日本のSaaS企業ランキング|売上高・時価総額・年収・評価の4つの切り口と正しい読み方
Check!
- 国内上場8社の売上高と時価総額の違いがわかる
- 年収・ユーザー評価ランキングの読み方がわかる
- 総務省などの統計でSaaS市場の広がりがわかる
日本のSaaS企業ランキングは、売上高・時価総額・年収・ユーザー評価のどの指標で並べるかで顔ぶれが変わります。本記事で比べた国内上場8社では、直近通期の売上高が最も大きいのはビジョナル(2026年7月期、約993億円)、時価総額が最も大きいのはオービックビジネスコンサルタント(2026年10月14日時点で約6,718億円)で、同じ8社でも順位が入れ替わります。この記事では、決算短信で確認した売上高、第三者サイトに掲載された時価総額、ITreviewのユーザー評価、総務省と富士キメラ総研の統計を並べ、ランキングを読み違えないための見方を整理します。掲載する企業名や順位は情報提供を目的としたもので、特定企業への投資や転職を勧めるものではありません。
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【売上高・時価総額】日本のSaaS企業ランキング|上場8社を2つの指標で並べる
日本の主なSaaS関連の上場8社を売上高で並べると1位はビジョナル、時価総額で並べると1位はオービックビジネスコンサルタントで、売上高5位の同社が首位に入れ替わります。
| 企業(証券コード) | 売上高の順 | 売上高(決算期) | 時価総額の順 | 時価総額(2026年10月14日) | 時価総額は売上高の何倍か |
|---|---|---|---|---|---|
| ビジョナル株式会社(4194) | 1 | 約993億円(2026年7月期) | 3 | 約3,916億円 | 3.9倍 |
| 株式会社エス・エム・エス(2175) | 2 | 約647億円(2026年3月期) | 6 | 約2,404億円 | 3.7倍 |
| 株式会社ラクス(3923) | 3 | 約603億円(2026年3月期) | 2 | 約4,008億円 | 6.6倍 |
| Sansan株式会社(4443) | 4 | 約538億円(2026年5月期) | 5 | 約2,442億円 | 4.5倍 |
| 株式会社オービックビジネスコンサルタント(4733) | 5 | 約514億円(2026年3月期、非連結) | 1 | 約6,718億円 | 13.1倍 |
| 株式会社マネーフォワード(3994) | 6 | 約503億円(2025年11月期) | 4 | 約3,610億円 | 7.2倍 |
| フリー株式会社(4478) | 7 | 約424億円(2026年6月期) | 7 | 約2,125億円 | 5.0倍 |
| サイボウズ株式会社(4776) | 8 | 約374億円(2025年12月期) | 8 | 約1,654億円 | 4.4倍 |
売上高は各社の決算短信と決算説明資料(連結。オービックビジネスコンサルタントのみ非連結)、時価総額はIRBANKに掲載された2026年10月14日の値で、いずれも2026年10月15日に確認しました。時価総額は第三者サイトの掲載値であり、公的な統計ではありません。株価と発行済株式数で決まるため日々変わり、最後の列は売上高に対する時価総額の倍率を求めた簡易的な計算です。投資の助言ではありません。検索結果の売上高ランキングに挙がりやすい企業のうち、直近通期の決算を確認できた8社を並べたもので、SaaS関連の上場企業すべての順位ではありません。決算期や連結の違いは、SaaSランキングの見方でも整理しています。
ここまでの売上高や時価総額は、他社の数字です。ランキングを自社の経営に生かすなら、まず自社の売上と利益を月次で確認できる状態が前提になります。そのための会計ソフトの一例が、マネーフォワード クラウド会計です。商品ページによると、仕訳データを入力すると決算書やキャッシュフローレポート、収益レポートなどが自動で作成されます。インターネットバンキングやクレジットカードなど2,400社以上の金融機関との連携機能もあり、取引明細の入力の手間を減らせます。注意点として、ある程度の簿記知識が必要な場合もあります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
