SaaSとWebアプリの違い|仕組みと開発・運用の責任範囲を整理
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- SaaSは提供形態、Webアプリは作りの呼び名
- データとアカウントの責任は利用者に残る
- 作るかSaaSかは5つの問いで決める
SaaSとWebアプリの違いは、見ている軸が別であることです。SaaSは、提供会社がクラウド上で運用するソフトウェアを、利用者が契約して使う提供形態の呼び名です。Webアプリは、ブラウザ上で動くアプリケーションという、作りと使い方の呼び名です。そのため、ウェブメールのように、同じサービスがどちらの名前でも呼ばれることがあります。一方で、自社で作って自社で運用するWebアプリはSaaSの使い方に当てはまりません。この記事では、NIST・総務省・Microsoftの資料をもとに、2つの言葉の違い、開発と運用の責任範囲、自社で作るか既製のSaaSを使うかを決める問いを整理します。
自社の申請や連絡の仕組みは、自社で作る方向と既製のサービスを使う方向のどちらが近いですか?
Q1. 見直したい業務は、どちらに近いですか?
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目次
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SaaSとWebアプリの違い|提供形態と、作りと使い方の違い
SaaSとは、提供会社がクラウド上で運用するソフトウェアを、利用者が契約して使う提供形態のことです。Webアプリとは、ブラウザ上で動くアプリケーションの作りと使い方を指す言葉です。
SaaSの定義は、米国立標準技術研究所(NIST)が2011年9月に公表した「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145)が広く参照されています。それによると、SaaSは、提供者がクラウド基盤の上で動かすアプリケーションを利用者が使う形態です。アプリケーションは、ウェブメールのようにブラウザなどの軽いクライアントか、プログラム用のインターフェースを通じて、さまざまな端末から使えます。利用者は、ネットワーク、サーバー、OS、ストレージといった基盤を管理せず、アプリケーションの機能も、利用者ごとの限られた設定を除いて管理しません。
この定義が決めているのは、誰が何を管理するかです。定義の文に、料金の有無は出てきません。Webアプリは、運用するのが提供会社か自社かを問いません。
| 比べる点 | SaaS | Webアプリ |
|---|---|---|
| 何を指す言葉か | クラウドで提供者が運用するソフトを、利用者が契約して使う提供形態 | ブラウザ上で動くアプリケーションの作りと使い方 |
| 見ている軸 | 誰が基盤とアプリケーションを管理するか(NISTの定義) | どこで動き、どう使うか(ブラウザで動くか) |
| 使い方 | ブラウザなどの軽いクライアントか、プログラム用のインターフェース(API)で使う(NISTの定義) | ブラウザから使う |
| 運用する人 | 提供者が基盤とアプリケーションを運用する | 提供会社の場合も、自社の場合もある |
| 重なるとき | ブラウザで使うSaaSは、Webアプリでもある | 提供会社が運用し、契約して使うWebアプリは、SaaSでもある |
つまり、2つは対立する言葉ではなく、重なる部分がある別々の軸です。
自社で作るか、SaaSを使うか迷う業務の一例|申請・承認と社内連絡
申請・承認と社内連絡は、自社でWebアプリを作る選択肢も、既製のSaaSを使う選択肢もある業務です。一例として、コラボフローとChatworkを、商品ページで確認した範囲で表にしました。責任の分担は次の章で整理します。
申請・承認と社内連絡で見る、2つのサービスの役割
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:コラボフローノーコードでフォームを作成でき、運用中にフォームレイアウトの追加・修正ができると商品ページで紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:Chatwork無料で始められるフリープランがあり、チャットに加えて通話やタスク・ファイル管理の機能があると商品ページで紹介されています。
資料を無料ダウンロード| サービス | Chatwork |
|
|---|---|---|
| 向いている会社 | 申請書や稟議の様式と承認経路を、自社で作り込まずに仕組みにしたい会社 | 社内外の連絡を1か所に集めたい、初めて導入する中小企業 |
| 特徴 | ノーコードでフォームを作成でき、運用中にフォームの追加・修正もできる | 無料で始められるフリープランがあり、通話やタスク・ファイル管理もできる。API連携にも対応 |
| 注意したい点 | クラウド版は1ユーザーにつき5GBの容量制限がある。モバイルアプリはプレミアムプランの機能 | 有料プランへのアップグレードは組織内の全ユーザーが対象で、ダウングレードはできない |
| 資料・詳細 |
2サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。内容は2026年10月23日時点の商品ページによります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
申請・承認の仕組みを、自社でWebアプリとして作り込まずに整えたい場合の一例が、株式会社コラボスタイルのコラボフローです。商品ページでは、ノーコードでフォームを作成できること、承認経路をシンプルに設定でき、運用中にもフォームの追加・修正ができることが紹介されています。一方で、クラウド版には1ユーザーにつき5GBの容量制限があり、帳票出力やモバイルアプリはプレミアムプランの機能で、スタンダードプランではオプションとして追加が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
おすすめ!
