手書きでの年末調整のやり方|流れと手順、書類の書き方などを解説

Check!

  • 年末調整では、従業員から申告書用紙3種類と、該当者に必要な書類を提出してもらう
  • 年末調整を手書きで行う場合、記入には黒ボールペンが推奨されている
  • 手書きの年末調整書類を修正する場合は、修正テープは使わず二重線で取り消しをする

年末調整を行う際には、さまざまな書類が必要になります。本記事では、年末調整の流れと手順、そして税務署への提出が必要となる書類の手書きでの書き方や訂正方法について解説します。手書きの場合に推奨されていない筆記具などについても詳しく紹介します。

目次

開く

閉じる

  1. 年末調整は手書き申告と電子申告がある
  2. 年末調整の変更点も確認しておこう
  3. 年末調整の流れと手順
  4. 会社に提出する年末調整書類と書き方
  5. 年末調整の手書きに推奨されていない筆記具
  6. 記入事項の間違いを訂正する場合の書き方
  7. 申告書の内容に変更がある場合の書き方
  8. 年末調整書類を準備する際の注意点
  9. 年末調整を効率的に行う方法
  10. まとめ

年末調整は手書き申告と電子申告がある

年末調整とは、企業が従業員に対して1年間に支払った給与にかかる所得税額を清算する作業です。もともと従業員の毎月の給与からは、所得税が天引きされています。

ただし、この天引きは概算で行われているため、年末に改めて正しい徴収額を計算し、これまで徴収してきた所得税額と比較する必要があります。このために行うのが、年末調整です。適切な納税のためにも、年末調整によって正しい所得税額を確定することが大切です。

年末調整は、紙の書類に手書きするのが一般的でしたが、2020年10月より電子システム上での申告も可能になりました。これを受け、システム上で年末調整を行う企業が増加しています。

しかし、手書きで年末調整を行う企業もまだ多いため、本記事では手書きすることを前提に年末調整の流れや書類の書き方を解説します。

参考:年末調整手続の電子化の概要・メリット|国税庁

年末調整の対象となる人

年末調整の対象になるのは、原則として企業に勤めている方すべてです。なお、年末調整は12月に行うパターンと、年の途中に行うパターンの2種類があります。

企業が年末調整の対象者を誤ると、該当の従業員は個別に確定申告しなくてはなりません。従業員の負担を避けるためにも、企業の労務担当者は、次の2パターンに該当する従業員を確実に把握しておくことが大切です。

12月に年末調整が必要な方

正社員・非正規社員ともに、基本的には12月に年末調整を行います。より厳密には、次のような方が12月の年末調整の対象者です。

【対象者】

  1. 会社等に年間を通じて勤務している方
  2. 年の途中に就職して年末まで勤務している方(青色事業専従者も含む)

【非対称者】

  1. 1年間の給与が2,000万円以上ある方
  2. 副業があり、年末調整・確定申告を別途行う方
  3. 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年の途中に年末調整が必要な方

年の途中に年末調整が必要なのは、企業に勤務しており、かつ年の途中で退職または海外移住した方です。具体的には、次のような方が該当します。

【対象者】

  1. 海外支店等に転勤したことなどの理由により非居住者となった方
  2. 死亡によって退職した方
  3. 著しい心身の障害のために退職した方(退職した後に再就職をして給与を受け取る見込みのある方は除く)
  4. 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後、12月中に退職した方
  5. いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である方(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある方は除く)

【非対称者】

上記以外の理由で年の途中に退職した方

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年末調整の変更点も確認しておこう

年末調整は、税制の改正などによって要件が変更になることがあります。なお、2023年度の年末調整は、次の3点が変更になりました。各変更点について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族の範囲の見直し

2023年の年末調整より、扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族の範囲が変更になります。

2022年以前の非居住者の扶養親族の範囲は、原則として16歳以上の国外居住者すべてでした。しかし、2023年より扶養親族の控除が適用されるのは、国外居住者のうち16歳以上30歳未満、もしくは70歳以上の扶養親族です。

