DXとIT化の違いとは?経産省定義とデジタル化との関係を比較表で解説

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  • IT化は効率化、DXは変革 | 目的と変える範囲が違う
  • 言葉の違いを整理 | DX化・ICT化・IT戦略との関係
  • IT化で足りるか判断 | 課題が効率か事業かで見分ける

DXとIT化の違いは、目的と変える範囲にあります。IT化は既存の業務にITを取り入れて効率化する取り組みで、DXはデータとデジタル技術を使って製品・サービス、ビジネスモデル、組織や企業文化まで変革し、競争上の優位性を確立する取り組みです。両者は優劣ではなく、IT化がDXの土台になる関係にあります。本記事では、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」とDXレポート2の整理をもとに、比較表と部門別の具体例、DX化・ICT化・IT戦略との言葉の違い、デジタル化との関係、IT化で足りるケースとDXが必要なケースの見分け方、IT化からDXへ進めるステップ、用語の混同でよくある誤解までまとめます。

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Q1. 自社のいまの取り組みに最も近いものは?

目次

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  1. DXとIT化の違いを社内でそろえる第一歩|学びの仕組みの選択肢
  2. DXとIT化の違い|経済産業省の定義で比較
  3. 目的の違い|「マイナスをゼロに」か「ゼロからプラスへ」か
  4. 具体例で見るIT化とDXの境界線
  5. 言葉の整理|DX化・ICT化・IT戦略とDX戦略の違い
  6. デジタル化との関係|デジタイゼーション・デジタライゼーション・DX
  7. IT化だけでは足りないとされる背景|DXレポートの「2025年の崖」
  8. IT化で足りるケースとDXが必要なケース|判断の目安
  9. IT化からDXへ進める際のステップ
  10. 用語の混同でよくある誤解
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|DXとIT化の違いを社内で生かすための5つのこと
  13. 参考文献

DXとIT化の違いを社内でそろえる第一歩|学びの仕組みの選択肢

DXとIT化の違いを社内でそろえるとは、経営層・管理職・現場が同じ定義で「DX」と「IT化」を使い分けられる状態にすることです。担当者1人が理解しても、社内で言葉の意味がそろっていなければ取り組みは進みません。

用語の混同は、単なる言葉づかいの問題ではありません。経営層が「DX」と言うときに事業のあり方の変革を期待し、現場が「DX」をツール導入の意味で受け取っていると、導入が終わった時点で現場は「完了」と考え、経営層は「成果が出ていない」と感じます。予算の立て方、成果の測り方、担当部署の決め方まで食い違うため、計画を立てる前に定義を共有しておく価値は大きいといえます。経済産業省のDXレポート2も、DX推進に向けた短期的な取り組みとして、関係者間の共通理解の形成を挙げています。

共通理解をつくる代表的な方法は、DXの基礎を扱う研修です。少人数なら説明会や勉強会でも対応できますが、部署や拠点が多い会社では、教材の提供と受講状況の管理を仕組みに任せられるeラーニングが使いやすい選択肢になります。サービスごとに得意分野が違うため、ここでは「学びの一元管理」「理解度の確認」「ルールの周知」という3つの役割で整理します(2026年10月16日時点で、各社の商品ページに掲載されている内容にもとづきます)。

DXとIT化の違いを社内に広げるeラーニング3サービスの役割の違い

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DXとIT化の違い|経済産業省の定義で比較

DXは、データとデジタル技術で製品・サービス・ビジネスモデルや組織・企業文化まで変革して競争上の優位性を確立する取り組みです。IT化は、既存の業務にITを取り入れて効率化する取り組みで、DXを進めるための手段の1つにあたります。

経済産業省は、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。この定義は、企業のDXの取り組み方針を示した「デジタルガバナンス・コード3.0」に記載されています。

