SaaSとは|意味・仕組み・種類と導入前に決めておく自社の管理
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- SaaSの意味・仕組み・種類がわかる
- SaaSでも自社に残る4つの管理がわかる
- 選び方の5観点と導入時の失敗対策がわかる
SaaS(サース)とは、事業者がクラウド上で運用しているソフトウェアを、利用者がインターネット経由で使う提供形態のことです。インストールやサーバーの管理は不要で、アカウントを登録すればブラウザやアプリからすぐに使い始められます。ただし、SaaSを使っても、入力するデータやアカウントの管理は利用する企業に残ります。本記事では、米国国立標準技術研究所(NIST)の定義をもとに、SaaSの意味と仕組み、種類、PaaS・IaaS・ASPとの違い、メリットとデメリットを整理したうえで、導入前に自社で決めておく管理の範囲、選び方、導入時の失敗の防ぎ方までを解説します。
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SaaSとは何か|名刺の管理を例に、事業者に任せる部分と自社に残る部分を見る
SaaSとは、事業者が運用するソフトウェアをインターネット経由で使う形態です。運用と更新は事業者、データとアカウントの管理は利用者の役割です。
SaaSはSoftware as a Serviceの略で、「サース」または「サーズ」と読み、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。読み方や略称の詳しい整理は、SaaSの読み方は「サース」「サーズ」どっち?意味・略称・オンプレミスとの違いで解説しています。
クラウドの定義を示した文書として知られるのが、NISTの「The NIST Definition of Cloud Computing(SP 800-145)」です。この文書では、クラウドのサービスモデルをSaaS・PaaS・IaaSの3つに分類しています。SaaSについては、利用者は事業者のクラウド基盤の上で動くアプリケーションを使い、その下にあるネットワーク、サーバー、OS、ストレージ、個々のアプリケーションの機能までは管理しない(限られたユーザー設定を除く)という趣旨で説明されています。
身近な例で考えてみます。取引先の名刺を担当者ごとの名刺ホルダーやExcelで持っている会社が、名刺を取り込んで会社として共有できるSaaSに切り替えるとします。サーバーを用意したりソフトをインストールしたりする必要はなく、機能の追加やセキュリティの更新も事業者が行います。一方で、どの名刺を誰が登録するか、誰に閲覧を認めるか、退職した社員のアカウントをいつ止めるかは、使う会社が決める部分です。SaaSでは、この「任せる部分」と「自社に残る部分」の線引きが、導入後の使いやすさを左右します。
この名刺管理の場合の一例が、Sky株式会社の名刺管理SKYPCEです。商品ページでは、スマートフォンのアプリで撮影した名刺や、複合機・スキャナーで取り込んだ名刺をデータ化し、PCやスマートフォンから閲覧できることが紹介されています。また、許可したネットワーク(IPアドレス)からだけアクセスを認める設定や、名刺データを画像データを含めて返却する有償サービスも案内されており、先ほどの「自社に残る部分」を考える材料になります。一方で、利用するユーザー数分のライセンス契約が必要で、契約は1年単位で自動更新される点は、導入前に確認しておきたいところです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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業務委託契約の終了時に、個人のアカウントに登録された名刺情報が持ち出されることも懸念されるため、法人向け名刺管理サービスを導入し、業務効率化とリスクの解消を図ることにしました。
リーンマーケティング株式会社様 導入事例(名刺管理のSKYPCE)
SaaSの仕組み|NISTが示す5つの特徴と、国内での使われ方
SaaSの仕組みは、複数の企業が事業者の共通基盤を共有し、利用人数や期間に応じて継続課金で使う形が基本です。NISTは、クラウドに共通する特徴を5つに整理しています。
この5つを押さえておくと、SaaSが「なぜ申し込んですぐ使えて、なぜ使った分だけ払う仕組みになっているのか」が見えてきます。