ただし、30歳以上70歳未満でも、次に該当する場合は今まで通り控除の対象となります。

  1. 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
  2. 障害者
  3. 扶養控除の適用を受けようとする居住者から、その年において、生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者

扶養親族の控除を受ける場合は、年末調整書類である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のうち、「控除対象扶養家族」の該当欄にチェックが必要です。記入漏れのないようにしましょう。

参考:令和5年1月からの 国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)|国税庁

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の追加項目

2023年の年末調整より、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、次の欄が追加されています。

  1. 退職手当等を有する配偶者・扶養親族
  2. 寡婦又はひとり親

これらが追加された背景には、住民税に関する控除の適用漏れを防ぐ狙いがあります。所得税の計算には、扶養親族の退職金が含まれますが、住民税の計算には含まれないことがあります。

このようなケースで控除の適用漏れが起こらないよう、2023年の年末調整より変更がなされています。対象の扶養親族がいる方は、該当項目の記入を忘れないように注意しましょう。

参考:令和5年分扶養控除等(異動)申告書|国税庁

住宅ローン控除区分の期間延長・変更

2023年の年末調整より、住宅ローン控除区分の期間延長・変更に対応する必要があります。具体的には、2022年から2025年までに入居した場合、控除期間・控除率・借入限度額について、次のような変更が生じています。

  1. 借入限度額:住宅性能・居住開始年別に変更
  2. 控除率:1%から0.7%へ変更
  3. 控除期間:新築住宅は13年に延長
  4. 震災再建住宅:控除率0.9%、控除期間13年に変更

さらに、住宅の性能に応じた借入限度額も設定されました。住宅の性能は細かく分類されているため、年末調整時に企業側・従業員の双方で確認することが大切です。

また、2023年の年末調整より、住宅ローン控除適用の所得要件が、1年間の合計所得額3,000万円以下から2,000万円以下へ引き下げられた点にも留意しましょう。給与以外の収入がある方は、特に注意が必要です。

参考:住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)|財務省

年末調整の流れと手順

年末調整業務は、「各種申告書の配布・回収」「年末調整の計算」「法定調書の作成・提出」の3段階に大別できます。ここでは、それぞれの業務の概要と、各業務の遂行におすすめの時期をご紹介します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

各種申告書の配布・回収

年末調整業務では、年末調整に必要な書類を従業員から提出してもらう必要があります。必要に応じ、次のような書類を配布・回収しましょう。

  1. 扶養控除等(異動)申告書
  2. 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書
  3. 保険料控除申告書・住宅借⼊⾦等特別控除申告書・親族関連書類など

各種申告書の回収は、遅くとも11月下旬までに終わらせておくのが望ましいです。次の「年末調整の計算の実施」のステップでは、回収した申告書をもとに年末調整の計算を行う必要があり、この作業には時間がかかるためです。

また、年末調整の書類は記入の仕方が複雑で、種類も多岐に渡ります。記入ミスや回収漏れなどのトラブルにゆとりをもって対処するためにも、書類の回収は11月下旬までに完了させましょう。

なお、従業員数の多い企業では、書類の配布・回収に時間がかかることが一般的です。そのため、回収完了までにかかる期間を逆算して、書類の配布時期を決める必要があります。

年末調整の計算の実施

従業員から回収した書類をもとに、年末調整の計算を行います。計算の手順は、大まかに次のようになっています。

  1. 課税所得金額の計算
  2. 年調所得税額の計算
  3. 年調年税額の計算

年末調整の計算の完了後は、その内容をもとに、従業員ごとに源泉徴収票を作成します。なお、源泉徴収票は、次の3種で構成されています。

  1. 税務署への提出用
  2. 従業員本人への交付用
  3. 市区町村へ提出する給与支払報告書(個人別明細書)用

このうち、税務署・市区町村への提出は翌年1月31日まで、そして従業員本人への交付は、12月の給与支給時に行うのが一般的です。よって、年末調整の計算と源泉徴収票の作成は、12月下旬を目途に遂行する必要があります。

法定調書の作成・提出

年末調整の計算の完了後は、その内容をもとに、行政機関に提出する法定調書の作成・提出を行います。代表的な法定調書には次のようなものがあります。それぞれ提出先が異なる点に留意しましょう。

