SaaS用語の基本|形態・契約・指標・営業の主要用語を系統別に整理
Check!
- 用語は4つの系統に分けて覚える
- 契約前はSLAと利用終了時のデータを確認
- 指標の定義は会社や資料で変わる
SaaS用語とは、SaaSという提供形態の仕組み、契約、事業の数字、営業と組織を説明するための言葉の総称です。数が多いので、形態と仕組み、契約と運用、事業指標、営業と組織の4つの系統に分けて確認すると、自分に必要な用語から順に押さえられます。この記事では、NIST・総務省・IPAなどの公的資料で意味を確かめられる用語と、SaaS事業の現場で使われる指標や略語を表で整理します。意味は一般的な用法に沿って書き、会社や資料によって定義が異なるものは、その旨を添えています。
いま知りたい用語と、社内で困っている場面から、読む順番を決めませんか?
Q1. 先に知りたい用語は、どちらに近いですか?
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SaaS用語の全体像|4つの系統で覚える
SaaS用語は、形態と仕組み、契約と運用、事業指標、営業と組織の4系統で整理できます。サービスを選ぶ側は前半の2つ、SaaS事業に関わる側は後半の2つから読むと近道です。
| 系統 | 主な用語 | 主に必要になる場面 | この記事の章 |
|---|---|---|---|
| 1. 形態と仕組み | SaaS・PaaS・IaaS、クラウド、マルチテナント、API、SSO | サービスを選ぶ、導入を相談する | 形態と仕組みの用語 |
| 2. 契約と運用 | SLA、稼働率、利用終了時のデータ、責任共有、認証制度 | 契約前の確認、運用ルールづくり | 契約と運用の用語 |
| 3. 事業指標 | MRR・ARR、チャーン、NRR、LTV、CAC、40%ルール | SaaS会社の決算や自社事業の数字を読む | 事業指標の用語 |
| 4. 営業と組織 | MQL・SQL、インサイドセールス、PLG、カスタマーサクセス | SaaS会社の営業・マーケ・顧客支援に関わる | 営業と組織の用語 |
用語は、身近な実例を1つ持っておくと意味が入りやすくなります。申請・承認と社内連絡は、SaaSで置き換えやすい代表的な業務です。次の表は、その一例として、ワークフローシステムのコラボフローとビジネスチャットのChatworkを、商品ページで確認した範囲で比べたものです。
申請・承認と社内連絡で見る、2つのサービスの役割
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:コラボフローノーコードでフォームを作成でき、運用中にフォームレイアウトの追加・修正ができると商品ページで紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:Chatwork無料で始められるフリープランがあり、チャットに加えて通話やタスク・ファイル管理の機能があると商品ページで紹介されています。
資料を無料ダウンロード| サービス | Chatwork |
|
|---|---|---|
| 向いている会社 | 申請書や稟議の様式と承認経路を、自社で作り込まずに仕組みにしたい会社 | 社内外の連絡を1か所に集めたい、初めて導入する中小企業 |
| 特徴 | ノーコードでフォームを作成でき、運用中にフォームの追加・修正もできる | 無料で始められるフリープランがあり、通話やタスク・ファイル管理もできる。API連携にも対応 |
| 注意したい点 | クラウド版は1ユーザーにつき5GBの容量制限がある | 有料プランへのアップグレードは組織内の全ユーザーが対象で、ダウングレードはできない |
| 資料・詳細 |
2サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。内容は2026年10月23日時点の商品ページによります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
SaaSの意味を、実際に使うサービスで確かめたい場合の一例が、申請・承認を扱うワークフローシステムの、株式会社コラボスタイルのコラボフローです。商品ページでは、ノーコードでフォームを作成できること、承認経路をシンプルに設定でき、運用中にもフォームのレイアウトを追加・修正できることが紹介されています。一方で、クラウド版には1ユーザーにつき5GBの容量制限があります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
おすすめ!
