PACSとは?仕組み・電子カルテとの違い・導入前の確認点を解説

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  • PACSは医用画像を保存・表示する仕組み
  • 電子カルテ・RISとは扱うものが違う
  • 保存期間と契約の役割分担を確認する

PACS(パックス)とは、Picture Archiving and Communication Systemの略で、X線やCT、MRIなどで撮影した医用画像をデジタルデータで保存・管理し、院内の端末へ配信して表示するシステムです。日本語では医用画像管理システムと呼ばれます。この記事では、PACSの意味と仕組み、電子カルテ・RIS・HISとの違い、メリットとデメリット、クラウド型とオンプレミス型の違い、導入前に確認したい法令とガイドラインを整理します。あわせて、導入や更新のときに院内で増える申請・承認と連絡の整え方にも触れます。なお、フランスの制度を指す「PACS」は別のものです。

PACSの導入・更新で増える院内の手続き、どこから整える?2問で目安がわかります

Q1. PACSの導入や更新の準備で、いま負担が大きいのはどちらに近いですか?

目次

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  1. PACSとは|医用画像管理システムの意味・読み方・できること
  2. 「PACS」の意味は2つ|医用画像管理システムとフランスの制度
  3. PACSの仕組み|撮影から保存・表示までの流れと構成要素
  4. PACSと電子カルテ・RIS・HISの違い
  5. PACSのメリットとデメリット|導入で変わること・負担になること
  6. クラウド型とオンプレミス型の違い|PACSの選び方と確認点
  7. PACSの導入・更新の進め方と、院内で必要な申請・承認
  8. PACSと医療情報の保存・セキュリティ|法令とガイドラインで確認すること
  9. よくある質問(FAQ)
  10. まとめ|PACSの理解と導入・更新で押さえる5つのこと
  11. 参考文献

PACSとは|医用画像管理システムの意味・読み方・できること

PACSとは、医療機関で撮影した画像を保存・管理し、必要な端末に配信して表示するための医用画像管理システムです。

PACSの意味と読み方

PACSは「パックス」と読み、Picture Archiving and Communication Systemの頭文字です。レントゲン、CT、MRI、超音波、内視鏡などの画像を、デジタル形式で保存・管理・共有するシステムとして説明されています(スリーゼット、アスピック)。フィルムに現像して保管・運搬していた方法に代わる仕組みで、保管スペースの削減や、画像の運搬・検索の負担軽減につながると紹介されています。

PACSでできること

  • 保存する:撮影装置から送られた画像を、サーバーなどに蓄積する
  • 配信・表示する:院内の端末のビューアで、必要な画像を開いて見る。外部メディアへの書き出しやDICOMプリンタへの出力に対応する製品もある(テレメディア)
  • 他のシステムと連携する:電子カルテや放射線情報システム(RIS)と連携し、画像と診療情報を合わせて確認する
  • 遠隔から参照する:クラウド型は、遠隔地からのアクセスや在宅診療、地域医療連携に対応するとされる(アスピック)

PACSの導入・更新で、システムの外側に発生する申請と連絡

PACSは、導入するときも更新するときも、システムの設定だけでは終わりません。機器やサーバーの見積を取り、院内で承認を得て、ベンダーと契約し、移行日を調整し、稼働後の保守窓口を決める、といった申請・承認と連絡が続きます。これらを紙や表計算ソフト、個人のメールで回すと、承認待ちの場所や最新の見積がわかりにくくなります。PACS自体を扱うサービスではありませんが、この院内の手続きと連絡を整える選択肢として、ワークフローシステムとビジネスチャットの役割の違いを、先に表で確認します。

PACSの導入・更新に伴う院内の手続きを支える2つのサービス|役割の違い

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特徴 誰でも思い通りのワークフローを簡単に作成できる。シンプルで直感的な操作で承認経路を設計できる。運用中にフォームレイアウトの追加・修正ができる チャットだけでなく、通話機能やタスク・ファイル管理などの機能が充実している。無料で始められるフリープランがある。社内外でも使いやすいシンプルさ
注意したい点 クラウド版には、1ユーザーにつき5GBの容量制限がある より高いセキュリティとサポートの手厚さを求める場合は、エンタープライズの契約が必要
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表は横にスクロールできます。2サービスの内容は商品ページで確認した情報です(確認日2026年10月21日)。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

