RPAを物流業界に導入するメリットとは？自動化できる業務も解説

定型業務をロボットにより自動化できるRPAは、物流業界にも導入が推奨されます。RPAにより、在庫管理・帳票作成・出荷連絡といった業務の自動化が可能です。この記事では、物流業界における課題やRPAを導入するメリット、また導入時のポイントなどを解説します。

目次

開く

閉じる

1. 物流業界の課題とは
2. 物流業界でRPAを導入するメリット
3. RPAで自動化できる物流業界の業務例
4. 物流業界でRPAを導入する際のポイント
5. まとめ

物流業界の課題とは

現代社会において物流は、人が生活していく上で欠かせない機能です。しかし、現在の物流業界にはさまざまな課題があり、早急な解決が求められています。ここでは、物流業界が抱える課題を下記の2点に絞って解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

ドライバーの高齢化・人手不足

日本企業の多くが抱える課題の1つに、高齢化に伴う労働力不足があります。それに加えて物流業界には、労働環境の悪化や長時間労働の慢性化などもあり、ドライバーの高齢化やバックオフィス業務も含めた人手不足が進んでいます。

そのような中で、政府が推進する働き方改革の一環として、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務などの法改正が行われました。

法令改正は、労働環境改善のために行われています。しかし、物流業界にとっては人手不足・企業収益の減少・ドライバーの収入減などにつながる恐れがあり、早急に解決しなくてはならない課題となっています。

ECサイトの普及による業務過多

以前までの物流は、企業間の物流がほとんどでした。しかし現在では、企業間の物流に加え、ECサイトの普及による企業から個人への物流が爆発的に多くなってきています。また、フリマやオークションサイトなどによる個人間での物流も増えています。

物流量の増加で業務過多になっているのは、配送業務だけではありません。在庫管理・倉庫管理・書類作成・伝票処理・配送先への連絡・問い合わせ対応などのバックオフィス業務も同じように業務過多に陥っており、業務の効率化が求められています。

物流業界でRPAを導入するメリット

RPAとは、人がパソコンで行う業務の中で一定のルールにしたがって行う定型業務を自動化するツールです。自動化するには作業の手順を書いたシナリオを作成し、ソフトウェアロボットに覚えさせる必要があります。

RPAによる作業の自動化は、流通業界が抱えているさまざまな課題を解決する糸口となります。ここでは、物流業界にRPAを導入することで得られる下記にある4つのメリットについて解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

人手不足解消・コスト削減

RPAを使えば、今まで人がパソコンを使って行ってきた定型的なバックオフィス業務を自動で行えるようになります。人が行っていた作業をRPAが担うことで、人員や時間に余裕が生まれ、人にしかできないコア業務に回せるため、人手不足の解消も可能です。

RPAの導入で人手不足がある程度解消できれば、従業員の採用数を減らすことができ、人件費や採用のための費用などが抑えられます。また、人員不足だった業務に人を回すことで、企業の生産性の向上も期待できます。

人的ミスの削減

人が行う作業では、作業に慣れた人が慎重に行っても人的エラーをゼロにすることはできません。エラーが発生すれば、そのエラーを修正するために、余分な手間と時間がかかってしまいます。

そこで、ミスが許されない注文処理や配送手続きなどをRPAで自動化すれば、RPAはシナリオ通りに作業を行い、注文ミスや配送ミスは起こりません。RPAは、データ転記や書類管理などの人的エラーが起きやすい定型作業に導入するのもおすすめです。

しかし、自動化のシナリオ作成は人が行うため、人的ミスが起こる可能性もあります。シナリオにミスがあると、RPAはそのまま実行して間違った作業を実行します。作成したシナリオは必ず試行して、正しく作業していることを確認してから運用することが重要です。

顧客満足度の向上

物流業界では、一般消費者への配送の増加や競合業者の増加から、配送サービスの充実が求められています。そのためには、配送サービスを充実できる組織づくりが大切です。それらの取り組みが顧客満足度を高め、企業間の競争力を高めることにつながります。

物流業界で顧客満足度を高めるには、スピード感を持った正確な配送と丁寧な対応が重要です。そこで、配送事務をRPAで自動化すれば、スピード感のある正確な配送と、顧客対応のためのリソース確保ができます。

ペーパーレス化の促進

物流業界を多忙にしている原因の1つにペーパーレス化の遅れがあります。紙媒体の業務は、人の手がかかり作業の効率化を阻害します。そこで、RPAを使えば紙媒体の書類を電子化して、ペーパーレス化を推進することも可能です。

RPAでペーパーレス化を目指す場合は、RPAとOCRツールを連携させます。紙媒体の書類をスキャナーで画像データ化し、OCRツールでテキストをデータ化します。そして、必要に応じてテキストデータ中のデータを各種帳簿に転記します。

この一連の作業をRPAは自動化できます。最近のOCRはAIを内蔵した製品も多く、以前のOCRに比べて高精度でテキストをデータ化することができ、手書き文字の認識も可能になっています。

RPAで自動化できる物流業界の業務例

RPAには上記で説明したように、数多くのメリットがあります。ここでは、そのメリットを活かし、物流業界でどのような業務が自動化できるのかを下記の4つの例で解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

在庫管理

物流業界では、正確な在庫管理は大変重要な業務です。しかし、需要の変動や商品の多様化で手作業での在庫管理が難しくなり、デジタル化や最適化が求められています。RPAの導入は、その課題に対する1つの解決策となります。