- 誰でも思い通りのワークフローを簡単作成
- シンプルかつ直感的な操作で承認経路を設計
- 運用中にフォームレイアウトの追加・修正が可能
気になる…
- コラボフローのクラウド版には、1ユーザーにつき5GBの容量制限がある
コラボフローの導入事例では、南海電気鉄道株式会社が、押印文書の印鑑レス化・ペーパーレス化に向けて、ワークフローシステムを選んだ経緯を紹介しています。事例ページで、担当者がノーコードで開発できる点を次のように述べています。
基本的にノーコードで開発ができるため、IT初心者でSE経験のない私でも、早期に開発作業に着手することができました。
出典:コラボフロー 導入事例 南海電気鉄道株式会社
社内外の連絡を、自作の掲示板やメールの転送ではなく、既製のチャットで1か所に集めたい場合の一例が、株式会社kubellが提供するChatworkです。商品ページでは、無料で始められるフリープランがあること、チャットに加えて通話やタスク管理、ファイルの共有ができること、API連携でメールなど他のサービスの通知をChatworkに集められることが紹介されています。一方で、フリープランから有料プランへのアップグレードは組織内の全ユーザーが対象になり、より高いセキュリティとサポートを求める場合はエンタープライズの契約が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
Chatwork株式会社
Chatwork
Chatwork株式会社
Chatwork
タスク管理やビデオ通話も◎初めて導入する中小企業におすすめ
おすすめ!
- まずは無料で始められる「フリープラン」の提供
- チャットだけでなく通話機能やタスク・ファイル管理などの機能が充実
- 年齢性別問わず社内外でも使いやすいシンプルさが魅力
気になる…
- より高いセキュリティとサポートの手厚さを求める方はエンタープライズの契約が必要
Chatworkの導入事例では、全国54の支部を持つ一般社団法人 全国介護事業者連盟が、連絡ツールをChatworkに一本化した経緯を紹介しています(取材は2023年8月)。事例ページで、支部の事務局長が、連絡が分散していた場合を次のように振り返っています。
仮に連絡がLINEやメールなど複数のツールに分散していたら、他の支部との連携はとりにくくなっていたでしょう。
出典:Chatwork 導入事例 一般社団法人 全国介護事業者連盟
開発・運用の責任範囲の違い|誰が何を管理するか
SaaSでは提供会社がアプリケーション以下の運用を担い、自社で作るWebアプリでは自社が開発と運用を担います。データとアカウントは、どちらでも利用者の責任です。
Microsoftは、クラウドの責任の分担を、オンプレミス、IaaS、PaaS、SaaSの4つの形態ごとの表にしています(2026年10月23日に確認)。次の表は、その表の「カスタマー」「Shared」「Microsoft」を、利用者・共有・提供者と読み替えたものです。同社のサービスを前提にした表ですが、利用者と提供者が責任を分け合うという考え方を理解する助けになります。
| 責任領域 | オンプレミス | IaaS | PaaS | SaaS |
|---|---|---|---|---|
| 顧客データ | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| 構成と設定 | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| IDとユーザー | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| クライアントデバイス | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 共有 |
| アプリケーション | 利用者 | 利用者 | 共有 | 共有 |
| ネットワークコントロール | 利用者 | 利用者 | 共有 | 提供者 |
| オペレーティングシステム | 利用者 | 利用者 | 提供者 | 提供者 |
| 物理ホスト | 利用者 | 提供者 | 提供者 | 提供者 |
| 物理ネットワーク | 利用者 | 提供者 | 提供者 | 提供者 |
| 物理データセンター | 利用者 | 提供者 | 提供者 | 提供者 |