| NISTが示す特徴 | SaaSで言い換えると |
|---|---|
| オンデマンド・セルフサービス | 申し込みやアカウント追加を、事業者の担当者とやり取りせずに利用者自身が行える |
| 幅広いネットワークアクセス | パソコン、スマートフォン、タブレットなど、さまざまな端末からインターネット経由で使える |
| リソースの共用 | 複数の利用企業が同じシステム基盤を共有する(マルチテナント)ため、1社あたりのコストを抑えやすい |
| スピーディな拡張性 | 利用人数や機能を、必要に応じて増やしたり減らしたりできる |
| サービスが計測可能 | 利用人数や使用量が計測され、それに応じて料金が決まる(月額や年額のサブスクリプションが一般的) |
国内ではどのくらい使われているか
総務省の令和7年通信利用動向調査(2026年5月公表)によると、SaaSを含むクラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%、全社的に利用している企業の割合は60.0%で、全社的な利用は前年から6.9ポイント増えています。利用する理由は、「場所、機器を選ばずに利用できるから」が50.7%で最も高く、「安定運用、可用性が高くなるから」が45.1%、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」が42.8%と続きます。
SaaSは先進的な企業だけが試すものではなく、業務システムを選ぶときの標準的な選択肢の1つになっていると言えます。普及の背景には、サーバーを自社で持たなくても使えること、場所や端末を選ばずに使えることがあります。
SaaSとオンプレミス・インストール型ソフトの違い
SaaSの対比としてよく挙げられるのが、自社でサーバーやソフトウェアを用意して運用するオンプレミスや、パソコンにインストールして使うソフトです。違いは、導入の手間、更新の担い手、費用の形に表れます。
| 観点 | SaaS | オンプレミス・インストール型 |
|---|---|---|
| 導入 | アカウント登録後、すぐに使い始められる | サーバーや機器の用意、ソフトの導入作業が必要 |
| 更新・保守 | 機能の追加や不具合の修正は事業者が行い、全利用者に一斉に反映される | 自社でバージョンアップや保守を行う |
| 費用の形 | 月額や年額の継続課金が一般的 | 購入や構築の初期費用が中心になりやすい |
| 自由度 | 標準機能の範囲で使う。カスタマイズは限られる | 自社の業務に合わせて作り込める |
SaaSの種類|業務領域別の分類と、企業が使っているクラウドサービスの用途
SaaSは、コミュニケーション、営業、経理、人事、法務といった業務領域ごとに分けて考えると、全体像をつかみやすくなります。普段使っているWebメールやWeb会議、オンラインストレージもSaaSの一種です。
| 業務領域 | SaaSの種類 | 主にできること |
|---|---|---|
| コミュニケーション | ビジネスチャット、Web会議、Webメール、社内SNS | 社内外のやり取りを場所を問わず行い、履歴を残して検索できるようにする |
| 情報共有・業務管理 | グループウェア、オンラインストレージ、プロジェクト管理、タスク管理、ワークフロー | 予定・ファイル・作業の進捗を共有し、申請と承認をオンラインで完結させる |
| 営業・マーケティング | 営業支援(SFA)、顧客管理(CRM)、マーケティングオートメーション(MA)、名刺管理 | 見込み客の獲得から商談、受注後のフォローまでの情報を一元管理する |
| 経理・財務 | 会計、経費精算、請求書発行、販売管理 | 仕訳や請求、精算の手作業を減らし、法令や制度の変更にサービス側の更新で対応しやすくする |
| 人事・労務 | 勤怠管理、給与計算、人事評価、採用管理 | 打刻から給与計算までのデータをつなぎ、従業員情報をまとめて管理する |
| 法務・契約 | 電子契約、契約書管理 | 契約の締結と保管をオンラインで行い、更新期限の管理漏れを防ぐ |
| 販売・顧客対応 | ECサイト構築、予約管理、問い合わせ管理、チャットボット | 販売や予約の受付、問い合わせ対応の窓口をオンラインに用意する |