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【レビュー】マネーフォワードクラウド会計を実際に登録して使ってみた【使い方解説】
数ある会計ソフトの中でそのサービスを使ったらいいかわからないという方も多くいると思います。そこで今回は「マネーフォワードクラウド会計」の無料登録から使い方まで、利用経験ゼロの筆者が実況形式でお伝えします。
導入企業の声も参考になります。システム開発を手がける株式会社はためきの代表取締役は、銀行口座の連携によって会計に即時に反映され、経費や売上をタイムラグなく確認できる点をメリットに挙げています(2025年9月公開の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません)。
銀行口座の連携により、即時に会計に反映されるので、タイムラグなく経費や売上を確認できるのも大きなメリットです。
出典: 株式会社はためき「マネーフォワード クラウド」導入事例(マネーフォワード公式サイト、2025年9月1日公開。公開当時の情報)
【成長性・収益性】前期比・営業利益率・ARRで見るSaaS企業ランキング
同じ8社を売上高の前期比で並べるとフリーが+27.6%で最も高く、営業利益率ではオービックビジネスコンサルタントが45.9%で最も高くなり、売上高や時価総額の順位とは別の並びになります。
| 企業 | 売上高の前期比 | 前期比の順 | 営業利益率 | 営業利益率の順 |
|---|---|---|---|---|
| フリー株式会社(2026年6月期) | +27.6% | 1 | 2.6% | 7 |
| サイボウズ株式会社(2025年12月期) | +26.1% | 2 | 27.0% | 3 |
| 株式会社マネーフォワード(2025年11月期) | +24.7% | 3 | -5.3%(営業損失) | 8 |
| Sansan株式会社(2026年5月期) | +24.4% | 4 | 15.2% | 5 |
| ビジョナル株式会社(2026年7月期) | +23.9% | 5 | 24.7% | 4 |
| 株式会社ラクス(2026年3月期) | +23.3% | 6 | 28.8% | 2 |
| 株式会社オービックビジネスコンサルタント(2026年3月期、非連結) | +9.4% | 7 | 45.9% | 1 |
| 株式会社エス・エム・エス(2026年3月期) | +6.2% | 8 | 10.5% | 6 |
前期比と営業利益率は、決算短信と決算説明資料の数字から計算しました。営業利益率は営業利益を売上高で割った値です。売上規模が小さいほど高い成長率が出やすく、先行投資で利益率が低くなったり赤字になったりする企業もあるため、どちらか一方だけで優劣は決められません。8社の中で営業損失だったのは、マネーフォワード(2025年11月期)だけです。
SaaS企業は継続収益で見る|ARRと売上高の違い
SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアをインストールせずにインターネット経由で利用する形態で、多くは月額や年額の利用料で提供されます。契約が続くかぎり収益が積み上がるため、SaaS企業は売上高だけでなく、継続課金による収益を年額に換算したARR(年間経常収益)や解約率も見られます。業種ごとの企業の違いは、SaaSを提供する日本企業の業種別マップで解説しています。
| 企業 | 売上高 | 公表しているARR | 備考 |
|---|---|---|---|
| 株式会社オービックビジネスコンサルタント | 約514億円(2026年3月期) | 457億円(2026年3月末) | 決算説明資料では、各四半期末月の月額継続収益の12倍で計算 |
| 株式会社マネーフォワード | 約503億円(2025年11月期) | SaaS ARRとして約393億円(2025年11月末) | 決算短信に記載のSaaS事業のARR |
| Sansan株式会社 | 約538億円(2026年5月期) | 約500億円(2026年5月末) | 決算説明資料に記載。定義は同資料の注記による |