- 誰でも思い通りのワークフローを簡単作成
- シンプルかつ直感的な操作で承認経路を設計
- 運用中にフォームレイアウトの追加・修正が可能
気になる…
- コラボフローのクラウド版には、1ユーザーにつき5GBの容量制限がある
コラボフローの導入事例では、南海電気鉄道株式会社が、押印文書の印鑑レス化・ペーパーレス化に向けてワークフローシステムを選んだ理由を紹介しています。担当者は、事例ページで次のように述べています。
コラボフローは、Excelで設計した資料を取り込むことによって簡単に申請が作成できるので、開発生産性が高いと感じました。
出典:コラボフロー 導入事例 南海電気鉄道株式会社
社内外の連絡を、メールや複数のツールに分けず、1か所のビジネスチャットに集めたい場合の一例が、株式会社kubellが提供するChatworkです。商品ページでは、無料で始められるフリープランがあること、チャットに加えて通話やタスク管理、ファイルの共有ができること、API連携で他のサービスの通知を集められることが紹介されています。一方で、フリープランから有料プランへのアップグレードは組織内の全ユーザーが対象になり、より高いセキュリティとサポートを求める場合はエンタープライズの契約が必要です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
Chatwork株式会社
Chatwork
Chatwork株式会社
Chatwork
タスク管理やビデオ通話も◎初めて導入する中小企業におすすめ
おすすめ!
- まずは無料で始められる「フリープラン」の提供
- チャットだけでなく通話機能やタスク・ファイル管理などの機能が充実
- 年齢性別問わず社内外でも使いやすいシンプルさが魅力
気になる…
- より高いセキュリティとサポートの手厚さを求める方はエンタープライズの契約が必要
Chatworkの導入事例では、全国54の支部を持つ一般社団法人 全国介護事業者連盟が、連絡ツールの一本化について紹介しています(取材は2023年8月)。支部の担当者は、事例ページで次のように述べています。
全員が共通のツールを使うようになったことがメリットだと感じています。
出典:Chatwork 導入事例 一般社団法人 全国介護事業者連盟
形態と仕組みの用語|SaaS・PaaS・IaaSからマルチテナントまで
SaaS・PaaS・IaaSは、クラウドの3つのサービスモデルで、利用者が管理する範囲が異なります。SaaSでは提供者がアプリケーションまで運用し、利用者は使う側に回ります。
クラウドとSaaSの定義は、米国立標準技術研究所(NIST)が2011年9月に公表した「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145)が広く参照されています。NISTは、クラウドを、5つの基本特性、3つのサービスモデル、4つの提供モデルで定義しています。5つの基本特性は、利用者が自分で必要な分を使い始められること、ネットワーク経由で広く使えること、提供者の計算資源をまとめて複数の利用者に提供すること、需要に応じて増減できること、使った量を測って管理することです。
| 用語 | 意味 | 補足 |
|---|---|---|
| クラウド | ネットワーク経由で、共有された計算資源(サーバー、ストレージ、アプリケーションなど)を、必要なときに使うモデル | NISTは5つの基本特性、3つのサービスモデル、4つの提供モデルで定義している |
| SaaS(Software as a Service) | 提供者がクラウド基盤の上で動かすアプリケーションを、利用者がブラウザなどの軽いクライアントか、プログラム用のインターフェース(API)で使う形態 | NISTは、ウェブメールを例に挙げている |
| PaaS(Platform as a Service) | 利用者が自作または入手したアプリケーションを、提供者のクラウド基盤に配置して動かす形態 | 基盤は提供者、配置したアプリケーションは利用者が管理する |
| IaaS(Infrastructure as a Service) | 処理能力、ストレージ、ネットワークなどの基本的な計算資源を借り、OSやアプリケーションを利用者が動かす形態 | OSから上は利用者が管理する |
| オンプレミス | 自社の設備にシステムを置き、自社で運用する形。クラウドと対比して使う | 運用の責任は自社が持つ |
| マルチテナント | 提供者の計算資源をまとめて、複数の利用者に分け合って提供する方式 | NISTは「リソースのプール化」の説明で挙げている |
| パブリック・プライベート・コミュニティ・ハイブリッド | 提供モデルの4種類。一般向け、1つの組織専用、特定のコミュニティ専用、複数を組み合わせた形 | NISTの4つの提供モデル |
| API | 他のサービスやプログラムとつなぐための窓口 | SaaS連携とは?API・iPaaS・Webhook・SSOの違いと始め方で整理している |
| SSO(シングルサインオン) | 1回のログインで、複数のサービスを使える仕組み | 同上 |
| ASP | アプリケーションをネット経由で提供する事業者やサービスの呼び名。SaaSと近い意味で使われてきた | SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説で整理している |
| サブスクリプション | 利用期間に応じて、継続的に料金を払う契約の形。SaaSの課金で多く使われる | 料金体系はサービスごとに異なる |
| ホリゾンタルSaaS・バーティカルSaaS | 業種を問わず使われる汎用的なSaaSと、特定の業界に特化したSaaS | 会計や人事は前者、建設や介護向けは後者に当たる |
IaaS、PaaS、SaaSとはどういう意味ですか?
