DXの略・DXリテラシー・GXとの違いを経産省資料で整理|DX用語入門

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  • DXは「Digital Transformation」の略で、「X」は接頭辞「Trans-」を象徴する記号
  • DXリテラシーは経産省・IPA「DXリテラシー標準(DSS-L)」で全社員向け/DX人材はDSS-Pで推進人材向けと区別
  • DXとGXは変革対象が異なる(DX=事業/GX=経済社会システム全体)が、データ基盤を共有して相互補完する

DXを巡る用語は似たものが多く、「DXは何の略か」「DXリテラシーとDX人材はどう違うか」「DX事業とは推進する側のことか提供する側のことか」「DXとGXは何が違うか」と、複数の問いが重なります。本記事は経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する一次資料に沿って、5つの代表的なDX関連用語を一気に整理します。個人事業主から中堅・大企業のDX推進担当まで、規模を問わず「DX用語の頭の整理」に使える1本を目指しました。読み終えるころには、社内の研修資料や経営会議の冒頭スライドを組み立てるための土台ができているはずです。

目次

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  1. DXの略は「Digital Transformation」|なぜ「X」と表記するのか
  2. DXリテラシーとは|全社員向けの「DSS-L」と推進人材向けの「DSS-P」の違い
  3. DXの代表的な例|経産省「DXセレクション」選定企業の傾向
  4. 「DX事業」の2つの意味|推進する側/提供する側
  5. DXとGXの違い|変革対象が「事業」か「環境」かで切り分ける
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ|今日からできる3つのこと
  8. 関連記事
  9. 参考文献

DXの略は「Digital Transformation」|なぜ「X」と表記するのか

DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略です。日本語に直訳すると「デジタルによる変革」になります。経済産業省は2018年に「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」(現在は「デジタルガバナンス・コード」に統合)を公表し、企業のDX推進を制度的に後押ししてきました。

頭文字を素直にとれば「DT」になりそうなところ、なぜ「X」なのか。これは英語圏で接頭辞「Trans-」を「X」と表記する慣習に由来します。「Trans-」には「〜を越えて」「横断して」という意味があり、十字(クロス)の形状から「X」が当てられてきました。たとえば「Cross-Platform」を「X-Platform」と書くケース、「Christmas」を「Xmas」と書く慣習も同じ系統です。Digitalの「D」とTransformationの「X」を組み合わせて「DX」と表記する流れが定着し、日本でも経産省の文書を起点に広がりました。

図1:X系略語のマップ(DX/GX/CX/HX/PX) 図1:X系略語のマップ ─ Xは「Trans-(横断・変革)」の象徴 X = Trans- (横断・変革) DX Digital Transformation デジタルで事業を変革 GX Green Transformation 脱炭素方向に経済社会を変革 CX Customer Experience 顧客体験の変革 HX Human Experience PX Process Transformation 業務プロセス変革
図1:X系略語のマップ。「X」は接頭辞「Trans-」を象徴する記号として広く使われ、DX以外にもGX・CX・HX・PXなどの派生語が存在する。

X系略語のうち、もっとも普及しているのがDXです。GX(Green Transformation)は気候変動対応の文脈で経済産業省が普及を進めており、CX(Customer Experience)は顧客体験設計の現場で使われます。HX(Human Experience)やPX(Process Transformation)は限定的ですが、本記事では「Xは何かを根本から変える」という共通の意味合いを押さえておきましょう。DXの全体像をより広く整理したい場合は「DXとは|中小企業が知るべき基礎」もあわせて参照できます。

DXリテラシーとは|全社員向けの「DSS-L」と推進人材向けの「DSS-P」の違い

DXリテラシーは、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」のうち、すべてのビジネスパーソンを対象にした基礎的なスキル・マインドを指します。デジタルスキル標準は2つの構成要素から成り立ち、企業のDX人材戦略の土台になっています。

標準名正式名対象位置づけ
DSS-LDXリテラシー標準すべてのビジネスパーソンDXの「基礎リテラシー」(全社員向け)
DSS-PDX推進スキル標準DXを推進する人材DXの「推進スキル」(専門人材向け)

DSS-LとDSS-Pは2022年に初版が策定されました。その後、生成AIやAX(AIトランスフォーメーション)の進展を受けて、2026年4月にデジタルスキル標準ver.2.0が公表されています。ver.2.0ではデータマネジメントに関する改訂などが行われ、AI時代のDX人材像に合わせた更新が加えられました。

図2:DSS-LとDSS-Pの位置関係 図2:DSS-LとDSS-Pの位置関係 ─ 基礎リテラシーと推進スキルの2層構造 DSS-P DX推進スキル標準 DXを推進する人材向け(5類型) 2026年4月公表 ver.2.0 AX対応・データマネジメント DSS-L DXリテラシー標準 すべてのビジネスパーソン向け Why なぜDXが必要か What 技術・データ基礎 How 活用方法・進め方 マインド・ スタンス 行動様式 基礎は全員 → 推進は専門人材へ階層化 出典:経済産業省・IPA「デジタルスキル標準(DSS)」(2022年初版・2026年4月ver.2.0公表)
図2:DSS-LとDSS-Pの位置関係。基礎リテラシー(DSS-L)は全社員、推進スキル(DSS-P)はDX推進人材の標準として階層化される。

