顛末書の書き方|5ステップと例文、始末書との違い・再発防止策の書き方

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  • 顛末書は経緯と再発防止策を報告する文書
  • 事実を5W1Hで書く5ステップと例文
  • 再発防止策は4要素で書き規程へ反映

顛末書(てんまつしょ)の書き方は、発生日時・場所、概要、被害の状況、対応、原因、再発防止策の6項目を、5W1Hで時系列の事実だけに絞って書くのが基本です。始末書が反省と謝罪を示す文書であるのに対し、顛末書は経緯と再発防止策を報告する文書で、それ自体は懲戒処分ではありません。この記事では、顛末書とは何かから、始末書との違い、提出のタイミングと宛先、5ステップの書き方、記書き型と文章型の例文、社内向けと社外向けの書き分け、身に覚えがないときの書き方までを順に整理します。あわせて、書いて終わりにしないために、再発防止策を社内の規程・マニュアルに反映する方法と、社外向けの文面や処分の判断で法務の確認を受ける方法も紹介します。

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目次

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  1. 顛末書とは|意味・読み方と、書いたあとに必要なこと
  2. 顛末書と始末書・報告書の違い|どちらが重いのか
  3. 顛末書を書く場面と、提出のタイミング・宛先・提出方法
  4. 顛末書の書き方【5ステップ】
  5. 記書き型・文章型の使い分けとテンプレート
  6. 原因と再発防止策の書き方|直接原因と背景原因を分ける
  7. 社内向けと社外向けの書き分け
  8. 顛末書でよくある失敗パターン
  9. 顛末書作成時の注意点|作成者と客観性
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ
  12. 参考文献

顛末書とは|意味・読み方と、書いたあとに必要なこと

顛末書とは、業務上のミスやトラブル、事故が起きたときに、発生から対応完了までの経緯と原因、再発防止策を会社や取引先に報告する文書です。

「顛末」は物事の始めから終わりまでの経緯を意味し、顛末書は「てんまつしょ」と読みます。「ことの顛末」のように日常でも使われる言葉で、「てん末書」と書かれることもありますが、同じ文書を指します。会社によっては事故報告書や経緯書と呼ぶこともあります。

顛末書の目的は、起きたことを記録することだけではなく、同じトラブルを繰り返さないことにあります。そのため、顛末書を出したあとにも、会社には2つの仕事が残ります。1つは、顛末書に書いた再発防止策を担当者の注意に任せず、社内の規程やマニュアルに反映して運用に載せること。もう1つは、社外向けの文面や、処分・ハラスメントの判断など、誤ると後の協議や労務トラブルに響く場面で、法務の確認を受けることです。

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どちらも、顛末書を書く前に必要になるものではありません。書き方そのものは次の見出し以降で順に押さえ、再発防止の運用や法務の確認で負担を感じたときの選択肢として見てください。

顛末書と始末書・報告書の違い|どちらが重いのか

顛末書は経緯・原因・再発防止策を報告する文書、始末書は反省と謝罪を示す文書です。目的が異なるため重さは単純に比べられませんが、懲戒処分と結びつくのは始末書です。

始末書は、本人の過失や規律違反について反省と謝罪の意思を示す文書で、就業規則の懲戒処分の一つである「けん責」の手続きとして提出を求められることがあります。一方、顛末書は事実の報告が目的で、それ自体は懲戒処分ではありません。また、日常業務の結果を伝える一般的な報告書とは、トラブルや不始末を対象とし、原因と再発防止策まで書く点で区別されます。

項目 顛末書 始末書 報告書
目的 トラブルの経緯・原因・再発防止策の報告 過失や違反への反省と謝罪 業務の状況や結果の共有
対象となる場面 ミス、事故、クレーム、情報漏えいなど 本人の責任が明らかな過失・規律違反 出張、会議、日次・月次の業務など
書き手の立場 当事者または管理者(第三者的な視点) 当事者本人 担当者
謝罪の要素 社内向けは最小限、社外向けは冒頭と末尾に添える 中心になる 通常は含まない
懲戒処分との関係 それ自体は処分ではない けん責などの処分に伴って求められることがある 関係しない