IaaSは基本的な計算資源を借りる形態、PaaSはアプリケーションを動かす基盤を借りる形態、SaaSは完成したアプリケーションを借りる形態です。上の表のNISTの定義をもとに、利用者が管理する範囲で並べると、次のようになります。
| 形態 | 利用者が管理する範囲 | 提供者が管理する範囲 |
|---|---|---|
| IaaS | OS、ストレージ、配置したアプリケーション。ネットワークの一部の設定も限定的に管理する | クラウド基盤(処理能力、ストレージ、ネットワークなど) |
| PaaS | 配置したアプリケーションと、その実行環境の設定 | クラウド基盤、およびアプリケーションを動かす環境 |
| SaaS | 利用者ごとの限られた設定(データの入力や利用の設定) | クラウド基盤とアプリケーションの機能 |
この表は、NISTの3つのサービスモデルの定義を、管理する範囲の観点で読み替えたものです。クラウドの上にあれば何でもSaaSになるわけではなく、アプリケーションまで提供者が運用しているかどうかが分かれ目になります。3つの違いと、ASPとの関係はSaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説で詳しく整理しています。
SaaSはIT用語ですか?
SaaSは、クラウドコンピューティングのサービスモデルを表すIT用語です。NISTのほか、総務省の情報セキュリティ対策ガイドラインやIPAの手引きといった公的な資料でも、SaaS・PaaS・IaaSの区分で使われています。SaaSの基本的な意味や身近な例はSaaSって何?身近な例でわかる意味と料金の仕組み、選び方で説明しています。
契約と運用の用語|SLA・データ返却・責任共有と認証制度
契約と運用の用語は、SaaSを使い始める前に確認する項目と重なります。SLAは、稼働率や復旧時間などのサービス品質について、提供者と利用者が合意する取り決めです。
| 用語 | 意味 | 契約前に確認する場所 |
|---|---|---|
| SLA(サービスレベル・アグリーメント) | 稼働率や障害時の復旧時間など、サービス品質について提供者と利用者が合意する取り決め。経済産業省は2008年1月に「SaaS向けSLAガイドライン」を公表している | サービス仕様書、SLAの記載 |
| 稼働率 | 計画したサービス時間のうち、実際に使えた時間の割合。(計画サービス時間 – 停止時間)÷ 計画サービス時間で表すことが多い | SLAの記載。定義は提供者ごとに確認する |
| SLO・SLI | SLOは、SLAを守るために提供者が内部で置く目標値。SLIは、その達成度を測る具体的な指標 | 利用者に開示されないこともある |
| 利用終了時のデータ | 解約したあと、データを返却またはダウンロードできるか、形式は他で使えるか(IPAの手引きNo.13) | 利用規約、契約書、ヘルプ |
| 契約条件と保存先 | 提供者が入力データにアクセスする条件、再委託先の管理、データを保存するサーバーの国・地域(同No.14、No.15) | 利用規約、プライバシーポリシー |
| バックアップ | サービス停止やデータの消失・改ざんに備えて、重要情報を手元に確保しておくこと(同No.10) | 自社の運用ルール、管理画面の設定 |
| 責任共有 | 提供者と利用者で、管理する範囲を分け合う考え方。SaaSでも、データ、アカウント、アクセス管理は利用者に残る | 総務省ガイドライン、クラウド事業者の資料 |
| 認証・開示制度 | ISMAP、ISMSクラウドセキュリティ認証、クラウド情報セキュリティ監査制度、ASP・SaaS情報開示認定制度など。IPAの手引きが、選ぶときの参考として紹介している | 公式サイトの会社情報、認証の掲載 |