一方、IT化には法令や公的資料で決まった定義はありません。一般的には、紙や手作業で行っていた業務をパソコンやシステムに置き換え、作業の手間や時間を減らすことを指します。つまり、定義の上でも両者の位置づけは異なり、DXの定義には「ビジネスモデル」「組織」「企業文化・風土」の変革が含まれますが、IT化はあくまで既存業務の効率化にとどまります。デジタルガバナンス・コード3.0も、デジタルの力を、効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず、新たな収益につながる付加価値の向上や、新規デジタルビジネスの創出に振り向けることが重要だと整理しています。

観点 IT化 DX
目的 既存業務の効率化・省力化 新たな価値の創出と競争上の優位性の確立
対象 個別の作業や特定の業務 製品・サービス、ビジネスモデル、組織、企業文化まで
視点の向き 主に社内(業務のやり方) 顧客や社会(提供する価値)
変わるもの 作業の手段(紙からシステムへ等) 事業の稼ぎ方と働き方そのもの
主導する立場 情報システム部門や現場の担当者 経営層を中心に全社で推進
成果の測り方 作業時間の削減、ミスの減少、コスト削減 新規事業・新サービスの売上、顧客体験の向上、市場での位置づけの変化
期間の目安 導入プロジェクト単位で区切りやすい 継続的な取り組みで、終わりが決まっていない

「視点の向き」は、中小企業基盤整備機構の経営相談Q&A(J-Net21)が、IT化は主に社内に目を向けた取り組み、DXは顧客や社会に目を向けた取り組みと整理している点にもとづいています。この表のうち、「主導する立場」「成果の測り方」「期間の目安」は、社内で取り組みを評価するときに特に食い違いやすい項目です。IT化の成果は作業時間の削減のように数値で測りやすく、導入が完了した時点で区切れます。DXの成果は売上構造や顧客との関係の変化として表れるため、測定に時間がかかり、1回のプロジェクトで終わるものではありません。どちらの物差しで取り組みを評価しているのかを明確にしておくと、社内の議論がかみ合いやすくなります。

DXの公的な定義そのものをさらに詳しく確認したい場合は、DXは何の略?経産省の公的定義を確認、ビジネスの場でDXがどんな意味で使われているかはDXとはビジネスで何を意味するかで整理しています。

目的の違い|「マイナスをゼロに」か「ゼロからプラスへ」か

IT化は、手間やミスといった業務上のマイナスを減らしてゼロに近づける取り組みです。DXは、デジタル技術とデータを使って、これまでになかった価値というプラスを生み出す取り組みです。この目的の違いが、両者を分ける最も分かりやすい物差しになります。

たとえば、手書きの伝票を会計システムへの入力に変える取り組みは、転記の手間や計算ミスというマイナスを減らすことが目的です。業務の中身や会社の稼ぎ方は変わらず、同じ仕事をより速く正確に行えるようになります。これがIT化の典型的な効果です。

これに対し、蓄積した販売データを分析して、顧客ごとに次に必要な商品を提案するサービスを新しく始める場合は、会社がこれまで持っていなかった価値を生み出しています。売上の上げ方が変わり、営業担当者の仕事の進め方も変わります。ここまで踏み込んで初めて、DXと呼べる取り組みに近づきます。

注意したいのは、「マイナスをゼロに」する取り組みの価値が低いわけではないという点です。業務がデータとして記録されていない状態では、分析も新しいサービスづくりもできません。IT化はDXの土台であり、目的の違いを理解したうえで、自社がいまどちらの目的に取り組んでいるのかを言い分けることが大切です。

目的の違いを確認するときは、「この取り組みが終わった後、お客様から見て何か変わるか」を問うと判断しやすくなります。社内の作業が速くなっただけで、顧客が受け取る製品やサービス、体験が変わらないならIT化です。顧客に届く価値や、顧客との関係のつくり方が変わるなら、DXの領域に入っています。

具体例で見るIT化とDXの境界線

同じシステムを使っていても、使い方によってIT化にもDXにもなります。境界線は「導入したツール」ではなく、「その結果として事業や顧客との関係が変わったか」で引かれます。以下は、部門ごとにIT化とDXの例を並べたものです。