DSS-Lは「Why(なぜDXが必要か)」「What(DXに必要な技術・データの基礎知識)」「How(活用方法・進め方)」「マインド・スタンス(行動様式・意識)」の4項目で構成されます。経営層・管理職・現場社員のいずれも、規模を問わずDSS-Lレベルの理解を共有することが、DX推進の前提条件になります。

一方、DSS-PはDXを牽引する専門人材の役割や習得すべきスキルを定義しています。ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティといった人材類型ごとに、求められるスキルレベルが整理されています。DXリテラシー(DSS-L)と混同しないよう、社内研修の設計時には「全社員向けはDSS-L/推進人材向けはDSS-P」と棲み分けを明確化することが大切です。DX人材像の詳細は「DX人材の確保とDXコンサル・研修の選び方」で個別に解説しています。

DXの代表的な例|経産省「DXセレクション」選定企業の傾向

「DX 例」を調べる方の多くは、自社の規模や業界に近いDX事例を探しています。実在企業の動向を把握する公的な情報源として有用なのが、経済産業省の「DXセレクション」です。DXセレクションは中堅・中小企業のDX優良事例を毎年選定する制度で、デジタルガバナンス・コードに沿った取り組みで成果を出している企業を「モデルケース」として公表しています。

制度対象企業選定基準のベース
DXセレクション中堅・中小企業デジタルガバナンス・コードに沿った優良事例
DX銘柄上場企業東京証券取引所と経産省が共同選定
DX認定制度企業・規模問わず申請に基づきDX-Readyを認定

DXセレクション2025では15社が選定され、グランプリには山形県米沢市の建設業・後藤組が選ばれました。後藤組は現場から経営層までが参加する「全員DX」を推進した点が評価されています。2026年版は2025年11月に応募が始まり、2026年4月10日に最終選考に進出する11者が決定しました。最新の選定状況は経産省のプレスリリースで確認できます。

DXセレクションのレポートは「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き」として毎年公表されています。手引きには「DXの進め方」「DXの成功のポイント」が選定企業の取り組みと共に整理されていて、自社のDXを検討する際の参考になります。手引きでは、DXを単なるツール導入ではなく「ビジネスモデルや企業文化の変革そのもの」として位置づけ、経営規模が小さい企業ほど経営者の判断が迅速でDXに有利な側面があると示しています。業界別の具体事例まで深掘りしたい場合は「DX事例集|業界別の取り組み」を参照してください。

「DX事業」の2つの意味|推進する側/提供する側

「DX事業とは何か」を検索すると、語り手によって意味合いが変わることに気付きます。これは「DX事業」というフレーズが、立場の異なる2種類のビジネスを指して使われているからです。記事や会話で「DX事業」と聞いたときは、どちらの意味で使われているかを最初に切り分けると混乱が減ります。

解釈意味主な担い手
解釈①:推進する側のDX事業自社の業務・サービス・ビジネスモデルをDXで変革する取り組みユーザー企業(規模問わず)
解釈②:提供する側のDX事業他社のDXを支援する事業(コンサル・SI・SaaS提供など)DXコンサル・SIer・SaaSベンダー

解釈①は、経済産業省の「DX認定制度」が想定している対象です。DX認定は申請企業の規模を問わず、DX推進のための情報処理に関する戦略を持ち、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応した企業を認定する制度で、認定取得企業には低利融資や優遇税制が用意される場合があります。個人事業主から中堅・大企業まで、自社のDX推進をビジネス価値に転換する文脈で「DX事業」が語られます。

解釈②は、DX関連サービスを他社に提供する事業者の視点です。DXコンサル、SIer、SaaSベンダー、研修サービス事業者などが該当します。受け手の規模やフェーズに合わせたメニュー設計が事業の中核になります。「DX事業」を立ち上げる側のビジネスモデル設計や、サブブランドのドメイン取得まで踏み込みたい場合は「DX事業の立て方とDX企業の動向」で深掘りしています。

DXとGXの違い|変革対象が「事業」か「環境」かで切り分ける

GXは「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略で、経済産業省が2022年2月に「GXリーグ基本構想」を発表したことで広く知られるようになりました。GXは2050年カーボンニュートラルや、2030年の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた、経済社会システム全体の変革を指します。GXリーグは2023年4月以降に本格稼働し、2024年4月時点で日本のCO2排出量の5割超を占める企業群が参画する大型の枠組みへと成長しました。