見積や稟議の承認を、紙やメールからシステムに載せる場合の一例が、株式会社コラボスタイルのコラボフローです。商品ページでは、誰でも思い通りのワークフローを簡単に作成できること、シンプルかつ直感的な操作で承認経路を設計できること、運用中にフォームレイアウトの追加・修正ができることが紹介されています。一方で、クラウド版には1ユーザーにつき5GBの容量制限があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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コラボフローの導入実績には、医療・介護を行う法人も含まれます。医療法人和光会/社会福祉法人和光会の事例ページ(公開2025年4月14日)は、紙の起案書による決裁に時間がかかっていた課題を、承認経路のシステム化で解決したと紹介しています。導入の目的の1つについて、担当者は次のように述べています。

決裁規程に則った承認経路を構築するためです。

出典:コラボフロー 導入事例 医療法人和光会/社会福祉法人和光会

ベンダーや院内の関係者との連絡・相談・資料共有を1か所に集める場合の一例が、Chatwork株式会社のChatworkです。商品ページでは、無料で始められるフリープランがあること、チャットだけでなく通話機能やタスク・ファイル管理などの機能が充実していること、年齢や性別を問わず社内外でも使いやすいシンプルさが紹介されています。一方で、より高いセキュリティとサポートの手厚さを求める場合は、エンタープライズの契約が必要とされています。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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Chatworkの事例では、八千代病院を運営する社会医療法人財団新和会の介護事業部が、拠点間の連絡を電話中心から切り替えた経緯が紹介されています(取材は2024年1月)。この事例は介護事業部での活用で、PACSの運用そのものの事例ではありません。ただ、利用者の個人情報を扱う組織で、ファイルの扱いにルールを設けたうえで使っている点は、後の「保存とセキュリティ」の章で取り上げます。

「PACS」の意味は2つ|医用画像管理システムとフランスの制度

「PACS」で検索すると、医療の医用画像管理システムのほかに、フランスの制度を指すPACS(パクス)も出てきます。この記事の中心は医用画像管理システムです。

医用画像管理システム(この記事の中心)フランスの制度
正式名称Picture Archiving and Communication Systempacte civil de solidarité(民事連帯契約)
内容X線やCT、MRIなどの医用画像を保存・管理し、端末で表示するシステム成人2人が、共同生活を組織するために結ぶ契約。フランスの公式サイトは、2人の性別が異なっても同じでも結べると説明している
主な場面病院・クリニックの画像診断、電子カルテやRISとの連携フランスの婚姻・パートナー関係の手続き
関連する言葉DICOM、RIS、HIS、電子カルテ、読影Pacsを結ぶ、Pacsの効果、Pacsの変更・解消

フランスのPACSについて、フランス政府の公式サイトService-Public.frは、成人2人が結ぶ契約で、共同生活を組織するためのものと説明し、結び方、効果、変更、解消を項目に分けて案内しています(Service-Public.fr「Pacte civil de solidarité (Pacs)」、確認日2026年10月21日)。結婚との細かな違いは、フランスの法律や公式の案内で確認する必要があり、この記事では扱いません。「PACSと結婚の違い」を調べている場合は、上の公式ページを入口にしてください。

PACSの仕組み|撮影から保存・表示までの流れと構成要素

PACSの仕組みは、撮影装置が出した画像をサーバーに保存し、院内の端末のビューアで表示し、電子カルテなどの他システムと連携する流れです。

検査の依頼から画像の表示までの流れ

流れの例を次に示します。実際の構成は、施設の規模や製品によって異なります。電子カルテやオーダーシステムから検査依頼が入り、RISが予約や進捗を管理し、撮影装置の画像がPACSに送られ、読影後のレポートが電子カルテなどへ連携される構成がある、と解説されています(PACS-NAVI)。