部門 IT化の例 DXの例
受発注 FAXで受けていた注文を受発注システムで受け付ける 注文データから需要を予測し、取引先に在庫補充を提案するサービスを始める
営業 顧客名簿を表計算ソフトから顧客管理システムに移す 商談や購買の履歴をもとに、訪問中心の営業からオンラインでの継続提案型に切り替える
製造 紙の作業日報をタブレット入力にする 設備の稼働データを使い、製品の販売から保守サービスまで含めた契約形態に変える
小売 レジをPOSレジに替えて売上を自動集計する 店舗とネット通販の購買データを統合し、会員向けの新しい購入体験をつくる
人事・総務 タイムカードを勤怠管理システムに置き換える 業務量や働き方のデータをもとに、組織の編成や働き方の制度そのものを見直す

表の左列と右列を見比べると、右列にはいずれも「データを使って、顧客に届ける価値や会社の仕組みを変える」という共通点があります。左列の取り組みは、右列に進むための前提になっていることも分かります。受発注システムで注文がデータとして残っていなければ、需要予測のサービスはつくれません。

自社の取り組みを判定するときは、次の3つの問いに順に答えてみると境界線が見えやすくなります。

  1. その取り組みで変わったのは、作業の手段だけか、業務の流れ全体か、事業の稼ぎ方まで含むか
  2. 成果を作業時間やコストで測っているか、売上構造や顧客の反応で測っているか
  3. 担当部署だけで完結しているか、経営層を含めて複数部門にまたがっているか

3つとも前者に当てはまるならIT化、すべて後者に当てはまるならDXに近い取り組みです。混在している場合は、後の章で扱うデジタライゼーションの段階にあると考えると整理しやすくなります。

言葉の整理|DX化・ICT化・IT戦略とDX戦略の違い

DX化は広く使われる「DX」の言い換え、ICT化はIT化とほぼ同じ意味、IT戦略は情報システムの整備計画、DX戦略は経営ビジョンを実現するための戦略という違いがあります。似た言葉が並ぶと混乱しやすいため、ここで整理します。

DXとDX化の違いは?「DX化」はおかしい?

DXとDX化に、定義上の大きな違いはありません。DXは「デジタルトランスフォーメーション」、つまりデジタルによる変革そのものを指す言葉のため、「DX化」は「変革化」のように言葉が重なっていると感じる人もいますが、誤りと断定できるものではありません。経済産業省の文書は「DX経営」「DX戦略」「DXの推進」といった表記が中心ですが、実務では「DX化」も広く使われ、意味は通じます。

気をつけたいのは、「IT化」「ペーパーレス化」と同じ「化」を付ける形で書くと、ツールを入れることだと受け取られやすい点です。経営層への報告や計画書では、「DXを推進する」「DXに取り組む」と書き、何を変えるのかを一緒に書くと誤解が少なくなります。

DX化とICT化の違いは?

ICTは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術のことです。総務省は、日本で長く使われてきたIT(情報技術)と同じ意味合いで、国際的にはICTという言い方がよく使われていると説明しています。そのため、ICT化はIT化とほぼ同じ意味で、通信の要素を強調した言い方と考えて差し支えありません。

したがって、DX化とICT化の違いは、DXとIT化の違いと同じです。ICT化は情報通信技術を使って業務を便利にすること、DX化はそのデータと技術を使って事業や組織まで変えることを指します。

IT戦略とDX戦略の違いは?

IT戦略にも公的な定義はありませんが、一般的には、業務を支えるシステムやITインフラをどう整備し、どう保守するかの計画を指します。これに対しDX戦略は、デジタルガバナンス・コード3.0で、データとデジタル技術を活用する戦略とされ、経営ビジョンの実現に向けた戦略そのものと捉える必要があると示されています。同コードは、DX推進はIT部門ではなく経営陣や取締役会の役割であるとも述べています。

つまり、IT戦略が「どのシステムをどう整えるか」を決めるものなら、DX戦略は「何のためにデータとデジタルを使い、事業をどう変えるか」を決めるものです。IT戦略はDX戦略を実現するための基盤づくりに位置づけられ、同コードも、ITシステムが技術的負債となることを防ぎ、IT部門・DX部門・事業部門・経営企画部門が組織横断的に取り組むことを求めています。

