健康管理システムとは?機能とメリット・デメリット、選び方を解説

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  • 健康管理システムでは、厚生労働省が定めるストレスチェックにも対応することができる
  • 健康管理システムの導入で、作業負担の軽減による効率化や労働環境の最適化につながる
  • 健康管理システム導入の際は、対応社員の規模と導入目的、必要な機能を明確にしておく

健康管理システムとは、従業員の健康に関するデータを一元管理できるシステムです。データを管理することで、担当者の負担軽減や離職率低下に繋がるメリットもあります。本記事では、健康管理システムの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

目次

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  1. 健康管理システムとは?
  2. 健康管理システムの機能
  3. 健康管理システムのメリット
  4. 健康管理システムのデメリット
  5. 健康管理システムの選び方・比較ポイント
  6. まとめ

健康管理システムとは?

健康管理システムとは、文字通り従業員の健康に関する情報を一つに集約できるシステムを指します。従業員の健康管理には、大別して下記3つの業務があります。

  1. 健康診断の予約
  2. 健康診断結果の管理
  3. 面談者の選定とスケジュール調整

 これらの業務をExcelでまとめるとなると、ファイルサイズが膨大となり、管理が大変になります。

しかし、健康管理システムなら一元管理が可能であり、担当者の業務を大幅に軽減できます。健康管理業務が効率の悪い現場や、データ管理を容易にしたいと考えている企業におすすめです。

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健康管理システムの市場規模は拡大している

2015年から、従業員50人以上の企業に対して年1回のストレスチェックが義務付けられました。従業員一人ひとりにストレスチェックを実施し、メンタルヘルス不調者の産業医との面談・職場環境の改善などが求められます。

しかし、ストレスチェックが義務付けられたことにより、人事・労務担当者の負担は増えるばかりです。そこで、健康管理システムの導入により、従業員がWeb上でストレスチェックを行え、集計も簡単にできます。

人事・労務担当者の負担を減らしながら人件費削減もできる点が注目され、市場規模は年々拡大し続けています。

参考:ストレスチェック制度に関する法令 |厚生労働省

健康管理システムと健康診断システムの違い

健康管理システムは、会社側が従業員全体の健康に関する情報をペーパーレスで一元管理できるシステムを指します。また、健康診断システムは、医療機関や健診センターで行われる健康診断・人間ドックなどの業務を効率良くするシステムです。

健康診断システムは診察業務といった直接患者に関係する業務以外に、予約や受付などの窓口業務・会計・請求書作成まで、各業務工程をサポートし、効率アップにつなげてくれます。このように、2つのシステムには大きな違いがあります。

健康管理システムの機能

健康管理システムには複数の機能が搭載されており、対象者の健康を適切に管理できます。ここでは、以下の健康管理システムの機能について詳しく解説します。

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機能主な内容
健康診断の予約・診断結果のデータ管理・健康診断の予約/受診漏れ/再検査への受診推奨を自動的にメールでサポート
・蓄積されたデータから健診結果の推移を分析
労働基準監督署への報告書の自動作成入力した健康データ内容をもとに自動で出力可能
個人情報管理・特定保健指導
・健診結果
・保健指導履歴
ストレスチェックWeb上でストレスチェック受検
産業医・保健師との面談産業医・保健師への面談が必要な従業員をデータ上で自動的にピックアップ
健康データの分析・評価健康診断・ストレスチェック・勤怠記録など各種データを分析し、過重労働などの健康リスクを予測・防止

健康診断の予約・診断結果のデータ管理

健康診断の予約におけるシステム上での直接管理が可能で、受診の漏れや再検査に関して受診案内を自動的にメールで提供してくれます。

また、蓄積されたデータから健診結果の変化を分析し、健康リスクの高い対象者を自動的にピックアップしてくれます。これまでデータ入力や書類作成だけに管理されていたデータを、健康管理用としての活用が可能です。

労働基準監督署への報告書の自動作成

従業員の健康診断終了後は労働基準監督署への報告が必要ですが、ほとんどの健康管理システムに搭載されている労基署報告用集計機能を活用すれば、「異常の所見者の数」などを手早く集計・算出してくれます。