IPAの「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版の付録7)は、選択するときのポイント6項目(No.1からNo.6)、運用するときのポイント4項目(No.7からNo.10)、セキュリティ管理のポイント5項目(No.11からNo.15)の15項目をチェックシートにしています。事業者の信頼性はNo.5、稼働率などの品質保証はNo.6、セキュリティ対策の公開はNo.11、ヘルプデスクやFAQはNo.12です。
SaaSでも利用者に残る責任
Microsoftは、クラウドの責任の分担を、オンプレミス、IaaS、PaaS、SaaSの形態ごとの表にまとめ、どの形態でも常に利用者が持つ責任として、データ、エンドポイント、アカウント、アクセス管理の4つを挙げています(2026年10月23日に確認)。総務省の「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」も、23頁でSaaSの利用者はデータを管理する権限と責任を持ち、提供者はアプリケーション層以下の実装、設定、更新、運用を管理すると説明しています。SaaSを選んでも、アカウントの権限設定やデータの扱いは自社で決める必要があります。
確認項目は、実際のサービスの資料に当てはめると具体的になります。申請・承認のように、誰がどの権限で承認するか、記録をどこに残すかを決める必要がある業務は、アカウントの管理やデータの扱いを確かめる題材になります。
コラボフロー
申請・承認の仕組みで、権限やデータの扱いを資料で確かめませんか?
こんな会社に向いています
申請書の様式や承認経路を、ノーコードで整えたい会社
運用を始めたあとも、フォームの項目を追加・修正したい会社
事業指標の用語|MRR・ARR・チャーン・NRR・LTV・CAC・40%ルール
事業指標の用語は、SaaSの売上の積み上がり方と、顧客が続く強さを数字で測る言葉です。ARRは、継続している契約の売上を1年分に換算した金額で、MRRを12倍して求めるのが一般的です。
ここでは、各用語の意味と、見るときの一言に絞って整理します。計算例や成長段階ごとの目安、決算資料の読み方はSaaS会社とは?領域別の主な会社と、ARR・チャーン率・NRRの読み方で詳しく解説しています。指標は会計基準で定められたものではないため、定義は会社や資料によって異なります。
収益を表す用語
| 用語 | 意味 | 見るときの一言 |
|---|---|---|
| MRR(月次経常収益) | 継続して得られる月額の収益の合計。初期費用など一度きりの売上は含めないのが一般的 | 毎月の積み上がりの大きさ |
| ARR(年間経常収益) | 継続している契約の売上を1年分に換算した金額。MRRを12倍して求める | 金額より、増減の内訳(新規・拡大・縮小・解約)を見る |
| ACV(年間契約額) | 1契約が1年あたりにもたらす契約額 | 初期費用などを含めるかは解説や会社で異なる |
| ARPU | ユーザー1人あたりの平均収益 | ユーザー数に応じて課金する料金体系で使う |
| ARPA | アカウント(契約)1件あたりの平均収益 | 1契約で複数のユーザーが使う料金体系で使う |
継続を表す用語
| 用語 | 意味 | 見るときの一言 |
|---|---|---|
| チャーン率(解約率) | 一定期間に失われた顧客や売上の割合。顧客数で数えるカスタマーチャーンと、金額で数えるレベニューチャーンがある | どちらの率か、月次か年次かを先に確認する |
| NRR(売上維持率) | 期首にいた既存顧客の売上が、1年後にどれだけ残り、増えたかを示す割合。新規顧客は含めない | 100%を超えると、解約を拡大が上回っている状態 |
| GRR(総売上維持率) | 拡大分を含めず、縮小と解約による減少だけを反映した割合。上限は100% | NRRと並べて、拡大で解約を隠していないかを見る |