【管轄の税務署に提出する書類】

  1. 支払調書
  2. 法定調書合計表
  3. 源泉徴収票

【市区町村に提出する書類】

  1. 給与⽀払報告書

各法定調書の提出期限は、「年末調整を行った翌年の1月31日まで」です。よって、法定調書の作成・提出は、年末調整を行った翌年の1月下旬までに遂行しなければなりません。

支払調書

支払調書は、源泉徴収義務者である企業が「誰に」「どのような内容で」「いくら支払ったのか」を申告するための書類です。

企業は従業員への給与のほかに、弁護士や税理士などへの報酬、広告宣伝費、外注費などにおいても所得税を引いた額で支払いをしています。こういった支払いに関して、支払先への年間支払いが全て終わった時点で調書を作成する必要があります。

支払先が個人の場合は、マイナンバーの記載が必要になります。また、支払調書は税務署への提出と併せて支払先にも送付するのが通例となっています。

法定調書合計票

法定調書合計票とは、税務署に提出する各種法定調書を集計した表のことです。従業員に渡した「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」、支払先に発行した「報酬、料金、契約及び賞金の支払調書」「不動産の使用料等の支払調書」などをとりまとめます。

それぞれ人員数や支払い額、源泉徴収税の各合計などを記載して、税務署に提出することになっています。

源泉徴収票

源泉徴収票は、年末調整の計算によって明らかになった年間所得額や控除額の合計、源泉徴収税額などを全て記載したもので、従業員ごとに作成します。源泉徴収票は、次の3種で構成されています。

  1. 税務署への提出用
  2. 従業員本人への交付用
  3. 市区町村へ提出する給与支払報告書(個人別明細書)用

このうち、税務署・市区町村への提出は翌年1月31日まで、そして従業員本人への交付は12月の給与支給時に行うのが一般的です。よって、年末調整の計算と源泉徴収票の作成は、12月下旬を目途に遂行する必要があります。

退職者には「退職所得の源泉徴収票」を使用する点に注意しましょう。。なお、年末調整で精算した源泉所得税の納付期限は、翌年1月10日となっています。

給与支払報告書

給与支払報告書は市区町村へ提出する書類で、従業員ごとに給与をまとめた「個人別明細書」と事業所全体の個人別明細書をまとめた「総括表」の2種類があります。

給与支払報告書は従業員の居住区となる市区町村に提出するもので、総括表では従業員の居住区ごとに分類して作成します。市区町村はこの報告書をもとに、次年度の住民税額を決定します。

個人別明細書の内容は源泉徴収票と同じで、紙の場合は下記の給与⽀払報告書とセットになった複写式もあるので、手書きする際には便利です。

会社に提出する年末調整書類と書き方

年末調整を行うために、従業員は以下の書類を会社に提出する必要があります。適用される控除によっても提出書類が異なるため、企業・従業員の双方で必要な提出書類を確認することが大切です。

なお、国税庁のHPには、各種書類の記載例をダウンロードすることもできますので、書き方がわからないという方は参考にしましょう。

参考:令和5年分 年末調整のしかた|国税庁

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

書類名受けられる控除
扶養控除等(異動)申告書・配偶者控除
・扶養控除
・障害者控除
・勤労学生控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・所得金額調整控除
保険料控除申告書・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
住宅借入金等特別控除申告書住宅借入金等特別控除

扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等(異動)申告書は、該当年の12月31日時点において、給与所得者が扶養している親族の情報を記すための書類です。

具体的には、配偶者控除・扶養控除・障害者控除・勤労学生控除・寡婦控除・ひとり親控除の6つの控除の適用可否及び扶養控除額を確認するために、必要な書類となっています。

扶養控除等(異動)申告書は、原則として、扶養親族がいない方を含めた全従業員の提出が必要です。労務担当者は、漏れのないように回収しましょう。

また、扶養控除等(異動)申告書の記載項目は、複雑かつ膨大な点にも留意しておきましょう。記入ミスをなくすためにも、従業員は、扶養親族の範囲・年間所得額を、あらかじめ正確に把握しておく必要があります。

