会社は、書式を統一したうえで、一括送信の機能を使えるかを資料で確認してみてください。
受注側(中小受託事業者)が確認すること
- 発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)が、書面や電子メール等で届いているかを確認します。届いていないとき、またはメールで受けても書面がほしいときは、書面の交付を求められます(法第4条第2項、日本弁護士連合会のQ&A)。
- 代金の引上げを求めるときは、書面や電子メールなど形に残る方法で行い、記録を保存しておくことが望ましいとされています(Q137)。
- 違反が疑われるときは、公正取引委員会、中小企業庁、事業所管の省庁に知らせることができ、知らせたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています(法第5条第1項第7号)。弁護士への相談先として、日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」が取適法のQ&Aを公開しています。
取適法に向けた発注・記録の管理、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
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よくある質問(FAQ)
Q1. 取適法とはどういう意味ですか?
A. 取適法は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の通称で、略称は中小受託取引適正化法、読み方は「とりてきほう」です。下請法(下請代金支払遅延等防止法)が改正され、2026年1月1日から名称と内容が変わりました。
Q2. 取適法と旧下請法の違いは何ですか?
A. 主な違いは、法律名と用語(親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者)、従業員基準(300人・100人)の追加、特定運送委託の追加、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止、事業所管省庁の指導・助言権限です。電磁的方法による明示も、承諾の有無にかかわらず可能になりました。
Q3. 取適法はどのような取引に適用されますか?
A. 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5つの委託取引に適用されます。そのうえで、委託事業者と中小受託事業者の資本金または従業員数が、取引の内容に応じた基準を満たす必要があります。
Q4. 取適法の対象にならない取引は何ですか?
A. 規格品・標準品を購入するだけの取引、弁護士や産業医との契約など自社で用いる役務の委託、労働者派遣の受け入れ、建設工事の再委託、資本金・従業員基準を満たさない取引は対象になりません。ただし、建設業者でも、建設資材の製造や設計図の作成を委託する場合は対象になることがあります。
Q5. 取適法の施行日より前にした取引にも適用されますか?
A. 改正法の附則で、第4条、第5条、第6条第2項、第10条などの規定は施行後(2026年1月1日以降)にした製造委託等に適用し、施行前にした製造委託等には従前の例によるとされています。個別の取引の扱いは、公正取引委員会の資料で確認してください。
Q6. 中小受託事業者から値上げを求められたら、必ず応じなければいけませんか?
A. 要請額の全部を受け入れる義務はありません。ただし、協議に応じない、必要な説明や情報提供をしないで一方的に代金を決めると違反になります。受け入れられないときは、その理由や考え方の根拠を十分に説明する必要があるとされています(公正取引委員会のQ&A)。
取適法への対応で押さえたい6つのこと
- 取適法は下請法の改正で、2026年1月1日から、名称・用語・適用基準・取引類型・禁止行為が変わりました。
- 対象かどうかは、取引の内容(5つの委託類型)と、資本金または従業員数の基準の2段階で判定します。
- 委託事業者の義務は、発注内容の明示、60日以内の支払期日、遅延利息(年率14.6%)、取引記録の2年間の保存の4つです。
- 禁止行為は11項目で、新設されたのは協議に応じない一方的な代金決定です。手形払等も禁止されます。
- 違反には勧告や50万円以下の罰金があり、個別の判断は公正取引委員会や弁護士などに確認します。
- 発注書類や取引記録の管理を見直すなら、電子契約や取引書類の管理サービスの資料を取り寄せ、役割の違いを比べることも選択肢です。
発注書類・契約書の電子化と、取引記録の一元管理を検討する場合は、3つのサービスの資料をまとめて取り寄せて、役割の違いを比べられます。
入力は1回・無料。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
参考文献
- 公正取引委員会 中小受託取引適正化法(取適法)関係 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html
- 公正取引委員会 リーフレット「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」(PDF) https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
- 公正取引委員会 中小受託取引適正化法(取適法)Q&A https://www.jftc.go.jp/toriteki/toriteki_qa.html
- e-Gov法令検索 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120
- 日本弁護士連合会 ひまわりほっとダイヤル 取適法(旧:下請法) https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/service/service11.html
- SMBCクラウドサイン 導入事例 株式会社日本総合研究所 https://www.smbc-cloudsign.co.jp/case/detail_0005.html
- ビジネスコンシェルジュ Biz Connection 商品ページ https://www.onamae.com/business/product/150824/
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