  1. 検査の依頼:電子カルテやオーダーシステムから、放射線部門に検査が依頼される
  2. 予約・受付:RISなどで、検査の予約や受付、進捗を管理する
  3. 撮影:CTやMRIなどの装置で撮影し、DICOMなどの形式で画像データを出力する
  4. 保存:PACSのサーバーが画像を受け取って蓄積する
  5. 表示・読影:院内の端末のビューアで画像を開き、医師が読影する
  6. レポート・連携:読影の結果をレポートにして、電子カルテなどから参照できるようにする

DICOMとは

PACSの話では、DICOM(ダイコム)という規格がよく登場します。DICOMは、Digital Imaging and Communications in Medicineの略で、医用画像と関連情報の国際標準です。公式サイトは、X線、CT、MRI、超音波などの装置のほとんどで実装されており、1993年の初版以来、X線フィルムを完全なデジタルの流れに置き換えることを可能にしたと説明しています。ISOの規格(ISO 12052)としても認められています(DICOM公式サイト、確認日2026年10月21日)。装置とPACSをつなぐ共通の言葉と考えるとわかりやすく、製品を選ぶときも、手元の撮影装置がDICOMで画像を出せるかが確認点になります。

PACSを構成する主な要素

要素役割確認したい点
画像サーバー(DICOMサーバー)撮影装置から送られた画像を保存する。ディスクの増設ができる製品もあり、段階的に導入できる(テレメディア)保存できる容量、増設の方法、バックアップの取り方
ビューア院内の端末で画像を表示する。Webで参照できる製品もある使える端末とOS、画像の表示の速さ、利用者の範囲
レポートシステム読影のレポートを作成し、電子カルテやRISと連携する既存の電子カルテとの連携方式
連携の仕組み電子カルテやRIS、撮影装置とのデータのやり取り連携仕様、DICOM対応、保守の範囲

PACSと電子カルテ・RIS・HISの違い

PACSは医用画像を扱うシステムで、電子カルテは診療記録、RISは放射線部門の検査業務、HISは病院全体の情報システムを主に扱います。

システム主に扱うものPACSとの関係
PACSCTやMRIなどで撮影した医用画像の保存・配信・表示(この記事の中心)
電子カルテ診察の内容や処方などの診療記録PACSの画像を電子カルテの画面から参照できるよう連携することが多い
RIS(放射線情報システム)検査の予約・受付・進捗など、放射線部門の業務情報RISが検査の業務を管理し、PACSが画像を管理する。両方が一体になった製品もある
HIS(病院情報システム)病院全体の情報システムを指す言葉。電子カルテや医事会計などを含む場合があるPACSやRISは、HISの一部として、またはHISと連携して使われる

上の整理は、PACSとRISの違いを解説したPACS-NAVI(解説)と、メディコムの解説(解説)を参考にしています。製品名だけでは、RISの機能が標準かオプションかを判断できないため、導入・更新のときは項目ごとに確認が必要とされています。電子カルテの導入・更新を検討している場合は、PACSとの連携仕様が確認点になります。

フィルムとPACSの違い

フィルム運用では、撮影した画像をフィルムに現像して保管し、診察室や病棟に運んでいました。PACSでは、画像がデータとして保存され、離れた端末でも同時に参照できます。紙のフィルムのように、保管場所を探したり、運んだりする手間が減ることが、導入の主なメリットとして紹介されています(アスピック)。

PACSのメリットとデメリット|導入で変わること・負担になること

PACSのメリットは、保管スペースの削減、画像の運搬・検索の負担軽減、画像の共有のしやすさです。デメリットは、導入と運用の総費用、既存システムとの連携、移行と教育の負担です。

メリット

  • 保管スペースの削減:フィルムの現像と保管が不要になり、保管場所の確保や整理の手間が減る
  • 運搬と検索の負担軽減:画像をデータで検索し、端末で開けるため、運ぶ・探す時間が減る
  • 共有のしやすさ:院内の複数の端末や、クラウド型では遠隔地からも、同じ画像を参照できる
  • 診療情報との合わせ読み:電子カルテやRISと連携すると、画像と診療情報を合わせて確認しやすい