顛末書と始末書はどちらが重いのか

目的が違うため、どちらが重いとは言い切れません。ただし、懲戒処分として始末書の提出を求める「けん責」は、厚生労働省のモデル就業規則でも「始末書を提出させて将来を戒める」と定められており(第67条)、処分と直接結びつくのは始末書の側です。顛末書は事実を確定するための文書で、それ自体は処分ではありません。

一方で、顛末書が求められる事案が重大で、後の処分の判断や取引先との補償の協議の資料になることもあります。顛末書は軽い文書ではなく、「あとで判断の土台になる、事実の正確さが問われる文書」と捉えると、書き方の優先順位がつかみやすくなります。

実務では、まず顛末書で事実関係を確定し、その内容をもとに会社が処分の要否を判断し、必要な場合に始末書の提出を求めるという順番になることが一般的です。顛末書の段階で反省の言葉を重ねたり、処分を意識して事実をぼかしたりすると、判断の土台になる事実関係が不正確になります。なお、懲戒処分の種類や手続きは会社ごとの就業規則で定められるため、自社の規程を確認してください。

経緯報告書・反省文・謝罪文との違い

  • 経緯報告書: トラブルがまだ収束していない段階で、そこまでの経緯を知らせる文書として使われることがあります。顛末書は、収束したあとに全体をまとめる文書です。
  • 反省文: 自分の行動への反省を示す文書で、提出先は直属の上司が中心です。顛末書のように、原因分析や再発防止策を体系的に書くことは目的ではありません。
  • 謝罪文: 取引先など相手に向けてお詫びを伝える文書です。社外向けの顛末書には、冒頭と末尾にお詫びの文が入るため、謝罪文の要素を含みます。

呼び方や使い分けは会社によって異なります。社内に指定の書式や用語があれば、それに合わせてください。

顛末書の法的な位置づけと、提出を求められたとき

顛末書は、法律で提出が義務づけられた書類ではありません。会社が業務上の必要から、事案の報告として提出を求めるのが一般的で、就業規則や社内規程に提出の定めを置いている会社もあります。提出を求められたら、まず就業規則や社内規程に定めがあるかを確認してください。

提出を拒んだ場合に、業務命令違反として扱われるか、どのような処分になるかは、就業規則の規定と事案の内容によって判断が分かれるため、一概には言えません。判断に迷う場合は、会社の人事・法務部門や、社会保険労務士・弁護士などの専門家に確認してください。本記事は一般的な情報の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

顛末書を書く場面と、提出のタイミング・宛先・提出方法

顛末書は、トラブルが収束したあと、できるだけ早く、会社が定める提出先(多くは直属の上司や部門長)に出します。

顛末書が求められる主な場面

どの事案で顛末書を求めるかは会社ごとに基準が異なります。よくある場面と、それぞれで特に厚く書きたい項目は次のとおりです。

場面 具体例 特に厚く書きたい項目
納品・出荷のミス 誤出荷、数量違い、納期遅延 影響を受けた取引先と数量、実施した代替対応
事務処理のミス 振込金額や口座の誤り、発注漏れ、請求書の誤送付 金額、訂正の経緯、確認手順で抜けていた点
情報の取り扱い メールの誤送信、書類や端末の紛失 対象の情報の種類と件数、回収・削除の状況
業務中の事故 社用車の事故、取引先の構内での事故 日時・場所、負傷者と物損の状況、警察・保険への連絡
備品・設備の紛失や破損 貸与備品の紛失、機器の破損 損失の範囲、発見の経緯、保管ルール
サービス障害・クレーム システム障害、顧客からの苦情 影響を受けた範囲と期間、復旧とお詫びの対応
重大なコンプライアンス違反 不正、ハラスメント、法令違反の疑い 確認できた事実の範囲(確定していない事項は区別して書く)