ARRは「期末時点の継続収益を年額に換算した値」、売上高は「その期間に実際に計上された金額」で、算出方法も企業ごとに決められています。他社のARRと並べて優劣を判断するのは避け、元の資料で定義を確認しましょう。
【年収】SaaS企業の年収ランキングの読み方|有価証券報告書の平均年間給与
SaaS企業の年収ランキングの多くは、有価証券報告書の「従業員の状況」にある平均年間給与を並べたものです。この数字は賞与と基準外賃金を含み、職種や年齢の構成に左右されます。
「従業員の状況」の表には、平均年間給与のほかに平均年齢と平均勤続年数も載っています。多くの有価証券報告書では、表の注記に「平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります」のように含まれる給与の範囲が書かれており、月給を12倍した金額とは限りません。残業代などの基準外賃金も含まれます。
年収の金額は決算期ごとに更新されるため、集計した年度で順位が入れ替わります。検索上位のランキング記事の中には、年収の数値の年度を「2022年度データ」と注記しているものもありました(2026年10月15日確認)。本記事では金額の一覧は載せず、最新の数字を自分で確かめる手順と、読み方を示します。
| 年収に影響する要素 | ランキングへの影響 |
|---|---|
| 従業員数 | 従業員が少ない企業は、少数の高年収者によって平均が大きく動きやすい |
| 職種の構成 | エンジニアや法人営業の比率が高いと平均は上がりやすく、サポート職の比率が高いと下がりやすい |
| 平均年齢 | 若手中心の成長企業は、同じ給与水準でも平均が低く出る場合がある |
| 集計対象 | 持株会社の場合、グループ会社の従業員が含まれず実態と異なることがある |
有価証券報告書で平均年間給与を確かめる手順
- 金融庁のEDINETで企業名を検索し、最新の有価証券報告書を開く
- 「従業員の状況」の表で、平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数を並べて確認する
- 表の注記で、賞与や基準外賃金を含むかどうか、対象が提出会社単体かを確認する
- 複数の企業を比べるときは、決算期をそろえ、平均年齢と職種の構成が大きく違わないかを見る
- 転職の判断材料にする場合は、希望する職種の募集条件や評価制度を企業の採用情報で個別に確認する
SaaS企業の主な職種には、開発エンジニア、プロダクトマネージャー、インサイドセールス、フィールドセールス、導入後の活用を支援するカスタマーサクセスなどがあります。職種別の見方や未経験からの入り方は、SaaS業界への転職ガイドで解説しています。
【ユーザー評価】利用者のレビューで見るSaaS製品ランキング
ユーザー評価のSaaS製品ランキングは、企業の売上高ランキングとは別物です。レビューサイトITreviewの「The Best Software in Japan 2026」では、Chatworkが総合1位でした。
| 順位 | 製品(提供元) | 総合得点 | 昨年の順位 |
|---|---|---|---|
| 1 | Chatwork(株式会社kubell) | 70.2 | 20位 |
| 2 | 弥生給与 Next(弥生株式会社) | 67.4 | 23位 |
| 3 | Slack(株式会社セールスフォース・ジャパン) | 66.8 | 5位 |
| 4 | ChatGPT(Open AI, Inc.) | 64.6 | 10位 |
| 5 | Canva(Canva Japan株式会社) | 62.7 | 16位 |
これはITreviewが発表したTOP10のうち上位5製品で、同じ発表の9位には弥生会計が入っています。対象期間は2025年4月から2026年3月で、TOP100製品を選ぶ評価には、レビュー数、満足度、認知度、使いやすさ、サポート品質などが使われています。2026年は「AI活用による業務実行度」や「比較ページのトラフィック数」といった指標が相対的に強化され、採点基準が昨年と異なるため、昨年の順位とは単純に比べられません。
上位5製品の提供元に、本記事で売上高を比べた8社は入っていません。企業の規模を並べたランキングと、製品の使われ方を並べたランキングは、見ているものが違うということです。自社で使うSaaSを探す目的であれば、企業の業績よりも、利用者の評価や無料トライアルでの使い勝手のほうが判断材料になります。企業ランキングとサービスランキングの違いは、SaaS業界ランキングの正しい見方で詳しく整理しています。
