決算賞与とは?通常賞与との違い・支給時期・損金算入の3要件と手取り
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- 決算賞与は業績に応じて臨時に支給する賞与
- 損金には通知・1か月以内の支払い・損金経理が必要
- 3月決算なら4月末までの支払いが目安
決算賞与とは、会社がその事業年度の業績をふまえて、決算期末の前後に従業員へ臨時に支給する賞与のことです。夏と冬に定例で支給する通常の賞与と違い、支給するかどうか、いくら支給するかは会社の判断で決まり、所定の要件を満たすと、支払いが翌期になっても当期の損金に算入できます。この記事では、通常の賞与との違い、支給時期の目安、金額の決まり方、手取りの計算、会社側の損金算入の3要件と注意点、経理処理と社会保険の届出までを、国税庁や日本年金機構などの公開情報をもとに順に確認します。
決算賞与の支給、何から確認する?2問で目安がわかります
Q1. 決算賞与の支給で、いま気になっているのはどちらに近いですか?
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決算賞与とは|通常の賞与との違いと呼び方
決算賞与とは、事業年度末の業績に応じて会社が臨時に支給する賞与のことです。通常の賞与とは別に、利益が出た年度に従業員へ還元する目的で支給されます。国税庁のタックスアンサーでは、賞与を、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当などの名目で支給されるものと説明しています。純益を基準として支給されるものや、あらかじめ支給額または支給基準の定めのないものも、賞与として扱われます(No.2523 賞与に対する源泉徴収)。
決算賞与は、会社によって「期末賞与」「特別賞与」「臨時賞与」「年度末賞与」などの名称で呼ばれることがあります。名称が違っても、業績に応じて臨時に支給する点が共通していれば、同じ種類の賞与として考えられます。ただし、賞与明細や求人票の名称だけでは支給条件までは分からないため、就業規則や賞与規程で確かめるのが確実です。なお、公務員の期末手当は法令に基づく別の制度で、民間企業の決算賞与とは仕組みが異なります。
通常の賞与との違い
通常の賞与との違いを、会社の運用と税務の両面で整理すると次のとおりです。
| 項目 | 決算賞与 | 通常の賞与(夏・冬など) |
|---|---|---|
| 支給時期 | 決算の見込みや結果をふまえ、決算期末の前後に支給する | 夏と冬など、あらかじめ決めた時期に支給する会社が多い |
| 支給の考え方 | その年度の業績(利益)への還元 | 賃金規程などで算定方法や支給時期を定めている会社が多い |
| 支給の有無 | 利益が出た年度に支給し、出ない年度もある | 毎年支給する会社が多い |
| 金額 | 利益や資金繰りを見て、会社が決める | 基本給や評価などをもとに決まる会社が多い |
| 税務上の主な論点 | 当期の損金にするには、通知・支払期限・損金経理の要件がある | 就業規則等で支給予定日が決まっている賞与は、その日などで損金にする時期が決まる |
どちらも、従業員に支払うときは所得税の源泉徴収と社会保険料の計算が必要になる点は同じです。違いが大きいのは、決算賞与を当期の損金にするには、支給額を決算期末までに各人へ通知する必要があるなど、決算に合わせた段取りが求められる点です。
決算賞与は期限が短い|支給事務を見直す選択肢
決算賞与は、利益の見込みが固まってから支給を決めることが多く、全員への通知、賞与の計算、支払い、賞与支払届の提出までを短い期間で進めることになります。通常の賞与のように毎年同じ時期に同じ段取りで進められるとは限らないため、給与計算ソフトを使っていない会社では、計算と届出の負担が一度に集まりやすくなります。こうした給与計算の流れをまとめて見直したい場合の一例が、freee株式会社(商号:フリー株式会社)が提供するfreee人事労務です。
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決算賞与はいつ支給される?決算月別の期限と支給時期の目安
決算賞与の支給時期は決算期末の前後で、損金にするには事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払う必要があります。3月決算なら4月末までが目安です。
決算賞与を当期の損金にする場合、通知した金額を、通知した日の属する事業年度の終了の日の翌日から1か月以内に、通知したすべての使用人へ支払う必要があります(No.5350 使用人賞与の損金算入時期)。このため、決算後すぐ、決算月の翌月末までに支払う運用になりやすくなります。決算日が月末の会社の目安は、次のとおりです。