言葉 主な意味 IT化との関係
IT化 既存業務にITを取り入れて効率化する –
ICT化 情報通信技術を業務に取り入れる(IT化とほぼ同義) ほぼ同じ意味
デジタル化 デジタイゼーションとデジタライゼーションの両方を含む 日常ではほぼ同じ意味で使われる
DX・DX化 データとデジタル技術で事業・組織・企業文化まで変革する IT化は土台・手段
IT戦略 システムやITインフラの整備・保守の計画(一般的な使い方) IT化を計画的に進めるための戦略
DX戦略 経営ビジョンの実現に向けた、データとデジタル技術を活用する戦略 IT戦略を内側に含み、事業の変革まで扱う

「DX化」という言葉そのものの意味や、IT化・デジタル化との違いを基礎から確認したい場合は、DX化とは?意味とIT化・デジタル化の違いを経産省定義で解説もあわせて参考にしてください。

デジタル化との関係|デジタイゼーション・デジタライゼーション・DX

デジタル化とDXの関係は、経済産業省のDXレポート2が整理した3段階で説明できます。DXに至る過程を「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」に分けており、一般にIT化・デジタル化と呼ばれる取り組みは、このうち前の2段階にあたります。

段階 内容 例
デジタイゼーション アナログ・物理データのデジタルデータ化 紙の書類をスキャンして電子ファイルで保存する
デジタライゼーション 個別の業務・製造プロセスのデジタル化 申請から承認までをワークフローシステムで完結させる
デジタルトランスフォーメーション 組織横断・全体の業務・製造プロセスのデジタル化と、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革 蓄積したデータを活用して新しいサービスや収益モデルをつくる

この3段階は、必ずしも順番に1つずつ完了させる必要はありません。ただし、デジタルデータがない状態でプロセスはデジタル化できず、プロセスがつながっていない状態で全社的な変革は進みにくいため、多くの企業では前の段階が後の段階の土台になります。中小企業基盤整備機構のJ-Net21も、デジタライゼーションを「IT化」にほぼ相当する段階として説明し、IT化はDXと対立するものではなく、DXの土台になると整理しています。

「IT化」「デジタル化」「DX」という3つの言葉を社内で区別するときは、IT化とデジタル化をほぼ同じ意味の日常語として扱い、厳密に区別したい場面では上の3段階の用語を使う方法が実務的です。デジタル化という言葉自体がデジタイゼーションとデジタライゼーションの両方を含むため、会議資料や計画書では、どちらの意味で使っているかを明記しておくと誤解を防げます。

3段階の用語は、一度説明しただけでは定着しにくい言葉です。部署や役職によって「デジタル化」をイメージする範囲が異なるため、全社で同じ図表と同じ例を使って学び、そのあとで理解度を確認すると、どの部署で言葉のずれが残っているかが分かります。理解度を確認テストの結果で把握したい場合の一例が、株式会社イー・コミュニケーションズのSAKU-SAKU Testingです。CBT(コンピュータ上で試験を行う方式)の技術を生かしたテスト機能があり、選択式・穴埋め・並び替え・記述の設問を配信できます。用意された設問と自社オリジナルの設問を、1つのテストにまとめることもできます。注意したい点は、AIを使ったリモート監視機能などは有償オプションの契約が必要なこと、日本国外での利用はサポート対象外であることです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社イー・コミュニケーションズ

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出典:www.e-coms.co.jp

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出典: メディカル・データ・ビジョン株式会社(SAKU-SAKU Testing導入事例) https://www.e-coms.co.jp/jirei/jirei29
3サービスの役割を比較表で見る

IT化だけでは足りないとされる背景|DXレポートの「2025年の崖」

IT化に加えてDXが求められるようになった背景には、既存システムの老朽化と市場環境の変化があります。経済産業省は2018年のDXレポートで、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを使い続けた場合、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘し、これを「2025年の崖」と呼びました。