基準が決まっていない会社では、被害の範囲(社外への影響の有無、金額の大きさ、個人情報の関わり)で線を引くと運用しやすくなります。

第一報・経過報告・顛末書の使い分け

トラブルの渦中では、原因も影響範囲も確定していません。すべてがそろうまで報告を待つと、上司や取引先が判断できない時間が長くなります。報告を段階に分けると、確定した事実だけをその時点で伝えられます。

段階 出すタイミング 書く内容 注意点
第一報 発覚後、できるだけ早く 何が起きたか、分かっている範囲の影響、いま取っている応急対応 原因を推測で書かない
経過報告 調査や対応が続く間、必要に応じて 判明した事実、対応の進み具合、確定時期の見込み 前回からの変更点が分かるようにする
顛末書 事態が収束したあと、できるだけ早く 経緯の全体、被害、対応、原因、再発防止策 第一報・経過報告の内容と食い違わせない

提出先と提出方法

社内向けの提出先は、直属の上司や部門長が中心で、事案が重大な場合は経営層や管理部門まで報告が上がります。提出前には、上司に内容を確認してもらいます。手書きで作成するか、パソコンで作成するかも、会社のルールによって異なります。専用の書式があれば、それを使います。

メールに添付して提出する場合は、個人情報や取引先の情報が含まれることが多いため、パスワード付きのファイルや共有リンクにするなど、社内の情報管理ルールに従ってください。メールでの提出を禁止している会社もあるため、事前に提出先と方法を確認しておくと安心です。

顛末書の書き方【5ステップ】

顛末書は、いきなり文章を書き始めるより、材料を集めてから項目を埋めていく方が早く正確に仕上がります。次の5ステップで進めると、記載漏れや事実誤認を防ぎやすくなります。

ステップ1. 事実関係を時系列で書き出す

最初に、トラブルの発生から現在までの出来事を、時刻付きで箇条書きにします。「10時15分 A社から納品数量が違うと電話」「10時40分 倉庫で在庫と出荷記録を照合」のように、誰が何をしたかを一行ずつ並べます。記憶だけに頼らず、メールの送受信履歴、システムの操作ログ、電話の記録、関係者のメモなど、日時が確認できる資料を手元にそろえてから書くと正確になります。第一報や経過報告を出している場合は、その内容と食い違わないかも照合します。記憶があいまいな点は推測で埋めず、「確認中」と明記しておきます。

ステップ2. 被害と影響の範囲を確定する

次に、トラブルによって何が起きたかを数値で整理します。誤出荷なら件数と数量、納期遅延なら遅れた日数と影響を受けた取引先の数、情報漏えいの疑いなら対象となる情報の種類と件数です。金銭的な損害が出ている場合や、今後発生する見込みがある場合は、その範囲も記載します。影響範囲がまだ確定していない場合は、確定している部分と調査中の部分を分けて書き、確定時期の見込みを添えると、読み手が次の判断をしやすくなります。

ステップ3. 実施した対応を整理する

トラブル発生後に行った応急処置と、その結果を記載します。「正しい商品を同日中に再発送した」「取引先へ担当者と課長が訪問して経緯を説明した」など、実施した日時と担当者を添えて書きます。対応が完了していないものは、残っている対応と完了予定日を明記します。この項目は、被害を最小限にとどめるためにどう動いたかを示す部分であり、社外向けの顛末書では特に重視されます。

ステップ4. 原因を分析する

原因は、顛末書の中で最も書き方に差が出る部分です。「担当者の確認不足」と書くだけでは、なぜ確認できなかったのかが分からず、再発防止策も「確認を徹底する」で止まってしまいます。ミスを引き起こした直接の原因に加えて、そのミスを防げなかった手順や体制の問題まで掘り下げることが重要です。具体的な分け方は、後述の「原因と再発防止策の書き方」で詳しく説明します。