| 決算月 | 全員への通知の期限 | 支払いの期限の目安 |
|---|---|---|
| 3月決算(事業年度の終了日が3月31日) | 3月31日まで | 4月30日まで |
| 6月決算(終了日が6月30日) | 6月30日まで | 7月31日まで |
| 9月決算(終了日が9月30日) | 9月30日まで | 10月31日まで |
| 12月決算(終了日が12月31日) | 12月31日まで | 翌年1月31日まで |
決算日が月末でない会社や、支払日が休日にあたる場合の扱いは、自社の事業年度に当てはめて顧問税理士や税務署に確認してください。振込は金融機関の営業日に左右されるため、期限の直前ではなく、余裕をもった日に設定するのが安全です。
決算前に支払いまで終えるという選択
決算日までに通知と支払いの両方を終えれば、翌期の1か月以内という期限を気にする必要はなくなります。ただし、決算前は利益が確定していないため、支給額を決めにくいという面があります。期末の利益の見込みと資金繰りを見ながら、決算前に支払うのか、決算後に支払うのかを、早めに決めておくと段取りを組みやすくなります。
従業員から見た支給日の確認方法
従業員にとっての決算賞与の支給日は、会社ごとに決まり、法令で一律に決まっているわけではありません。確認する場合は、次の書類や窓口を、上から順に当たるのが分かりやすい方法です。
- 就業規則・賞与規程(賞与の支給条件や支給時期の定めがあるか)
- 労働条件通知書・雇用契約書(入社時に受け取った書類)
- 給与明細や、支給が決まったときの社内通知
- 人事部・総務部などの担当部署
損金にする場合の期限から考えると、3月決算の会社は4月末まで、12月決算の会社は翌年1月末までに支給するのが一般的な運用ですが、支給するかどうかは会社の判断です。「去年は出たから今年も出る」とは限らない点を押さえておきましょう。
決算賞与はいくらもらえる?相場がない理由と金額の決まり方
決算賞与に決まった相場はなく、金額は会社が利益や資金繰りを見て決めます。通常の賞与のように、基本給の何か月分と決まっているとは限りません。
国税庁の説明で示されている損金算入の要件は、各人別の支給額の通知、支払期限、損金経理であり、金額の水準は要件に含まれていません(No.5350)。つまり、いくら支給するかは、税務上の要件ではなく、会社の経営判断で決まります。金額に影響する主な要素は次のとおりです。
- その年度の利益がどの程度出たか
- 従業員の人数(人数が多いほど、同じ原資でも1人あたりの額は小さくなります)
- 設備投資や新規事業など、手元に残しておきたい資金
- 全員一律にするか、役職・評価・貢献度で差をつけるか
金額の決め方の種類と注意点
| 決め方 | 内容 | 気を付ける点 |
|---|---|---|
| 全員一律 | 全員に同額を支給する | 役割や勤続年数の差が反映されにくい |
| 基本給などに比例 | 基本給の何割、のように決める | 基本給の差がそのまま金額の差になる |
| 評価・役職で差をつける | 評価区分や役職ごとに金額を決める | 評価基準を従業員に説明できる状態にしておく |
| 利益の一定割合を原資にする | 利益から原資を決めて配分する | 利益が確定する前に通知する場合は、見込みと実績のずれに注意する |
どの方法でも、支給額は決算期末までに各人へ通知することが前提になります。あらかじめ「利益がいくら以上なら、原資にいくらを回す」といった支給の基準を決め、従業員に説明できるようにしておくと、翌年以降に出せない年があったときも理解を得やすくなります。
原資を決めるときの考え方
会社側が原資を決めるときは、賞与の額そのものだけでなく、事業主が負担する社会保険料、法人税などの納税資金、設備投資に必要な資金を合わせて見ておく必要があります。大まかには、期末の利益の見込みから、納税の見込み額と、今後の必要資金を差し引いた残りが、還元に回せる余力です。この余力の範囲で賞与と事業主負担の社会保険料を支払えるか、次の章の試算とあわせて確認してください。
従業員の立場では、決算賞与は利益次第で出ない年もあるため、夏と冬の賞与のように見込みを立てて家計の予定を組むのは避け、「出たら臨時収入」と考えておくのが無難です。
決算賞与から引かれる税金と社会保険料|手取りの計算方法
決算賞与からは、通常の賞与と同じく所得税(源泉徴収)と社会保険料が引かれ、住民税は通常引かれません。手取りは、額面から所得税と社会保険料を引いて求めます。
賞与から引かれるもの
- 健康保険料(40歳以上65歳未満の人は介護保険料も含みます)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料(賞与も賃金に含めて計算します)
- 所得税(復興特別所得税を含みます)