では、企業は実際にどの用途でクラウドサービスを使っているのでしょうか。前述の総務省の調査(クラウドサービスを利用している企業への複数回答)では、利用している内容は「ファイル保管・データ共有」が73.3%、「社内情報共有・ポータル」が61.4%、「電子メール」が57.4%、「給与、財務会計、人事」が56.3%の順に高くなっています。一方、「取引先との情報共有」は26.8%、「営業支援」は22.9%でした。全社共通の用途で使っている企業が多く、営業支援のような部門ごとの用途は、それより割合が低いことが分かります。
「情報共有システム」のように、以前はASP型として提供されてきた業務ツールも、現在はSaaSと呼ばれることが多くなっています。特定の業種に合わせて作られたSaaSもあり、領域ごとに別々のSaaSを入れると、同じ顧客情報や従業員情報を複数のサービスに二重入力する手間が生まれやすくなります。2つ目以降を選ぶときは、すでに使っているサービスとデータ連携できるかを確認しましょう。
具体的なサービスの分野別の整理は、SaaSの代表例|分野別の一覧とPaaS・IaaSの実例を解説で、Gmailなど身近なサービスから意味を確かめたい場合は、SaaSって何?身近な例でわかる意味と料金の仕組み、選び方で解説しています。
SaaS・PaaS・IaaS・ASPとの違い|管理責任の分担で見る
SaaS・PaaS・IaaSの違いは、ITシステムを構成する層のうち、どこまでを事業者が管理するかです。事業者が管理する範囲が広いほど利用者の負担は小さくなり、その分、自由度は下がります。
| 管理する層 | オンプレミス(自社運用) | IaaS | PaaS | SaaS |
|---|---|---|---|---|
| データ・利用者のアカウント | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 利用者 |
| アプリケーション | 利用者 | 利用者 | 利用者 | 事業者 |
| ミドルウェア・実行環境 | 利用者 | 利用者 | 事業者 | 事業者 |
| OS | 利用者 | 利用者 | 事業者 | 事業者 |
| サーバー・ストレージ・ネットワーク | 利用者 | 事業者 | 事業者 | 事業者 |
表の一番上の行は、どのモデルでも利用者に残ります。この点は、次の章で詳しく取り上げます。IaaS(Infrastructure as a Service)はサーバーやネットワークなどのインフラを借りる形態で、OSやアプリケーションは利用者が構築します。PaaS(Platform as a Service)はOSや実行環境まで事業者が用意し、利用者はアプリケーションの開発と運用に集中できる形態です。3つの管理範囲の詳細は、SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説で整理しています。
身近なたとえで見る
管理責任の表がイメージしにくい場合は、食事にたとえると違いがつかみやすくなります。
| 形態 | たとえると | 利用者がすること | 自由度 |
|---|---|---|---|
| IaaS | 設備の整ったキッチンを借りる | 食材の調達、調理、片付けまで自分で行う | 高い(何を作ってもよい) |
| PaaS | 下ごしらえ済みの食材と調理器具がそろった料理教室を使う | 用意された材料と道具で、好きな料理を作る | 中程度 |
| SaaS | レストランで料理を注文する | メニューから選んで食べる。味付けの調整は限られる | 低い(メニューの範囲内) |
業務システムも同じで、「自社の業務が標準機能(メニュー)の範囲に収まるか」が、SaaSを選ぶかPaaS・IaaSを選ぶかの分かれ目になります。
ASPとの違い
ASP(Application Service Provider)は、1990年代後半から米国を起点に広まった、アプリケーションをネットワーク経由で提供する事業者やサービスの呼び方です。業界団体のASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)は、「ASP」と「SaaS」を同義語とみなしています(同ページは2009年12月時点の記述)。ASPは利用企業ごとに個別のシステムを用意する形、SaaSは複数の企業が1つのシステムを共有するマルチテナント方式、と区別して説明する解説もありますが、実務では同じ意味で使われることが多くなっています。
クラウドとの関係
クラウド(クラウドコンピューティング)は、サーバーやアプリケーションをネットワーク経由で使う仕組み全体を指す大きな枠組みで、SaaS・PaaS・IaaSはその中の提供形態の分類です。SaaS・ASP・クラウド・SIerを3つの軸で並べて整理した記事として、SaaSとASP・クラウドの違いとは?IaaS/PaaS・SIerとの関係も整理があります。