ステップ5. 再発防止策を決めて清書する

原因ごとに再発防止策を対応させ、誰が、いつまでに、何を変えるのか、効果をどう確認するのかを決めます。そのうえで、日付、宛名、提出者、件名を加えて体裁を整え、上司の確認を受けて提出します。提出前には、時系列の日時が資料と一致しているか、原因と再発防止策が一対一で対応しているか、感情的な表現や言い訳が混ざっていないかを読み返します。分量は、軽微な事案ならA4用紙1枚程度、社外に影響が及ぶ事案でも要点を絞って2枚から3枚程度に収めると読みやすくなります。

身に覚えがない・事実が確認できないときの書き方

顛末書の提出を求められたものの、自分の認識では身に覚えがない、あるいは事実関係に争いがあるケースもあります。この場合も、顛末書は事実を報告する文書なので、次の点を守って書きます。

  • 自分の記憶と、メール・ログ・記録などの資料で確認できる事実だけを書く。
  • 記録と自分の認識が異なる点は、「記録上はA、当事者の認識はB」のように並べて書き、どちらかに寄せて断定しない。
  • 自分が関与していない事実を、認めたと読める表現(「私の過失です」など)で書かない。お詫びの言葉は、事実の欄に混ぜず、冒頭か末尾にとどめる。
  • 原因が特定できないときは、原因を断定せず「調査中」と書き、確認の方法と期限を再発防止の欄に記載する。

提出前に、上司や人事に事実関係の確認がまだ必要かどうかを相談してください。処分や責任の問題に発展しそうな場合は、就業規則を確認したうえで、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談する方法もあります。本記事は一般的な書き方の解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

ここまでの手順を、自社の運用に当てはめて確認してみましょう。

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記書き型・文章型の使い分けとテンプレート

顛末書の書式には、項目ごとに箇条書きで整理する記書き型と、経緯を段落で説明する文章型の2つがあります。社内で決まった書式があればそれに従い、ない場合は事案の性質で選びます。

形式 向いている場面 メリット 注意点
記書き型 社内向け、定型的なミス、事案が単純なもの 項目の漏れが起きにくく、読み手が要点を拾いやすい 経緯の因果関係が伝わりにくいことがある
文章型 社外向け、関係者が多い事案、経緯が複雑なもの 出来事のつながりや判断の理由を説明しやすい 長くなりやすく、要点が埋もれないよう見出しが必要

迷った場合は、冒頭に記書き型で6項目の要約を置き、必要な部分だけ文章で補足する組み合わせが実用的です。読み手はまず要約で全体像をつかみ、詳細が必要な箇所だけを読めます。

記書き型のテンプレートと記入例(社内向け)

社内向けの記書き型は、次の構成で作成します。記入例は、取引先への誤出荷を想定したものです。

記載欄 記入例
提出日・宛名・提出者 20XX年X月X日、営業部長 殿、営業部 第二課 氏名(押印または署名)
件名 A社向け商品誤出荷に関する顛末書
発生日時・場所 20XX年X月X日 出荷分、本社倉庫
概要 A社から受注した商品Bを出荷すべきところ、型番の近い商品Cを出荷した
被害の状況 A社の製造ラインで部品の投入が約半日遅れた。金銭的な補償の要否は協議中
対応 同日中に商品Bを再出荷し、翌日に担当者と課長がA社を訪問して経緯を説明した。誤出荷分は回収済み
原因 直接原因は、ピッキング時に型番の末尾を目視で照合したこと。背景原因は、型番の近い商品が隣接する棚に置かれ、出荷前の照合がダブルチェックになっていなかったこと
再発防止策 倉庫担当者が今月末までに型番の近い商品の棚を離して配置する。出荷前照合をバーコード読み取りに切り替え、来月から課長が週次で照合エラー件数を確認する

文章型の例文(社外向け)

