DX加算とは|医療・介護の加算と令和8年度改定、DX認定・補助金との違い
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- DX加算は医療・介護の報酬制度の加算の通称
- 医療は令和8年6月に新加算へ再編、届出が必要
- 介護は生産性向上推進体制加算が賃金に直結
DX加算とは、診療報酬や介護報酬の中で、医療機関や介護事業所のデジタル化の体制を評価する加算の通称で、DX認定やDX補助金とは別の制度です。医療では令和8年6月1日から、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算(初診15点・9点・4点、再診2点、入院初日160点・80点)に再編されました。旧加算の届出は引き継がれず、算定には改めての届出と、区分を問わず30%以上のマイナ保険証利用率が必要です。介護では、生産性向上推進体制加算に加え、令和8年6月から処遇改善加算に生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分が設けられました。この記事では、点数・施設基準・届出、介護の加算、他の「DX」制度との違い、算定でつまずく点を整理します。
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DX加算とは|医療・介護の報酬制度にある「加算」の通称
DX加算とは、診療報酬・介護報酬の中で、医療機関や介護事業所のデジタル化の体制や取り組みを評価して上乗せされる点数・単位の通称です。
「DX加算」という名前の加算が制度上に1つだけあるわけではありません。医療では電子的診療情報連携体制整備加算(令和8年6月に医療DX推進体制整備加算などから再編)、介護では生産性向上推進体制加算や処遇改善加算の上乗せ区分を指して使われます。いずれも厚生労働省が定める報酬の仕組みの中にあり、算定するたびに継続的な収入になる点が特徴です。
介護の加算は、収入として入るだけでなく、職員の賃金に配分して実績を報告するところまでが制度の一部です。処遇改善加算は受け取った加算額以上の賃金改善を行うことが求められ、区分が増えるほど計算と集計の手間も大きくなります。医療機関でも、届出や掲示を整えたあとに、職員の勤怠・給与・入退社の手続きといった日々の事務が残ります。加算の取得と運用をセットで考えるときの選択肢として、給与計算・人事労務サービスを2つ紹介します。
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医療のDX加算|令和8年度診療報酬改定で何が変わったか
令和8年度診療報酬改定で、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、令和8年6月1日から電子的診療情報連携体制整備加算に再編されました。点数は初診時が15点・9点・4点、再診時が2点、入院初日が160点・80点で、評価の軸は「体制を整えたか」から、マイナ保険証・電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス・サイバーセキュリティ対策などへの取り組みに移っています(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」)。
点数早見表|初診・再診・入院で区分と点数が違う
新加算は、外来の初診は3区分、再診は区分なし、入院は2区分です。算定する場面と点数を一覧にすると次のとおりです。
| 場面 | 区分 | 点数 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 初診 | 加算1 | 15点 | 外来の施設基準(1)から(11)のすべてを満たす |
| 初診 | 加算2 | 9点 | (1)から(8)に加え、(9)から(11)のいずれか1つを満たす |
| 初診 | 加算3 | 4点 | (1)から(8)の基本要件のみを満たす |
| 再診・外来診療料 | 区分なし | 2点 | 初診で届け出た基準で算定。再診の追加届出は不要とされる |
| 入院(入院初日) | 加算1 | 160点 | 安全管理責任者の配置に加え、バックアップとBCPの要件を満たす |
| 入院(入院初日) | 加算2 | 80点 | 安全管理ガイドライン準拠、専任の安全管理責任者の配置などを満たす |
点数は厚生労働省の改定資料にもとづく概要です。算定要件・施設基準の詳細や経過措置は、告示・通知・疑義解釈で必ず確認してください。新加算を届け出た医療機関は、再診料の明細書発行体制等加算を算定できない点にも注意が必要です。
旧加算との違い|区分・利用率・評価の軸
旧加算は、初診時に加算1から6の6区分に分かれ、マイナ保険証の利用率などで区分が決まっていました。令和8年3月から5月の利用率の基準は、加算1・4が70%、加算2・5が50%、加算3・6が30%でした(厚生労働省「医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)」)。新加算では、この利用率の要件が区分を問わず30%以上に整理されています。