SaaSのメリットとデメリット
SaaSのメリットは、初期費用と管理の負担を抑えてすぐに使い始められる点です。一方、デメリットは、カスタマイズの自由度が低く、サービスの品質やデータの扱いを事業者に委ねる部分が大きい点です。
| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 費用 | サーバー購入や開発が不要で、初期費用を抑えやすい | 月額や年額の継続課金のため、長期間・多人数で使うと総額が大きくなる場合がある |
| 導入スピード | アカウント登録後すぐに使い始められ、無料トライアルで試せるサービスも多い | すぐ使える分、社内ルールや運用設計を後回しにしがち |
| 運用・保守 | 機能の更新や障害対応、セキュリティ更新は事業者が担う | 画面や機能の変更が事業者の判断で行われ、社内マニュアルの修正が必要になることがある |
| 自由度 | 標準機能に業務を合わせることで、業務のやり方を見直すきっかけになる | 自社独自の業務フローに合わせた細かいカスタマイズは難しい |
| 働き方 | 場所や端末を問わず使えるため、テレワークや外出先での利用に向く | インターネットに接続できない環境や、事業者側の障害時には使えない |
クラウドサービスを利用している企業に効果を尋ねた総務省の調査では、「非常に効果があった」と「ある程度効果があった」を合わせた割合が89.4%でした。ただし、効果の出方は使い方によって変わります。次の章で扱う自社側の管理を決めずに使い始めると、期待した効果が出にくくなる恐れがあります。
費用面では、SaaSは利用人数や機能プランに応じた月額・年額の固定料金が一般的で、予算を立てやすいのが特徴です。一方、IaaS・PaaSは、サーバーの稼働時間やデータ転送量など、実際に使ったリソースに応じて料金が変動する従量課金が基本です。使用量が増えると費用が急に増えることもあるため、利用状況を定期的に確認する体制が欠かせません。
導入前に決めておく|SaaSでも自社に残る4つの管理
SaaSを使っても、データ、アカウント、アクセス管理、端末の4つは、利用する企業の責任として残ります。導入前に、誰がどのように管理するかを決めておきましょう。
Microsoft Learnの「クラウドでの共同責任」では、オンプレミス、IaaS、PaaS、SaaSのどの形態でも、データ、エンドポイント(クライアントの端末)、アカウント、アクセス管理は利用者が常に責任を負う項目として整理されています。SaaSでは事業者がアプリケーションやネットワークの多くを管理しますが、この4つまでは任せられません。次の表は、この4項目を、導入前に決めておくことと、名刺管理のSaaSを例にした具体例に分けてまとめたものです。
| 自社に残る管理 | 導入前に決めておくこと | 名刺管理SaaSの場合の例 |
|---|---|---|
| データ | 何を入力するか、保存期間、解約時にデータをどう取り出すか | 名刺を個人の持ち物ではなく会社のデータとして扱うルールと、返却を受けるときの条件の確認 |
| アカウント | 発行・変更・停止の担当者と手順、入退社時の手続き | 異動・退職した社員のアカウントをいつ、誰が止めるか |
| アクセス管理 | 誰がどこまで見られるか、認証の強さ | 閲覧できる人を部署や役割ごとに決める。許可したネットワークからだけ使えるようにする設定の要否を決める |
| 端末 | 業務に使ってよい端末の範囲、私物端末の可否 | スマートフォンのアプリで撮影・閲覧する端末を会社が把握し、管理対象の端末だけに限るかを決める |
決める順番は、まず「何のデータを入れるか」を決め、そのデータを誰が見られるようにするか(アカウントとアクセス管理)、どの端末から使わせるか(端末)の順に進めると整理しやすくなります。解約するときのデータの取り出し方も、導入前に確認しておきたい項目です。SaaSでの利用者に残る責任の考え方は、SaaS・PaaS・IaaSの違い|3層モデルの管理範囲とASPとの関係を解説でも詳しく解説しています。
自社の状況を確かめるために、次のセルフチェックを使ってみてください。当てはまる項目が多いほど、導入前に決めておくことが多い状態です。
顧客情報の管理、SaaSに任せる前の準備は大丈夫? セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