もう1点注意すべき点として、申告書に記載する金額が挙げられます。記載する金額は、扶養親族の年収から給与所得控除(55万円)を差し引いたものです。記入ミスが起こりやすいポイントのため、書類の作成時は十分に注意しましょう。

参考:令和6年分扶養控除等(異動)申告書|国税庁

基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

基礎控除は、年間の合計所得金額が2,500万円以下の給与所得者に適用されます。一般的な企業であれば、ほぼすべての従業員が基礎控除を利用できます。よって、基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書は、全従業員の提出が必要です。

なお、基礎控除申告書に記入するのは、給与所得収入額ではなく給与所得額である点に留意しましょう。給与所得額は、国税庁のHPなどに掲載されている「給与所得の金額の計算」を参考に、従業員が各自で計算する必要があります。

給与所得者の配偶者控除は、年間の合計所得額が48万円以下等の配偶者がおり、かつ合計所得金額が1,000万円以下の従業員に対し、一定の所得控除が受けられるものです。記入する際は、従業員本人と配偶者の給与所得収入額をもとに給与所得額を計算する必要があります。

所得金額調整控除は、令和2年から適用になった控除で、給与の年間合計額が850万円以上の従業員を対象としています。23歳未満の扶養親族がいるか、従業員本人あるいは配偶者・扶養親族が特別障害者である場合に控除が受けられます。

参考:令和5年分基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書|国税庁

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

保険料控除申告書

保険料控除申告書は、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模共済等掛金控除」を受けるために必要な書類です。これらの提出が必要なのは、保険料控除の適用を希望する従業員のみです。

各控除の内容や記入のポイントなどをご紹介していきます。

参考:令和5年度保険料控除申告書|国税庁

生命保険料控除

生命保険料控除とは、年間で支払った生命保険料・介護医療保険料に応じて、控除が受けられる制度です。

生命保険料控除の申告書には、保険会社の名称・保険の種類・保険期間・契約者名など、契約した内容に関する情報を漏らさず記入する必要があります。

正確な情報を記す必要があるため、記入は保険料控除証明書や契約証を確認しながら行うのがおすすめです。保険料控除証明書は、11月~12月にかけて、契約している保険会社から送付されることが一般的です。

なお、申告した内容の証拠として、保険料控除証明書は原本を提出する必要があります。提出方法は、申告書の裏面にのり付けするのが通例です。

地震保険料控除

地震保険料控除は、火災保険に地震保険特約を付随して加入した従業員のうち、支払った保険料に応じて、控除を受けられる制度です。ただし、対象となるのは、従業員本人もしくはその本人と同一生計の親族が所持した居住用の建物・家財です。

地震保険料控除の申告書も、生命保険料控除の申告書と同様、契約内容について詳細に記す必要があります。

転記ミスが起こらないよう、地震保険料控除証明書を確認しながら記入するのがおすすめです。また、地震保険料控除証明書の原本そのものも、申告書の裏にのり付けして提出する必要があります。

社会保険料控除

社会保険料控除は、従業員またはその本人と同一生計の親族が、国民健康保険・国民年金などの社会保険料を支払っている場合に、控除を受けられる制度です。

申告書には、社会保険の種類・保険料支払先の名称・支払った保険料・保険料を支払った者の氏名などの記入が必要です。控除額を算出するには、支払った保険料を単純に合算しましょう。

なお、毎月の給与から天引きされた社会保険料については、年末調整の対象外です。記入しないように注意しましょう。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、次のような小規模企業共済等掛金を従業員本人が支払っている場合に、控除を受けられる制度です。

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金
  2. 確定拠出年金法に規定する企業型または個人型年金加入者掛金
  3. 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金

控除額の欄には、支払った掛け金を単純に合算した金額を記入します。各種の控除証明書は、他の控除と同じように、申告書の裏に貼付して提出しましょう。

住宅借入金等特別控除申告書

住宅借入金等特別控除は、住宅ローンを利用してマイホームの購入・新築・増改築をした従業員が利用できます。住宅を購入などした初年度は、従業員本人が確定申告する必要がありますが、2年目以降は年末調整で対応できます。