ここで問題とされたのは、IT化そのものの遅れではなく、部門ごとに個別最適でIT化を重ねた結果、システム同士がつながらず、データを全社で活用できない状態です。業務ごとに別々のシステムを導入し、改修を繰り返すと、保守の費用と手間が増え、新しい取り組みに回せる予算や人材が減っていきます。デジタルガバナンス・コード3.0が、ITシステムが技術的負債となることを防ぐよう求めているのも、同じ問題意識によります。IT化を進めてきた企業ほど、この「つながらないIT」を見直す必要に迫られる点が、IT化とDXの関係を考えるうえで重要です。

あわせて、顧客の購買行動のオンライン化や、デジタル技術を前提にした新しい競合の登場など、事業環境の変化も速くなっています。既存業務を効率化するIT化だけでは、こうした変化に合わせて製品・サービスや稼ぎ方を変えることは難しく、データとデジタル技術を使って事業そのものを見直すDXが求められるようになりました。

IT化で足りるケースとDXが必要なケース|判断の目安

IT化で足りるのは、課題が作業時間やコストなど業務の効率にあるときです。DXが必要になるのは、顧客に届ける価値や事業の稼ぎ方そのものを変えたいときです。DXは目的ではなく課題を解決するための手段のため、IT化で目的を達成できるなら、無理にDXと呼ぶ必要はありません。

観点 IT化が向くケース DXが向くケース
抱えている課題 手作業や転記が多い、人手が足りない、ミスが減らない 既存の商品やサービスだけでは顧客の変化に対応できない
目指す状態 同じ仕事を少ない手間と時間で行えるようにする 新しいサービスや収益の仕組み、働き方の仕組みをつくる
得られるメリット 作業時間の短縮、ミスの減少、コストの削減、情報共有のしやすさ 新規事業や顧客体験の向上、市場での競争力の確保
進めやすさ 部署単位で小さく始めやすい 経営層を含む全社の合意と、継続的な取り組みが必要
注意したい点 部署ごとにバラバラに導入すると、データがつながらない 流行を理由に始めると、本来の課題を見失う

この表は、どちらか一方を選ぶためのものではありません。多くの会社では、まず業務ごとのIT化で土台をつくり、その過程で蓄積したデータを使って新しい価値を生み出せる領域からDXに踏み出す、という順番になります。IT化で足りるのに「DXを進めている」と言い張る必要はなく、逆にIT化が終わったからDXも終わったと考えるのも誤りです。

中小企業が取り組むときの失敗パターン

中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、中小企業がDXに取り組む際の典型的な失敗要因として、流行しているからという理由での導入、情報システム部門や外部ベンダーへの丸投げ、現場の反発を挙げています。対策としては、何のためにDXを行うのかという目的を明確にして推進体制をつくること、社長自身がDXの必要性を理解して従業員に浸透させることを挙げています。IT化とDXの違いが社内で共有されていないと、これらの失敗が起きやすくなります。

公的な事例を読むときの見方

IT化とDXの違いを具体的に確認するには、公的機関が選んだ事例が参考になります。経済産業省とIPAの「DXセレクション」は、デジタルガバナンス・コードに沿った取り組みでDXの成果を出している中堅・中小企業等の優良事例を選ぶもので、2022年から実施されています。2026年は5月20日の最終選考・表彰式で、グランプリ1者、準グランプリ2者、優良事例8者の計11者が選定されました。

事例を読むときは、使ったツールの名前ではなく、何が変わったかに注目してください。作業の手段が変わっただけならIT化、顧客に届ける価値や事業の仕組みが変わっていればDXに近い取り組みです。自社と業種や規模が違う事例は、取り組みそのものをまねるより、変えた範囲と進めた順序を参考にするのが実用的です。

IT化からDXへ進める際のステップ

IT化からDXへ進めるには、業務の現状把握、デジタル化による土台づくり、データ活用による変革という順に段階を踏むのが現実的です。いきなり新しいビジネスモデルを目指すより、足元の業務から整えるほうが取り組みが定着します。