SaaSの選び方|目的と自由度で判断する基準
SaaS・PaaS・IaaSのどれを選ぶかは、「何のために使うのか(目的)」と「どこまで自社に合わせて作り込みたいか(自由度)」の2つで判断すると整理しやすくなります。会計、勤怠、営業管理、チャットなど、多くの企業に共通する業務であればSaaSが第一候補です。
| 自社の状況 | 向いている形態 | 理由 |
|---|---|---|
| 一般的な業務をすぐにデジタル化したい。IT担当者が少ない | SaaS | インフラやアプリの管理が不要で、標準機能をそのまま使える |
| 自社独自の業務アプリやWebサービスを開発したい | PaaS | 開発・実行環境が用意されており、開発そのものに集中できる |
| OSやミドルウェアも含めて細かく構成を決めたい。インフラ担当者がいる | IaaS | 既存システムの移行や特殊な構成にも柔軟に対応できる |
SaaSを選ぶと決めた後は、個別のサービスを比べる段階に入ります。機能の多さや料金だけで比べると、導入後に「現場が使いこなせない」「他のシステムとつながらない」といった問題が起きやすくなります。契約前には、少なくとも次の5つを確認しておくと安心です。
- 目的との一致:解決したい業務課題に対して、標準機能で対応できるか
- 操作性:実際に使う現場の担当者が、無料トライアル等で操作して迷わないか
- 連携:会計、勤怠、チャットなど、既存システムとデータ連携できるか(連携にオプション契約が必要かどうかも含めて)
- セキュリティと契約条件:通信の暗号化、アクセス権限の設定、稼働率の目標(SLA)、契約期間と更新の方法、解約時のデータの扱い
- サポート:導入支援の有無と費用、問い合わせ窓口の対応時間
導入の進め方|小さく始めて広げる
SaaSは、いきなり全社に広げず、対象の業務と部署を絞って始めると失敗しにくくなります。進め方の一例は次のとおりです。
- 課題と対象の業務を決める(例:名刺や顧客情報が担当者ごとに分かれている)
- 候補を絞り、資料や無料トライアルで機能と契約条件を確認する
- 一部の部署で試し、前の章の4つの管理(データ、アカウント、アクセス管理、端末)のルールを決める
- 利用状況を確認しながら対象を広げ、問い合わせ窓口と操作説明を用意する
SaaS導入時のよくある失敗と対策
SaaSはすぐに使い始められる分、契約前の確認や社内の準備が不十分なまま導入が進みやすい傾向があります。よくある失敗は、提供範囲の誤解、契約条件の確認不足、データ管理の見落とし、社内定着の不足の4つに整理できます。
| よくある失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| PaaS・IaaSとの違いを理解せずに契約する | 必要なカスタマイズができない、または想定外の管理作業が発生する | 提供範囲と自社の管理範囲を、契約前に表で書き出して確認する |
| SLAや解約条件を確認しない | 障害時の補償がない、解約後にデータを取り出せない | 稼働率の目標、障害時の連絡手段、データのエクスポート方法と保持期間を確認する |
| アカウントや権限の管理を決めていない | 退職者のアカウントが残る、必要以上の情報が閲覧できる | 管理者、権限の付与ルール、入退社時の手続きを導入前に決める |
| 導入後の定着策がない | 一部の社員しか使わず、Excelなど元の方法に戻ってしまう | 部署ごとの操作説明、利用状況の定期確認、社内の問い合わせ窓口を用意する |
SLAとベンダーロックインの確認
SLA(サービス品質保証)とは、稼働率の目標値や障害時の対応を定めた取り決めです。SLAが公開されていないサービスや、内容が抽象的なサービスの場合は、障害対応の実績や運用体制を事前に問い合わせておくと安心です。基幹業務に近い領域でSaaSを使う場合は、業務が止まったときの影響を想定し、許容できる復旧時間の目安を自社側で決めておくと、SLAの内容を評価しやすくなります。
もう1つの注意点が、特定の事業者に依存しすぎることで乗り換えが難しくなるベンダーロックインです。データをCSVなどの汎用的な形式で出力できるか、API連携で他のシステムにデータを引き継げるか、画像などの元データも返却されるかを確認しておくと、将来の乗り換えの選択肢を残せます。
名刺管理SKYPCE
登録した名刺データを、乗り換えのときに取り出せるか不安ではありませんか?