デメリットと注意点

PACSの導入・更新を解説する記事は、導入費だけでなく、ライセンス、保守、ストレージなどを含む総費用で比較すること、電子カルテやHIS、検査装置などとの連携仕様を確認すること、保守・障害対応、教育体制、移行作業を比べることを挙げています(PACS-NAVI)。画像の保存量は撮影の件数とともに増えるため、ストレージの増設や、保存期間の考え方も確認点になります。保存期間は、後の「保存とセキュリティ」の章で整理します。

  • 総費用:導入時の費用に加え、ライセンス、保守、ストレージなどの継続費用がかかる
  • 連携の確認:電子カルテ、RIS、撮影装置との連携仕様が合わないと、運用が複雑になる
  • 移行と教育:旧システムの画像の移行、職員への教育、稼働直後の問い合わせ対応が必要になる
  • 止まったときの備え:画像を参照できないときの手順や連絡先を、あらかじめ決めておく

クラウド型とオンプレミス型の違い|PACSの選び方と確認点

PACSは、サーバーを自院に置くオンプレミス型と、事業者のサーバーを利用するクラウド型に分けて説明されることが多く、選ぶときは設置場所、運用の担い手、遠隔参照、費用の構造を比べます。

項目オンプレミス型クラウド型
サーバーの場所自院や関連施設に置く事業者のクラウドを利用する
遠隔からの参照専用の仕組みやネットワークの設定が必要になることがある遠隔地・在宅診療・地域医療連携に対応するとされる
運用・保守自院で、またはベンダーに委託して行う事業者が基盤の運用を担う範囲が広い。範囲は契約で確認する
確認したい点機器の更新時期、設置場所、保守の窓口通信の途絶時の運用、データの保管場所、契約終了時のデータの扱い

この区分は、PACSを2種類に分けて説明した解説(メディコム)と、クラウド型の特徴を述べた解説(アスピック)を参考にしています。どちらが優れているかではなく、自院の規模、保守を担える人員、遠隔参照の必要性に合わせて選びます。

選ぶときの5つの確認点

  1. 対象業務と必要な機能:改善したい業務(読影、共有、遠隔参照など)を先に決める
  2. 既存システムとの連携:電子カルテ、RIS、撮影装置との連携仕様と、DICOMへの対応を確認する
  3. 保守・障害対応・教育:障害時の連絡先、対応の時間帯、職員への教育の範囲を確認する
  4. 総費用:導入費のほか、ライセンス、保守、ストレージなどの継続費用を含めて比べる
  5. セキュリティと契約:医療情報のガイドラインへの対応と、医療機関とベンダーの役割分担を契約で確認する

5つ目の役割分担については、経済産業省が「医療情報システムの契約における当事者間の役割分担等に関する確認表」を公表しています。詳しくは後の章で取り上げます。選定の途中で、要件や比較の記録、ベンダーとの連絡が担当者個人に集まっていないかを、次のセルフチェックで確かめてください。

PACSの導入・更新の準備、院内の手続きは足りている?セルフチェック

当てはまるものを選んでください(登録不要)