たとえば、部署ごとで異なる在庫管理フォーマットを使っている場合は、RPAで統一フォーマットへ自動変換できます。そして、統一フォーマットでリアルタイムに在庫の自動管理を行い、指定された在庫数を下回れば自動発注することも可能です。

夜間の倉庫管理

物流業界では、休日・夜間に関わらず24時間365日の倉庫管理が必要です。そのため、休日や夜間に出勤して倉庫管理を行っている従業員がいる企業も少なくありません。RPAは、24時間365日の稼働が可能で、これらの業務に従事する従業員の負担軽減が図れます。

具体的には、夜間に必要な倉庫管理業務の中から自動化できる作業をRPAに任せることで、深夜業務を行う従業員数の削減ができます。中には、夜間の倉庫管理業務をなくした事例もあります。

帳票の作成

転記はRPAが得意とする作業で、伝票などのテキストを転記して帳票を作成する作業は、比較的簡単に自動化できます。物流業界には、送り状・入荷伝票・納品書・ピッキングリストなど数多くの帳票と伝票があり、それらを自動化すれば大きな効率化が図れます。

また、RPAで作成された帳票はミスがありません。帳票作成のために必要なデータが紙媒体である場合も、RPAとOCRとの連携で帳票作成までの自動化が可能です。これらの一つひとつの業務は手作業でも簡単ですが、数が多いためにRPAの効果は大きく出ます。

出荷連絡・問い合わせ対応

顧客満足度を高めるためには、出荷連絡や問い合わせへの丁寧な対応は欠かせません。対応の遅れや不適切な対応は、クレームに発展するリスクもあります。RPAを使うことで、出荷連絡や問い合わせにも丁寧な対応ができ、顧客満足度向上につながります。

出荷連絡は、出荷完了と同時に顧客へメール送信する作業の自動化を行います。発送状況の問い合わせは、送り状番号から配送状況を取得して、顧客に知らせるまでの流れを自動化します。電話対応でも電話内容をテキスト化して、転記するまでの流れの自動化が可能です。

物流業界でRPAを導入する際のポイント

物流業界へのRPA導入は、大きな効果が期待できます。しかし、効果が見られなかったという導入事例があるのも事実です。ここでは、物流業界でRPAの効果を最大限発揮させるための下記にある4つのポイントについて解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

対象業務を明確にする

RPAには、向いている作業と向いていない作業があります。向いていない作業を自動化させようとすると、シナリオ作成に時間がかかるとともに、誤ったシナリオ作成をして誤動作が起こるリスクが高まります。

RPAに向いている作業は、作業手順が決まっているパソコンで行う定型作業です。そして、繰り返し行う作業や、扱うデータ数が多い作業ほど大きな効果を発揮します。反対に向いていない作業は、人の判断を要する作業や複雑な条件分岐が必要な作業などです。

まずは、RPAに向いている作業を洗い出し、その作業を自動化しやすいように手順を記したマニュアルづくりをするのがおすすめです。その過程で、作業の改善を図ったり不要な作業を削除したりすると、さらに業務の効率化が進められます。

誰でも容易に扱えるツールを選ぶ

最近のRPAには、プログラミング知識がなくても簡単に利用できる製品が数多くありますが、使い勝手は製品によって異なります。RPAを導入する際には、実際に利用する現場スタッフが容易に扱えるツールの選択が必要です。

ITに詳しい人しか扱えないRPAは、利用範囲が限られてしまい効果が得られない原因となります。RPAの多くは、無料トライアル期間が設けられています。積極的に活用して、操作性を確かめてからの導入がおすすめです。

ベンダーのサポート体制を確認

特にRPAの運用に詳しい人材がいない場合は、サポート体制が充実したベンダーの製品がおすすめです。プログラミング知識が不要なRPAでも、専門知識がある方が自動化するためのシナリオ作成が素早くでき、自動化できる業務範囲も広がります。

したがって、サポートではRPAのシナリオ作成や、より効果的な運用方法をレクチャーしてくれるベンダーを選びましょう。また、RPAの運用ができる人材を自社で育成することも重要で、人材育成プログラムを持ったベンダーを選ぶのも1つの選択方法です。

簡単な業務から自動化していく

RPAを導入する場合は、自動化が簡単で、トラブルが起きてもほかの業務への影響が少ない作業から自動化していくのがおすすめです。導入当初は、取り扱いに慣れていないこともあり、思った通りの自動化ができないなどのトラブルが発生する可能性があります。

最初から全社的な自動化を行うと、そのようなトラブルが頻発し、運用しているシステムがダウンしてしまうリスクもあります。小さな作業の自動化からスモールスタートして、効果検証を繰り返しながら、徐々に業務範囲を広げていくのがRPAを定着させるコツです。

まとめ

RPAは、パソコンで行う定型業務を自動化するツールで、物流業界が抱えるさまざま課題を解決するための糸口となります。物流業界へのRPAの導入では、在庫管理・帳票作成・出荷連絡など多くの業務が自動化でき、人手不足の解消やコスト削減が期待できます。

また、RPAで作業を自動化すれば人的ミスの削減もでき、今までミスの修正で使っていた人員や時間も必要なくなります。物流業界でRPAをスムーズに運用するには、自動化できる対象業務を明確にし、簡単な業務の自動化からスモールスタートするのがおすすめです。