| 項目 | 改定前(令和8年5月まで) | 改定後(令和8年6月1日から) |
|---|---|---|
| 加算の名称 | 医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算 | 電子的診療情報連携体制整備加算 |
| 初診の区分 | 加算1から6の6区分 | 加算1から3の3区分(15点・9点・4点) |
| マイナ保険証の利用率 | 区分に応じて70%・50%・30%(令和8年3月から5月) | 区分を問わず30%以上 |
| 再診 | 医療情報取得加算で評価 | 区分なしで2点 |
| 入院 | 診療録管理体制加算などで一部評価 | 入院初日に加算1(160点)・加算2(80点)を新設 |
| 評価の軸 | 体制の整備 | マイナ保険証の利用、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、サイバーセキュリティ対策などの取り組み |
| 届出 | 旧加算の届出 | 改めて届出が必要(旧加算の届出は引き継がれない) |
外来の施設基準は11項目の3階層で決まる
外来の施設基準は(1)から(11)の11項目で、加算3は(1)から(8)のすべて、加算2は(1)から(8)に加えて(9)から(11)のいずれか1つ、加算1は(1)から(11)のすべてが必要です(厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」)。
| 項目 | 加算3 | 加算2 | 加算1 |
|---|---|---|---|
| (1)から(8)の基本要件 | 必須 | 必須 | 必須 |
| (9)電子処方箋を発行する体制(または調剤情報の登録体制) | 不要 | (9)から(11)のうちいずれか1つ | 必須 |
| (10)要件を満たす電子カルテを有すること | 不要 | 同上 | 必須 |
| (11)電子カルテ情報共有サービスまたは地域の医療情報連携ネットワークの活用 | 不要 | 同上 | 必須 |
共通の基本要件(1)から(8)の中身は次のとおりです。
- オンライン請求(電子情報処理組織を使用した診療報酬請求)を行っていること
- 診療報酬の区分・項目の名称と点数または金額を記載した詳細な明細書を、患者に無償で交付していること
- オンライン資格確認を行う体制があること
- 算定する月の3か月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率が30%以上であること(前月または前々月の利用率で代えることもできる)
- マイナポータルの医療情報等にもとづき、患者からの健康管理に関する相談に応じる体制があること
- オンライン資格確認等システムで取得した診療情報等を診察室等で活用していることと、医療DXに取り組んでいることを、院内の見やすい場所に掲示すること
- 上の掲示事項を原則としてウェブサイトにも掲載すること(自ら管理するホームページ等がない場合は掲載不要)
このうち、マイナ保険証の利用率とマイナポータルでの相談体制の2項目は、基準を満たしていればよく、地方厚生(支)局長への届出は不要とされています。届出は外来が別添7の様式1の6、入院が様式18の4です。
加算1・2で問われる電子カルテと地域ネットワークの条件
(10)の電子カルテは、「安全管理ガイドライン」に準拠した体制であること、電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースを有すること、電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有することのすべて、または厚生労働省が認証する電子カルテ製品であることのいずれかを満たす必要があります。このうち電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースについては、当面の間、基準を満たしているものとみなされます。ただし、国等が全国で電子カルテ情報共有サービスの運用を始めた場合は、速やかに導入するよう努めることとされています。
(11)は、国等が提供する電子カルテ情報共有サービスで取得される診療情報等を活用する体制があること、または地域の医療機関どうしで検査結果や画像情報等を共有・閲覧できるネットワークを活用する体制があることのいずれかです。ネットワークで満たす場合は、次の条件がそろう必要があります。
- ネットワークに参加している保険医療機関が10以上で、そのうち診療情報を開示している病院が2以上あること
- 登録患者数が1,000人以上、または新規の登録患者数が年間100人以上であること
- ネットワークの運営主体が、連携している医療機関名と登録患者数をウェブサイトで公表していること
- 診療情報提供料(Ⅰ)の検査・画像情報提供加算などの施設基準を届け出ていて、実際に患者の情報を共有している医療機関の名称を院内に掲示していること