社外向けの文章型では、冒頭にお詫びを述べ、経緯、原因、再発防止策の順に段落を分け、末尾でもう一度お詫びと今後の姿勢を述べる構成が一般的です。上記と同じ事案を文章型で書くと、次のようになります。

このたびは、X月X日にお届けした商品に誤りがあり、貴社の製造工程に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。本件の経緯と原因、再発防止策について、下記のとおりご報告いたします。

X月X日、弊社倉庫より貴社宛てに商品Bを出荷すべきところ、型番の近い商品Cを出荷いたしました。同日午前に貴社よりご連絡をいただき、同日中に商品Bを再出荷するとともに、誤出荷分を回収いたしました。

原因は、ピッキング時の照合を目視のみで行っていたこと、型番の近い商品を隣接して保管していたことにあります。再発防止のため、今月末までに保管棚の配置を見直し、出荷前の照合をバーコード読み取りによる確認に切り替えます。

今後はこのような事態を繰り返さぬよう、全社で再発防止に努めてまいります。重ねてお詫び申し上げます。

社内で書式を統一する場合は、上記の記載欄をそのままテンプレートとして表計算ソフトや文書作成ソフトで作成し、共有フォルダや社内ポータルに置いておくと、担当者ごとの書きぶりのばらつきを抑えられます。

原因と再発防止策の書き方|直接原因と背景原因を分ける

多くの顛末書が「確認不足が原因でした。今後は確認を徹底します」で終わってしまいます。これでは読み手は、次に同じ状況になったとき何が変わっているのかを判断できません。再発防止策に説得力を持たせるには、原因を2層に分けて書くことが効果的です。

原因の層 考える問い 記載例 対応する再発防止策の例
直接原因 トラブルを引き起こした行為や出来事は何か 送信先のメールアドレスを入力候補から誤って選択した 社外宛てメールの送信前に宛先確認画面を表示する設定にする
背景原因 なぜその行為を防げなかったのか(手順・環境・体制) 個人情報を含むファイルを暗号化せずに添付する運用が部内で慣習化していた 個人情報を含むファイルは共有リンクで送付するルールに変更し、部内研修で周知する

背景原因を探るには、「なぜ」を数回繰り返す方法が使えます。「なぜ誤った宛先を選んだのか」「似た名前の宛先が候補に出たから」「なぜ確認せずに送信できたのか」「送信前の確認手順がなかったから」と進めると、個人の注意力ではなく、手順や環境の問題にたどり着きます。ただし、掘り下げの途中で特定の個人の性格や能力を原因として書くことは避けます。個人を責める書き方になると、次にミスが起きたときに報告が遅れたり、事実が隠されたりする原因になるためです。

再発防止策は、次の4つの要素がそろっているかで点検します。

  1. 何を変えるか:手順、設定、配置、ルールなど、変更の対象が具体的に書かれている。
  2. 誰が行うか:担当者または担当部署が明記されている。
  3. いつまでに行うか:実施期限が日付で示されている。
  4. どう確認するか:効果を確かめる方法と時期(件数の集計、定期点検など)が決まっている。

「注意する」「意識を高める」「徹底する」といった言葉は、4つの要素のどれにも当たらないため、再発防止策としては弱くなります。どうしても意識づけが必要な場合も、「来月の部会で事例を共有し、チェックリストを配布する」のように行動に置き換えて書きます。また、再発防止策は多ければよいわけではありません。実行できない対策を並べるより、確実に実施できる少数の対策に絞り、実施状況を後から確認できるようにする方が効果的です。

同じトラブルが繰り返されるとき|問題を早く把握する仕組み

同じようなトラブルが別の部署や別の担当者で繰り返される場合は、個別の顛末書だけでは限界があります。顛末書は問題が表に出てから作られる文書のため、ミスや不正を言い出しにくい職場では、問題が現場で隠れている間は作成されません。報告しにくい問題を早い段階で拾い上げる仕組みの一つが、内部通報制度です。