| ネガティブチャーン | NRRが100%を超え、既存顧客の拡大が解約と縮小を上回る状態 | 新規顧客がいなくても売上が伸びる |
採算と成長を表す用語
| 用語 | 意味 | 見るときの一言 |
|---|---|---|
| LTV(顧客生涯価値) | 顧客1社が契約期間全体でもたらす粗利の合計。Hibitoの解説は、ARPUに粗利率を掛け、チャーンレートで割る式を示している | チャーン率が下がるほど大きくなる |
| CAC(顧客獲得コスト) | 1社を獲得するためにかかった、広告費や営業費などの費用を新規顧客数で割ったもの | LTVと並べて投資の妥当性を見る |
| LTV÷CAC | LTVをCACで割った比。同解説は、3倍以上を健全の目安として紹介している | 1社の整理であり、公的な基準ではない |
| CAC回収期間 | CACを回収するまでの月数。同解説は、成長期の目安に12か月以内を挙げている | 短いほど、次の投資に回せる資金が戻りやすい |
| バーンレート・ランウェイ | バーンレートは、一定期間(通常は月)に支出するコスト。ランウェイは、手元資金が尽きるまでの期間 | 赤字の成長期に、資金の余力を見る |
| PMF(プロダクト・マーケット・フィット) | プロダクトが市場に受け入れられた状態 | 指標の目安が変わる節目として使われる |
| T2D3 | PMF後にARR200万ドルへ到達し、その後2年は3倍、続く3年は2倍ずつ伸ばす成長の型。Hibitoの解説は2015年にBattery Venturesが示したものとして紹介している | 初期のスタートアップが目標にする水準の例 |
| TAM・SAM・SOM | TAMは対象市場全体の規模、SAMはそのうち事業が提供できる範囲、SOMはその中で現実的に獲得できる規模 | 市場規模の大きさを段階で語るときに使う |
SaaSの40%ルールとは?
40%ルールとは、売上の成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、健全に成長しているとみる経験則です。SaaS会社は成長期に赤字が出やすく、利益だけでは良し悪しを測れないため、成長率を加えて見ます。
米国のベンチャーキャピタリストFred Wilson氏が自身のブログで示したもので、Coral Capitalの邦訳では「売上高の年間成長率 + 営業利益率は40%となるべきである」と書かれています。同じ邦訳には、成長率が100%なら営業損失60%まで、成長率が20%なら営業利益率20%が必要になるという例が出ています。成長率にARRの伸びを使う解説や、利益率に営業利益率ではなくEBITDAマージンを使う解説もあります。どちらを使っているかで数字が変わるため、比べるときは定義をそろえます。公的な基準ではなく、あくまで経験則です。
営業と組織の用語|リードからカスタマーサクセスまで
営業と組織の用語は、見込み顧客を契約につなげ、契約後に定着させる流れの役割分担を表す言葉です。MQLはマーケティングが関心が高いと判断した見込み顧客、SQLは営業が確度が高いと判断した見込み顧客です。
SaaS企業の解説では、見込み顧客の獲得、MQL、SQL、商談、受注、導入後の定着支援の順に、担当と用語が分かれるのが一般的な説明です。会社によって呼び方や線の引き方は違うため、社内で使うときは定義を決めておきます。
| 用語 | 意味 | 補足 |
|---|---|---|
| リード | 見込み顧客のこと | リードジェネレーションは、リードを獲得する活動 |
| MQL | セミナー参加や資料ダウンロードなど、マーケティング活動で関心が高いと判断された見込み顧客 | 営業に引き渡す前の段階 |
| SQL | ニーズが顕在化し、営業部門が受注の確度が高いと判断した見込み顧客 | MQLから絞り込まれる |
| SDR・BDR | SDRは、見込み顧客を商談につなげる担当。BDRは、まだ接点のない企業へ働きかけて、リード獲得や商談を目指す担当 | 会社によって役割の分け方が異なる |