マイナ保険証の利用率30%が最初のハードル
旧加算では、区分が上がるほど高い利用率が求められました。新加算では、加算1から3のどの区分でも、算定する月の3か月前のレセプト件数ベースの利用率が30%以上であることが共通の必須条件です。この利用率は、同じ月のマイナ保険証の利用者数を患者数で割った割合で、社会保険診療報酬支払基金から報告される値を使います。基準を満たすかどうかは、電子処方箋や電子カルテの対応より先に確認しておきたい項目です。
利用率を伸ばす方法として、受付での声かけやマイナ保険証の利用を案内する掲示、窓口での操作案内を整える運用が挙げられます。基準となる割合や集計の対象月は、通知の改正で見直されることもあるため、届出の前に厚生労働省や地方厚生局の最新資料で確認してください。
診療所にとっての現実的な論点は電子カルテの更新時期
電子カルテ情報共有サービスへの接続は当面みなし措置があるものの、電子処方箋への対応や、要件を満たす電子カルテの有無は、加算1・2を目指すかどうかの分かれ目になります。リース期間の途中で乗り換えるのか、次回の更新時まで加算3で算定するのかは、点数の差と導入費用を比べて判断することになります。電子カルテやレセプトコンピュータのベンダーには、対応状況を早めに確認しておくと安心です。
入院の加算は安全管理責任者とバックアップ、BCPで区分が分かれる
入院医療では、入院初日に算定する電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました。加算2は、外来の基本要件(1)から(8)に加え、「安全管理ガイドライン」に準拠した体制、専任の医療情報システム安全管理責任者の配置、職員への情報セキュリティ研修を少なくとも年1回程度行うことが条件です。加算1はさらに、非常時に備えたバックアップを複数の方式で確保してその一部をネットワークから切り離したオフラインで保管すること、非常時の業務継続計画(BCP)を策定して少なくとも年1回程度の訓練・演習を行うことが求められます。サイバー攻撃などでシステムが停止した場合の備えが、点数に反映される設計です。
旧加算からの自動移行はない。改めて届出が必要
実務で最も注意したいのが届出です。旧加算を届け出ていた医療機関であっても、新しい加算を算定するには改めて地方厚生(支)局へ届け出る必要があります。令和8年6月1日から算定するための届出期限は同日(必着)でした(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリストの送付について」)。これから届け出る場合の受付と算定開始の時期は、地方厚生(支)局の案内で確認してください。
「以前から医療DX推進体制整備加算を取っているから大丈夫」と思い込んで届出をしないままでいると、新加算を算定できない期間が生じます。レセプトコンピュータの設定変更とあわせて、医事課・システム担当・事務長の間で確認の分担を決めておくと安心です。医療DX全体の方針や対応ステップは、医療DXとは|令和ビジョン2030の三本柱と医療機関の対応ステップで整理しています。
介護のDX加算|生産性向上推進体制加算と処遇改善加算の上乗せ区分
介護分野で「DX加算」と呼ばれることが多いのは、令和6年度改定で新設された生産性向上推進体制加算です。さらに令和8年度の改定では、処遇改善加算の上乗せ区分の要件としてDXへの取り組みが組み込まれ、DXと職員の賃金が制度上つながりました。
生産性向上推進体制加算の区分と要件
生産性向上推進体制加算は、見守り機器などのテクノロジーを導入し、業務改善を継続的に進める事業所を評価する加算です。短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院などが対象で、訪問介護・通所介護・居宅介護支援は対象外とされています。
| 区分 | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 加算(Ⅱ) | 10単位/月 | 利用者の安全やケアの質、職員の負担軽減を検討する委員会の開催、見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入、年1回以上の業務改善効果のデータ報告 |
| 加算(Ⅰ) | 100単位/月 | 加算(Ⅱ)の要件に加え、データで業務改善の成果を確認済みであること、複数のテクノロジーの導入、介護助手の活用などの役割分担の取り組み |
この加算の本質は「機器を入れたかどうか」ではなく、委員会での検討、職員への研修、データの収集と報告を回し続ける仕組みにあります。見守りセンサーを導入しても、夜勤の巡回回数や記録時間がどう変わったかを測っていなければ、加算(Ⅰ)に必要な成果の確認ができません。導入前の業務時間を記録しておくことが、上位区分への近道です。
令和8年度改定で処遇改善加算とDXがつながった