公益通報者保護法では、事業者は公益通報に適切に対応するための体制の整備その他の措置をとることが求められ、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については努力義務とされています(出典:https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000122)。窓口の運営は、社内の担当者だけでなく、弁護士などの外部の専門家と連携して行う方法もあります。

再発防止策を規程・マニュアルに反映する

再発防止策は、顛末書に書いて終わりにすると、担当者が替わるうちに忘れられます。定着させるには、策の性質に応じて、次のいずれかに反映して運用に載せます。

  • 業務マニュアル・チェックリスト:手順の追加、確認項目の追加、担当の明確化。
  • 就業規則・社内規程:禁止事項、報告義務、承認ルールの追加や改訂。
  • 研修・周知:事例として共有し、同じ状況での判断を示す。

規程やマニュアルを改訂するときは、次の順で進めると抜けが出にくくなります。

  1. 再発防止策に対応する規程・マニュアルと、改訂する条項を特定する。
  2. 改訂案を作り、新旧対照表で変更点を明示する。
  3. 関係部署の確認と承認を受ける。
  4. 周知して施行日を決める。
  5. 改訂の履歴と版を残し、再発防止策の実施状況を期日に確認する。

就業規則そのものを変更する場合は、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴く必要があります(労働基準法第90条)。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を変更した場合も労働基準監督署への届出が必要です(同法第89条。出典:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。業務マニュアルなど就業規則以外の文書は、会社の改訂ルールに従います。マニュアルの作り方は、マニュアル テンプレートの選び方と作成7ステップの記事でも整理しています。

規程やマニュアルの改訂は、新旧対照表の作成や版の管理に手間がかかりやすい作業です。再発防止策を何本も規程に反映する会社ほど、この作業の負担が積み上がります。

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社内向けと社外向けの書き分け

同じ事案でも、提出先によって書き方の力点が変わります。社内向けは会社が事実関係を把握し、処分や改善策を判断するための資料で、社外向けは取引先や顧客の信頼を回復するための説明文書です。

観点 社内向け 社外向け
宛名・差出人 直属の上司や部門長宛て、差出人は当事者または所属長 取引先の代表者または担当部署宛て、差出人は会社名と責任者名
謝罪の扱い 事実報告に徹し、謝罪の言葉は最小限 冒頭と末尾にお詫びを入れる
原因の詳しさ 担当者、手順、システムまで詳しく書く 相手に関係する範囲で簡潔に書き、社内の個人名は出さない
重点を置く項目 原因分析と再発防止策の実効性 相手への影響、実施した対応、再発防止の約束
提出前の確認 上司の確認 上司に加え、必要に応じて法務部門や責任者の確認

社外向けの顛末書は、会社としての公式な説明として扱われます。補償や責任の範囲に触れる表現、事実が確定していない推測を含めると、後の協議に影響することがあります。損害賠償が問題になり得る事案や個人情報が関わる事案では、提出前に法務部門や専門家に内容を確認してもらうと安心です。本記事は一般的な書き方を解説したもので、個別の事案についての法的助言ではありません。

取引先へは、顛末書を出す前に、お詫びと状況をメールで先に伝えることもあります。メールの書き方は、謝罪メールの書き方|場面別の文例・基本構成・NG表現と送信前チェックリストの記事で整理しています。

顛末書でよくある失敗パターン

上司が顛末書を差し戻す理由は、ある程度決まっています。提出前に次の表で自己点検すると、書き直しの回数を減らせます。

失敗パターン よくある書き方 改善した書き方
反省文になっている 「深く反省しております」が何度も出てきて、経緯が分からない 謝罪は冒頭の一文にとどめ、時系列の事実を中心に書く
日時があいまい 「午前中に」「数日後に」 「X月X日 10時15分」とメールやログで確認した時刻を書く
原因が個人の注意力で止まる 「確認不足が原因です」 直接原因と、防げなかった手順・環境の背景原因を分けて書く
再発防止策が抽象的 「今後は確認を徹底します」 何を変えるか、担当、期限、確認方法の4要素で書く
推測が事実のように書かれている 「システムの不具合だと思われます」 「原因を調査中で、X日までに確定させる」と未確定であることを明記する
提出が遅い すべて確定するまで書き始めない 確定分で第一報を出し、調査結果が出たら追記して最終版にする
提出して終わりになる 再発防止策の実施状況を誰も確認しない 確認する人と期日を決め、実施後の結果を追記か報告で残す