Microsoftは、どの形態でも常に利用者が持つ責任として、データ、エンドポイント、アカウント、アクセス管理の4つを挙げています。SaaSで提供会社が引き受けるのは主に基盤とアプリケーションの運用で、データをどう分類して保護するか、誰にアカウントを与えるかは、利用者が決めます。
総務省のガイドラインで見る責任の分担
日本の公的な資料では、総務省の「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」(2021年9月)が、23頁から25頁で、SaaS、PaaS、IaaSごとの管理と責任共有を説明しています。SaaSでは、利用者は、アプリケーションを利用するためのデータや、アプリケーション上で生成したデータを管理する権限と責任を持ちます。提供者は、アプリケーション層以下の実装、設定、更新、運用を管理します。PaaSでは、利用者がアプリケーションの開発と管理を行います。IaaSでは、OSを含むすべてのソフトウェアの管理を利用者が行い、OSやミドルウェア層での障害対応、パッチ適用、脆弱性対応は利用者の責任になります。
同じガイドラインは22頁で、クラウドサービスのセキュリティ設定が十分でなかったために、管理している機密情報を無認証状態で外部に公開してしまった事例が相次いで報告されていると述べています。提供会社が担う部分と、自社で設定する部分を分けて把握しておく理由です。
自社でWebアプリを作ると、自社に残る仕事
自社でWebアプリを開発して運用する場合は、アプリケーションそのものの安全対策が自社の仕事になります。IPAの「安全なウェブサイトの作り方」は、第1章「ウェブアプリケーションのセキュリティ実装」で、SQLインジェクション、OSコマンド・インジェクション、セッション管理の不備、クロスサイト・スクリプティング、CSRF、アクセス制御や認可制御の欠落など、11項目の脆弱性を取り上げています。SaaSでは、アプリケーション層以下の実装と運用を提供者が管理しますが、自社で作るWebアプリでは、こうした対策を自社が実装し、保ち続けることになります。
| 運用の仕事 | 自社で作って動かすWebアプリ | SaaSを使う場合 |
|---|---|---|
| アプリケーションの実装と脆弱性対策 | 自社が実装し、修正する(IPAの第1章の11項目) | 提供者が実装と運用を管理する(総務省23頁) |
| OSやミドルウェアの更新・パッチ | IaaSの上で動かす場合は、自社の責任(総務省25頁) | 提供者が管理する(総務省23頁、Microsoftの表) |
| 機能の追加や改修 | 自社で企画し、開発する | 提供者が更新する。更新で設定が不適切になることがあるため、提供者は情報提供が必要とされる(総務省23頁の注) |
| アカウントと権限の管理 | 自社が管理する | 利用者の責任として残る(Microsoftの表、総務省23頁) |
| データの管理とバックアップ | 自社が管理する | 利用者がデータの管理責任を持つ(総務省23頁)。IPAの手引きNo.10は、重要情報を手元に確保することを求める |
| 障害への対応 | 自社が対応する(IaaSの上ではOS・ミドルウェアも自社) | 基盤とアプリケーションは、契約・SLAに基づき提供者が対応する |
IaaSやPaaSの上に自社でWebアプリを作る場合、クラウドの基盤は借りていても、表のとおり、アプリケーションの責任は自社に残ります。クラウドの上にあるからSaaSになる、というわけではありません。
自社で作った仕組みの運用負担をセルフチェック
次のチェックは、ここまでの内容から作った簡易的な点検で、診断や認証ではありません。当てはまる数が少なければ、今のやり方で足りる可能性があります。
自社で作った申請・連絡の仕組み、運用の負担は大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
SaaSとWebアプリの混同しやすい場面|4つのパターンで見分ける
SaaSかWebアプリかは、提供会社が運用しているか、ブラウザで使うかの2つの質問で見分けられます。両方に当てはまるものは、どちらの名前でも呼べます。
| パターン | 運用する人 | SaaSか | Webアプリか |
|---|---|---|---|
| 1. 提供会社が運用する業務サービスを、ブラウザで使う(ウェブメール、ワークフロー、ビジネスチャットのブラウザ版など) | 提供会社 | SaaS(NISTがウェブメールを例に挙げている) | Webアプリ |