令和8年度の介護報酬改定は、処遇改善を中心とした臨時の改定として令和8年6月から施行されました。主な変更点は次の3つです(厚生労働省「介護職員等処遇改善加算の拡充」)。
- 処遇改善加算の対象が、介護職員のみから介護従事者全体に拡大され、加算率が引き上げられた
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者向けに、加算Ⅰ・Ⅱへの上乗せの加算区分が設けられた
- 対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援などに処遇改善加算が新設された
上乗せ区分の要件(令和8年度特例要件)は、サービスの種類によって異なります。訪問・通所サービスなどではケアプランデータ連携システムへの加入と実績の報告、施設サービスなどでは生産性向上推進体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の取得と実績の報告、または社会福祉連携推進法人に所属していることのいずれかです。事務負担への配慮として、申請時点では加入または取得の誓約で算定できます。厚生労働省の資料では、介護従事者全体を対象に月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置とあわせて、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置を行うとされています。
つまり、生産性向上推進体制加算は単体の単位数以上の意味を持つようになりました。施設系の事業所にとっては、DXの取り組みが処遇改善加算の上乗せを受けるための入口になり、職員の賃金水準、ひいては採用や定着にも影響する構造です。誓約で申請した場合は、期限までに実際の取得・利用と実績報告が必要になるため、スケジュール管理も欠かせません。
加算を賃金に反映する「最後の工程」でつまずく事業所が多い
事業所の実務で負担が大きいのは、加算の要件を満たしたあとです。処遇改善加算は、加算額を上回る賃金改善を行い、計画書と実績報告書で説明する必要があります。上乗せ区分を取ると加算率が変わり、対象職種も広がったため、次のような計算が毎月・毎年発生します。
- 加算区分ごとの加算額の見込みと、職種・職員ごとの配分額の算出
- 基本給・手当・一時金のどれで支給するかの設定と、社会保険料・税額への反映
- 年度途中の入退職、産休・育休、雇用形態の変更があった職員の按分
- 実績報告に向けた、賃金改善額の年度集計と加算額との突き合わせ
これらをExcelの手作業で管理すると、手当の計算式の修正漏れや、集計時の転記ミスが起きやすくなります。現場ではDXの取り組みで生産性向上推進体制加算を取ったのに、事務部門は給与計算を手作業で抱えたまま、という状態も珍しくありません。給与体系ごとに項目や計算式を登録できる給与計算ソフトを使えば、配分ルールをあらかじめ登録しておき、毎月の計算と年度末の集計を仕組みで回しやすくなります。次のチェックリストで、いまの運用に手作業が残っていないかを確認してみてください。
加算分の給与への反映、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
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DX認定・DX補助金・DX検定との違いと使い分け
DX認定・DX補助金・DX検定は、医療・介護の報酬制度であるDX加算とは別の制度ですが、医療機関や介護事業所でも組み合わせて活用できます。所管も対象も仕組みも異なるため、先に4つの違いを整理しておきます。
| 制度 | 所管 | 対象 | 仕組み |
|---|---|---|---|
| DX加算 | 厚生労働省 | 医療機関・介護事業所 | 診療報酬・介護報酬に上乗せされる点数・単位。算定のたびに継続的な収入になる |
| DX認定 | 経済産業省(事務局はIPA) | 業種・規模を問わない全事業者 | 経営ビジョンや戦略がDXの推進に向けて整っているかを国が認定する。金銭の給付ではない |
| DX補助金 | 中小企業庁ほか | 中小企業・小規模事業者 | ITツールなどの導入費用の一部を補助する。公募・審査を経て採択された場合のみ |
| DX検定・資格 | 民間団体・IPA | 個人 | DXに関する知識やスキルを試験で測る。組織や事業所の評価ではない |
この表からわかるとおり、DX加算だけが「報酬として継続的に入ってくるお金」です。DX補助金は一度きりの導入支援、DX認定は国のお墨付き、DX検定は個人の能力証明であり、いずれも加算の算定要件とは直接結びついていません。医療機関や介護事業所でなければDX加算は関係なく、一般企業がDX関連の公的支援を探しているなら、DX認定と補助金の方を確認すべきということになります。
DX認定制度(経済産業省)