図3:DXとGXの違い(変革対象の違い) 図3:DXとGXの違い ─ 変革対象が「事業」か「経済社会システム」か DX Digital Transformation 変革対象 事業・組織・業務プロセス ビジネスモデル・企業文化 主な資源 データ・デジタル技術 AI/IoT/クラウド 所管・主な枠組み 経産省・IPA DX認定/DXセレクション/DSS 補完 GX-ETSなどの データ基盤は DXが支える GX Green Transformation 変革対象 経済社会システム全体 温室効果ガス排出構造 主な資源 脱炭素技術・排出量取引 再エネ/省エネ/GX-ETS 所管・主な枠組み 経産省・環境省 GXリーグ/カーボンプライシング 出典:経済産業省「GXリーグ基本構想」「成長志向型カーボンプライシング構想」(2026年5月31日取得)
図3:DXとGXの違い。変革の対象がDXは「事業・組織・業務」、GXは「経済社会システム全体」である点で異なるが、両者は相互補完関係にある。

DXとGXは「Transformation(変革)」という共通項を持ちながら、変革の対象が異なります。DXがデータ・デジタル技術を使って事業や組織を変革する取り組みであるのに対し、GXは脱炭素方向に経済社会システム全体を変革する取り組みです。所管も完全には一致せず、DXは経済産業省・IPAが中心ですが、GXは経産省と環境省にまたがります。

両者は対立するものではなく、相互に補完します。たとえばGX-ETS(GXリーグの排出量取引制度)を運用するためには、自社のCO2排出量を正確に把握・記録するデータ基盤が必要で、その整備自体がDXの一部です。GXリーグでは参画企業が自主設定した排出削減目標達成に向けたGX-ETSの実施や、GX製品投入・サプライチェーン上での排出削減を促進するためのルール形成が行われています。サステナビリティ部門とDX推進部門の役割分担を整理することが、両者を同時に進めるうえで最初のステップになります。「DXとIT化・デジタル化・GXの違い」では他のDX類似概念との対比も整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. DXは何の略ですか

A. DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略です。日本語に直訳すると「デジタルによる変革」になります。経済産業省の定義では、データとデジタル技術を活用してビジネスモデル・組織・業務プロセス・企業文化を変革し、競争上の優位性を確立する取り組みを指します。

Q2. DXのXはなぜ「T」ではなく「X」なのですか

A. 英語圏で接頭辞「Trans-」を「X」と表記する慣習に由来します。「Trans-」には「〜を越えて」「横断して」という意味があり、十字(クロス)の形状から「X」が当てられてきました。「Cross-Platform」を「X-Platform」と書いたり、「Christmas」を「Xmas」と書く慣習と同じ系統です。

Q3. DXリテラシーとDX人材は同じ意味ですか

A. 異なります。DXリテラシーは経産省・IPAの「DXリテラシー標準(DSS-L)」が定める、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき基礎的なスキル・マインドを指します。一方DX人材は、「DX推進スキル標準(DSS-P)」が定める、DXを推進する専門人材を指します。社内研修を設計する際は、全社員向け(DSS-L)と推進人材向け(DSS-P)を分けて設計するのが基本です。

Q4. DXセレクションとDX銘柄の違いは何ですか

A. 対象企業が異なります。DXセレクションは中堅・中小企業のDX優良事例を選定する制度で、経済産業省が単独で運営しています。DX銘柄は上場企業を対象に、東京証券取引所と経済産業省が共同で選定する制度です。自社の規模に応じて、参考にする事例の種類が変わります。

Q5. DXとGXは同時に進められますか

A. 同時並行で進めるのが現在の標準的な考え方です。GX-ETS(GXリーグの排出量取引)などの脱炭素施策を運用するためには、CO2排出量の可視化や記録のためのデータ基盤が必要で、その整備自体がDXの一部になります。サステナビリティ部門とDX推進部門の責任分界を明確化したうえで、データ基盤を共通化する設計が有効です。

Q6. DSS-Lのver.2.0で何が変わりましたか

A. 経産省・IPAは2026年4月にデジタルスキル標準ver.2.0を公表しました。AX(AIトランスフォーメーション)の進展に対応したデータマネジメントに関する改訂などが行われています。社内研修や採用基準にDSSを反映している場合は、ver.2.0の改訂内容に合わせて教材を更新することが推奨されます。

まとめ|今日からできる3つのこと

  1. DX関連用語を社内で統一する:DSS-LとDSS-Pの違い、DXとGXの違いを1ページにまとめ、社内ポータルや研修資料の冒頭に配置します。用語の認識ずれが減るだけで、会議のスピードが上がります。
  2. DXセレクションのレポートを1本読む:経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」から、自社の業界・規模に近い選定企業を1社特定し、取り組み内容を読み込みます。模倣ではなく、自社の現状とのギャップを言語化することが目的です。
  3. DXとGXの責任分界を明確化する:DX推進部とサステナビリティ部、それぞれの所管範囲と共有するデータ基盤を整理します。両者は補完関係にあるため、最初に分けて整理することで重複投資を避けられます。

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