また、面談記録を入力できる健康管理システムであれば、システム上でインプットされた面談記録を、そのまま産業医の意見書に反映できます。

個人情報管理

個人情報管では、従業員の名前・住所・職種・保険情報などが管理できます。主に下記4つの管理項目の設定が可能です。

特殊健診

特殊健診が必要となった場合でも管理が可能です。特殊健診とは、有害であるとされている業務に携わっている労働者などを対象として実施される義務付けされた特殊な健康診断を指します。

特定保健指導

特定保健指導はメタボ診断とも呼ばれ、内蔵脂肪型の肥満の原因とされている生活習慣の改善を目的とした指導を指します。

健診結果

一般的に健康であるとされる人の平均値が基準値と呼ばれます。健診結果の総合判定によって基準値からどのくらいの開きがあるのか簡単に見られます。

保険指導履歴

従業員が、産業医などの保健指導者からインターネットを介して効率よく指導を受けられます。従業員はパソコンだけでなく、携帯電話・手紙・FAXによる指導も可能なケースがあります。

診断データは個人情報の漏洩につながるため、匿名にしたり、診断内容の表示を一部のみ制限かマスキングしたりできる機能もあります。個人IDの配布で、検索をスムーズに行えます。これにより、管理者側が従業員別のデータ参照をする際にも容易になります。

ストレスチェック

テレワークの増加により、管理者側が社員のストレスを把握するのが難しくなる傾向にあります。その点、健康管理システムの活用により、健康診断の結果などと併せて、社員がどの位のストレスを感じているかといった状況を把握しやすいです。

健康管理システムによるストレスチェックを実施し、各社員のストレス度を確認することは、企業の損失防止にもつながります。なお、健康管理システムの大部分は、定期的に社員に質問してストレス度を確認できる「ストレスチェック」に対応しています。

また、厚生労働省が定めている「ストレスチェック制度」は、50人以上の従業員を雇用している事業者が対象です。必ず年に1回のストレスチェックを行い、報告の義務があると法律で定められているため、適切な対応が求められます。

参考:ストレスチェック制度に関する法令 |厚生労働省

産業医・保健師との面談

会社に産業医が在籍していても、面談がしにくいと考えている社員も少なくありません。その理由として、社員からみて「面談の予約を取りにくい」「体調がどれ程悪化したら受診して良いのか分からない」などが挙げられます。

健康管理システムの中には社員本人が利用できるものもあり、システムから社員本人が産業医との面談予約を簡単に行えます。産業医とコミュニケーションが図れると、健康状態を早めに発見しやすいです。

健康データの分析・評価

健康診断やストレスチェック以外にも、勤怠記録などの各種データを収集し、管理・分析を行えば、組織・部署・個々の健康リスクを予測できます。

たとえば、オーバーワークの人材がいたら自動でアラートを出し、「この部署には休職・離職につながる高リスクの方が多いため、働き方を見直したほうがいい」といった労働環境改善などの早期対策の実施、さらに対策の反省なども容易に行えます。

健康管理システムのメリット

ストレスチェックも含めた健康管理は企業にとって必要で不可欠な業務となる傾向にありますが、膨大なデータを管理・分析する必要があります。そこで健康管理システムが注目を浴びています。健康管理システムを導入するメリットは以下の通りです。

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作業負担の軽減・コスト削減

健康管理システムを活用する最大のメリットは、下記の健康データの管理に関する事務作業負担の軽減が可能な点です。

  1. 紙ベースで提示される健康診断結果のデータ入力・管理作業
  2. 煩雑になった書類や複数にわたるデータファイルの整理
  3. 労働基準監督署へ提出する報告書などの書類作成
  4. 報告書の作成業務における人件費(残業代、休日出勤代など)
  5. 紙ベースでの保管書類作成に伴う消耗品代(用紙代、インク代など)

これらのコストが最小限に抑えられ、事務費の軽減につながります。また、管理データそのものがコンパクトに整理でき、人事・総務担当者の業務パフォーマンスの向上にも期待できます。

フォローアップ体制の充実化

従業員一人ひとりの健康データが見える化されるため、健康診断での再受診通達やストレスチェックに基づいたメンタルケアの必要性など、健康面で不安要素のある従業員を漏れなく把握できます。