| AE(アカウントエグゼクティブ) | 受注の可能性が高い見込み顧客へ提案し、契約の締結を目指す営業担当 | 商談から契約までを担当する |
| インサイドセールス・フィールドセールス | インサイドセールスは、電話やメール、Web会議など、訪問しない営業。フィールドセールスは、顧客を訪問して行う営業 | 両方を組み合わせて分業する会社が多い |
| PLG・SLG | PLGは、製品の体験を通じて顧客を引きつける進め方で、無料トライアルやフリーミアムを使う。SLGは、営業担当が主導して進める方法 | 製品の単価や複雑さで向き不向きが分かれるとされる |
| カスタマーサクセス | 顧客が、サービスを使って期待する成果を達成できるよう支援する取り組み | チャーンを下げ、NRRを上げる役割と結びつけて語られる |
| NPS | 「家族や友人にすすめる可能性」を尋ねて、推奨者の割合から批判者の割合を引いた指標 | 計算方法はNPSスコアとは?計算方法・目安・見方と上げ方をわかりやすく解説で整理している |
| DAU・WAU・MAU | 1日・1週間・1か月に、サービスを利用したアクティブユーザーの数 | DAUをMAUで割ったスティッキネスは、継続的な利用の度合いを見る |
営業と組織の用語は、リードの引き継ぎや顧客の状況を、部署の間で共有する場面で使われます。引き継ぎの内容が、個人のメールやメモに分かれると、あとから確認できなくなります。この点は、後の章の社内での運用につなげて整理します。
用語の読み違いに注意|定義は会社や資料で変わる
SaaS用語の多くは、会計基準や法令で定められたものではないため、同じ名前でも会社や資料によって定義が変わります。数字を比べるときは、定義の注記を先に確認します。
| 読み違えやすい点 | 実際に起きていること | 確認すること |
|---|---|---|
| ARRやACVの範囲 | 初期費用や、利用量に応じた課金の見込み分を含めるかが、会社や解説で異なる | 決算説明資料の注記で、含める売上の範囲 |
| チャーン率の分母と期間 | 顧客数ベースか金額ベースか、月次か年次かで数字の意味が変わる。月次チャーン率2%でも、1年続くと残る売上は(1-0.02)の12乗でおよそ78%になり、月次を12倍した24%とは一致しない | 率の種類と期間 |
| ARPUとARPA | ユーザー単位か、契約単位かで平均が変わる | 料金体系と分母 |
| 40%ルールの数字 | 成長率に売上とARRのどちらを使うか、利益率に営業利益率とEBITDAマージンのどちらを使うかで変わる | 計算に使った指標 |
| SaaSとASP・クラウドの混同 | SaaSの意味でASPやクラウドという言葉を使う解説もある | 提供者がアプリケーションまで運用し、利用者が使う形態かどうか |
| 「無料ならSaaSではない」 | NISTの定義の文に料金は出てこない。無料プランのあるSaaSもある | 誰が基盤とアプリケーションを管理するか |
5大SaaS企業は?という疑問もよく見られますが、「5大」の公的な定義はなく、売上、導入社数、知名度など、どの基準で並べるかで挙がる会社が変わります。分野ごとの代表例はSaaSの代表例|分野別の一覧とPaaS・IaaSの実例を解説とSaaSサービスとは?代表例・分野別カテゴリマップと選び方の5つの基準、業務カテゴリ別の例はSaaS製品とは?業務カテゴリ別の例と、ツール・プロダクトの違いで整理しています。
業界の論争から生まれた用語は、年表とあわせて確認すると意味がつかめます。「SaaSの死」という言葉の経緯と用語は、「SaaSの死」とは|年表と用語で読み解く論争の全体像で整理しています。
用語を調べるときの確認先|公的資料と決算資料の使い分け