  1. 目的と用語をそろえる:経営層と現場で、DXで何を実現したいのか、IT化とDXをどう呼び分けるのかを共有する
  2. 業務を棚卸しする:部門ごとの業務を洗い出し、それぞれが3段階のどこにあるかを確認する
  3. デジタイゼーションを進める:紙や口頭のやり取りのうち、データとして残すべきものを電子化する
  4. デジタライゼーションを進める:業務の流れ全体をシステムでつなぎ、転記や二重入力をなくす
  5. データを活用して変革する:蓄積したデータを分析し、顧客への提案や新しいサービス、組織の見直しにつなげる
  6. 振り返って改善を続ける:成果を定期的に確認し、次の対象業務や変革のテーマを決める

このうち見落とされやすいのが、1番目の「目的と用語をそろえる」ステップです。システム選定や予算確保から始めると、何のためのIT化なのか、どこからをDXと呼ぶのかが曖昧なまま進み、導入後に「思っていた成果と違う」という評価になりがちです。経済産業省のデジタルガバナンス・コードでも、経営ビジョンとDX戦略を定め、組織づくりや人材育成とあわせて進めることが示されています。

企業規模によって進め方も変わります。従業員数十名規模の会社では、経営者が自ら業務の棚卸しに関わり、1つの業務でIT化からデジタライゼーションまでを短期間で進めて成功例をつくる方法が向いています。複数の部門や拠点がある会社では、部門ごとに段階のばらつきが大きいため、全社一律の目標ではなく、部門ごとに次の段階を目標として設定する方法が現実的です。各段階で誰が何を担うかは、DX推進のステップ|6段階の役割分担で詳しく整理しています。

人材面の準備も欠かせません。経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、全てのビジネスパーソンが身につけるべき知識やスキルを「DXリテラシー標準」、DXを推進する人材の役割やスキルを「DX推進スキル標準」としてまとめた「デジタルスキル標準」を公開しています。社員に何を学んでもらうかを考える際の目安として活用できます。顧客との接点を増やす施策としてのDXに関心がある場合は、ナーチャリングとは?意味・施策・DXとの関係をわかりやすく解説もあわせて確認してください。

ステップのうち1番目の「目的と用語をそろえる」準備が整っているかを、次のセルフチェックで点検してみてください。

IT化からDXへ進む準備、今のやり方で大丈夫?セルフチェック

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用語の混同でよくある誤解

DXとIT化の混同から生まれる誤解の多くは、「ツールを入れればDX」「IT化は遅れている取り組み」という2つの極端な受け止め方に分かれます。代表的な誤解と正しい理解を表にまとめました。

よくある誤解 正しい理解
クラウドサービスを導入したのでDXが完了した 導入はIT化・デジタル化の段階。事業や組織が変わって初めてDXといえる
IT化は古い考え方なので、飛ばしてDXから始めるべき データがない状態では変革は進まない。IT化はDXの土台として必要
DXは情報システム部門の仕事 ビジネスモデルや組織の変革を含むため、経営層を中心に全社で取り組む
DXは大企業だけの話 規模を問わず取り組める。国のDX認定制度も企業規模を問わず申請できる
DXの成果はすぐに数字で出る IT化の効率化効果は早く出やすいが、DXの成果は時間をかけて表れることが多い
ツールやAIを入れれば、使い方は現場が判断できる 情報の取り扱いや著作権などのルールが人によってばらつくため、利用ルールを決めて全社員に周知する

これらの誤解は、特定の誰かの知識不足というより、社内で言葉の定義を共有する機会がないことから生まれます。経営層向けの会議資料では「DX」、現場向けの説明では「システム導入」と、同じ取り組みを違う言葉で説明しているうちに、それぞれが別のものを思い浮かべるようになります。誤解を防ぐには、取り組みを始める前に、社員全員が同じ定義と同じ例で学ぶ場を用意するのが近道です。