こんな会社に向いています
名刺を個人のアカウントではなく、会社のデータとして管理したい
契約更新やデータ返却の条件を、契約前に資料で確認したい
セキュリティと個人情報の取り扱い
SaaSのセキュリティを確認する際の参考になるのが、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)です。ISMAPは政府機関がクラウドサービスを調達する際の評価制度で、登録済みのサービスはISMAPポータルで公開されています。ただし、ISMAPに登録されていないサービスでも、他の第三者認証の取得や自社の基準で評価できる場合があります。認証の有無だけで判断せず、通信と保存データの暗号化、二要素認証やシングルサインオンへの対応、利用者ごとの権限設定ができるかを総合的に確認しましょう。
顧客情報や従業員情報などの個人データをSaaSで扱う場合は、個人情報保護法との関係も確認が必要です。個人情報保護委員会のQ&A(A7-53)によると、クラウドサービスの利用が個人データの第三者提供や委託(法第25条による委託先の監督)に当たるかどうかは、保存しているデータに個人データが含まれているかではなく、クラウドサービスを提供する事業者が個人データを取り扱うこととなっているかどうかが判断の基準とされています。そのうえで、事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合でも、利用する企業が自ら安全管理措置を講じる必要があるとされています(A7-54)。契約時には、利用目的の制限、再委託の可否、事故発生時の報告などの条項を確認し、海外の事業者のサービスはデータの保存場所もあわせて確認しておくとよいでしょう。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の契約における法的な解釈が必要な場合は、専門家に確認することをおすすめします。
業種別のSaaS活用例
SaaSは業種を問わず活用できますが、業種ごとに「最初に効果が出やすい領域」は異なります。自社の業種で、日々の手作業や情報の分散が最も多い業務から検討すると、導入効果を実感しやすくなります。
| 業種 | よくある課題 | 活用されやすいSaaSの例 |
|---|---|---|
| 卸売・メーカーなどのBtoB営業 | 顧客情報や商談状況が担当者ごとに分散し、引き継ぎが難しい | 営業支援ツール(SFA)、顧客管理(CRM)、名刺管理 |
| 小売・飲食 | シフト作成や売上集計に時間がかかる | POSレジ、シフト管理、勤怠管理 |
| 建設・不動産 | 現場と事務所の情報共有に手間がかかる | 現場写真・図面の共有、ビジネスチャット、電子契約 |
| 士業・コンサルティング | 書類の管理と顧客とのやり取りが煩雑 | 文書管理、日程調整、会計ソフト |
| 業種共通のバックオフィス | 経理・人事の手作業が多く、法改正への対応に追われる | 会計、給与計算、勤怠管理、経費精算 |
| 業種共通のコミュニケーション・情報共有 | メールや電話中心のやり取りで情報が埋もれる。社外からファイルにアクセスしにくい | Webメール、Web会議、ビジネスチャット、グループウェア、オンラインストレージ |
なお、SaaSを提供する側の企業で働くことを考えている場合の企業の見分け方は、SaaSホワイト企業の見分け方|公的認定制度で客観的に判断で解説しています。
なかでもBtoB営業を行う企業では、「取引先の名刺や顧客とのやり取りの履歴が担当者の手元にしかない」という課題が、担当者の異動や退職のたびに表面化しがちです。名刺の取り込みを入口にして顧客情報を会社のデータとして集める方法は、SaaS導入の最初の一歩として検討しやすい領域です。その際は前の章で見たように、アカウントの管理、閲覧範囲、解約時のデータの取り出し方まで決めておくと、導入後に迷いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaSとは何の略で、具体的にどのようなものですか?