- 子ども・子育て支援金(令和8年4月分から徴収が始まっています。賞与への反映は、加入先の健康保険で確認します)
社会保険料は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、その標準賞与額に健康保険と厚生年金保険の保険料率を掛けて求めます。保険料は事業主と被保険者が折半で負担します。標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円です(日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き)。
厚生年金保険料率は18.3%で固定されており(日本年金機構 厚生年金保険料額表)、折半すると本人負担は9.15%です。たとえば標準賞与額が50万円なら、本人負担の厚生年金保険料は500,000円 × 9.15% = 45,750円になります。健康保険料率は加入先や都道府県で異なるため、実際の控除額は賞与明細で確認してください。子ども・子育て支援金については、協会けんぽの支援金率が令和8年4月分から0.23%と公表されています(協会けんぽ 子ども・子育て支援金率)。賞与の控除にどう反映されているかは、賞与明細の控除項目や給与担当に確認してください。
賞与の所得税は「算出率の表」で求める
賞与の源泉徴収税額は、原則として、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額と扶養親族等の数で「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から率を求め、賞与から社会保険料等を差し引いた金額にその率を掛けて計算します(No.2523 賞与に対する源泉徴収)。給与とは違い、月額表をそのまま使うわけではない点に注意が必要です。
国税庁の令和8年分の設例では、前月の給与(社会保険料等控除後)が285,454円、賞与(社会保険料等控除後)が389,558円、扶養親族等の数が3人の場合、算出率の表の甲欄で「181千円以上300千円未満」の行の率2.042%を使い、389,558円 × 2.042% = 7,954円(1円未満切捨て)と求めています。前月に給与の支払いがない場合や、賞与の額が前月の給与の10倍を超える場合は、算出率の表ではなく月額表を使う計算になります。令和9年分以後の算出率の表や月額表は改正されているため、支給する年分の表を確認してください。
源泉徴収税額の全体像は源泉徴収税額とは?給与・賞与・報酬の計算方法と納付の流れを解説、税額表の引き方の詳細は源泉徴収税額表の見方を解説|令和8年分・令和9年分の違いと計算例、雇用保険料率は雇用保険料率【令和8年度】一般は1.35%|計算方法・適用時期でも整理しています。
手取りが変わる条件
- 前月の給与の額(高いほど、賞与の所得税の率が上がる場合があります)
- 扶養親族等の数(多いほど、所得税は小さくなります)
- 年齢(40歳以上65歳未満は介護保険料が加わります)
- 加入している健康保険の保険料率(都道府県や健康保険組合で異なります)
- 標準賞与額の上限(上限を超えた分には保険料がかかりません)
なお、住民税は賞与からは通常引かれず、毎月の給与から納めます。賞与の手取りを正確に知りたい場合は、賞与明細を確認するか、給与担当に問い合わせるのが確実です。
賞与の源泉徴収税額は、前月の給与、扶養親族等の数、賞与の額で式が変わり、社会保険料の標準賞与額の上限もあるため、賞与のたびに手計算すると確認事項が多くなります。賞与の計算を給与計算ソフトに任せたい場合の一例が、jinjer株式会社が提供するジンジャー給与です。
商品ページでは、賞与計算機能として、画面のステップに従って賞与の計算ができ、計算対象者や再計算対象者などの区分ごとの人数を確認でき、所得税の計算も自動で行えることが紹介されています。賞与明細もWeb明細として発行できます。注意したい点として、所得税や住民税率は手動で変更する必要があると記載されています。また、勤怠や人事のデータを反映するには、他のジンジャーのサービスとの連携が前提になります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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- 所得税や住民税率は手動で変更する必要がある
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ジンジャー給与を導入したことで、勤怠データの手入力ほぼ不要になり、業務負担が大幅に軽減されました。給与計算のミスも減り、確認作業の時間短縮にもつながっています。クラウド上で作業できるため、場所を問わず作業できる点もメリットです。