| 2. 自社で作った申請フォームや社内システムを、自社で運用する | 自社 | 利用者が基盤とアプリケーションを管理するため、NISTのSaaSの使い方には当てはまらない | Webアプリ |
| 3. 提供会社が運用するサービスを、スマホのアプリやAPIで使う(Chatworkのモバイル版アプリなど) | 提供会社 | SaaS(NISTは、プログラム用のインターフェースも使い方に含めている) | ブラウザのWebアプリとは限らない |
| 4. 自社のサーバーや端末にインストールして使うパッケージソフト | 自社 | 当てはまらない(インストール、更新、保守を自社で行う) | Webアプリとは限らない |
パターン2は、自社が提供者になって顧客に契約で提供する形にすれば、提供者の側から見るとSaaSの提供になります。社内で使うだけの場合は、前の章の表のとおり、運用の責任が自社に残ります。
よくある誤解5つ
- 「SaaSはブラウザで使うもの」:NISTの定義は、ブラウザなどの軽いクライアントか、プログラム用のインターフェースのどちらかで使えるとしています。スマホアプリやAPIで使うSaaSもあります。
- 「Webアプリは自社で作るもの」:ブラウザ上で動くアプリケーションを指す言葉で、提供会社が運用する既製のWebアプリも含みます。
- 「無料ならSaaSではない」:有料で運用するものをSaaSと呼ぶ解説もありますが、NISTの定義の文に料金は出てきません。料金の有無より、誰が基盤とアプリケーションを管理するかで見分けるほうが、公的な定義に沿います。
- 「クラウドの上にあればSaaS」:IaaSやPaaSの上に自社で作ったWebアプリは、アプリケーションの責任が自社に残ります(総務省のガイドライン24頁、25頁)。
- 「SaaSならセキュリティは提供会社がすべて担う」:データ、アカウント、アクセス管理は、利用者の責任として残ります(Microsoftの表)。
このほか、SaaSとIaaS・PaaSの違いはSaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説、SaaSの基本的な意味と選び方はSaaSとは?PaaSやIaaSとの違い、サービスの選び方も解説で説明しています。ブラウザ版とスマホのアプリ版の違いはSaaSアプリとは?ブラウザ版とスマホアプリ版の違い・選び方と注意点で整理しています。
自社で作るか、SaaSを使うかを決める5つの問い
自社で作るかSaaSを使うかは、業務の独自性、運用体制、改修の頻度、データの扱い、他サービスとの連携の5つの問いで考えます。
ここで挙げる問いは、これまでの章で確認した責任範囲から作った考え方の整理で、公的な基準ではありません。どの問いも、公式の情報や資料で、自社の状況に当てはめて確認してください。
| 問い | 自社で作る方向 | SaaSを使う方向 | 確認する場所 |
|---|---|---|---|
| 1. 業務は自社に固有か | 他社と共通でなく、既製のサービスの機能に載らない業務 | 申請、連絡、会計など、一般的な業務の流れで足りる | 公式サイトの機能一覧、無料トライアル |
| 2. 運用を担える体制があるか | 脆弱性対策、更新、障害対応を継続して担える担当者がいる | 担当者が少なく、運用を提供会社に任せたい | 総務省ガイドライン23頁から25頁の責任分担 |
| 3. 機能の追加や変更は、どのくらい必要か | 独自の変更が頻繁に必要 | 提供会社の更新に合わせて使い、設定で足りる | 総務省ガイドライン23頁の注(提供者の更新) |
| 4. データをどこで、どう扱うか | 保存場所や処理を、自社で決めたい | 保存先の国・地域、終了時のデータ、契約条件を確認して、許容できる | IPAの手引きNo.13、14、15 |
| 5. 他のサービスとつなぐ必要があるか | 連携先に合わせて、自社で実装する | API連携の有無を、公式情報で確認する | NISTの定義(プログラム用のインターフェース)、各社の商品ページ |
自社で一から作る形と、完成したSaaSをそのまま使う形の間には、設定やノーコードで業務に合わせられるサービスもあります。前の章で引用したコラボフローの事例のように、IT経験の浅い担当者が着手できたと述べる導入事例もあります。完成した機能で足りるか、設定で合わせられるかは、資料やトライアルで確かめてください。
コラボフロー
自作した申請の仕組みの改修や運用を、担当者ひとりで抱えていませんか?