PACSの導入・更新の進め方と、院内で必要な申請・承認

PACSの導入・更新は、現状の整理、要件の整理、見積の取得、院内の承認、契約、移行と教育、運用開始後の保守の順に進み、各段階で申請・承認と連絡が発生します。

次の表は、一般的な進め方に、院内で発生する手続きと残す記録を並べた例です。公的な様式ではなく、自院の規程に合わせて調整してください。

段階院内で発生する申請・連絡残しておきたい記録
1. 現状の整理放射線部門、診療科、情報システム担当へのヒアリング現在の画像の流れ、困りごと、機器の更新時期
2. 要件の整理・情報収集ベンダーへの資料請求や問い合わせ必要な機能、連携先、画像の保存量の見込み
3. 見積の取得・比較複数のベンダーへの見積依頼見積の条件、含まれる範囲、継続費用の内訳
4. 院内の承認稟議、予算の承認、関係部署の合議承認者、承認日、決裁の根拠となる資料
5. 契約契約書の確認、役割分担の確認(経済産業省の確認表)契約の範囲、保守の範囲、役割分担の合意内容
6. 移行・テスト・教育移行日の調整、テスト、職員への研修移行の手順、テスト結果、研修の実施記録
7. 運用開始後保守窓口への連絡、障害時の報告保守の連絡先、障害の記録、更新時期

4の院内の承認は、稟議書で回す医療機関や法人が多いと考えられます。稟議書の書き方と電子化の進め方は、稟議書とは?書き方・記載項目・記載例と電子化の進め方を解説で解説しています。承認の経路や履歴を、あとから確かめられる形にしておくと、更新のときにも前回の経緯を確認できます。

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PACSと医療情報の保存・セキュリティ|法令とガイドラインで確認すること

PACSの画像の保存期間は、医師法や療養担当規則などの規定と、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを踏まえて、自院の方針で整理します。

なお、この章は公的資料の紹介であり、法的助言ではありません。自院への当てはめは、顧問の専門家やベンダーにご確認ください。

保存期間の根拠になる規定

規定内容(条文の趣旨)読むときの注意
医師法第24条第2項(e-Gov法令検索)病院または診療所に勤務する医師の診療に関する診療録は、その病院または診療所の管理者が、5年間保存しなければならない診療録そのものの規定。画像データをどの範囲で診療録として扱うかは、ガイドラインや専門家に確認する
保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条(e-Gov法令検索)保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿・書類その他の記録を、完結の日から3年間保存する。ただし、患者の診療録は5年間保険診療を行う医療機関が対象。記録の種類で期間が分かれる
医療法施行規則第20条第10号(e-Gov法令検索)病院が備える診療に関する諸記録として、過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真などを挙げている病院の施設・記録の基準。診療所や、デジタルの画像の扱いは別に確認する

条文だけでは、デジタルの画像データをいつまで保存するかは決まりません。上の3つの規定でも、記録の種類によって期間が異なります。自院の画像の保存期間は、診療録との関係、診療報酬の算定要件、ベンダーとの契約内容も合わせて確認し、院内の規程に書き込んでおくことをおすすめします。

厚生労働省のガイドラインと関連資料

厚生労働省は、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインを公表しています。第7.0版(令和8年6月)は、概説編、経営管理編、企画管理編、システム運用編、保守委託機関編で構成され、Q&A(令和8年9月)、医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年6月)、サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)策定の確認表も掲載されています(厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」、確認日2026年10月21日)。PACSの導入・更新では、経営層、システム管理者、運用担当、保守を委託するベンダーのそれぞれが、該当する編を確認します。

ベンダーとの契約で使える、経済産業省の確認表

経済産業省は、「医療情報システムの契約における当事者間の役割分担等に関する確認表」を公表しています(ページの更新日2024年6月3日。経済産業省の確認表のページ)。確認表のほか、推奨される対応例、用語の解説、新規システムの導入に際しての利用イメージ(別添3)も同じページにあります。PACSの導入・更新で、障害時や情報漏えいのときに誰が何を担うかを、契約の前に確認する資料として使えます。事業者側の指針としては、「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」第2.0版(令和7年3月28日改定。経済産業省のページ)があります。

クラウド型のPACSや、保守を外部に任せる場合は、医療情報の取り扱いを委託するときの注意も関係します。ヘルスケア分野の業務委託の考え方は、bpo healthcareとは?ヘルスケアBPOの業務範囲と医療情報管理の注意点と医療BPOとは|病院・クリニックで委託できる業務・できない業務と注意点も参考にしてください。