jinjerが公開している導入事例では、社会福祉法人三重ベタニヤ(利用サービスは勤怠、人事、給与)が、導入後の効果を次のように紹介しています。賞与そのものの事例ではなく、勤怠から給与計算までの工数についての紹介です。
打刻情報がそのままデータ化され、給与計算システムにワンクリックでデータ連携。入力作業や確認工数を大幅に削減。
出典:jinjer 導入事例 社会福祉法人三重ベタニヤ
決算賞与を出す会社のメリット・デメリット|節税額と現金支出の試算
決算賞与のメリットは、従業員への利益還元と、要件を満たした場合の損金算入です。デメリットは、現金が確実に減ることと、社会保険料などの会社負担が増えることです。
会社にとってのメリット
- 利益が出た年度に、従業員の貢献に報いることができ、次の年度の意欲につながる可能性があります。
- 要件を満たすと当期の損金にでき、法人税などの負担を抑えられる場合があります。
- 決算の見込みが固まってから金額を決められるため、業績に合わせて柔軟に還元額を調整できます。
会社にとってのデメリット
- 現金が確実に減ります。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れるなどで手元資金が足りなくなると、資金繰りが苦しくなるおそれがあります。
- 賞与と一緒に、事業主負担の社会保険料なども増えます。
- 支給が続くと従業員が「毎年出るもの」と受け止めやすく、出せない年に意欲が下がる場合があります。
- 通知・支払い・損金経理の要件を満たしていることを、後から説明できる状態にしておく手間がかかります。
試算|損金算入で減る税金と、増える支出を比べる
損金に算入すると、その分だけ課税所得が減り、法人税の負担が軽くなります。ただし、税金の減る額は賞与額より小さいため、現金が増えるわけではありません。次の前提で、公的な税率と保険料率から、その差を試算します。
- 全従業員への決算賞与の合計を1,000,000円とし、標準賞与額の合計も1,000,000円とします(1人あたりの上限は超えないものとします)。
- 法人は、資本金1億円以下の普通法人などで、法人税率は年800万円以下の部分が15%、年800万円を超える部分が23.2%の場合とします(No.5759 法人税の税率)。
- 社会保険料は、厚生年金保険料の事業主負担分(18.3%の半分)だけを計算します。健康保険料や雇用保険料などの事業主負担は含めていません。
| 項目 | 金額の目安 | 計算 |
|---|---|---|
| 賞与の支給額(現金の支出) | 1,000,000円 | 前提 |
| 事業主負担の厚生年金保険料(支出の増加) | 91,500円 | 1,000,000円 × 18.3% ÷ 2 |
| 法人税の軽減額(年800万円以下の部分に対応する場合) | 150,000円 | 1,000,000円 × 15% |
| 法人税の軽減額(年800万円を超える部分に対応する場合) | 232,000円 | 1,000,000円 × 23.2% |
この前提では、100万円を支給すると、現金は賞与の100万円に加えて厚生年金保険料の事業主負担分だけで91,500円増える一方、法人税の軽減額は15万円から23万円あまりにとどまります。地方法人税、法人住民税、事業税や、健康保険料・雇用保険料などの事業主負担は、この試算に含めていません。損金算入は税負担を抑える効果はあっても、現金が増える仕組みではないため、節税だけを目的に金額を決めるのではなく、資金繰りと従業員への還元として説明できる金額かどうかを基準に判断するのが安全です。
賞与を支払ったあとの資金の流れも、あらかじめ見ておきます。源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します(No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例)。社会保険料は、賞与支払月の翌月の納入告知書で通知され、月末までに納めます(日本年金機構)。賞与の支払いのあとにも、数回に分けて資金が出ていくことになります。
決算賞与を損金にするための3要件と注意点
決算賞与を当期の損金にする要件は、事業年度末までの全員への通知、翌期1か月以内の全員への支払い、通知した事業年度での損金経理の3つです。すべてを満たす必要があります。
使用人に支給する賞与は、国税庁の説明で、次の3つの区分に応じて損金にする事業年度が決まります(No.5350 使用人賞与の損金算入時期。根拠法令は法人税法施行令第72条の3など)。
| 賞与の区分 | 損金にする事業年度 |
|---|---|
| 労働協約または就業規則で定められた支給予定日が到来している賞与(支給額が通知され、損金経理したものに限る) | 支給予定日または通知した日のいずれか遅い日の属する事業年度 |