住宅借入金等特別控除申告書には、管轄税務署名・給与の支払者の情報・申告者の情報・住宅借入金等の年末残高や特定増改築等の費用などの記入が必要です。

正確な情報を記入するためにも、金融機関が発行する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、住宅⾦融⽀援機構が発⾏する「融資額残⾼証明書」などを確認しながら作成するのがおすすめです。なお、これら2種の証明書は、申告書と併せて原本の提出が必要です。

参考:住宅借入金等特別控除申告書|国税庁

源泉徴収票

源泉徴収票は、当該年に会社から支払われた給与額と、納付した所得税の金額を記載した書類です。企業が作成した源泉徴収票は、税務署・従業員本人・市区町村にそれぞれ提出しなければなりません。

なお、転職で中途入社した従業員は、退職した職場の源泉徴収票を転職先の企業に提出しなければなりません。中途入社の従業員は、前の職場でも給与天引きで源泉徴収されているためです。

転職先で正しい年末調整を行うには、前の職場と今の職場での源泉徴収額を合算しなければなりません。この確認のために、中途入社の従業員には、退職した職場の源泉徴収票の提出が必要です。

退職した職場の源泉徴収票は、退職後1ヶ月以内に送付されるのが一般的です。送付されない場合は、前の職場に確認しましょう。

年末調整の手書きに推奨されていない筆記具

国税庁は、年末調整の書類に手書きする際の筆記用具として、黒のボールペンを推奨しています。年末調整の関連書類は、7年間の保存義務があるためです。書類に記入した内容を7年間保存するには、文字が鮮明に残りやすい黒のボールペンが適しています。

なお、次のような筆記用具は年末調整書類の作成には好ましくないとされています。これらを利用して作成した書類は、税務署に受理されない恐れがあるため、使用を控えることが望ましいです。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

年末調整の手書きに推奨されていない筆記具

  1. 鉛筆
  2. 赤ボールペン
  3. 消えるボールペン
  4. 修正テープ

鉛筆

鉛筆で書いた文字は、時間の経過と共に薄れて読めなくなる可能性があります。さらに、消しゴムですぐに消せるため、容易に年末調整の内容を改ざんできる点も課題です。

このような理由から、鉛筆は、7年間の保存義務がある年末調整の関連書類の作成には適していません。

赤ボールペン

赤ボールペンの利用も避けるのがベターです。理由は、国税庁も「黒」のボールペンと指定しているためです。黒以外の色の使用は避けた方が良いでしょう。

また、企業によっては、年末調整の記入ミスなどがあった際に、赤ペンで修正することがあります。修正部分とそれ以外の区別を明確にするためにも、通常の作成では赤ボールペンの使用は控えるべきでしょう。

消えるボールペン

年末調整の書類に限らず、公的な書類には消えるボールペンの使用は望ましくありません。消えるボールペンのインクはささいな摩擦で消えることもあり、7年間の保存に耐えられない可能性が高いためです。

また、文字が簡単に消せる性質上、書類の改ざんが容易い点からも、消えるボールペンの使用は控えるべきです。

修正テープ

記入ミスなどを修正するためであっても、修正テープの使用は好ましくありません。理由は、修正した箇所が一見で分かりにくいためです。

公的書類を修正する際は、修正箇所及び修正の過程を分かりやすく残しておく必要があります。そのため、修正した部分をきれいに上塗りできる修正テープは公的書類には適していません。

修正テープで修正した場合、書類の改ざんを疑われる可能性があります。このようなリスクを避ける意味でも、修正テープは使用しないのがベストです。同じ理由で、修正液の利用も控えましょう。

記入事項の間違いを訂正する場合の書き方

手書きの年末調整で記入ミスなどがあった場合、訂正は次の手順で行いましょう。

  1. 訂正したい箇所に二重線を引く
  2. 二重線の上部または下部に正しい内容を書く
  3. 二重線に重なるように訂正印を押す

なお、令和3年度より、税務官庁への提出書類への押印は、訂正印を含めて原則として不要となりました。ただし、企業によっては、引続き押印を必要とする場合もあるため、押印の有無については、自社のルールに従いましょう。