医療機関への受診推奨や産業医との面談など、データを活用して分析・判断できるのはメリットです。アフターフォローが必要とされる従業員へ自動でお知らせメールを送信できる機能など、最小限の手間で最大限のフォローアップ体制を整えられます。

労働環境の最適化に期待できる

従業員一人ひとりの勤怠データと健康データの照合により、労働環境が健康面にどう影響しているかが発見しやすく最適化できます。所定を上回る残業量や休日出勤の有無など、従業員の健康に悪影響を及ぼす原因のデータ分析ができます。

健康状態と勤務状況の見える化ができるため、的確に改善点を判別し、迅速な問題解決に向けた対応を準備できます。

法令改正にも柔軟な対応が行える

近年では働き方の多様化に伴って、労働安全衛生法や働き方改革に関連する法令など、労働におけるいくつもの法令が定められ、法令改正も複数に及んでいます。そのため、雇用者を抱える企業は法令改正にも順次対応しなければなりません

その点、健康管理システムを利用すれば法令改正にも対応することができ、適切な労働環境の整備が行えます。また、ただ法令改正を遵守するだけでなく、システムの活用によって現場の声を反映した満足度の高い環境づくりにつなげることができます

参考:労働安全衛生法の改正について|厚生労働省

健康経営優良法人認定の取得が可能

健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省が推奨する制度であり、健康経営を実施している大企業や中小企業といった法人を対象としています。一定の基準を満たして健康経営優良法人に認定されると、社会的な評価を得ることができます

これにより、外部からの信頼性の獲得につながり、企業の信頼度の高さから新規採用における応募者数が増加したり、自社の製品・サービスにおける評価の向上にも期待できます。つまり、健康管理システムの活用は、将来的な企業の利益向上にも寄与します

参考:健康経営優良法人認定制度|経済産業省

健康管理システムのデメリット

健康管理システムを導入しても、活用できないといった状況では費用などが無駄になってしまいます。ここでは、健康管理システムの導入に伴うデメリットを説明します。

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導入の目的がはっきりしないと使いこなしにくい

最近ではさまざまな健康管理システムが市場で紹介されており、どのシステムを選定すべきなのか、判断に迷うことも多いでしょう。特に、多種多様なシステムの中から選定する際には、多機能なものに惹かれる傾向があります。

しかし、魅力的に見えても実際には使わない機能が多いといった場合も多いです。また、機能が多いことで使い勝手が複雑になる可能性もあるため、必要とされる機能は何か、解決する課題は何かを念頭に置いて、健康管理システムを選定することをおすすめします。

なお、会社によっては産業医・保健師が数年単位で交代する場合もあります。新しいスタッフへの引継ぎ内容の不足やノウハウの連携ができないためにシステムを使いこなせず、システムを使わなくなるといったケースも想定されます。

独自の運用方法に合わせにくい

健康管理システムはクラウド型のシステムがメインになる傾向にありますが、オーダーメイドには柔軟に対応できないといった課題があります。自社独自の産業保健活動・運用方法がある場合、合わせにくいのが難点です。

当然、産業保健活動そのものを、新導入するシステムの運用フローに合わせるといったのも1つの方法です。

しかし、独自の産業保健活動・運用がある場合は、健康管理システムを選定するときに、設定の変更・カスタマイズ・オプションなどの対応で、希望する機能が搭載できるシステムかどうかも見極めることが重要です。

健康管理システムの選び方・比較ポイント

各社からリリースされている健康管理システムのラインナップは多種多様で、自社に合うシステムを選ぶのに難しいと感じる場合も多いです。ここでは、健康管理システムを選ぶ際に注視しておきたい項目について説明します。

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導入の目的・必要な機能を把握しておく

健康管理システムの利用目的を明確にした上で、必要だと感じた機能が搭載されているシステムを選びましょう。たとえば、下記のように目的を3つに分類した場合、それぞれに適した機能が異なります。