特に見落とされやすいのが「提出が遅い」と「提出して終わりになる」パターンです。影響範囲が大きい事案ほど調査に時間がかかりますが、その間に報告がないと、上司や取引先は必要な判断ができません。確定している事実と未確定の事項を分けて早めに第一報を出し、調査の進捗に応じて版を重ねる方が、結果的に信頼を損ないにくくなります。また、顛末書に書いた再発防止策の期日が来たら、実施できたか、効果があったかを必ず確認し、結果を残してください。

顛末書作成時の注意点|作成者と客観性

顛末書は、誰が書くかによって内容の客観性が変わります。当事者本人は経緯を最もよく知っていますが、自分に不利な事実を小さく書いたり、逆に必要以上に自分を責めたりしがちです。そのため、当事者が下書きを作り、所属長や管理部門など第三者的な立場の人が事実関係を確認して仕上げる、という分担が望ましいとされます。複数の部署が関わる事案では、各部署の記録を突き合わせて食い違いがないかを確認します。

書き方の面では、次の点に注意します。

  • 5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識し、主語と日時を省略しない。
  • 「たぶん」「おそらく」などの推測は書かず、未確認の事項は「確認中」「X日までに確定予定」と書く。
  • 「つい」「うっかり」「忙しかったため」など、言い訳や感情が読み取れる表現を避ける。
  • 関係者の個人名は必要な範囲にとどめ、社外向けでは役職や部署名で表す。
  • 事案が起きたら速やかに作成に着手し、記憶や記録が新しいうちに事実を固める。

顛末書を書くと評価は下がるのか

顛末書は事実を報告する文書で、それ自体は懲戒処分ではなく、書いたことだけで評価が決まるわけではありません。ただし、人事評価は会社の評価制度で決まるため、ミスの内容や影響の大きさ、その後の対応が評価の材料になることはあります。事実を曖昧にした顛末書や、再発防止策を実行しない対応は、信頼を損なう要因になり得ます。評価への影響が気になる場合は、会社の人事評価の規程や上司に確認してください。

顛末書の提出を求める側(上司・会社)の注意点

顛末書は提出を求める側にも注意点があります。まず、顛末書は事実を報告する文書であり、それ自体に懲戒処分としての効力はありません。提出の指示は業務上の指示として行われるのが一般的ですが、事案の内容に対して必要以上に何度も書き直させる、人前で提出を強く迫る、反省や謝罪の言葉を繰り返し書かせるといった求め方は、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動として、パワーハラスメントに当たるおそれがあります。厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つの要素をすべて満たすものと説明しています(出典:https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/power-hara/)。

トラブルを防ぐには、どのような場合に顛末書を求めるのか、記載すべき項目、受け付ける基準(経緯と原因が分かるか、再発防止策に担当と期限があるか)を、社内のガイドラインや書式として事前に示しておくことが有効です。提出を拒まれた場合の扱いは会社の就業規則によって異なるため、処分を検討する前に就業規則の規定を確認し、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談してください。提出を受けた後は、再発防止策が実行されているかを期日に確認し、本人へのフォローも行います。再発防止策の実行に予算や人員が必要な場合は、企画書の書き方|6ステップで承認される構成と実務コツの記事のように、目的・効果・実施計画を整理して承認を得る方法もあります。なお、本記事の内容は一般的な情報であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

提出を求める側が、顛末書の求め方がパワーハラスメントに当たらないか、処分を検討してよい事案かといった判断に迷う場面は少なくありません。就業規則の解釈や処分の相当性は事案ごとに判断が分かれるため、社内だけで抱え込まず、弁護士や社会保険労務士などの専門家に確認できる体制を持っておくと安心です。法務担当がいない会社では、外部の法務サービスを相談先として用意する方法もあります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 顛末書とは何ですか?