SaaSランキングを読み違えないための3つのポイント
ランキングを読むときは、「決算期と集計時点」「数字の出どころ」「SaaS以外の事業の混在」の3点を確認します。
ポイント1|決算期と集計時点がそろっているか
本記事の8社の決算期末は、2025年11月から2026年7月まで最大8か月ずれています。更新時期の違いも順位に影響します。2026年10月15日に確認した検索上位の記事の中には、エス・エム・エスの売上高を約609億円と載せているものがありました。これは2025年3月期の連結売上高(609億5,200万円)にあたる数字で、2026年3月期は約647億円です。数値の横にある決算期や集計日を必ず確認しましょう。
ポイント2|公的な資料か、第三者サイトの掲載値か
有価証券報告書や決算短信は、企業が法令や取引所の規則に基づいて開示する資料で、総務省の統計は国が実施する調査です。一方、時価総額のように株価で決まる数字は、掲載する第三者サイトによって値が違います。本記事の8社を、IRBANK(2026年10月14日)とストレイナー(2026年10月15日確認)の掲載値で比べると次のとおりです。
| 企業 | IRBANKの時価総額 | ストレイナーの時価総額 |
|---|---|---|
| オービックビジネスコンサルタント | 約6,718億円 | 約6,120億円 |
| ラクス | 約4,008億円 | 約3,611億円 |
| ビジョナル | 約3,916億円 | 約3,499億円 |
| マネーフォワード | 約3,610億円 | 約3,297億円 |
| Sansan | 約2,442億円 | 約2,653億円 |
| エス・エム・エス | 約2,404億円 | 約2,273億円 |
| フリー | 約2,125億円 | 約2,058億円 |
| サイボウズ | 約1,654億円 | 約1,555億円 |
金額は最大で1割強の差がありますが、8社の順位は同じでした。集計日が1日違うため、差の一部は株価の動きによるものと考えられます。掲載ページからは計算方法の違いまでは確認できませんでした。数字を使うときは、どのサイトの、いつの値かを書き添えるのが安全です。
ポイント3|SaaS以外の事業が含まれていないか
売上高ランキングに並ぶ企業の多くは、複数の事業を手がけています。決算短信と決算説明資料で上位3社の内訳を確認すると、次のとおりです。
| 企業 | 売上高 | 内訳(決算資料で確認できる区分) |
|---|---|---|
| ビジョナル株式会社(2026年7月期) | 約993億円 | BizReach事業 約801億円(約81%)、HRMOS事業 約93億円(約9%)、その他 約99億円 |
| 株式会社エス・エム・エス(2026年3月期) | 約647億円 | キャリア分野(介護キャリア・医療キャリア。人材紹介など) 約383億円(約59%)、介護・障害福祉事業者分野(「カイポケ」など) 約137億円(約21%)、海外分野 約89億円(約14%)、事業開発分野 約39億円(約6%) |
| 株式会社ラクス(2026年3月期) | 約603億円 | クラウド事業 約518億円(約86%)、IT人材事業 約85億円(約14%)。IT人材事業は2026年4月に全株式の譲渡が完了し、2027年3月期は連結対象外 |
どの事業を「SaaSの売上」とみなすかは、決算資料の区分だけでは決められません。有価証券報告書のセグメント情報で事業ごとの売上の内訳を確認し、並べ替えた場合の順位は別に考える必要があります。順位が食い違う理由は、SaaSランキングの見方で5つに分けて解説しています。
| よくある読み違い | 正しい読み方 |
|---|---|
| 売上高1位の企業が最も優れたSaaS企業である | 売上高は規模を示すだけで、成長性や収益性、製品の使いやすさとは別の指標 |
| 時価総額の順位は売上高の順位と同じになる | 時価総額は市場の評価で、本記事の8社でも売上高の順位とは一致しなかった |
| 平均年収が高い企業なら誰でも高年収になる | 平均値は職種構成や平均年齢に左右されるため、職種別の条件確認が必要 |