DX認定制度は、情報処理の促進に関する法律第28条にもとづき、経営ビジョンや戦略、推進体制などがデジタルガバナンス・コードに沿って整っている事業者を国が認定する制度です(経済産業省「DX認定制度」)。業種・規模を問わず申請でき、医療法人や社会福祉法人でも対象になります。認定を受けると、一部の補助金での加点や、認定ロゴマークの使用などのメリットがあります。ただし、DX認定を取得しても診療報酬・介護報酬の加算要件を満たしたことにはなりません。申請の流れや一覧の見方は、DX認定事業者とは|メリット・申請の流れ・一覧の見方とDX銘柄・補助金との関係で整理しています。
DX補助金(中小企業庁ほか)
一般に「DX補助金」と呼ばれるものの中心は、中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金」です。従来のIT導入補助金から名称が変わった制度で、中小企業・小規模事業者がソフトウェアやクラウドサービスなどを導入する費用の一部を補助します(中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」)。医療法人・社会福祉法人などが対象になるかは法人形態や公募要領の要件によって異なるため、申請前に必ず確認が必要です。医療・介護分野には、都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援など分野独自の補助事業もあり、DX加算の要件に必要な機器の導入費用を補う手段として検討できます。自治体が関わるDX補助金の違いは、DX補助金と自治体|企業が使える制度と自治体向け交付金の違い【2026年度】も参考になります。
DX検定・DX関連資格
DX検定は民間団体が実施する個人向けの検定で、IPAが実施する国家試験のITパスポート試験なども、DXに関する基礎知識の証明として使われます。いずれも個人のスキルを測るもので、事業所の加算要件とは関係しません。ただし、生産性向上推進体制加算では職員への研修や委員会での検討が求められるため、推進役となる職員が基礎知識を身につけておくことは、加算の運用を回すうえで役立ちます。
医療・介護事業者の使い分けの考え方
医療機関・介護事業所から見ると、4制度の優先順位ははっきりしています。継続的な収入になるDX加算の要件を確認することが最優先で、要件を満たすための機器やシステムの導入費用を補助金で補えないかを次に検討します。DX認定は、法人として対外的にDXの取り組みを示したい場合や、加点のある補助金を狙う場合に検討し、DX検定は推進役の職員育成の手段として位置づけるのが自然です。
DX加算の算定でよくある失敗パターン
DX加算でつまずく原因の多くは、制度の理解不足ではなく、届出・記録・事務処理といった運用の抜けにあります。医療・介護の現場で起きやすい失敗と対策を表にまとめます。
| 失敗パターン | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 旧加算のまま新加算の届出をしていない(医療) | 改定後、新加算を算定できない期間が生じる | 届出の要否と期限を確認し、レセコンの設定変更と同時に進める |
| マイナ保険証の利用率を確認していない(医療) | 算定する月の3か月前の利用率が30%に届かず、区分を問わず算定できない | 支払基金から報告される利用率を毎月確認し、受付での案内などの施策を早めに始める |
| 掲示やウェブサイトへの掲載が漏れている(医療) | 基本要件を満たさず、届出や算定が認められない | 掲示事項を一覧にして、院内掲示とウェブサイトの両方を確認する |
| 機器を入れただけで効果を測っていない(介護) | 生産性向上推進体制加算(Ⅰ)に必要な成果の確認ができない | 導入前の業務時間や巡回回数を記録し、導入後と比較できるようにしておく |
| 誓約で上乗せ区分を申請し、期限を失念(介護) | 要件未達となり、加算の返還が求められるおそれがある | 誓約した内容と期限を一覧にして、担当者と確認日を決める |
| 加算の配分をExcelの手作業で管理(介護) | 配分額の計算ミスや、実績報告時の集計漏れが起きる | 手当設定・集計に対応した給与計算ソフトで仕組み化する |
| 古い解説記事の点数・要件をうのみにする(共通) | 廃止済みの加算を前提に計画を立ててしまう | 記事の前提年度を確認し、最終的には厚生労働省の告示・通知・疑義解釈で確認する |
特に介護事業所では、現場のDX(見守り機器・記録システム)と、事務部門のDX(給与計算・勤怠管理)が別々に進められがちです。加算の取得から賃金への反映、実績報告までを一続きの業務として見直すと、どこに手作業が残っているかが見えやすくなります。給与体系ごとに計算式を登録できるジンジャー給与は、その見直しの選択肢の1つです。
よくある質問(FAQ)
Q1. DX加算とは何ですか?
A. 診療報酬や介護報酬の中で、医療機関・介護事業所のデジタル化の体制や取り組みを評価して上乗せされる加算の通称です。医療では電子的診療情報連携体制整備加算(令和8年6月に医療DX推進体制整備加算などから再編)、介護では生産性向上推進体制加算などを指して使われます。
Q2. 医療DX推進体制整備加算はいつ廃止されましたか?