ビジネスチャットで画像や患者情報を扱うときの注意

ベンダーや院内との連絡にビジネスチャットを使う場合、患者の画像や個人情報を載せてよいかは、ガイドライン、自院の規程、サービスの仕様を確認して決めます。Chatworkの商品ページには、医療情報の取り扱いに関する紹介はありません。前の章で触れた財団新和会の事例では、個人情報のやり取りが多いことから、セキュリティ面を懸念点とし、次のようなルールで対応していると述べています。

「自宅ではファイルをダウンロードしない」「氏名の一部を伏せ字にして個人を特定できない形で使用する」といったルールで対応しています。

出典:Chatwork 導入事例 社会医療法人 財団新和会(取材2024年1月)

同事例は、あわせて個人情報保護に関する研修会を行い、利用時のルールを徹底していると紹介しています。ツールを選ぶ前に、何を載せてよいか、載せてはいけないかを、院内で文書にしておくことが先です。そのうえで、連絡と相談の窓口を1か所にまとめたい場合は、Chatworkの資料で機能と、セキュリティの対応範囲を確認できます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. PACSとはどういう意味ですか?

A. PACSは、Picture Archiving and Communication Systemの略で、「パックス」と読みます。X線、CT、MRIなどで撮影した医用画像をデジタルデータで保存・管理し、院内の端末に配信して表示するシステムで、日本語では医用画像管理システムと呼ばれます。

Q2. PACSと電子カルテの違いは何ですか?

A. PACSは医用画像の保存・配信・表示を担い、電子カルテは診察の内容や処方などの診療記録を扱います。両方を連携させ、電子カルテの画面からPACSの画像を参照できるようにする構成が一般的です。導入・更新のときは、連携仕様を確認します。

Q3. フランスのPACS制度とは何ですか?

A. フランスのPACSは、pacte civil de solidarité(民事連帯契約)の略です。フランス政府の公式サイトは、成人2人が、性別が異なっても同じでも結べる、共同生活を組織するための契約と説明しています。結婚との細かな違いは、フランスの公式の案内で確認してください。

Q4. PACSとRISの違いは何ですか?

A. PACSは医用画像の保存・配信・表示を担い、RIS(放射線情報システム)は検査の予約・受付・進捗など放射線部門の業務情報を管理します。2つが一体になった製品もあり、標準機能かオプションかは項目ごとに確認が必要です。

Q5. クラウド型とオンプレミス型の違いは何ですか?

A. オンプレミス型はサーバーを自院などに置き、クラウド型は事業者のクラウドを利用します。クラウド型は遠隔地からの参照や在宅診療、地域医療連携に対応するとされます。どちらが適するかは、規模、保守を担える人員、遠隔参照の必要性で決め、運用や保守の範囲は契約で確認します。

Q6. PACSの画像は何年保存する必要がありますか?

A. 医師法第24条第2項は診療録を5年間、療養担当規則第9条は診療録を5年間、その他の記録を3年間、医療法施行規則第20条第10号は病院が備える診療に関する諸記録(エックス線写真を含む)を過去2年間としています。デジタルの画像の期間は、これらと厚生労働省のガイドライン、自院の規程を合わせて確認してください。

まとめ|PACSの理解と導入・更新で押さえる5つのこと

PACSとは、医用画像をデジタルで保存・管理し、院内の端末で表示するシステムです。次の5つを押さえて、導入・更新の準備を進めてください。

  1. 意味を押さえる:PACSは医用画像管理システム。フランスの制度のPACSとは別のもの
  2. 仕組みと違いを知る:電子カルテは診療記録、RISは検査業務、HISは病院全体、PACSは画像を扱う
  3. 選び方を決める:クラウド型かオンプレミス型か、連携、保守、総費用、セキュリティの5つの確認点で比べる
  4. 保存とセキュリティを確かめる:医師法・療養担当規則・医療法施行規則と、厚生労働省のガイドライン第7.0版、経済産業省の確認表を参照する
  5. 院内の手続きを整える:見積・稟議・契約の承認と連絡を、記録が残る形にそろえ、ワークフローシステムやビジネスチャットの資料も確認する

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の医療機関への当てはめは、専門家やベンダーにご相談ください。

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