| 記事ごとに順位が違うのはどれかが間違っている | 集計日、決算期、対象企業の範囲が異なれば順位も変わる |
【統計】公的統計と調査会社の推計で見る日本のSaaS市場
日本のSaaS市場の広がりは、総務省の調査で企業の83.5%がクラウドサービスを利用し、富士キメラ総研の推計ではSaaS/PaaS市場が2026年度に2兆6,072億円になる見込み、という数字で確認できます。
総務省の調査で見るクラウド利用の広がり
総務省の「通信利用動向調査」(令和7年、2026年5月29日公表)は、令和7年8月末時点の企業の利用状況を調べたものです。対象は常用雇用者100人以上の企業で、有効回収は2,489企業でした。クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%、全社的に利用している企業の割合は60.0%で、前年から6.9ポイント増えています。
| 調査年 | クラウドサービスを一部でも利用 | 全社的に利用 |
|---|---|---|
| 令和3年(2021年) | 70.4% | 42.7% |
| 令和4年(2022年) | 72.2% | 44.9% |
| 令和5年(2023年) | 77.7% | 50.6% |
| 令和6年(2024年) | 80.6% | 53.1% |
| 令和7年(2025年) | 83.5% | 60.0% |
クラウドサービス利用企業が利用している内容(複数回答)は、「ファイル保管・データ共有」が73.3%で最も高く、「社内情報共有・ポータル」(61.4%)、「電子メール」(57.4%)、「給与、財務会計、人事」(56.3%)、「スケジュール共有」(53.6%)と続きます。「給与、財務会計、人事」は前年の52.1%から増えました。クラウドサービスの効果については、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と答えた企業が89.4%でした。なお、この調査は常用雇用者100人未満の企業を対象にしていないため、小規模な会社の利用状況は含まれません。
調査会社の推計で見る市場規模
富士キメラ総研が2026年10月1日に発表した「ソフトウェアビジネス新市場 2026年版」(第26106号)は、企業向けソフトウェア52品目の国内市場を調べたものです。2025年度の市場は3兆23億円で、2030年度は4兆4,768億円に拡大すると予測されています。
| 提供形態 | 2026年度見込 | 2030年度予測 | 2030年度の2025年度比 |
|---|---|---|---|
| SaaS/PaaS | 2兆6,072億円 | 3兆7,357億円 | 166.2% |
| パッケージ | 7,583億円 | 7,411億円 | 98.2% |
| 合計 | 3兆3,655億円 | 4兆4,768億円 | 149.1% |
この表から計算すると、SaaS/PaaSが市場全体に占める割合は2026年度見込で約77%、2030年度予測で約83%で、同社も2030年度には「8割強」になると予想しています。注意したいのは、これが企業向けソフトウェア52品目の推計であり、本記事で並べたSaaS企業の売上高の合計ではないことです。調査の年版ごとに対象の品目数と予測の年度も違います。検索上位の記事で目にする3兆3,975億円(2029年度)は前年版(2025年9月発表、53品目)の予測で、今回の数字とは並べて比べられません。
今後のランキングを左右する3つの動き
同じ発表では、市場の変化として次の3点が挙げられています。いずれも将来の順位を約束するものではありませんが、ランキングを時系列で見比べるときの手がかりになります。
| 動き | 発表の内容 | ランキングを見るときの視点 |
|---|---|---|
| AI機能の搭載による高付加価値化 | 生成AIやAIエージェントの機能搭載が進み、製品の値上げが予想される | 顧客単価の変化でARRや売上高が動くため、指標の定義が変わっていないか確認する |
| バックオフィス領域の刷新 | ERP、財務・会計などの基幹システムの刷新が増え、経費・給与・人事管理も伸びている | ランキング上位にバックオフィス系の企業が多い理由として、需要の中心を確認する |