A. 令和8年度診療報酬改定で、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、令和8年6月1日から電子的診療情報連携体制整備加算に再編されました。廃止の直前の令和7年10月から令和8年2月は旧加算の利用率の基準が引き上げられた時期で、加算1・4が60%、加算2・5が40%、加算3・6が25%でした。
Q3. 電子的診療情報連携体制整備加算は何点で、届出は必要ですか?
A. 初診時は加算1が15点、加算2が9点、加算3が4点で、再診時は区分なしの2点です。入院は入院初日に加算1が160点、加算2が80点です。旧加算を届け出ていた医療機関も、新加算を算定するには改めて届出が必要で、旧加算の届出は引き継がれません。
Q4. マイナ保険証の利用率は何%必要ですか?
A. 算定する月の3か月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率が、加算1から3のすべての区分で30%以上必要です。その前月または前々月の利用率で代えることもできます。基準や集計の対象月は見直されることがあるため、厚生労働省の最新の通知で確認してください。
Q5. 介護のDX加算にはどのようなものがありますか?
A. 代表的なのは生産性向上推進体制加算で、見守り機器などのテクノロジー導入と業務改善の継続を評価します。加算(Ⅰ)は100単位/月、加算(Ⅱ)は10単位/月です。令和8年度の改定では、施設サービスなどでこの加算の取得が、処遇改善加算の上乗せ区分の要件にもなりました。
Q6. DX加算とDX認定・DX補助金は関係がありますか?
A. 直接の関係はありません。DX加算は厚生労働省が所管する医療・介護の報酬制度、DX認定は経済産業省が所管する企業向けの認定制度、DX補助金は導入費用の一部を補助する制度で、DX認定を取得しても加算の要件を満たしたことにはなりません。医療法人や社会福祉法人がDX認定を申請することは可能です。加算の要件に必要な機器の導入費用には、デジタル化・AI導入補助金や都道府県の介護テクノロジー導入支援などが使える場合がありますが、対象となる法人形態や経費は公募要領ごとに確認してください。
まとめ|DX加算で押さえたい5つのこと
DX加算は、DX認定やDX補助金とは異なり、医療・介護の報酬制度の中でデジタル化の取り組みを評価する加算の通称です。この記事のポイントを、行動の順に整理します。
- 医療機関は、旧加算の届出が引き継がれないため、電子的診療情報連携体制整備加算の区分を決めて、改めて届け出る
- 算定する月の3か月前のマイナ保険証利用率が30%以上かを確認し、掲示とウェブサイトへの掲載も整える
- 介護事業所は、生産性向上推進体制加算の取得と、処遇改善加算の上乗せ区分の誓約内容・期限を一覧で管理する
- DX認定・DX補助金・DX検定は加算とは別の制度として、要件の確認、費用の補助、人材育成の順に使い分ける
- 加算分の給与への反映や勤怠・手続きの事務まで含めて見直し、給与計算・人事労務サービスの資料を取り寄せて比較する
報酬改定は数年ごとに行われ、加算の名称・点数・要件はそのたびに変わります。本記事は令和8年度改定時点の公開情報をもとに制度の概要を整理したもので、個別の算定可否を保証するものではなく、法的助言を目的としたものでもありません。実際の算定・届出にあたっては、厚生労働省の告示・通知・疑義解釈や地方厚生局・自治体の案内で最新情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談してください。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757361.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリストの送付について」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001693862.pdf
- 厚生労働省「医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年10月以降)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001439601.pdf
- 東海北陸厚生局「電子的診療情報連携体制整備加算及び電子的歯科診療情報連携体制整備加算(初・再診料)の施設基準に係る届出書添付書類(様式1の6)」https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/r8-k01-6.pdf
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00073.html
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算の拡充」https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/5_R8_houshuu_kaitei.pdf
- 厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/index.html
- 経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度)」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html
- jinjer株式会社「導入事例 社会福祉法人三重ベタニヤ」https://hcm-jinjer.com/results/131464/
- freee株式会社「導入事例 伊予興業株式会社」https://www.freee.co.jp/cases/iyokougyou