| 次の3要件をすべて満たす賞与(決算賞与の多くはここに当たる) | 支給額を通知した日の属する事業年度 |
| 上記以外の賞与 | 支払った日の属する事業年度 |
決算賞与を当期の損金にするには、2つ目の区分に当たる必要があります。要件は次の3つです。
- 支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること(通知した日の属する事業年度の末日までに行う)
- 通知した金額を、通知したすべての使用人に対し、通知した日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること
- 支給額について、通知した日の属する事業年度で損金経理をしていること
3つの要件のどれか1つでも満たさないと、2つ目の区分には当たらず、実際に支払った日の属する事業年度(多くは翌期)の損金になります。
確認したい注意点
支給日に在籍している人だけに支給する運用は、「通知」に当たりません。国税庁は、支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合の支給額の通知は、ここでいう通知に該当しないと説明しています。就業規則や賞与規程に、支給日在籍者のみを対象とする定めがある会社は、決算賞与の扱いを事前に確認しておく必要があります。
パートタイマーや臨時雇いの身分の人は、雇用関係が継続的で、他の使用人と同様に賞与の対象としている場合を除き、その他の使用人と区分して、区分ごとに通知したかどうかを判定できます。この区分の考え方は、自社の雇用形態と賞与規程の定めに合わせて、税理士に確認してください。
要件の2つ目は、通知した金額を、通知したすべての使用人に支払うことを求めています。通知のあとに退職して支払えない人が出た場合や、通知した額と違う額を支払った場合は、要件を満たさなくなるおそれがあります。扱いは個別の事情で変わるため、そうした事態が起きたときは、早めに税理士や税務署に確認してください。
通知の方法は、あとから、通知した日と金額を各人について示せる形にしておくことが大切です。各人宛の書面にして控えを保管する、メールなら送信記録を残す、といった方法が考えられます。支払いも、振込の記録が残る方法にしておくと、期限内に支払ったことを説明しやすくなります。
役員への決算賞与は扱いが別
使用人への賞与と、役員への給与では、損金算入のルールが違います。国税庁の説明では、法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は、損金に算入されません(No.5211 役員に対する給与)。使用人兼務役員に支給する、使用人としての職務に対応する部分は、この取り扱いの対象から除かれます。
事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額を支給する旨を、事前に税務署へ届け出ておく必要があります。決算の見込みが出てから役員にも賞与を支給したくなっても、使用人と同じ感覚で追加すると、損金にならない場合があります。役員への支給を考えるときは、事前に税理士に確認してください。
本節の内容は国税庁の公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、法的助言や個別の税務判断ではありません。具体的な取り扱いは、所轄の税務署や税理士などにご確認ください。
3要件を満たすための確認は、対象者の洗い出し、通知の記録、金額の突き合わせ、支払いの管理と、手作業で進めると確認箇所が多くなります。次のチェックで、自社の運用を振り返ってみてください。
決算賞与の支給と届出、今のやり方で大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
決算賞与の経理処理と届出の流れ|未払計上から賞与支払届まで
決算賞与は、決算日に未払費用などで費用計上し、翌期の支払日に未払いを取り崩します。賞与を支払ったら、支給日から5日以内に賞与支払届を提出します。
決算賞与の仕訳の一例
損金経理とは、確定した決算で費用として経理することです。決算賞与は、決算日に支給額を費用として計上し、まだ支払っていない分を未払いとして処理します。仕訳の一例は次のとおりです。科目名や処理は、会社の会計方針や顧問税理士の指示によって異なります。
| 場面 | 借方 | 貸方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 決算日(未払計上) | 賞与(通知した全員分の合計) | 未払費用(同額) | 通知した金額を、通知した事業年度の費用にする(損金経理) |