用語を調べるときは、公的な定義がある用語は公的資料で、事業指標のように会社ごとに定義が違う用語は、各社の決算資料で確認します。知りたい内容別の確認先は次のとおりです。
| 知りたいこと | 見る資料 | ひとこと |
|---|---|---|
| SaaS・PaaS・IaaSの定義 | NIST「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145) | 3つのサービスモデルと5つの基本特性の原文 |
| 提供者と利用者の責任の分担 | 総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」23頁から25頁、Microsoft Learn「クラウドでの共同責任」 | SaaS、PaaS、IaaSごとの管理の範囲 |
| 選ぶときの確認項目 | IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」 | 15項目のチェックシート |
| SLAの考え方 | 経済産業省「SaaS向けSLAガイドライン」(2008年1月公表) | 稼働率などのサービスレベル項目の整理 |
| 事業指標の定義と数字 | 上場会社の決算説明資料、金融庁のEDINETの有価証券報告書 | 指標の定義は注記で確認する |
| 40%ルールの原典 | Fred Wilson氏のブログ「The 40% Rule」(Coral Capitalの邦訳) | 経験則であり、公的な基準ではない |
SaaSの連携や認証に関する用語はSaaS連携とは?API・iPaaS・Webhook・SSOの違いと始め方で、SaaSの指標を使って会社を比べる方法はSaaS会社とは?領域別の主な会社と、ARR・チャーン率・NRRの読み方で整理しています。
用語を覚えたあとにやること|社内で定義と窓口をそろえる
用語を覚えたあとは、社内で定義と連絡の窓口をそろえると、すれ違いを減らせます。次の4ステップで進めます。
- 用語集をつくる:社内で使う略語と、その定義(分母や期間を含む)を1か所に書き出します。定義は、決算資料や公的資料の出典も添えます。
- 契約前の確認項目を決める:SLA、利用終了時のデータ、保存先、管理担当者の設定を、SaaSを選ぶときの共通の確認項目にします(IPAの手引きのNo.6、No.13からNo.15)。
- 申請と承認の流れを決める:誰が、どの権限で、どの順に承認するかを、様式と一緒に決めます。
- 連絡の窓口を1か所に決める:リードや顧客の状況を引き継ぐ連絡を、個人のメールや複数のツールに分けず、1か所に集めます。
次のチェックは、ここまでの内容から作った簡易的な点検で、診断や認証ではありません。当てはまる数が少なければ、今のやり方で足りる可能性があります。
社内で用語や手順がすれ違っていないか、セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
連絡の窓口を1か所に決めるときの一例が、Chatworkです。用語集や確認項目を、個人のメールやメモに分けず、チャットのグループに残して共有する使い方があります。商品ページでは、チャットに加えてファイル管理やタスク管理の機能があると紹介されています。
Chatwork
用語や手順の共有を、連絡の窓口ごと1か所にまとめませんか?
こんな会社に向いています
社内外の連絡を、既製のチャットで1か所に集めたい会社
用語集や確認項目を、グループで共有して残したい会社
よくある質問(FAQ)
Q1. IaaS、PaaS、SaaSとはどういう意味ですか?
A. クラウドの3つのサービスモデルです。IaaSは処理能力やストレージなどの基本的な計算資源を借りる形態、PaaSはアプリケーションを動かす基盤を借りる形態、SaaSは提供者が運用する完成したアプリケーションを使う形態で、利用者が管理する範囲が順に小さくなります。
Q2. SaaSの40%ルールとは何ですか?