A. 業務上のミスやトラブル、事故が起きたときに、発生から対応完了までの経緯、原因、再発防止策をまとめて報告する文書です。「てんまつしょ」と読み、事実を客観的に伝えることが目的です。発生日時・場所、概要、被害の状況、対応、原因、再発防止策の6項目で構成するのが基本です。

Q2. 顛末書と始末書の違いは何ですか?どちらが重いですか?

A. 顛末書はトラブルの経緯・原因・再発防止策を報告する文書で、それ自体は懲戒処分ではありません。始末書は本人の過失や規律違反について反省と謝罪を示す文書で、就業規則のけん責などの処分に伴って提出を求められることがあります。目的が異なるため単純に重さは比べられませんが、処分に結びつくのは始末書で、まず顛末書で事実を確定し、その内容をもとに処分の要否が判断されるのが一般的です。

Q3. 顛末書は誰が書きますか?

A. 当事者が作成することが多いですが、客観性を保つため、当事者が下書きを作り、所属長や管理部門など第三者的な立場の人が事実関係を確認して仕上げる形が望ましいとされます。社外向けの場合は、会社としての公式な説明になるため、責任者名で提出します。

Q4. 顛末書を書くと評価は下がりますか?

A. 顛末書は事実を報告する文書で、それ自体は懲戒処分ではなく、書いたことだけで評価が決まるわけではありません。ただし、人事評価は会社の評価制度で決まるため、ミスの内容や影響の大きさ、その後の対応が評価の材料になることはあります。事実を正確に書き、再発防止策を実行することが、信頼を保つうえで大切です。気になる場合は、会社の人事評価の規程や上司に確認してください。

Q5. 顛末書の提出は義務ですか?書かないと規則違反になりますか?

A. 顛末書は法律で提出が義務づけられた書類ではなく、会社が業務上の必要から提出を求めるものです。就業規則や社内規程に定めがある場合や、業務上の指示として提出を求められた場合に、拒んだときの扱いは規定と事案によって異なります。身に覚えがない場合も、拒むのではなく、確認できた事実と確認できない点を分けて書き、上司や人事、必要に応じて専門家に相談してください。

Q6. 再発防止策はどのように書けばよいですか?同じトラブルが繰り返される場合はどうすればよいですか?

A. 原因を直接原因と背景原因に分け、それぞれに対策を対応させます。対策には、何を変えるか、誰が行うか、いつまでに行うか、どう効果を確認するかの4要素を入れ、「確認を徹底する」のような抽象的な表現は避けます。同じトラブルが繰り返される場合は、対策を規程やマニュアルに反映して定着させ、実施状況を期日に確認するとともに、問題を早い段階で把握する仕組み(内部通報制度など)を整えることが有効です。

まとめ

顛末書は、トラブルの一部始終を客観的に記録し、再発防止につなげるための文書です。次の4点を押さえると、読み手が判断しやすい顛末書になります。

  1. 始末書と区別し、謝罪や反省ではなく、時系列の事実と被害・対応を5W1Hで正確に書く。
  2. 原因は直接原因と背景原因に分け、再発防止策は何を変えるか・担当・期限・確認方法の4要素で書く。
  3. 社内向けは事実報告、社外向けはお詫びと再発防止の約束に力点を置き、社外向けや処分が絡む場合は提出前に専門家の確認を受ける。
  4. 顛末書を書いて終わりにせず、再発防止策を規程・マニュアルに反映して期日に確認する。改訂や法務確認の負担が大きいときは、規程管理サービスや法務相談サービスの資料を取り寄せ、自社に合うかを比べて検討する。

参考文献

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