また、修正箇所が膨大な場合は、全てに二重線を引くと、見づらくなってしまいます。見づらい年末調整書類は受理されない恐れがあります。このようなリスクを避けるためにも、修正箇所が多い場合は、新しい年末調整を作成し直すことが望ましいです。

参考:申告書の記載例|国税庁

参考:税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁

申告書の内容に変更がある場合の書き方

申告した年末調整の内容に変更が生じる場合もあるでしょう。たとえば、申告書の提出後に新しい子供ができ、扶養親族の人数が変動したケースが代表的です。

扶養親族の人数が変わった場合、修正が必要になる可能性があるのは、「扶養控除等(異動)申告書」と「所得金額調整控除申告書」の2種類です。

2023年の年末調整から扶養親族の範囲が見直され、16歳未満の子供については控除の対象外になりました。よって、新生児(0歳)の扶養親族が増えた場合、扶養控除についての修正は不要です。

一方、再婚などによって、16歳以上の子供が扶養親族になった場合、扶養控除等(異動)申告書には、修正が必要です。また、所得金額調整控除の修正が必要になるのは、23歳未満の扶養親族が増え、かつ、夫婦それぞれの年収が850万円以上の場合です。

いずれの申告書であっても、修正は、前項の「間違いを訂正する方法」と同じく、二重線と訂正印を利用して行います。修正液・修正テープの利用は控えましょう。

年末調整書類を準備する際の注意点

年末調整で注意すべきなのは、提出期限を厳守することです。企業として守るべき年末調整関連書類の提出期限は、翌年1月31日です。

ほとんどの企業は、この提出期限に間に合うように、社内での各書類の提出期限を定めています。企業に迷惑をかけないためにも、各従業員は社内で設定された提出期限内に必要書類を提出しましょう。

なお、年末調整の書類の提出が遅れると、企業や従業員個人に罰金などのペナルティが課される可能性があります。また、年末調整の書類を期限までに提出していない従業員は、個人で確定申告しなければなりません。

このようなリスクを避けるためにも、企業・従業員ともに、年末調整の提出期限を守ることが大切です。

年末調整を効率的に行う方法

年末調整を効率的に行うには、年末調整ソフトを導入するのもおすすめです。年末調整ソフトとは、年末調整に必要なデータの収集・計算と、年末調整関連書類の作成を電子上で完結できるツールです。

面倒な計算や書類作成も自動で実行されるため、煩雑な年末調整業務を大幅に効率化できます。また、手書きの書類を廃止することで、労務担当者・従業員ともに書類の作成・確認の負担を軽減できるでしょう。

年末調整ソフトによっては、作成した年末調整関連書類を電子上でそのまま提出することも可能です。作成から提出までを一気通貫に行えることから、多くの企業で年末調整ソフトを利用した年末調整が行われています。

年末調整ソフトのおすすめ8選|選ぶ際の比較ポイントも解説

年末調整ソフトとは、必要な計算や書類作成を自動化し、年末調整業務を効率化するものです。しかし、さまざまな製品があるため、どれを選ぶべきか迷うことも多いでしょう。この記事ではおすすめの年末調整ソフトや失敗しない選び方・比較ポイントを解説します。

まとめ

年末調整とは、企業が従業員に支払った給与をもとに、納付すべき税額を確定する作業です。年末調整の対象者は、企業に勤務する従業員すべてです。提出すべき書類は、適用される控除によって異なるため、企業・従業員双方で、提出書類を確認することが大切です。

年末調整は、紙に手書きで行うことが一般的でした。膨大な書類を手書きするのは、多くの労力と時間を費やすほか、記入漏れや計算ミスなどのヒューマンエラーのリスクがあります。
2022年10月から、電子上での年末調整が認められるようになりました。これを受け、年末調整の計算から書類の作成・送付まで一貫できる年末調整ソフトを利用する企業が増えています。面倒な年末調整業務の効率化を狙う企業は、年末調整ソフトの導入がおすすめです。

Share

top