A. 売上の成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、健全に成長しているとみる経験則です。成長率にARRの伸びを使う解説や、利益率にEBITDAマージンを使う解説もあり、公的な基準ではないため、使う指標の定義をそろえて比べます。
Q3. SaaSはIT用語ですか?
A. はい。SaaSは、クラウドコンピューティングのサービスモデルを表すIT用語です。NISTの定義のほか、総務省のガイドラインやIPAの手引きでも、SaaS・PaaS・IaaSの区分で使われています。
Q4. 5大SaaS企業はどこですか?
A. 「5大」について、公的な定義はありません。売上、導入社数、知名度など、どの基準で並べるかによって挙がる会社が変わります。分野ごとの代表例は、分野別に整理した解説で確認してください。
Q5. SaaS用語は、何から覚えればよいですか?
A. 立場で順番を決めます。サービスを選ぶ側は、SaaS・PaaS・IaaS、SLA、利用終了時のデータなどの形態と契約の用語から、SaaS事業に関わる側は、MRR・ARR、チャーン、NRR、LTV、CACなどの事業指標の用語から確認します。
Q6. ARRとMRRの違いは何ですか?
A. MRRは月次の経常収益で、ARRは年間の経常収益です。月額契約が中心の場合、ARRはMRRを12倍して求めるのが一般的で、どちらも初期費用など一度きりの売上は含めないのが原則です。
まとめ|SaaS用語を系統別に押さえて、社内の定義をそろえる5つのこと
SaaS用語は、形態と仕組み、契約と運用、事業指標、営業と組織の4系統に分けると整理できます。次の5つから、取り組みやすいものを選んで確認してください。
- 4つの系統で読む順番を決める:サービスを選ぶ側は形態と契約、SaaS事業に関わる側は事業指標と営業・組織から確認する
- 形態の違いを管理する範囲で押さえる:SaaS・PaaS・IaaSは、利用者が管理する範囲で区別する
- 契約前の確認項目を決める:SLA、利用終了時のデータ、保存先、責任共有を、IPAの手引きなどで確認する
- 指標は定義を確かめて読む:ARR、チャーン、NRR、40%ルールは、会社や資料で定義が変わる
- 申請・承認と社内連絡を仕組みに載せられるか、資料で検討する:用語や手順の定義をそろえるために、ワークフローシステムやビジネスチャットの資料を請求して比べる
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言や投資助言ではありません。個別の契約条件や、指標の扱いは、各社の公式情報や専門家にご確認ください。
参考文献
- NIST「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145、2011年9月):https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/Legacy/SP/nistspecialpublication800-145.pdf
- 総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」(2021年9月):https://www.soumu.go.jp/main_content/000771515.pdf
- Microsoft Learn「クラウドでの共同責任」(2026年10月23日確認):https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/security/fundamentals/shared-responsibility
- IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」(中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版 付録7):https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_7.pdf
- 経済産業省「SaaS向けSLAガイドライン」(2008年1月):https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/secdoc/contents/downloadfils/080121saasgl.pdf
- 株式会社Hibito「SaaS収益モデルとは?ARR・MRR・LTV・NRR・チャーンの関係とステージ別KPI」:https://hibito.co.jp/revops/saas-revenue-model/
- Scalebase「NRR(売上維持率)とは?SaaSの成長を測る重要KPIの計算式と改善策を徹底解説」:https://scalebase.com/blog/sales-strategy/nrr-toha
- Coral Capital「SaaSビジネス成長ペースの基準「40%ルール」」(Fred Wilson氏のブログの邦訳):https://coralcap.co/2020/02/the-40-rule/
- 金融庁「EDINET」:https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/
- 株式会社kubell 会社情報:https://www.kubell.com/about/company/
- 株式会社コラボスタイル 会社情報:https://www.collabo-style.co.jp/company/
- コラボフロー 導入事例 南海電気鉄道株式会社:https://www.collabo-style.co.jp/case/case021/
- Chatwork 導入事例 一般社団法人 全国介護事業者連盟(取材2023年8月):https://go.chatwork.com/ja/case/kaiziren.html
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