| 支払日(翌期) | 未払費用(通知した全員分の合計) | 普通預金(振込額)、預り金(源泉所得税と本人負担の社会保険料) | 本人から預かった分は、納付するまで預り金で処理する |
事業主が負担する社会保険料は、賞与とは別に、会社の費用として処理します。処理の時期や科目は、顧問税理士と確認して決めてください。
賞与を支払ったあとの手続きの流れ
| 時期 | 手続き | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 支払日 | 源泉所得税と本人負担の社会保険料を差し引いて支払う | 控除の内訳は、賞与から引かれるものの項で確認した各項目 |
| 支給日から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険の「被保険者賞与支払届」を提出する | 日本年金機構。電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参で提出できる |
| 支払った月の翌月10日(原則) | 源泉所得税を納付する | 国税庁。給与の支給人員が常時10人未満なら、納期の特例の承認を受けて半年分をまとめて納付することもできる |
| 賞与支払月の翌月末 | 社会保険料を納付する | 日本年金機構。毎月の保険料と合算して通知される |
賞与支払届の対象になるのは、名称にかかわらず、労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものです。年4回以上支給されるものは、賞与ではなく標準報酬月額の対象になります。届出用紙には、日本年金機構に登録されている賞与支払予定月の前月に、被保険者の氏名や生年月日などが印字されて事業所へ送られます。登録した賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合の届出書式も、日本年金機構から案内されています(日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き)。毎月の給与にかかる社会保険料の決まり方は、社会保険料は4月から6月の給与で決まる|定時決定の仕組みと残業の影響で整理しています。
決算賞与が出ない・なくなったのはなぜ?もらえる人の条件
決算賞与は業績に応じた臨時の賞与で、支給の有無や対象者は会社が決めます。利益が出ない、資金を残したいなどの理由で、支給されない年や、なくなる会社があります。
決算賞与が出ない、なくなる理由として考えられること
- その年度の利益が出なかった、または予定より少なかった。業績に応じた賞与のため、利益が出ない年は見送られることがあります。
- 設備投資や新規事業、人員の補充に利益を回したい。利益が出ていても、手元に残す資金を優先して支給額を抑える、または見送ることがあります。
- 資金繰りへの配慮。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れるなどで手元の現金が不足すると、賞与を支払う余力がなくなります。
- 賞与の仕組みを見直した。決算賞与を設けず、通常の賞与や月々の給与の設計に反映する場合も考えられます。
実際にどの理由に当たるかは、会社の説明で確認するしかありません。一般的な理由を知っておくと、会社に確認するときや、転職先の賞与の条件を見るときの観点になります。
就業規則と支給条件の確認
賞与を支給するかどうか、いくら支給するかは、就業規則や雇用契約書での定めが前提になります。労働基準法第89条は、臨時の賃金等について定めをする場合には、これに関する事項を就業規則に記載することとしています(e-Gov法令検索 労働基準法)。決算賞与の支給条件が就業規則や賞与規程に書かれているか、支給の判断基準が示されているかを確認してください。定めの内容によって扱いが変わる場合があるため、疑問があるときは、人事部や社会保険労務士などに相談するのが確実です。
新入社員・パート・退職予定の人はもらえるか
決算賞与を誰に支給するかは、会社の規程で決まります。新入社員やパート・アルバイトを対象にするかどうか、在籍期間や評価で金額を調整するかどうかも、会社によって異なります。退職予定の人は、支給日や基準日に在籍しているかが条件になっている場合があります。確認するときは、次の順に当たってください。
- 就業規則・賞与規程で、対象者の範囲と在籍の条件を確認する
- 労働条件通知書・雇用契約書で、自分の雇用形態に賞与の記載があるかを確認する
- 決算賞与の通知書や社内通知で、自分に支給額が通知されているかを確認する
- それでも分からない場合は、人事部や総務部に問い合わせる
会社側から見ると、支給日に在籍している人だけを対象にする運用は、税務上の「通知」に当たりません(前述の国税庁の説明)。決算賞与を損金にしたい会社は、在籍の条件の定め方に注意が必要です。