システムの導入目的目的に適した機能
1. 健康診断に伴う業務を一元管理したい健康診断の日時調整・未受診者への再通知・健康状況のデータ分析・スコアリング機能など
2. 従業員の健康リスクを解消したいストレスチェック・産業医との面談管理機能・健康増進サポート機能など
3. 従業員の日々の健康状態を把握・可視化したいテレワーク点呼機能・モニタリング機能など

目的が「1」の場合だと、健康診断の広報・日程調整・診断結果の一元化・分析機能などが搭載されたシステムが最適です。また、「2」の場合は、ストレスチェック・産業医との面談管理機能・健康増進プログラムが利用可能なシステムをおすすめします。

その他にも、「3」の場合は、従業員の情報が収集できるテレワーク点呼機能や、アンケートで不調の兆候が見られた従業員の情報やコメントを時系列で確認できるモニタリング機能などが搭載されたシステムが適しています。

コストを確認

現在リリースされている健康管理システムの大部分は、導入形態や機能によりコストに差が生じるため、自社にマッチするシステムをチェックしておく必要があります。

導入形態によるコストの違い

健康管理システムを導入する際のポイントは、クラウド型かオンプレミス型かの検討です。費用がそれほどかからず迅速に導入できるクラウド型は、電子機器やネットワークを新しく導入する必要がありません。

しかし、低コストである分、既定のサービスのみの対応で、システムの運用をオーダーメイドすることができないといったデメリットが挙げられます。

一方、オンプレミス型は自社にネットワークを新たに用いることにより、導入コストが高く、使用可能になるまでタイムラグがあります。しかし、自社の目的や環境に合わせてオーダーメイドや開発が可能です。

機能・プランによるコストの違い

健康管理システムは機能・オプション数・買い切りタイプ・サブスクタイプといったプランによりコストの違いがあります。

買い切りタイプは一度ソフトを購入すれば追加費用が発生しません。しかし、サブスクタイプは、月額もしくは年額で契約し、継続的な支払いが発生します。利用する予定の年数や支払い方法などからコストをシミュレーションしてから選ぶことをおすすめします。

対応社員の規模を確認

中小企業向けか大企業向けかで必要な機能やコストは異なるため、必ず自社の従業員の数とマッチした健康管理システムを選びましょう。たとえば、従業員数が50名未満の場合は、システムの導入よりも人の手で上司との面談の回数を増やす方が効果的です。

また、50名以上であっても、今まで部下の面談を定期的に行うなどの対策を行い、離職率が低くて従業員の満足度も高いのであれば、大規模なシステムの導入は逆効果です。その場合は、小規模で簡易的なシステムの導入に留めておくと良いでしょう。

導入・操作はしやすいか

健康管理システムの導入にかかる工数や期間はどのくらいか・従業員の健康情報を管理しやすいか・従業員がスマートフォンなどで素早く回答できるかなど、システムの操作性を確認する必要があります。

導入から実際の利用までを十分にシミュレーションしないと、継続的な運用と効果を得ることができないため、導入前にしっかりと確認しましょう。

他システムと連携できるか

健康管理システムの種類により、他の人事・採用・労務に関するシステムとの連携が可能です。現状、社内で使用しているシステムと連携ができるかどうか、導入前に確認しておくのをおすすめします。

他のシステムと連携ができると、従業員の健康情報と勤怠情報による照合がしやすくなったり、産業医師との面談でも活用できたりします。

セキュリティ対策は十分か

システムでは従業員の大事な個人情報を管理しているため、セキュリティ対策を確認しておくのが重要です。具体的には、従業員や管理者だけでなく、産業医などのシステムを利用する部署ごとに柔軟に閲覧権限を設定できるシステムをおすすめします。

また、2段階認証やIP制限といった利用者自身でセキュリティの強化が可能なシステムであれば、不正ログインや情報漏洩のリスクを軽減できます。

まとめ

本記事では、おすすめの健康管理システムの機能・選び方のポイント・メリット・デメリットについて紹介しました。

健康管理システムは従業員の健康に関する情報を一元管理できるため、労務担当者の負担を減らせます。また、従業員の健康状況を見える化しやすくなることで、健康リスクの対策を打ちやすくなり、結果として企業の生産性向上が期待できます。

しかし、健康管理システムにはさまざまな種類があるため、上述の選び方に注目してシステムを選びましょう

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