こんな会社に向いています
申請書の様式や承認経路を、ノーコードで整えたい会社
運用を始めたあとも、フォームの項目を追加・修正したい会社
SaaSを選ぶときの確認項目|IPAの手引きの15項目から
SaaSを選ぶときは、IPAの「クラウドサービス安全利用の手引き」にある15項目のうち、事業者の信頼性、品質保証、終了時のデータ、契約条件、保存先を、公式情報で確認します。
この手引きは、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版の付録7で、選択するときのポイント6項目、運用するときのポイント4項目、セキュリティ管理のポイント5項目のチェックシートです。次の表は、サービスを選ぶ側が公式の情報で確認できる項目を、手引きの番号に沿って整理したものです。
| 確認項目 | 見ること | 確認できる場所 |
|---|---|---|
| 1. 事業者の信頼性(No.5) | サービスを提供する事業者は信頼できるか | 公式サイトの会社情報、認証や開示制度の掲載 |
| 2. サービス品質の保証(No.6) | 稼働率、障害発生頻度、障害時の回復目標時間などの品質保証が示されているか | サービス仕様書、SLAの記載 |
| 3. 付帯するセキュリティ対策とサポート(No.11、12) | セキュリティ対策が具体的に公開されているか、ヘルプデスクやFAQがあるか | 公式サイトのセキュリティのページ、ヘルプ、サポート窓口 |
| 4. 利用終了時のデータ(No.13) | 返却またはダウンロードできるか、データの形式は他のサービスで使えるか | 利用規約、契約書、ヘルプ |
| 5. 契約条件と適用法令(No.14)、保存先(No.15) | サービス事業者が入力データにアクセスする条件、再委託先の管理、データを保存するサーバーの国・地域 | 利用規約、プライバシーポリシー、契約書 |
| 6. 利用者側で決める運用(No.7から10) | 管理担当者、利用者の範囲、認証の設定、バックアップを自社で決められているか | 自社の運用ルール、サービスの管理画面の設定 |
手引きのNo.10は「バックアップに責任を持つ」で、サービス停止やデータの消失・改ざんに備えて、重要情報を手元に確保して必要なときに使えるようにする項目です。SaaSでも、バックアップは利用者側の確認項目に入っています。手引きは、選ぶときの参考になる制度として、ISMAP、ISMSクラウドセキュリティ認証、クラウド情報セキュリティ監査制度、ASP・SaaS情報開示認定制度も紹介しています。
スマホやタブレットで使うときの端末の管理はSaaSアプリとは?ブラウザ版とスマホアプリ版の違い・選び方と注意点、他のサービスとの連携やログインの一本化はSaaS連携とは?API・iPaaS・Webhook・SSOの違いと始め方で整理しています。
自作のWebアプリや表計算からSaaSへ移すときの進め方
自作の仕組みからSaaSへ移すときは、現状の棚卸し、自社固有の部分の切り分け、公式情報での確認、トライアル、データの移行と周知の5ステップで進めます。
移行の5ステップ
- 現状を棚卸しする:自作のWebアプリや表計算が、どの業務で、誰に、どのデータで使われているかを書き出します。運用の担当者と、止まったときの影響も確認します(IPAの手引きNo.1、No.3)。
- 自社固有の部分を切り分ける:既製のSaaSの機能で足りる部分と、足りない部分に分けます。足りない部分は、設定やノーコードで足せるかを確認します。
- 公式情報で確認する:前の章の表の項目を、サービスごとに確認します。
- 資料請求とトライアルで確かめる:自社の様式や権限の設定で、実際に試します。
- データを移し、周知する:利用終了時のデータの扱い(IPAの手引きNo.13)と、移行元のデータの形式を確認します。管理担当者、利用者の範囲、認証のルールを決めて、従業員に周知します。
展開後の周知と質問の窓口を決める
移行後は、利用者への周知、使い方の質問を受ける窓口、管理担当者への連絡が必要になります。連絡が個人のメールや複数のツールに分かれると、あとから確認できなくなります。自作の掲示板や転送メールで続けるのではなく、連絡の場を1か所に決める場合の一例が、Chatworkです。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaSとWebアプリの違いは何ですか?