| BPaaSの広がり | クラウドやAIを活用して業務プロセス全体をサービス提供するBPaaSのベンダーが増えている(主にバックオフィス/コーポレート領域) | ソフトウェアの利用料以外の売上が含まれることがあるため、売上の内訳を確認する |
この中でバックオフィス領域は、財務・会計の刷新が増えていると発表されている分野で、総務省の調査でも「給与、財務会計、人事」はクラウド利用の用途の上位に入っています。会計業務のクラウド化は多くの企業ですでに進んでいる領域であり、自社の数字を月次で確認する仕組みを見直す動機になりえます。
ランキングの数字を自社に当てはめる|月次で確認したい数字とセルフチェック
ランキングの数字を自社に生かす前提は、自社の売上と利益を月次で確認できていることです。自社でも毎月計算できるのは、売上の前年同月比と営業利益率です。
| 確認したい数字 | 自社での出し方 | 本記事の8社の幅(参考) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 売上の前年比 | 当月(または当期)の売上高を前年同月(前年同期)と比べる | +6.2%から+27.6% | 上場企業と自社では規模が違うため、目標値ではなく物差しの幅として見る |
| 営業利益率 | 営業利益を売上高で割る。月次の試算表の損益計算書から計算できる | -5.3%から45.9% | 月次で計上していない費用があると、決算後の数字と食い違うことがある |
| 解約率・売上継続率 | 契約データから計算する(自社がサブスクリプション型の事業をしている場合) | 公表している企業と、していない企業がある | 会計データだけでは出せず、契約管理の仕組みが別に必要 |
これらを毎月、早く確認するには、日々の取引が会計データに正確に反映されていることが前提です。次のセルフチェックで、自社の月次の数字の確認の仕方を点検してみましょう。
自社の月次の数字、すぐに確認できていますか?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本のSaaS企業ランキングで、売上高が大きいのはどこですか?
A. 本記事で比べた国内上場8社では、直近通期の売上高が最も大きいのはビジョナル(2026年7月期、約993億円)で、エス・エム・エス(2026年3月期、約647億円)、ラクス(同、約603億円)が続きます。ただし、どの事業をSaaSの売上とみなすかで順位は変わります。
Q2. 日本で有名なSaaS企業・サービスにはどこがありますか?
A. 基準によって異なります。売上高で見た本記事の8社は、ビジョナル、エス・エム・エス、ラクス、Sansan、オービックビジネスコンサルタント、マネーフォワード、フリー、サイボウズです。利用者のレビューで見ると、ITreviewの「The Best Software in Japan 2026」ではChatwork、弥生給与 Next、Slack、ChatGPT、Canvaが上位5製品でした。
Q3. 日本のSaaS企業の時価総額ランキングはどうなっていますか?
A. 本記事の8社をIRBANK掲載の2026年10月14日の値で並べると、オービックビジネスコンサルタント(約6,718億円)、ラクス(約4,008億円)、ビジョナル(約3,916億円)の順で、売上高の順位とは異なります。時価総額は株価で日々変わり、掲載サイトによっても値が違います。
Q4. SaaS市場の統計は何を見ればよいですか?
A. 利用の広がりは総務省の通信利用動向調査(令和7年は企業の83.5%がクラウドサービスを利用)、市場規模は富士キメラ総研の推計(SaaS/PaaS市場は2026年度見込で2兆6,072億円)で確認できます。前者は常用雇用者100人以上の企業が対象、後者は企業向けソフトウェア52品目の推計です。
Q5. SaaSランキングは記事によって順位が違うのはなぜですか?
A. 集計した日、決算期、対象とする企業の範囲、使った指標が記事ごとに異なるためです。たとえばエス・エム・エスの売上高は、2025年3月期の約609億円から2026年3月期は約647億円に変わっており、どちらの期を載せるかで見え方が変わります。数字はEDINETや各社IRページの決算資料で確認できます。
Q6. SaaSランキングを自社の経営に生かすには何から始めればよいですか?