A. Software as a Serviceの略で、事業者がクラウド上で運用しているソフトウェアを、利用者がインターネット経由で使う提供形態です。Webメール、ビジネスチャット、Web会議、会計、勤怠管理、名刺管理など、ブラウザやアプリから使う業務ツールの多くがSaaSです。インストールやサーバーの管理が不要で、アカウントを登録すればすぐに使い始められます。
Q2. SaaS・PaaS・IaaSの違いは何ですか?
A. 事業者が提供・管理する範囲が異なります。IaaSはサーバーなどのインフラ、PaaSはOSや開発・実行環境まで、SaaSはアプリケーションまでを事業者が提供します。提供範囲が広いほど利用者の管理負担は小さく、自由度は低くなります。
Q3. SaaSで有名なサービスや、SaaSを提供している会社にはどのようなものがありますか?
A. コミュニケーション、営業、経理、人事、法務など、業務領域ごとに複数の事業者がSaaSを提供しています。「5大SaaS企業」のように公的に定まった分類は確認できないため、領域ごとに自社の目的に合うサービスを比べるのが基本です。分野別の例は、本記事の「SaaSの種類」の表と、記事内で紹介した代表例の解説で確認できます。
Q4. SaaSとASPの違いは何ですか?
A. ASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)は「ASP」と「SaaS」を同義語とみなしており、実務でも同じ意味で使われることが多くなっています。ASPは利用企業ごとに個別のシステムを用意する形、SaaSは複数の企業が1つのシステムを共有するマルチテナント方式、と区別して説明する解説もあります。
Q5. SaaSを使えば管理はすべて事業者に任せられますか?
A. 任せられません。インフラやアプリケーションの運用は事業者が担いますが、入力するデータ、アカウントの発行と停止、アクセス権限の設定、利用する端末の管理は利用者の責任として残ります。
Q6. SaaSを選ぶときは何を確認すればよいですか?
A. 目的との一致、現場での操作性、既存システムとの連携、セキュリティと契約条件(SLA、契約期間と更新、解約時のデータの扱い)、サポート体制の5つを確認すると、導入後の失敗を防ぎやすくなります。
まとめ|SaaSを検討する前に押さえたい4つのこと
SaaSとは、事業者がクラウド上で運用するソフトウェアをインターネット経由で使う提供形態です。使い始めるのは簡単でも、自社に残る管理を決めておくことが、導入後の使いやすさにつながります。SaaSを検討するときは、次の4つを押さえておきましょう。
- SaaS・PaaS・IaaSの違いを、事業者と自社の管理範囲の表で確認する
- データ、アカウント、アクセス管理、端末は自社に残る管理として、導入前に担当者と手順を決める
- 目的、操作性、連携、セキュリティと契約条件、サポートの5つの観点で比較する
- 名刺や顧客情報の管理など身近な業務から小さく始め、名刺管理SKYPCEのような具体的なサービスの資料で、機能と契約条件を確認する
参考文献
- NIST「SP 800-145, The NIST Definition of Cloud Computing」https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/145/final
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/260529_1.pdf
- Microsoft Learn「クラウドでの共同責任」https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/security/fundamentals/shared-responsibility
- ASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)「ASP・SaaSの基本」https://www.aspicjapan.org/cloud/
- ISMAPポータル https://www.ismap.go.jp/
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法 よくある質問(Q&A)」https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/
- リーンマーケティング株式会社様 導入事例(名刺管理のSKYPCE) https://skypce.net/businesscard/case/case022/