賞与の事務を見直すなら|3つのサービスの役割の違い
賞与の計算や届出の手作業が負担なら、給与計算ソフトや労務管理システムを比べる方法があります。ここでは、商品ページで確認できる内容で、3サービスの役割の違いを整理します。
決算賞与は、通知対象者の洗い出し、賞与の計算、明細の発行、賞与支払届の提出が短期間に重なります。年に1度か2度の臨時対応では、担当者の記憶に頼る手順になりがちです。給与計算ソフトは、給与支払い業務を効率化しミスを減らすためのツールで、給与計算の正確性を向上させたい企業や手作業を減らしたい経理部門に向くとされています。
ここでは、お名前.comビジネスコンシェルジュに掲載されている3つのサービスを、商品ページで確認できる内容で並べます。優劣ではなく役割の違いで比べるため、自社の状況に近いものを選んでください(確認日:2026年10月19日)。
賞与の計算・明細・届出まわりを見直す3サービスの役割の違い
自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています
この状況に合う一例:freee人事労務は、従業員情報や給与計算などの人事労務情報を1つで管理できると紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:ジンジャー給与は、賞与計算機能があり、賞与明細をWeb明細で発行できると紹介されています。
資料を無料ダウンロードこの状況に合う一例:ジンジャー人事労務は、従業員データを1つのデータベースに集約し、情報収集から電子申請までを一気通貫で行えると紹介されています。
資料を無料ダウンロード| サービス | ジンジャー給与 |
ジンジャー人事労務 |
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|---|---|---|---|
| 向いている会社 | 経理や労務管理が初心者でも使いやすい給与計算ソフトを探している会社 | 低コストで導入したい中小企業 | ジンジャーシリーズと連携し、スマホでも操作したい会社 |
| 特徴 | 従業員情報や給与計算などの人事労務情報を1つで管理。アラート機能で抜け漏れを防ぎ、専任の担当が継続的にサポートします。 | 賞与計算機能で所得税の計算も自動で行え、賞与明細・給与明細・源泉徴収票をWeb明細で発行できます。年末調整や月変算定にも対応します。 | 各種帳票を自動で作成でき、情報収集から電子申請までを一気通貫で行えます。複数人の入退社でも一括申請形式が使えます。 |
| 注意したい点 | freee会計と連携した際の画面切替が手間に感じられる場合があります。賞与計算の専用機能は商品ページに記載がありません。 | 所得税や住民税率は手動で変更する必要があります。勤怠や人事のデータを反映するには、他のジンジャーのサービスとの連携が前提です。 | 労務管理が中心のサービスで、それ以外の機能を求める場合は他サービスの申し込みが必要です。 |
| 資料・詳細 |
3サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)
まとめて資料をダウンロード表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
表のうち、freee人事労務とジンジャー給与は本文の前半で紹介しました。ここでは3つ目のジンジャー人事労務を、従業員情報と届出の手続きの面から紹介します。
従業員情報と届出の手続きも見直したい場合
賞与支払届の用紙には、被保険者の氏名や生年月日などが印字されるため、従業員情報の更新が遅れていると、届出の対象者の確認にも手間がかかります。決算賞与の通知は、同時期に支給を受けるすべての使用人が対象になるため(No.5350)、入退社の情報を最新に保つことも欠かせません。従業員情報の管理と労務の手続きをあわせて見直したい場合の一例が、jinjer株式会社が提供するジンジャー人事労務です。
商品ページでは、従業員データを1つの人事データベースに集約し、入社時などの情報収集や書類の提出依頼をシステム上で行えることが紹介されています。各種帳票を自動で作成でき、情報収集から電子申請までを一気通貫で行えることも挙げられています。注意したい点として、労務管理が中心のサービスで、それ以外の機能を求める場合は他サービスの申し込みが必要と記載されています。また、データベースの利点を得るには、ジンジャーシリーズとの連携が推奨されています。商品ページには賞与支払届への対応の記載がないため、対応範囲は資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
おすすめ!