A. SaaSは、提供会社がクラウド上で運用するソフトウェアを契約して使う提供形態で、Webアプリは、ブラウザ上で動くアプリケーションの作りと使い方を指す言葉です。見ている軸が違うため、提供会社が運用するものをブラウザで使う場合は、両方に当てはまります。
Q2. SaaSとアプリケーションの違いは何ですか?
A. アプリケーションは、業務や作業のために作られたソフトウェアそのものを指します。SaaSは、そのアプリケーションを提供会社がクラウド上で運用し、利用者に提供する形態を指します。NISTの定義では、利用者は基盤を管理せず、アプリケーションの機能も限られた設定を除いて管理しません。
Q3. 自社で作ったWebアプリは、SaaSですか?
A. 自社で作って自社で運用するWebアプリは、利用者が基盤やアプリケーションを管理するため、NISTのSaaSの使い方には当てはまりません。自社のアプリを顧客に契約で提供する場合は、提供者の側から見るとSaaSの提供になります。
Q4. Webとアプリのどちらを使うのがよいですか?
A. SaaSには、ブラウザ版だけのもの、スマホアプリ版もあるものがあり、使いたい機能がどちらで使えるかは、サービスとプランによって異なります。たとえばコラボフローのモバイルアプリはプレミアムプランの機能で、スタンダードプランではオプションです(商品ページ)。使う端末と機能を先に決めて、契約の前に確認してください。
Q5. SaaSを使えば、セキュリティの責任はすべて提供会社にありますか?
A. いいえ。Microsoftは、どの形態でも常に利用者が持つ責任として、データ、エンドポイント、アカウント、アクセス管理を挙げています。総務省のガイドラインも、SaaSの利用者はデータを管理する権限と責任を持つとしています。
Q6. 自社で作るか、SaaSを使うか、どちらを選べばよいですか?
A. 業務の独自性、運用体制、改修の頻度、データの扱い、他サービスとの連携の5つの問いで考えます。運用の担当者を継続して置けない場合や、一般的な業務の流れで足りる場合は、SaaSを検討する余地があります。
まとめ|SaaSとWebアプリを見分けて、運用の責任を決める5つのこと
SaaSは提供形態の呼び名、Webアプリはブラウザで動く作りと使い方の呼び名で、重なる場合も重ならない場合もあります。次の5つから、取り組みやすいものを選んで確認してください。
- 軸の違いを押さえる:SaaSは誰が運用するかの軸、Webアプリはブラウザで動くかの軸と理解する
- 重なりを見分ける:提供会社が運用しているか、ブラウザで使うかの2つの質問で4つのパターンに分ける
- 責任の分担を確認する:データ、アカウント、アクセス管理は常に利用者側に残り、SaaSでは基盤とアプリケーションの運用を提供者が担う
- 5つの問いで決める:業務の独自性、運用体制、改修の頻度、データの扱い、連携の有無で、自社で作るかSaaSを使うかを考える
- 申請・承認と社内連絡を仕組みに載せられるか、資料で検討する:自作の運用の負担が大きい場合は、ワークフローシステムやビジネスチャットの資料を請求して比べる
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言やセキュリティの診断ではありません。個別の契約条件や情報の取扱いは、各社の公式情報や、専門家にご確認ください。
参考文献
- NIST「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145、2011年9月):https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/Legacy/SP/nistspecialpublication800-145.pdf
- 総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」(2021年9月):https://www.soumu.go.jp/main_content/000771515.pdf
- Microsoft Learn「クラウドでの共同責任」(2026年10月23日確認):https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/security/fundamentals/shared-responsibility
- IPA「安全なウェブサイトの作り方」:https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/about.html
- IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版 付録7):https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_7.pdf
- 株式会社kubell 会社情報:https://www.kubell.com/about/company/
- 株式会社コラボスタイル 会社情報:https://www.collabo-style.co.jp/company/
- コラボフロー 導入事例 南海電気鉄道株式会社:https://www.collabo-style.co.jp/case/case021/
- Chatwork 導入事例 一般社団法人 全国介護事業者連盟(取材2023年8月):https://go.chatwork.com/ja/case/kaiziren.html
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