とくに最後の誤解は、IT化が進むほど増えます。ツールやAIを業務に取り入れるほど、情報セキュリティ、個人情報、著作権といった基本ルールを全社員が理解している必要が出てくるためです。こうした法令・ルールの研修に特化した選択肢の一例が、株式会社OysterのOneCompliance(ワンコンプライアンス)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、情報セキュリティ、個人情報保護法、著作権(AIに関する内容を含む)、ハラスメント予防などのコースが用意されています。法令の改正などに合わせてコンテンツが更新される点や、ダッシュボードと自動リマインダーで受講状況を把握できる点が特徴です。ただし、DXそのものを学ぶ内容ではなく、IT化やDXを進めるときに守るルールの周知を担う位置づけである点に注意してください。料金体系は受講者数に応じて変わるため、トライアルやデモの内容とあわせて問い合わせで確認する必要があります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. DXとIT化の違いは何ですか?

A. IT化は既存業務にITを取り入れて効率化する取り組みで、DXはデータとデジタル技術を使って製品・サービス、ビジネスモデル、組織や企業文化まで変革し、競争上の優位性を確立する取り組みです。IT化はDXを進めるための手段の1つにあたります。

Q2. DXとDX化の違いは何ですか?「DX化」はおかしいですか?

A. 定義上の大きな違いはなく、DX化はDXを進めることを指す言い方として広く使われています。DXが変革そのものを意味するため言葉が重なると感じる人もいますが、誤りと断定できるものではありません。公式な文書や計画書では「DXを推進する」「DXに取り組む」と書くと誤解が少なくなります。

Q3. DX化とICT化の違いは何ですか?

A. ICTは情報通信技術のことで、総務省は日本で使われてきたIT(情報技術)と同じ意味合いの言葉と説明しています。ICT化はIT化とほぼ同じ意味のため、DX化とICT化の違いはDXとIT化の違いと同じです。ICT化は技術を取り入れて業務を便利にすること、DX化はその技術とデータで事業や組織まで変えることを指します。

Q4. IT戦略とDX戦略の違いは何ですか?

A. IT戦略は、一般的にはシステムやITインフラの整備・保守の計画を指します。DX戦略は、デジタルガバナンス・コード3.0で、データとデジタル技術を活用する戦略であり、経営ビジョンの実現に向けた戦略そのものと捉えるべきものとされています。IT戦略はDX戦略を実現する基盤づくりに位置づけられます。

Q5. 自社の取り組みがIT化かDXかはどう判断すればよいですか?

A. 変わったのが作業の手段だけか事業の稼ぎ方まで含むか、成果を作業時間で測っているか売上構造や顧客の反応で測っているか、担当部署で完結しているか全社にまたがっているか、の3点で確認すると判断しやすくなります。課題が業務の効率にあるならIT化で足りる場合もあります。

Q6. DXとIT化の違いを社内に浸透させるにはどうすればよいですか?

A. 経営層から現場まで同じ定義と同じ例で学ぶ機会をつくることが効果的です。部署や拠点が多い場合は、同じ内容を全員に届けられ受講状況も管理できるeラーニングを活用する方法があります。機能はサービスによって異なるため、資料で確認してください。

まとめ|DXとIT化の違いを社内で生かすための5つのこと

DXとIT化の違いを理解したうえで社内に生かすために、次の5つを順に進めてみてください。

  1. IT化は既存業務の効率化、DXはデータとデジタル技術による事業・組織・企業文化の変革で、目的と対象が異なることを押さえる
  2. DX化・ICT化・IT戦略とDX戦略などの言葉の意味を整理し、社内で使い分けを共有する
  3. 自社の課題が業務の効率にあるのか、事業の稼ぎ方にあるのかを確かめ、IT化で足りるのかDXが必要なのかを判断する
  4. デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXの3段階で自社の現在地を確認し、部門ごとに次の段階を決める
  5. 共通理解を広げる学習の仕組みとして、eラーニングなどの資料を取り寄せて比べ、自社に合うかを検討する

IT化とDXは優劣の関係ではなく、段階の関係です。自社の業務がいまどの段階にあるかを確認し、社内で同じ言葉を使って次の一歩を決めることが、DXを着実に進める近道になります。

参考文献

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