- 「各種帳票」が自動で作成でき、大幅に時間削減できる
- 情報収集から電子申請までの作業を一気通貫で行え、出社や役所へ行く手間もかからない
- 「一括申請形式」を採用しているため、複数人の入退社でもらくらく
気になる…
- 「労務管理メイン」で行いたい場合は便利だが、+αの機能を望む場合は他サービスの申し込みが必要
どのサービスも、賞与の計算や賞与支払届への対応範囲は、商品ページだけでは判断できない部分があります。気になる点は資料で確認し、自社の従業員数や運用に合うかを見極めてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 決算賞与はいくらくらいもらえますか?
A. 決まった相場はなく、会社が利益や資金繰りを見て決めます。支給されない年もあり、金額は役職や評価で人によって異なる場合もあります。手取りは、額面から所得税と社会保険料を引いた額です。
Q2. 決算賞与とボーナスの違いは何ですか?
A. 通常のボーナス(賞与)は夏と冬など決まった時期に支給する会社が多いのに対し、決算賞与は事業年度末の業績に応じて臨時に支給します。決算賞与は、通知・1か月以内の支払い・損金経理の要件を満たすと、翌期に支払っても当期の損金にできる点も特徴です。
Q3. 決算賞与はいつもらえますか?
A. 支給日は会社ごとに決まります。会社が損金にする場合は、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払う必要があり、3月決算なら4月末までが目安です。就業規則や賞与規程、社内通知で確認してください。
Q4. 決算賞与が無くなったのはなぜですか?
A. 理由は会社ごとに異なりますが、利益が出なかった、設備投資や資金繰りを優先した、賞与の仕組みを見直した、などが考えられます。就業規則や賞与規程の定めを確認し、会社の説明を受けてください。
Q5. 決算賞与を翌期に支払っても経費にできますか?
A. 要件を満たせば、当期の損金にできます。事業年度末までに各人別・同時期の全員へ支給額を通知し、通知した金額を翌日から1か月以内に全員へ支払い、通知した事業年度で損金経理をします。満たさない場合は、支払った日の属する事業年度の損金になります。
Q6. 役員にも決算賞与を出して経費にできますか?
A. 役員への賞与は、使用人とは別のルールです。定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものは、損金に算入されません。事前確定届出給与にするには事前の届出が必要なため、税理士に確認してください。
決算賞与のまとめ|押さえたい6つのこと
- 決算賞与は、事業年度末の業績に応じて会社が臨時に支給する賞与で、支給の有無と金額は会社が決めます。
- 損金にするには、事業年度末までに各人別・全員へ通知し、翌日から1か月以内に全員へ支払い、通知した事業年度で損金経理をします。
- 支給時期は決算期末の前後で、3月決算なら4月末までが目安です。支給日に在籍している人だけを対象にする運用は、通知に当たりません。
- 手取りは、額面から所得税と社会保険料を引いて求めます。賞与を支給したら、支給日から5日以内に賞与支払届を提出します。
- 損金算入は法人税の負担を抑えますが、現金の支出と社会保険料の会社負担は増えます。資金繰りを確認して金額を決めます。
- 賞与の計算や届出の手作業が負担なら、給与計算ソフトや労務管理システムの資料を取り寄せ、賞与や届出への対応範囲を比べます。
本記事は国税庁・日本年金機構などの公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の税務判断や法的助言を行うものではありません。具体的な取り扱いは、所轄の税務署や税理士、社会保険労務士などにご確認ください。
参考文献
- 国税庁 No.5350 使用人賞与の損金算入時期:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
- 国税庁 No.2523 賞与に対する源泉徴収:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2523.htm
- 国税庁 No.5759 法人税の税率:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 国税庁 No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20141203.html
- 日本年金機構 厚生年金保険料額表:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/index.html
- 協会けんぽ 子ども・子育て支援金率について:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/003/
- e-Gov法令検索 労働基準法:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- freee 導入事例 伊予興業株式会社:https://www.freee.co.jp/cases/iyokougyou
- jinjer 導入事例 社会福祉法人三重ベタニヤ:https://hcm-jinjer.com/results/131464/
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