A. 他社の数字と比べる前に、自社の売上や利益を月次で確認できる状態をつくることが先決です。仕訳データからレポートを作成できる会計ソフトを使うと、数字の推移を確認しやすくなります。一例として、マネーフォワード クラウド会計は決算書やキャッシュフローレポート、収益レポートを自動で作成できます。
まとめ
日本のSaaSランキングは、売上高・時価総額・年収・ユーザー評価のどの切り口で見るかによって顔ぶれが大きく変わります。押さえておきたい行動は次の5つです。
- ランキングは、どの指標か、決算期や集計時点はいつかを確認してから読む
- 売上高と時価総額は順位が入れ替わるため、前期比や営業利益率など複数の指標を並べて見る
- 数字は決算短信・有価証券報告書・総務省の統計など一次情報で確かめ、第三者サイトの値は日付と出どころを確認する
- 年収や製品の評価は、職種構成や評価の基準を確かめ、転職・投資・製品選びなど自分の目的に合う指標を選ぶ
- 自社の経営に生かすなら、売上の前年比と営業利益率を月次で確認できる状態をつくり、必要に応じて会計ソフトの導入を検討する
ランキングは業界を知る入り口として便利な一覧です。順位そのものより、その裏にある決算期や定義を読み解くことで、転職、投資研究、自社の経営のいずれにも役立つ情報になります。
参考文献
- 総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(2026年5月29日公表) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/260529_1.pdf
- 総務省「通信利用動向調査」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
- 株式会社富士キメラ総研「『ソフトウェアビジネス新市場 2026年版』まとまる(2026/10/1発表 第26106号)」 https://www.fcr.co.jp/pr/26106.htm
- IRBANK(各社の株式情報・時価総額) https://irbank.net/
- ストレイナー「SaaS関連銘柄 売上高ランキング」 https://strainer.jp/tags/saas
- ITreview「The Best Software in Japan 2026」 https://www.itreview.jp/labo/archives/23706
- 金融庁「EDINET」 https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/
- 株式会社エス・エム・エス「2026年3月期 決算短信」 https://www.bm-sms.co.jp/wp-content/uploads/2026/04/FY25_tanshin.pdf
- 株式会社ラクス「2026年3月期 決算説明資料」(日本取引所グループ掲載) https://www2.jpx.co.jp/disc/39230/140120260514532412.pdf
- Sansan株式会社「2026年5月期 決算短信」 https://data.swcms.net/file/corp-sansan-ir/dam/jcr:11e809c9-01a3-43d2-91b6-641802080ac9/140120260713592192.pdf
- Sansan株式会社「2026年5月期 通期 決算説明資料」 https://data.swcms.net/file/corp-sansan-ir/dam/jcr:e3811c8d-1eeb-4dfb-adf5-d5c2dcc45991/140120260713592190.pdf
- 株式会社オービックビジネスコンサルタント「2026年3月期 決算説明会資料」 https://webcast.net-ir.ne.jp/47332604/3aaCDX2W9k/slide.pdf
- 株式会社マネーフォワード「決算短信」(2025年11月期を掲載) https://corp.moneyforward.com/ir/library/result/
- フリー株式会社「2026年6月期 決算短信」(Yahoo!ファイナンス掲載の適時開示) https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260813/20260813519620.pdf
- サイボウズ株式会社「2025年12月期 決算短信」 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS91804/511f1320/78fc/4fc2/ace0/14f611757641/140120260210553874.pdf
- ビジョナル株式会社「IRライブラリー」(2026年7月期 決算短信を掲載) https://www.visional.inc/ja/ir/library.html
- 株式会社マネーフォワード「株式会社はためき 導入事例」 https://biz.moneyforward.com/case/13451/
